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Lnamaria-IF_395第02話

Last-modified: 2008-01-26 (土) 21:43:01

/ 2. 爆発


「何事か!?」
MSハンガーが立ち並ぶ一角に爆発を認めると、タリア・グラディス隊長はオペレーターに報告を求めた。
座席についていたアビー・ウィンザーが、
「第6ハンガー炎上! 詳細不明!」
即座に対応する。一瞬の思案の後、タリアはブリッジクルーへ、
「バート! 至急情報を集めて頂戴!」
「はっ!」
「アビーは引き続き事態を観測!」
「はい!」
指示を飛ばした。
タリアの傍らに立つミネルバ艦長のアーサー・トラインが不安一杯に口を開く。
「第6って、隊長……」
「えぇ、そうよ。新型の――事故か、あるいは……」
「あるいは、って……えぇ!? まさかっ!?」
「馬鹿者! 貴方が取り乱してどうするの、アーサー・トライン!」
「は、はいぃ! 申し訳ありません、隊長っ!」
叱咤されて縮こまるアーサーをよそに、タリアはアビーとは別のオペレーター――メイリンに、
「メイリン! MSパイロットに各々の格納庫への呼集を!」
命令を下す。
「は、はい!」
というメイリンの返事に、アビーの報告が、
「第6ハンガーの炎上はビーム兵器によるものと断定!」
重なった。すかさずタリアが問い返す。
「内からか、外からか?」
「不明! バートさんの情報に頼るしかありません」
「司令部が混乱しており、情報が錯綜しています!」
二人の報告に、タリアは舌打ちする。
「暴発――」
「で済んでくれるといいのだけれど……」
タリアの表情が一層険しくなったところへ、アビーとメイリンが、
「第6ハンガー跡に熱源3!MSと判明! ……MS、発砲!」
「機種を特定! カオス、ガイア、アビスです!」
追い討ちをかた。


アーサーが慌てふためきながらも、
「こ、コンディション・レッドを発令!」
上ずった声を無理矢理に張り上げて指示を出した。
「全艦にコンディション・レッド発令! 繰り返す、コンディション・レッド発令――……」
「全パイロットに拿捕を命じて頂戴!」
命じて、タリアは続ける。
「ルナマリアとシンにも急ぎ帰還するように言って頂戴! ――インパルスの出撃もあり得る!」
「えぇ!? インパルスを、ですか!?」
「相手は新型3機よ!パイロットが不明である以上、最悪の事態を考慮に入れるべきでしょう!」
「ま、まさか、正規パイロットが――」
「不明よ! それ以上にタチの悪いことがあるとは思えないけれど、現に味方がやられているわ!」
言われて、アーサーは気づいた。事件に即応した味方のMSが、次々と撃破されている。
「――宇宙港! 敵の母艦は!?」
通信で問い質す若い新鋭艦の女性指揮官へ返されたのは、
『今探している! いらん口出しをするな!』
という罵声であった。タリアは歯軋りし、現場に目をやる。
予期せぬ事態とはいえ、ハンガー群の友軍の対応はあまりにも芳しくなかった。
メイリンが声を上げる。
「艦長! レイ機より入電!」
「今度は何事!?」
「それが……デュランダル最高議長閣下がこちらに向かわれたそうです!」
一瞬呆気にとられた後、タリアは心底嫌そうな顔をした。




