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Lnamaria-IF_523第14話

Last-modified: 2007-11-17 (土) 07:53:29

「ああぁー! お月様だぁ!! おおーー!」
みんなが外で騒いでいる。
戦いが終わった夜。昼間の激戦が嘘のように、砂漠に綺麗な月が浮かんだ。
今夜は祝いの夜だ。そして……鎮魂の夜。
サイーブとマリュー、ナタル、フラガはテントの一つで祝杯をあげる。
「明けの砂漠に!」
「勝ち取った、未来に!」
「じゃあそういうことで!」
イスラム教徒が多いここらへんも再構築戦争終結辺りからお酒に寛容になったらしい。と言うより、かつて中世にイスラム教が持っていた寛容さを取り戻したと言ったところだろうか。
「ゴホッゴホッゴホッ!」
ナタルがむせている。お酒、弱いのか? それに比べてこっちは……フラガは横を見る。
対照的に、マリューさんはゴクゴクと喉を鳴らして一気に杯を干した。
「プハーーー! おいしいわねぇ!」
「はっはっはっは」
「でも、まだ大変だなぁ、あんた達も。虎が居なくなったって、ザフトは居なくなったわけじゃない。奴等は鉱山が欲しいんだろ? すぐ、次が来るぜ?」
「その時はまた、戦う。戦い続けるさ! 俺達は。俺達を虐げようとする奴等とな!」
「父さん! 戦士を送る祈りをするって、長老が」
「ん」


「アジブ・シャムセリム、アフメド・エルフォズル、アル・ガウアリ、シュタイン・オーファ、ファムドム・ボンナ、ステファン・リンドベルガ、ロワジ・アサド……」
長老が、散って行った者達の名前を読み上げる。アフメドの名前も呼ばれた。
「戦い続ける、か」
空に向かって放たれる銃を見ながらフラガさんがつぶやいた。
あの先に、アフメドはいるんだろうか?
「ドバン・タルコフ、ハルファ・ピンラード、ムサル・パラファ……」
みんなの魂が安らぎますように……私は祈る。
戦士を送る祈りは続く……




「だから私を連れて行けと言っている! あんた達よりは情勢に詳しいし、補給の問題やら何やらあった時には、力になってやれるしな」
「……でも……」
マリューは困惑していた。レジスタンスの少女が、同行を申し出たのだ。
「無論、アラスカまで行こうってんじゃないし、地球軍に入るつもりもないが、今は必要だろ?」
カガリは、インド洋から太平洋に出てアラスカを目指す、と言うアークエンジェルの計画を聞いた時、アークエンジェルに同乗しようと決めていた。もちろん、オーブの近くに着けば下ろしてもらうつもりだった。
カガリは自分で体験したかったのだ。ルナマリアに志願を決意させた地球軍を、その訳を。
「君が、かい?」
「ぁいや……だからその……いろんな助けがだ!」
「助けって言われても……」
「女神様ね」
フラガは、カガリの事を勝利の女神だ、と言ったサイーブの事を思い出した。どうやらこの子にはなにかあるらしい。
「んー……ともかく、私はアークエンジェルと共に行くぞ! もう決めたからな!」
そう言うと、カガリはマリュー達の前を去って行った。
「……で、あの子、ほんとは何者なの?」
どうやら護衛として一緒に乗り込むつもりらしいキサカにフラガは尋ねた。
「……」
返って来たのは、沈黙だけだった。






「海だ! 海に出たぞー!」
「ほんとか!」
「ひさしぶりー!」
みんな、窓に駆け寄る。
『非番の者は、デッキに上がる事を許可します』
艦内放送が流れた。
「ひゃっほー! 行こうぜ! みんな」


「あーーー! 気持ちいいぃ!」
ミリィが叫ぶ。
いい潮風が吹いてくる。
やっぱり海は懐かしいなぁ。
私も思い切り深呼吸する。
「地球の海ぃ! すんげー久しぶりー!」
トールも叫ぶ。
「「あっはっはっ」」
「でもやっぱ、なんか変な感じ」
「そっか、カズイは海初めてか」
「うん」
「ヘリオポリス生まれだったもんなぁ」
「砂漠にも驚いたけどさぁ、何かこっちのが怖いなぁ。深いとこは凄く深いんだろ?」
「ああ」
「怪獣が居るかもよぉ?」
「ええ!?」
脅かすミリィ。ほんとに怯えるカズイ。それを見て、またみんなで笑った。




「しかし呆れたものだな、地球軍も。アラスカまで自力で来いと言っておいて、補給も寄こさないとはな。水や食料ならどうにかなるだろうが、戦闘は極力避けるのが、賢明だろうな。汎ムスリム会議も未だ中立だ」
キサカは、ユーラシア大陸沿岸には近寄らず、インド洋の真ん中を行く案を提案した。
マリューはキサカを少し睨む。
「……ふぅ。なにしろザフトの支配地域に降下したのが想定外でしたので。このような状況では本部と連絡も取れませんし。連絡が取れればきっと……」
本部と連絡が取れれば、必ず支援を送ってくれる。そのような意味合いを含ませて、マリューは言った。
「だが、インド洋のど真ん中を行くと言うのは、こちらにとっても厳しいぞ。何かあった場合には、逃げ込める場所もない」
ナタルが懸念を口にする。
「ザフトは、領土拡大戦をやっているわけではないんだ。海洋の真ん中は、一番手薄だ。あとは運だな」
開き直ったようにキサカが口にする。
「了解しました」
マリューは決断した。
「沿岸には監視の目があるでしょう。アークエンジェルはインド洋のど真ん中を行きます!」




