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Lnamaria-IF_523第07話

Last-modified: 2007-11-17 (土) 07:30:02

翌日、嬉しい事があった。
なんと昨日、第8艦隊先遣隊と連絡が取れたというのだ!
給水制限が取れた事もあって、昼の食事は宴会騒ぎだった。
気になっていたフレイも、おずおずとだけど私に何回も話し掛けてきた。ミリィとサイに、色々言われたのかも知れない。でも、こうやって話し掛けて来てくれれば、その内コーディネイターだって普通の人間と変わらないってわかってくれるかも知れない。私も、笑顔でフレイに何回も話し掛けた。
うん。カレッジのあいつらは、イジメのネタにするんならなんでも良かったんだろう。性格が悪いんだ。今の私にはそれがわかる。でもフレイにあるのは、コーディネイターへの嫌悪感だけなんだ。それさえ消えてくれれば……
……ふと、ラクスの事が頭に浮かんだ。私達は浮かれているけど、あの子にとっては浮かれる事じゃないよね。
あの子はこれからどうなるんだろう? きっと月の本部にでも連れて行かれて、政治的に利用されるんだろう。なんたってプラント評議会議長の娘だ。
「そんな目に遭わせたくないな……」
「どうしたんですか? ルナマリアさん」
「ん? なんでもないのよ、フレイ」
私はにっこりとフレイに微笑んだ。
「おーい! お前達、いつまで騒いでるんだ! そろそろ勤務の時間だぞ」
「あ、やべぇ」
私達はガタガタと食器を片付けだす。
「じゃ、また後でね、フレイ」
「あ、はい」


格納庫に着くと、マードックさんが待っていた。
「すみません、遅れました」
「あー、規律ジオメトリーのオフセット値変えといたから、ちょっと見といてくれ」
「はーい!」」
「ま、もう用はねぇかもしんねぇけどな。こいつも」
そう言えば、私が組み込んだモビルスーツの基礎OS、消去しといた方がいいのかな?
ううん、まだ、何があるかわからない。保存だけはしておこう。私だけがアクセス出来るようにして……
せっかく何日もかけて完成させたんだしね。持ち出し、出来ないかなぁ?


「ルナマリアさん、良かったら使いませんか?」
「へ? 何? それ?」
フレイが自慢そうな顔で話し掛けてきたのは翌日だった。
「顔のパック剤ですよー。あ、全部は使わないで下さいよ?」
「よくそんな物持ってたわねー」
「いざって時のために持ち歩いてたんです。パパも先遣隊と一緒に来るっていうんだもの。ちゃんとしとかなきゃ。大西洋連邦事務次官の娘が、あんまりボロボロじゃぁ、パパに悪いでしょ? 久しぶりに会うんだし、せめてこのくらいはねっ」
「いざって言う時って……じゃあ、ありがたく使わせてもらうわ。ありがとね」


「ふーん。本当につるつるになるんだ」
感心しながら、私はストライクから私が組み込んだモビルスーツの基礎OSの吸い出し作業をやっていた。
「…よっ……んっ…ほぉー……」
うわっ! マードックさんが上がってきた!
「な、なんですか?」
「いや、どうかなぁって思って」
「オフセット値に合わせて、他もちょっと調整してるだけですよ。念のために」
「はっはっはっは。お嬢ちゃんは感心だなぁ。やっとけやっとけ。無事合流するまでは、お前さんの仕事だよ。何ならその後の志願して、残ったっていいんだぜ?」
「えー。ははは……」




