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Lnamaria-IF_523第12話

Last-modified: 2007-11-17 (土) 07:47:05

「じゃぁ、4時間後だな」
「気を付けろ」
「分かってる。そっちこそな。アル・ジャイリーってのは、気の抜けない奴なんだ」
「ホーク少っぃ……た、頼んだぞ……」
「はい」
「行くぞ!」
「ああ」
「じゃあ、私達も行きましょ、カガリ」
「ああ」
ナタルさんやサイーブさんは、物資の調達、私とカガリはバナディーヤの町に買出しに来た。
買出しと言ってもたいした物じゃない。私の気分を晴らさせてくれようと言うのだろう。
そして、サイーブさんやキサカさんからすれば私はたった一人カガリの正体を知っている。ついでに、と思ったんだろうな。
「でも、ほんとにここが虎の本拠地? 随分賑やかで、平和そうね」
「ふん! 付いて来い」
「え?」
「平和そうに見えたって、そんなものは見せかけだ」
「あぁ…!」
カガリが指し示すその向こうには、城砦のように陸上戦艦レセップスがそびえ立っていた。
「あれが、この街の本当の支配者だ。逆らう者は容赦なく殺される。ここはザフトの、砂漠の虎のものなんだ」




「あーあぁ……たっくもう……こんなもん持ち込んでよぉ……何だってコックピットで寝泊まりしなきゃ、なんねぇんだよぉ……」
マードックはぼやいた。ストライクのコクピットがこんな事になっているとは。
「でも……いつからそんな……」
「さぁ……? けど、地球に降りてからじゃないの? それまで……そんな余裕なかったでしょ?」
「それにしても迂闊だったわ。パイロットとしてあまりにも優秀なものだからつい、正規の訓練も何も受けてない子供だということを私は……」
マリューは俯いた。
あの子を、決して二度と傷つけまいと誓ったのに、私は……
「君だけの、責任じゃないさ。俺も同じだ。いつでも信じられないほどの働きをしてきたからなぁ、必死だったんだろうに……また、いつ攻撃があるか分からない。そしたら、自分が頑張って艦を守らなきゃならない。そう思い詰めて、追い込んでっちまったんだろうなぁ……自分を……」
「解消法に、心当たりは? 先輩でしょ?」
「え? ……あ……ん〜、あまり……参考にならないかも……」
マリューはピーンと来た。女関係だろう。思わず声がきつくなるのを自覚した。
「のようですわねぇ。取り敢えず、今日の外出で少しは気分が変わるといいんですけど!」
「……はぁ……いいよねぇ若者は……!」




「これでだいたい揃ったな。後は飯食って帰るだけか」
「お待たせねー」
「何、これ?」
「ドネルケバブさ! あー、疲れたし腹も減った。ほら、お前も食えよ。このチリソースを掛けてぇ……」
「あーいや待ったぁ! ちょっと待ったぁ! ケバブにチリソースなんて何を言ってるんだ! このヨーグルトソースを掛けるのが常識だろうがぁ」
「ああ?」
突然、派手なアロハシャツにサングラスの目立つ男が声をかけて来る。
こんな所でいきなり親しそうに話し掛けて来る奴って、大抵なにか企んでるのよね。
あ・や・し・い!
「いや、常識というよりも……もっとこう、んー……そう! ヨーグルトソースを掛けないなんて、この料理に対する冒涜だよ!」
「なんなんだお前は!」
「あぁ……!」
あ、カガリはその男に従わず、思いっきりチリソースをかけた。
「見ず知らずの男に、私の食べ方にとやかく言われる筋合いはない!ハグッ……」
「あーーーなんという……」
私はその男の観察を終えた。とりあえず敵意はなさそうだ。でも、監視されている感じが……?
どこから? 私は気づかれないように周囲に気を配る。
「っんまーーーーいーーー! ほぅらルナも! ケバブにはチリソースが当たり前だ!」
「だぁぁ待ちたまえ! 彼女まで邪道に堕とす気か!?」
「何をするんだ! 引っ込んでろ!」
「君こそ何をする! ええい!この!」
「ぬぅぅぅ!」
「あ!」
「なんて事を!」
「え? あ〜〜〜!」
気がつくと私のケバブには盛大にチリソースとヨーグルトがかけられてしまっていた。