正直、シンがあたしの買った物を一つも落とさずにサイドカーまで走ったのは賞賛に値することだ。
あたしは荷物を抱きかかえながら、
「第3ハンガーを! ――ああん? あたしはレッドよ! さっさとしなさい!」
通信機の向こう側のオペレーターに怒鳴っていた。しばらくして、やっと、
「第3ハンガー! 聞こえる!?」
『ルナマリア?』
第3ハンガーの機体を担当しているヴィーノが通信に出た。
「ヴィーノ! 今からそっちに行くから、あたしのザクを――」
ヴィーノはあたしの要求を遮るように、
『あ、その……、なんて言ったらいいか、ええと、ルナマリア』
歯切れの悪い態度で言いよどんだ。
「何よ? さっさと言いなさい!緊急事態なのよ!?」
『ハンガーの天井が落ちて……その、ルナマリアの機体が下敷きになって、メインカメラとメインスラスターが使えなくなっちゃって……』
「はぁ? すぐ直してよ!」
『無理だよ、ハンガーが潰れちゃってるんだから! とにかく、掘り起こしてミネルバに運び込まないと・・・』
ヴィーノの釈明に苛立ち、
「あぁ、もう、さっさとして頂戴!」
あたしは乱暴に通信を切った。
「シン! やっぱミネルバに直行!」
シンはあたしの言葉にこくんと頷くと、速度を出したまま方向を変える。急激な方向転換に吹き飛ばされそうになるが、先ほどのように文句は言わない。
やがて車両出入口の床をタイヤで騒音を立てて擦りながら、サイドカーはミネルバに入った。




中央デッキから特異な形をした航空機群が飛び出していく。――シンのインパルスだ。
メインゲートの開かれた左舷デッキからそれを認めて、あたしは歯軋りしつつ、
「どうしてザクの予備機が出せないんですか!」
エイブス整備班長に喰いかかった。
「配備されたばかりの新品がすぐに動くなんて勘違いするなよ、ホーク。整備班は元々人手がないのに、セカンドステージの方にも人数を割いてたんだ。予備機の調整なんて手が回らんよ」
「そんな! この状況をただ見ていろって言うんですか!?」
「能力があろうとやる気があろうと、すべきことを全うしえないこともある。例え本分でなくても、やれることを探すんだな!」
言い放つと、整備班長は踵を返して不時着機のメンテナンスベッドへの固定作業に戻った。
無償に腹が立ち、
「あぁ、もう!」
叫んでみたものの、MSの操縦以外に、あたしが何の役に立つというのだろうか。自機であればOSの調整などで整備班の手伝いも出来るが、生憎と愛機は第3ハンガーの瓦礫の下らしい。
ブリッジクルーなどの手伝いにしても、出来そうなことが見つからない。もどかしさで身を掻き毟りそうになった時、デッキに右肩を失ったザク・ウォーリアが進入してきた。
そのザクは片腕を失っての飛行だった割には、見事な着地で着艦する。
片腕破損を想定したプログラムもあるとはいえ、大部分をパイロットに頼るものであり、レッドとしての操縦技能は自負しているあたしでも、あそこまで綺麗な着艦が出来る自信はない。
ところが、そんなあたしの感動に水を指すように、ラダーでコックピットから降りてきたのは、軍服を着用していない一組の男女。
こんな時だというのに、なんて厄介な。
「保安兵!」
呼びながら拳銃を抜くと、あたしは苛立ちを隠そうともせずにその男女に近づき、
「動くな!」
銃口を向けた。事態に気づいた保安兵達がマシンピストルを構えて二人を取り囲む。
「着艦のアナウンスがなかったが、許可は出ているのか?官姓名を名乗れといいたいけれど・・・」
問い質すあたしの声に、二人に緊張が走ったのがわかる。
「お前達、軍の者ではないな? 何者か? 何故その機体に乗っている!?」
「……」
数秒の沈黙の後、静かに、しかし威圧的に男が口を開いた。
「銃を下ろせ。こちらはオーブ連合首長国代表、カガリ・ユラ・アスハ首長だ」
「な……」
それがあまりにも突飛なことだったので、あたしは一瞬、言葉を失ってしまう。
「――そんなことを軍があっさりと信用すると思うのか?」
鼻で笑ってやりたい気分だった。この状況下で、軍を舐めているのだろうか。
しかし、
「身分証ならある。……代表」
「あ、あぁ。これだ」
「俺は護衛のアレックス・ディノ。代表はデュランダル議長との会談中に騒動に巻き込まれ、避難もままならず機体を借りることになった」
保安兵の分隊長がそれを照会すると、
「間違いありません、ルナマリア・ホーク。身分証は本物です」
少なくとも身分証は、オーブのアスハ代表首長とその随員の物であった。
カガリ・ユラ・アスハは第二次ヤキン・ドゥーエ会戦に際して、手勢とともに旧クライン派武装集団に助勢、自らMSに乗って戦ったという。
それが本当ならば、未踏の地において、シェルターを探すよりもMSに乗った方が安全と考えたのだと納得はできる。
「……銃を下ろして。警戒は解くな」
警備兵達に言って、あたしは拳銃をしまった。
「それで、代表首長閣下。どのような理由で本艦へ着艦されたのでありますか?」
「理由は二つある。一つは議長がこちらへ入られるのを機内から確認した為。もう一つは現状で一番安全かつ確実に治療が受けられると場所と判断した為だ」
またしても、答えたのはアレックスとかいう男の方だった。
「議長が? 分隊長?」
「我々には知らされていませんが」
「……議長の件は後ほどお伝え致します。それまで医務室で――」
その時だった。アビーのアナウンスと、それに続いてグラディス隊長の言葉が、
『全艦、出港準備。全艦、出港準備。本時刻を以って本艦は戦闘艦としての行動を開始します。各員は所定の行動をとって下さい。繰り返します――……』
『強奪部隊がプラント外へ脱出した。また、母艦と思しき所属不明艦を認めている。本艦はこれの拿捕の為、強奪部隊との交戦に入る。各員、気を引き締めよ。これは演習ではない』
スピーカーから流れ出した。
「何だって?」
真っ先にアレックス氏が、やや狼狽えたように声を上げた。
「戦闘に出るのか、この艦は!?」
「……聞いての通り、演習ではないそうです」
あたしが返答すると、ようやくアスハ代表が声を上げた。そのアレックス氏に向けた、
「アスラン……っ」
という言葉に、あたしは耳を疑った。いや、聞いていた皆がそうだろう。――アスラン、だって?
「ぁ……」
言ってから、アスハ代表は後悔したようだった。アスランと呼ばれたアレックス氏も、苦い――肯定するような――表情でやや俯いた。
アスラン――アスラン・ザラ。二代前の最高評議会議長兼国防委員長、パトリック・ザラの一人息子にして、アカデミー史上最高の優等生。
その能力は実績にもしっかりと反映され、地球軍の試作型MSストライクを撃破したことで勲二等ネビュラ勲章を授与されたエースでもある。
あたしは努めて平静を装い、
「とにかく、お二人は医務室でお待ち下さい。分隊長、お連れして」
「はっ」
分隊長に指示した。