『総員、第一戦闘配備!繰り返す!総員、第一戦闘配備!』
もうすぐ先遣隊と合流と言う事で休憩室で休んでいた私の耳に、ここしばらくの浮ついた気分を吹き飛ばす艦内放送が流れてきた!
私は格納庫に走った! 目の前にラクスが!?
「何ですの? 急に賑やかに……」
「戦闘配備なんです! さぁ中に入って!」
「戦闘配備って……まぁ、戦いになるんですの?」
「そうですよっていうか、もう……とっくにそうです」
「ルナも戦われるんですか?」
ラクスが悲しそうな顔をする。
「守らなきゃいけないから。この艦のみんなを。さ、中に入って!」
そうだ。私が艦を守らなきゃ、ラクスも死ぬ!
私はラクスを部屋に入れると、再び走る。
あっ、フレイが飛びつくようにして話し掛けてきた!
「ルナマリアさん! 戦闘配備ってどういうこと? 先遣隊は?」
「分からないわ。私にはまだ何も……」
「大丈夫だよね!?」
「!?」
「パパの船、やられたりしないわよね? ね!?」
――! この時、全てをうまく納める方法が頭に浮かんだ!
「聞いて、フレイ!」
「何ですか!?」
「こっちのモビルスーツは私一人だし、正直厳しいの。勝てるかわからない」
「そ、そんな!」
「だからねフレイ。あなたにやって欲しい事があるの」
「え? あたしに? どんな事ですか!?」
「それはね……」




「遅いぞ! お嬢ちゃん!」
「すみません!」
急いでコクピットに飛び乗る。
『敵は、ナスカ級に、ジン3機。それとイージスが居るわ。気を付けてね』
『ルナ、先遣隊にはフレイのお父さんが居るんだ。頼む!』
「わかったわ!」
『カタパルト、接続! エールストライカー、スタンバイ! システム、オールグリーン! 進路クリア! ストライク、どうぞ!』
「ルナマリア・ホーク、ストライク、行きます!」


相手はジン3機とイージス。
アスラン……あなたの事好きになれなくなったけどやっぱり戦いたくない……!
バーナードは撃沈寸前。イージスは……ローに向かっている。
……あの二艦はもうだめ。頭の冷静な部分が囁く。
モントゴメリ……主砲塔が被弾してる。機関部にも!
まずはモントゴメリに取り付いているジン一機を排除しないと!
相手のジンはこちらに気づくと、バズーカを撃ってくる。
当たらない! そんな物!
シールドを構えて突貫する! ジンは慌てて避けようとするけど。
遅い! ストライクのビームサーベルはジンの胴体を薙いだ。
『助かったよ! ストライク!』
モントゴメリから通信が入る。
「気をつけて! まだ敵は3機も残っているわ!」
『ああ! 君も気をつけて!』
あっ! ローが……とうとう、イージスに撃沈された。
モビルアーマー形態になって素早い速度でイージスがすっ飛んで来る!
……直ってる!? この間切った腕も、脚も。ザフト脅威の科学力ね!
とっさに私は横に避ける。
「アスラン! 私はあなたと戦いたくないのよ!」
『俺だって! お前がそうナチュラル共の味方ばかりするから!』
「そうやって人を見下して! 昔のあなたはそんなんじゃなかった!」
『俺の母にはお前も会った事があるだろう! 母は、血のバレンタインで地球軍に殺された!』
「それがどうしてナチュラル全てを見下す事になるのよ!? おば様はそんな人じゃなかった! 地球に無差別にニュートロンジャマー散布したり、ザフトはやってる事がめちゃくちゃよ!」
これでいい……アスランは私一人で牽制できる。でも。
ああ! とうとう残りのジンが来てしまう! フレイは何をやってるの!?
『ザフト軍に告ぐ! こちらは地球連合軍所属艦、アークエンジェル!』
その時、ナタルさんの声が戦場に響いた。
『当艦は現在、プラント最高評議会議長、シーゲル・クラインの令嬢、ラクス・クラインを保護している!』
『何っ!?』
アスランが驚いた声を出す。
私はほっと溜息を漏らす。
間に合ったのね、フレイ……
『偶発的に救命ポッドを発見し、人道的立場から保護したものであるが、以降、当艦へ攻撃が加えられた場合、それは貴官のラクス・クライン嬢に対する責任放棄と判断し、当方は自由意志でこの件を処理するつもりであることを、お伝えする!』
『卑怯なっ!』
ザフト艦から撤退信号が上がる。
『救助した民間人を人質に取る……そんな卑怯者と共に戦うのが! お前の正義かっ!? ルナ!』
「……アスラン。じゃあ、何も言われないまま、ラクスごとアークエンジェルを沈めた方が良かった?」
『それは……!』
「……ラクスは私が返すわ。必ずね」
『信じられるか!』
「……おば様が血のバレンタインで殺されたからナチュラルを許さないって言ったわね。もし、ヘリオポリスで私の両親が死んでいたら、私はザフトを許さない」
『……! ルナ!』