「いや〜悪かったねぇ〜」
「……ええ……まぁ……ミックスもなかなか……」
しょうがないから余計な分を落としながら食べる。
「しかし、何ぼんやりしてたんだ? ルナ」
カガリが聞いて来る。私は小声で答えた。
「気をつけて。私達、監視されてるわ」
「なんだって!」
カガリが叫ぶのと同時だった。
「伏せろ!」
アロハの男はテーブルをひっくり返すと、懐から銃を取り出し撃ち出した!
「うわぁ!」
「カガリ、伏せて!」
私はカガリの頭を抱えて地面に伏せる。
「無事か君達!」
「な、なんなんだ一体……」
「死ね! コーディネイター! 宇宙の化け物め!」
「青き清浄なる世界の為に!」
「ブルーコスモスか!」
「構わん! 全て排除しろ!」
気がつくと、私達の座っていた周囲のテーブルから男達が銃を取り出し、襲って来た男達に応戦している。
「うっっ!」
あ、壁の影から、こっちが狙われている!
目の前には転がって来た銃が! やるしかない!
(銃のせいじゃない。君はトリガーを引く瞬間に手首を捻る癖がある。だから着弾が散ってしまうんだ)
ふいに言葉が脳裏を過ぎる。
そうね、アスラン。あなたに言われた事がないけど言われた記憶がある言葉……
「うわぁ!」
見事命中!
「よし! 終わったか!?」
「隊長! 御無事で!」
襲い掛かってきたブルーコスモスを撃退していた警備兵の一人が、こちらへやって来る。
「ああ! 私は平気だ。彼女のおかげでな」
「「ぁ……アンドリュー・バルトフェルド……」」
サングラスを取ったアロハの男を見て、期せずして、私とカガリの声がだぶった。


「さ、どうぞ〜」
「いえ……私達はほんとにもう……」
私達は、なんとアンドリュー・バルトフェルドの車に乗せられ、彼が宿舎にしているらしい宮殿のような建物に連れて来られてしまった。
「いやいや〜、お茶を台無しにした上に助けてもらって、彼女なんか服グチャグチャじゃないの。それをそのまま帰すわけにはいかないでしょう。ね?僕としては」
これからどうなるんだろう。私はともかくカガリは!? なんとか無事に帰してあげないと……
そんな私の不安を見抜いたのか、ふ、とバルトフェルドは笑った。


「こっちだ」
「ぁ!」
もう逃げられない……覚悟を決めた私達の前に、一人の女性が姿を現した。バルトフェルドに負けず劣らず妙な格好だ。
「この子ですの? アンディ」
「ああ。アイシャ、彼女をどうにかしてやってくれ。チリソースとヨーグルトソースとお茶を被っちまったんだ」
「あらあら〜、ケバブねー」
「ぁ……ぅーん……」
「さ、いらっしゃい?」
「カ、カガリ……」
え、こんな状態で離れるなんて!
そんな私を宥める様にアイシャと言う名前らしい女性が言う。
「大丈夫よ、すぐ済むわ。アンディと一緒に待ってて」
「おーい! 君はこっちだ」
私は呼ばれるまま、日が差し込む大きな部屋へと入った。