保安兵達が二人を護送していくのを見送ると、あたしは艦内電話に取り付く。グラディス隊長の姿がすぐにモニターに現れた。
「隊長、出港中に申し訳ありません。至急報告致したいことがあります」
『どうしたの、ルナマリア?』
「先ほど着艦したザクに民間人2名が搭乗――」
『え!?』
あのグラディス隊長と雖も、その報告には驚きを隠せない様子だった。その隙に呼吸を整えて、あたしは続ける。
「これを詰問したところ、オーブ連合首長国のカガリ・ユラ・アスハ代表首長とその護衛であると判明しました」
『……それで?』
「代表は軽傷を負われており、僭越ながら小官の判断で医務室へお送り致しました」
『わかったわ。ありがとう、ルナマリア。後はこちらで対処します』
厄介事が増えたと呟き、溜息を吐いて隊長が通話を切ろうとするのを、
「それからもう一つ!」
慌てて遮った。
『何かしら?』
「セイバーの使用許可を頂きたく!」
セイバー――ZGMF-23S。セカンドステージの内、未だ公開されていない機密扱いの新型機で、そのテストパイロットすらまだ確定していない可変高機動型MS。――あたしはそのテストパイロット候補生だ。
『え? ――駄目よ。知っての通り、あれは他の4機と違って未公開のものだわ。ザクの整備を待って……』
『待ちたまえ、グラディス隊長』
予想通り要請を棄却する隊長の言葉を遮るように、一人の男性がモニターに割り込んできた。
それがギルバート・デュランダル最高評議会議長だと気づき、
「でゅ、デュランダル議長閣下!」
あたしは慌てて腰を折って最敬礼をする。
『ルナマリア君、といったね。ルナマリア・ホーク……セカンドステージのテスト候補生に残っていたことは覚えているよ』
「恐縮であります!」
議長がセカンドステージ開発やミネルバ建造を後押ししていたことは知っていたが、まさかテストパイロットの候補生の一人でしかないあたしの事を覚えているなどとは、夢にも思っていなかった。
『この事態だ。行けるかね、ルナマリア?』
「はっ!セイバーのテストパイロット候補として、既に62時間のシミュレーター訓練を行っています!」
『よし、頼むよ』
「はい!」
大きく返事をして、あたしはセイバーが格納された仕切られた一角へ向かった。
不謹慎ながら、他の候補達を差し置いてセイバーの実機を動かすことに一抹の嬉しさを感じた。
「ヨウラン! セイバーの出撃にどれくらいかかる?」
休憩していたらしいヨウランに声をかけると、
「セイバー? ……機体の整備は万全だから、梱包さえ解けばすぐにでも出られるが……」
ヨウランはそう答えた。うん、と頷いて、あたしは、
「よぉし、今すぐ解いて! 出港後、セイバーで出るわよ!」
単刀直入に告げた。
「なになにぃ!? あれは他とは違って機密扱いでだな、お前の独断で出せるような……」
「それくらい知ってるわよ! 議長の許可が下りたの! ほら、さっさとする!」
あたしがそこまで馬鹿ではないことくらいヨウランもわかっているはずで、議長の許可と告げた途端、すぐに同僚達を動員してセイバーの開封にかかった。


