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Lnamaria-IF_赤髪のディアナ_第15話

Last-modified: 2013-10-28 (月) 01:59:12

砂漠の虎

「さ、どうぞ〜」
「うわ〜!」

なんだかよくわからないうちに、バルトフェルドさんにまるで宮殿のような建物に案内されてた。

「いえ…僕達はほんとにもう……」
「いやいや〜、お茶を台無しにした上に助けてもらって、彼女なんか服グチャグチャじゃないの。それをそのまま帰すわけにはいかないでしょう。ね?僕としては」

確かにカガリはチリソースとヨーグルトソースを頭からかぶって悲惨な状態だ。
でも油断しちゃいけない。拾ったまま、こっそり腰に挟んで隠してある銃。これが頼りだ。
それを見透かすようにバルトフェルドさんは

「ふ」

と笑った。

「こっちだ」

警備兵に促されて建物の中に入る。そこには長い黒髪の、レオタードみたいな服を着た女の人がいた。

「この子ですの?アンディ」
「ああアイシャ、彼女をどうにかしてやってくれ。チリソースとヨーグルトソースとお茶を被っちまったんだ」
「あらあら〜、ケバブねー」
「ぁ…ぅーん……」
「さ、いらっしゃい?」
「カガリ……」
「大丈夫よ、すぐ済むわ。アンディと一緒に待ってて」
「おーい!君らはこっちだ」

あたしたちは広い応接間に通された。

「僕ぁコーヒーには、いささか自信があってねぇ」
「はぁ…」
「まぁ掛けたまえよ。くつろいでくれ」
「……」
しかたないからみんな腰を下ろした。
ん?暖炉の上に化石みたいなものが飾ってある。

「ん?それはエヴィデンスゼロワン。レプリカだけどね。実物を見たことは?」
「プラントに飾ってあるんでしょう?プラントは行った事ないから……」
「そうか。戦争になる前は、あちこちに移動展示もしたもんだが。見てないとは残念だ。しかし、何でこれを鯨石と言うのかねぇ。これ、鯨に見える?」
「そうですねぇ。羽を取れば鯨の化石に見えないことも無いかな……」
「だろう。どう見ても羽根じゃない?普通鯨には羽根はないだろう」
「え…まぁ……あでも、それは外宇宙から来た、地球外生物の存在証拠ってことですから……」
「僕が言いたいのは、何でこれが鯨なんだってことだよ」
「……じゃあ、何ならいいんですか?」
「ん〜〜…、何ならと言われても困るが…、ところで、どう?コーヒーの方は」
「おいしいです。そんなに苦くなくて酸味があって。キリマンジャロですか?」
「私はもっと焙煎して苦味出して酸味押さえたほうがいいかなぁ」
「おおぅ!君らはなかなか通だねぇ!」

あたしは紅茶に結構こだわる方けど、メイリンは確かにコーヒーにはかなりこだわる。

「君はどうだい?」
「え……あ、えーと」
「あ、君にはまだ分からんかなぁ、大人の味は」
「ふふ、キラさんは手っ取り早くインスタントコーヒー飲んでたから」
「メイリンは我慢できなくてラボにコーヒーメーカー持ち込んだくらいよね」

砂漠の虎っていえば一応敵のはずだけどなぜか楽しく話が弾んだ。
そのうちまた話題が鯨石になった。

「ま、楽しくも厄介な存在だよねぇ、これも」
「……厄介、ですか?」
「そりゃぁそうでしょう。こんなもの見つけちゃったから、希望って言うか、可能性が出てきちゃった訳だし」
「え?」
「人はまだもっと先まで行ける、ってさ。この戦争の一番の根っ子だ」
「んん……よくわかんないです。こんなもの無くても、確かな証拠なんかなくても、人はいつか宇宙に旅立ってくと思うんです。もっと遠くへ、知らない所へって」
「ふうむ」