「僕はコーヒーには、いささか自信があってねぇ」
「はぁ……」
「まぁ掛けたまえよ。くつろいでくれ。んっ」
……まな板の上の鯉、か。私はソファに座った。
「エヴィデンス01。実物を見た事は?」
「いえ、あ……」
私、見た事がある! 確かアプリリウス1で、大きな鯨石を誰かと見ていた!
私、プラントになんか言った事ないのに!
「見た事、あるかも……とっても大きくて、でも手で触れる位近くまで寄れた気がする」
「そうか。何でこれを鯨石と言うのかねぇ。これ、鯨に見える?」
混乱する私をよそに、バルトフェルドは質問してくる。
「……羽根を除けば、鯨っぽいですね」
「これどう見ても羽根じゃない?普通鯨には羽根はないだろう」
「え……まぁ……あでも、それは外宇宙から来た、地球外生物の存在証拠ってことですから……」
「僕が言いたいのは、何でこれが鯨なんだってことだよ」
「……じゃぁ、何ならいいんですか?」
「ん〜〜…、何ならと言われても困るが……、ところで、どう? コーヒーの方は」
「……よくわかりません」
「あ、君にはまだ分からんかなぁ、大人の味は」
資源コロニーのヘリオポリスでは、本物のコーヒーなんて贅沢品だ。私はコーヒーと言えばインスタントコーヒーしか飲んだ事がなかった。
おいしいと、言った方がよかっただろうか。でもこの相手には媚びる事はやめておいた方がいい気がした。
「本物のコーヒー、飲んだの初めてなんです」
「そうか? ぜひ好きになって欲しいものだねぇ。楽しいぞぉ」
バルトフェルドは、そう言うと自分もカップを手に取った。
「ん。キリマンジャロを増やしてみたがなかなか。ま、楽しくも厄介な存在だよねぇ、これも」
「……厄介、ですか? コーヒーが?」
「違ーう! 君はボケの才能があるねぇ。エヴィデンス01の事だよ」
そう言うとバルトフェルドは大げさに仰け反って見せた。
「こんなもの見つけちゃったから、希望って言うか、可能性が出てきちゃった訳だし」
「ぁぁ?」
「人はまだもっと先まで行ける、ってさ。この戦争の一番の根っ子だ」
「昔から良くある、植民地の独立戦争じゃないんですか?」
「それは……」
その時、さっきの女性がカガリを連れて入って来た。
「アンディー」
「おやおや!」
「ぁぁ……」
「あーほら。もう」
尻込みするカガリを押すアイシャさん。
「ああ……」
カガリは、なんと言うのだろう。髪をアップにして、身体に巻きつくような緑の、フリルが斜めに付いたドレスを着ていた。
「……綺麗ねぇ、カガリ」
「ドレスもよく似合うねぇ。と言うか、そういう姿も実に板に付いてる感じだ」
――! カガリの正体、ばれている!?
「勝手に言ってろ!」
「しゃべらなきゃ完璧」
「そう言うお前こそ、ほんとに砂漠の虎か? 何で人にこんなドレスを着せたりする? これも毎度のお遊びの一つか!」
「カガリ! 落ち着きなさい」
たしなめるけど、カガリは止まらない。
「ドレスを選んだのはアイシャだし、毎度のお遊びとは?」
「変装してヘラヘラ街で遊んでみたり、住民は逃がして街だけ焼いてみたり。ってことさ」
「いい目だねぇ。真っ直ぐで、実にいい目だ」
「くっ!ふざけるな!」
「君も死んだ方がマシなクチかね?」
「……ぁ……」
「そっちの彼女、君はどう思ってんの?」
「え?」
「どうなったらこの戦争は終わると思う?モビルスーツのパイロットとしては」
「……」
やっぱり、ばれてた……
「お前どうしてそれを!」
「はっはっはっは。あまり真っ直ぐすぎるのも問題だぞ。戦争には制限時間も得点もない。スポーツの試合のようなねぇ。ならどうやって勝ち負けを決める?」
「そんなもの、どちらもこれ以上はやりたくないと思えば、に決まってるじゃないですか」
「片方が、もう止めたくても片方は止めたくない。どうすればいい?」
「……どう……」
「敵である者を、全て滅ぼすまで続けるかね?」
「あっ!」
バルトフェルドが、机の引出しから銃を出すとこちらに突きつけ……!
――私も隠しておいた銃をスカートに隠したホルスターから取り出し突きつける!
私は立ち上がるとカガリを背中にかばう。
「銃を仕舞って。私、ヘタなのよ。どこに弾が飛んで行くかわからない」
「……ははは。ヘタな事を脅しに使われるとはねぇ。君がヘタだとは思わないが、ま、いいでしょう」
バルトフェルドは銃を仕舞った。
「しかし、暴れるのは止めた方が賢明だなぁ。いくら君がバーサーカーでも、暴れて無事にここから脱出できるもんか」
そうかも知れない。でもなんとかカガリは無事に脱出させないと……
「ここに居るのはみんな君と同じ、コーディネイターなんだからなねぇ」
「え!?」
「……」
「お……お前……コーディネイターだったのか?」
「なんだ……カガリわかってると思ってた」
「君の戦闘を二回見た。砂漠の接地圧、熱対流のパラメーター。君は同胞の中でも、かなり優秀な方らしいな。
あのパイロットをナチュラルだと言われて素直に信じるほど、私は呑気ではない」
「……」
「君が何故同胞と敵対する道を選んだかは知らんが、あのモビルスーツのパイロットである以上、私と君は、敵同士だと言うことだな?」
「……地上のコーディネイターを、考えに入れずに無思慮にニュートロンジャマーをばら撒きまくりながら同胞!? 自分に都合がいい時だけ同胞扱いしないで欲しいわね! 私の同胞はと言われればオーブ国民以外ないわ!」
「ルナ……」
「ふふ。やっぱり、どちらかが滅びなくてはならんのかねぇ」
「……ビクトリアのように? 少なくとも地球軍はそんな事はしない!」
「む……血のバレンタインはどう考える?」
「脅し、でしょう。プラントを何度も滅ぼせる程の核を保有しているにも拘らず、わざわざ試験プラントに一発しか使用しなかったのよ? 地球軍にプラントを滅ぼす気があればとっくにその時に滅びているわ」
「……それは、プラントの防備に穴があったからだ」
「対して、勝手に同胞と呼ぶ地球在住コーディネイターをも巻き込んでの無差別虐殺をするプラント。その結果、裏切ったのは自分達なのに、なぜあなた達の言う地球の同胞に恨まれるのかさえ理解できず裏切り者扱いするの!?」
「……やれやれ。舌戦では分が悪いようだねぇ。ま、今日の君は命の恩人だし、ここは戦場ではない。帰りたまえ。話せて楽しかったよ。よかったかどうかは分からんがねぇ。また戦場でな」
さっきの女性が出て来て扉を開ける。
「ああ、そのドレスはあげるよ。ささやかなお詫びだ」
「誰がいるか! 私の服を寄越せ!」
「もらっときなさいよ、カガリ」
つい、口を出してしまった。だって、このドレスを着たカガリはとても素敵で、なんと言うか、もったいなかったのだ。
「ははは。君はバーサーカーなだけじゃない、柔軟性もあるようだなぁ」
バルトフェルドはおかしそうにくっくっくと笑った。アイシャさんも笑っている。
「君にも見繕って上げたいが時間がない。これをあげよう」
バルトフェルドさんはいくつかの袋を私にくれた。
「これは?」
「コーヒー豆さ。銘柄は袋に書いてある。ぜひ同好の士になってもらいたいものだねぇ。宇宙じゃ贅沢品で、こんな物に凝る奴なんて少なくてね」
そう言ったバルトフェルドさんの顔がさびしそうに見えたのは気のせいだったろうか。