程なく作業は終わり、あたしはその巨大な戦闘機のなりをした機体に乗り込んだ。
訓練でもう慣れたチェックを、出来るだけ手早く済ましていく。
ザクのようにあたし用に調整されている訳ではないが、標準調整の機体を操れずして新型機のテストパイロットが務まるだろうか。――否。
「システム、オールグリーン!」
ヨウランの言うとおり、整備は万全だ。後はパイロットさえ上手く動けば問題は皆無。
両手で頬を挟むように叩いて気合を入れた所に、通信ウィンドウの不安げなメイリンの顔が映った。
『お姉ちゃん、大丈夫……?』
「心配性なんだから。あたしは大丈夫よ、メイリン」
右手でサムアップ・サインを作り、メイリンに笑いかけてカタパルトへ向かう。久しぶりの無重力での機体移動を難なくこなしつつ、
「戦況は?」
状況を尋ねた。
『現在、シン、レイ、ショーン各機が敵の回収部隊と思しきMS及びMAと交戦中。他の友軍機の行動は不明ですが、恐らく撃墜されたものと思われます』
「デイル達は?」
『確認できません!』
メイリンの顔も声も、不安で一杯一杯になっているのがわかる。努めて明るく、
「きっと無事よ」
そう言うと、あたしはメイリンに射出を促した。
『……ルナマリア機、カタパルト・オンライン! カウントダウン後、射出します!』
「了解。ルナマリア・ホーク、セイバー、出るわよ!」
宇宙空間において、リニア・カタパルトを接続したままスラスターを吹かせるのは、素人か、もしくはGが急激にかかるのを怖がる臆病者のすることだ。
そのどちらでもないというくらいの自信は、初陣のあたしにだってある。心を落ち着かせて、メイリンのカウントダウンを待った。
『――3……2……1……今!』
きついGが身体にかかるのを感じながら、あたしは戦闘宙域を目指した。詳しい状況は見えないが、あたしの到着で好転することはまず間違いない。何せレッドの乗る、しかもセカンドステージ機なのだから。
ヒーローもといヒロインは遅れて登場するのが常って奴なのだ。


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