バルトフェルドさんはあたしの顔を覗き込んだ。

「君は非常にユニークだ」
「なんですかそれー。バルトフェルドさんも十分ユニークですよ」

そこに、アイシャさんがカガリを連れてやってきた。

「アンディー」
「おやおや!」
「へー!似合うじゃないカガリ!」
「あーほら。もう」

恥ずかしそうにアイシャさんの後ろに隠れているドレス姿のカガリが前に出される。

「あー…女…の子…?」
「くっ…キラてめぇ!」
「あいやぁ…だったんだよねって言おうとしただけだよ」
「同じだろうがぁそれじゃぁ!」
「くっはっはっは……」
「失礼よぉ、女の子に」
「ふふふ……」

カガリも座り、コーヒーが出される。でも、本当に似合ってる。

「ドレスもよく似合うねぇ。と言うか、そういう姿も実に板に付いてる感じだ。
「勝手に言ってろ!」
「しゃべらなきゃ完璧」
「そう言うお前こそ、ほんとに砂漠の虎か?何で人にこんなドレスを着せたりする?これも毎度のお遊びの一つか!」
「カガリ!やめな!」

せっかくの和んでるこの雰囲気が壊れるのが嫌だった。そして怖かった。

「ドレスを選んだのはアイシャだし、毎度のお遊びとは?」
「変装してヘラヘラ街で遊んでみたり、住民は逃がして街だけ焼いてみたり。ってことさ」
「いい目だねぇ。真っ直ぐで、実にいい目だ」
「くっ!ふざけるな!」
「君も死んだ方がマシなクチかね?」

バルトフェルドさんの顔がきびしくなった。

「ルナマリア君、君はどう思ってんの?」
「え?」
「どうなったらこの戦争は終わると思う?モビルスーツのパイロットとしては」

やっぱり、知ってたか。

「お前どうしてそれを!」
「はっはっはっは。あまり真っ直ぐすぎるのも問題だぞぉ」

キラがカガリの手を引いて立ち上がる。でも、バルトフェルドさんのすぐ隣に座ってるあたしと、メイリンの顔を見て焦ってる。

「キラ、落ち着いて!」
「戦争には制限時間も得点もない。スポーツの試合のようなねぇ。ならどうやって勝ち負けを決める?どこで終わりにすればいい?」
「あたしたち、ヘリオポリスが崩壊する前は大学の研究室にいたんです。色々研究したかったけど、全部はできなくて。その原因の一番は資金でした」
「つまり、これ以上やれば損をすると判断した時点で、理性が働き戦争が止まると?」
「本当にそうでなくても、そう思わせるだけでもいいんじゃないですか?」
「しかし、お互い意地もあるぞ。遮二無二続けようとする奴がいれば、どうするかね?」
「無理に続ければ、無理が出ますよ。結局お互いどうしようもなくなっての、しかたなくの妥協」
「……本当に、君はユニークだ。君のような者こそプラントにいて欲しかったがねぇ。君が何故同胞と敵対する道を選んだかは知らんが……しかし、あのモビルスーツのパイロットである以上、私と君は、敵同士だと言うことだな?」
「コーディネイターであるだけで同胞と言ってくれるの?なら、なぜザフトは無差別に地球にNJを打ち込んだんです!あたしたちは地球で生まれたコーディネイターです。エイプリールフール・クライシスで、家族も、知り合いも死にました。ナチュラルもコーディネイターも関係なく!」
「む……」
「あたしは歴史が好きなんです。史実には、敵味方の部下同士が馴れ合って戦争を終わらせた例もありますよ。よかったらそうします?」
「くっはっはっはっ。本当に、君がプラント人じゃないのが惜しいよ。ま、今日の君は命の恩人だし、ここは戦場ではない。帰りたまえ。話せて楽しかったよ。よかったかどうかは分からんがねぇ」

アイシャさんがドアを開ける。

「カガリ君、そのドレスはあげるよ。ルナマリア君とメイリン君にも見繕ってあげたいが時間が無い。で、だ」

バルトフェルドさんはポン、とあたしとメイリンの手に袋を載せる。

「たぶん、それぞれの好みにあったブレンドのコーヒーだ。試してくれ。じゃ、また戦場でな」

あたしたちは宮殿を後にした。
あたしは複雑だった。人間として好意を抱ける人を敵にしなきゃいけないことに。本当に馴れ合えないかなぁ。
はぁ。

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