「お姉様!」
「へ?」
フレイ!?
「あたし、うまくやれたかな? やれたよね?」
ストライクから降りた私に、必死な顔でフレイが聞いて来る。
「ええ! あなたはよくやったわ!」
「よかった! お姉様も無事で!」
「ちょっと待て!」
あ、ナタルさん。
「フレイがブリッジにラクス嬢を連れてきたのは、ルナマリア、お前の差し金だったのか?」
「ええ」
それが何か? と言うように私はナタルさんを見つめ返す。
「艦が沈んでしまっては、元も子もありません。ラクスだって、ザフトに何も知られないまま死ぬよりはよかったと思います」
「……そうだな。その通りだ」
ふ……とナタルさんが微笑む。
「臨機応変の判断、非常によろしい! ルナマリア、お前軍人に向いているかも知れんぞ」


撃沈されなかったものの、モントゴメリはそれなりの被害を受けていた。
アルスター事務次官は、アークエンジェルへの補充の人員と共にアークエンジェルへ移ってきた。
「やあ! 君がルナマリア君か!」
「あ、はい」
「いやぁ。君の活躍はモントゴメリのブリッジから見させてもらったよ。頼もしいねぇ。我が軍にもこんなパイロットがいるとは」
「あ、いえ。私はヘリオポリスの学生で……それに、コーディネイターですし」
「ああ、フレイから聞いたよ。大変だったようだな。よく、アークエンジェルを、娘を守ってくれた。ありがとう」
フレイのお父さんはぺこりと頭を下げる。
「いいえ、こっちも自分の身を守るのに必死でしたから」
「それにしても。すごい。本格的に、軍に志願しないかね? 私のコネで、相当優遇はしてやれると思うよ」
「……さっきも言いましたけど。私、コーディネイターですよ?」
「地球を愛する心があれば、そんな物は関係ないさ!」
ははは、とアルスターさんは笑った。
「ブルーコスモスは、それほど懐の狭い団体じゃないよ」
「え? ブルーコスモス!?」
「まぁ過激派も居ってブルーコスモスの評判を下げておるがね。本来はただ、これ以上子供をコーディネイトする事を規制して、数を増やさずコーディネイターも自然にナチュラルの中へ還して行きたいと考える者の団体だ。構成員にはコーディネイターも居るのだよ」
「そう、なんですか……」
「娘から聞いたよ。ヘリオポリスのカレッジではひどいイジメに遭っていたそうだな。品性下劣な奴らだ! 我々の憎むべきはコーディネイトであってコーディネイターではないと言うのに!」
アルスターさんから、聞いた話は、私の今までのブルーコスモスのイメージを崩す物だった。
もっと落ち着いて考えたい。でも、私にはやらなければならない事があった。


「ラクス、いる?」
夜半、みんなが寝静まった頃、私はラクスの部屋をノックした。
「はい。開いておりますわ」
私はラクスの部屋へ滑り込んだ。
「ありがとう」
私はラクスに頭を下げた。
「え?」
「あなたのおかげで、戦闘は収まったわ」
「まぁ。ルナも無事に帰ってきましたし。私がルナの役に立てて嬉しいですわ」
「うん、恩に着るわ。さあ、これに着替えて」
「これは、地球軍の制服ですわね? なぜこれに?」
「今度は私が、あなたを逃がしてあげる。このまま地球軍の本部にでも行ったら、ラクスがどんな目に遭うかわからないから」
「いいのですか?」
「いいのよ。友達が嫌な目に遭うと思うと、私、嫌なの」
「ありがとう! ルナ!」
花が咲いたように笑うと、ラクスは着替え始めた。