「ねぇカガリ」
待ち合わせの場所まで車で送られて行く時、ドレスが入った紙袋を抱えてるカガリに聞いてみた。不安だったのだ。
「私がコーディネイターだって知って、どう思った?」
「ルナは、ルナだろう」
怒ったようにカガリは言った。
「私はナチュラルだから、コーディネイターだからと言って態度を変えないぞ。むしろ、ルナには済まない。コーディネイターだから、モビルスーツが操縦できるからと言って、ずいぶん無理をさせられたろう。それもオーブに力がないせいだ。済まない」
「……ありがとう。私、コーディネイターだからって結構嫌な目に遭って来たから……」
涙が出てきた。
「……泣くな……いや。ま、いいか。肩を貸してやる。この前と逆だな」
ありがたくカガリの肩に頭を埋めた。
「……でも、カガリも鈍いわね。今時モビルスーツを操縦できるのはまだまだコーディネイターくらいよ」
「言ったな。その元気があれば大丈夫だ」
「ふふふ」
「ははは」
助手席の兵士が、何事かとこちらに振り向いた。それを見てまた二人で顔を見合わせて笑ってしまった。
通り過ぎて行くバナディーヤの街は、先ほどの騒ぎなんかなかったみたいに賑やかだった。そんな風に逞しく、私もなりたい。







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