「そっと、ね」
「はい。ふふ」
「あぁ!」
「えぇ? サイ、まだ寝てなかったの!?」
「ルナこそ、何やってんだ? あ、お前の後ろ!」
「あらら。見つかっちゃいましたわね」
「……」
「彼女を、どうするつもり? ……まさか!」
「……黙って行かせて。サイ達を巻き込みたくない。……私は嫌なの! こんなの!」
「……まぁ……女の子を人質に取るなんて、本来、悪役のやるこったしな」
「……!」
「……手伝うよ」
「私も手伝うわ」
「ミリィ……サイ……ありがとう」


「ふー。無事に格納庫に着いたな」
「ありがとう」
「……いえ」
「またお会いしましょうね」
「……それはどうかな? ルナ、お前は帰って来るよな?」
「……ええ!」
ストライクにラクスを連れて上がる。
あ、マードックさん!
「おい! 何している!?」
「見逃してください!」
「おい! ちょっと待て!」
「お前はちゃんと帰ってくるよな!? 俺達んところに!」
サイがストライクから離れながら叫ぶ。
「……必ずね。……約束する!」
「なんだ!?」
「軍曹!」
「きっとだぞ! 約束だぞ!」
「ハッチ開放します。退避して下さい!」
「きっとだぞ! ルナ! 俺はお前を信じてる!」




「こちら地球連合軍、アークエンジェル所属のモビルスーツ、ストライク! ラクス・クラインを同行、引き渡す!」
宇宙に出て、両軍の中間位まで来ると、私はザフト艦に呼びかける。
「ただし! ナスカ級は艦を停止! イージスのパイロットが、単独で来ることが条件よ。この条件が破られた場合、彼女の命は……保証しない……」
しばらくじりじりした気持ちで待っていると、ザフト艦は停止し、イージスが単機、接近して来た。
「アスラン…ザラ?」
『……そうだ』
「コックピットを開け! ラクス、話して」
「え?」
「顔が見えないでしょ? ほんとにあなただって事、分からせないと」
「あ〜。そういうことですの。こんにちは、アスラン。お久しぶりですわ」
『……確認した』
「なら、ラクスを連れて行って! さぁ、ラクス……」
「……あっ!」
私の手から離れたラクスは、無事、アスランの手に収まった。
「色々とありがとう。ルナ。……アスラン、貴方も」
アスランはラクスに頷くとこちらを向いて叫んだ。
『……ルナ! お前も一緒に来い!』
「……!!」
『お前が地球軍に居る理由がどこにある!?』
「私だって、あなたとなんて戦いたくない……でも、あの船には守りたい人達が……友達が居るのよ!」
『……くっ』
「まぁ、二人はお知り会いでしたの?」
『ええ、まぁ。……ならば仕方ない……次に戦う時は……俺がお前を討つ!』
「……それでも、私はあなたと戦いたくないわ……」
『……!』


二つのモビルスーツが離れる。
!? ザフト艦に動きが!
モビルスーツが、二機?
アークエンジェルからもメビウスゼロが!
「……フラガさん!」
「お嬢ちゃん、相手が何もして来ないと思ったか!」
「……うぅ……」
私、ラクスのために皆の安全を犠牲にしてしまった……月本部へ行っても殺される訳じゃないのに……
こうなったら! ザフトのモビルスーツ二機位! 私が!
私が後悔の念に包まれていると、ラクスの声が響いた!
『ラウ・ル・クウーゼ隊長! 止めて下さい。追悼慰霊団代表の私の居る場所を、戦場にするおつもりですか? そんなことは許しません! すぐに戦闘行動を中止して下さい!』
ラクス……
両軍共に動きが止まる。
『聞こえませんか?』
あ、ザフトのモビルスーツが撤退してゆく……
「なんだか知らんが、こっちも戻るぞ! 追撃して、藪蛇は詰まらん」
「……はい」
「とんでもねぇお姫様だったなぁ……あ? ……どうした?」
「……いえ……なんでもありません……」
ラクス……もう二度と会えなくても、私達、友達だよね。
そっと頬を涙が伝った。










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