「レ、レーダーに反応!」
「ぇ?」
「また民間機とかじゃないのか? ……早い!」
「これは! 攪乱酷く、特定できませんが、これは民間機ではありません!」
「総員、第二戦闘配備! 機種特定急いで!」
マリューの若干安心していた気分は一発で吹っ飛んだ。
そうだ。ここはアデン湾。ザフトのスエズ基地からも近い。カーペンタリア=スエズ=ジブラルタルを結ぶ交通の要所だ。見張られていてもおかしくない。
「ライブラリー照合……」
「ザフト軍、大気圏内用モビルスーツ、ディンと思われます!」
「ん……総員、第一戦闘配備! フラガ少佐、ジョン少尉、ホーク少尉は搭乗機へ!」
「艦長! ストライクは……」
「空も飛べなけりゃ泳げもしないってことくらい知ってるわ。でも、なんとかしなきゃ……砲台代わりにはなるわ!」
「く……」
「ディン接近! 10時、4時の方向です!」
「ミサイル発射管、7番から10番、ウォンバット装填! てぇ! イーゲルシュテルン起動!」


「スカイグラスパー1号、発進位置へ。スカイグラスパー、フラガ機。進路クリアー。発進どうぞ!」
スカイグラスパーが発進して行く。
ディンは三次元機動能力や旋回性は高いけど、フラガさんやジョンさんはスカイグラスパーの高速を生かして牽制している。よかった。これなら私の出る幕もなさそう……! 艦が、離水している!?


「あ?ソナーに感あり。4、いや2」
「なに?」
「このスピード……推進音……モビルスーツです!」
「なんだと!? 水中用モビルスーツ……」
「ソナーに突発音! 今度は魚雷です!」
「回避!」
「間に合いません!」
「くっ! 推力最大! 離水!」
「くっ……」


「水中用モビルスーツだ、お嬢ちゃん! 撃てるか!」
「やってみます」
ビームライフルを三連射。外れ。逆に、ザフトの水中用モビルスーツ――グーンはこちらに向けてミサイルのような物を飛ばしてくる。このままじゃあ、一方的にやられるだけ!
「駄目……ここからじゃあ。マードックさん!」
「なんだぁ!」
「第8艦隊からの補給にバズーカがありましたよね?」
「あー? あったがどうした?」
「用意して下さい。海に降ります!」
「降りる!? 降りるたって! ストライクはな……!」
「分かってます! でも、なんとかしなきゃ!」
また! ミサイルがグーンから撃たれる。大した威力じゃない物の、癪に障る。


バズーカを装備して出ると、グーンは海上に頭を出してフォノンメーザー砲を撃とうとしている。
させない!
(落ちるなよ、落ちても助けてやれない)
(意地悪ね)
頭の中で、声がする。まただ。
「でも! そんな事言ってられないのよ!」
今は頭の声を無視!
スラスターを吹かしてグーンの上に移動すると、バズーカを撃つ!
大きな水しぶきが上がる。やったの?
まだ水しぶきが収まらないまま、 ストライクは海に沈んだ。
いた! さすがにやられてないか。
グーンは魚雷を放ってくる。
そんな物にやられない!
こちらもバズーカを放つ。
――! 体当たりで来た!
バズーカを離しそうになって慌ててしっかり握る。
今度は後ろから!?
とっさに後ろから体当たりしてきたグーンのふちに手をかけ、つかまると思い切ってバズーカを捨て、アーマーシュナイダーを取り出す! グーンの体表面を突き刺し切り裂く!
動かなくなったグーンから手を離すとグーンはしばらく進み、爆発した。


もう一機は?
前方から高速魚雷を放って来る。当たってしまう! ストライクの周囲で連続して爆発する!
あ、アーマーシュナイダーを落としてしまった!
チャンスと見たのか、グーンは体当たりをしてくる。
「なめんじゃないわよ! 格闘戦も出来ないモビルスーツが!」
私は、もう一つのアーマーシュナイダーを取り出し、グーンの頭に突き立て! グズグズと切り裂いてゆく!
身を横に捻って離れると、そいつも爆発した。
海から上がると、ディンは、一機を失い撤退したとの事だった。
そう言えば、なんで私ディンとかグーンとかザフトのモビルスーツの事わかっちゃうんだろう。
守護霊様が教えてくれるのかな。
私はもう、考えても無駄な事は悩まないようにしていた。




「潜水母艦……と言うこと?」
「うん……いくらなんでも、カーペンタリアから直接は無理だ。こっちだって動いてんだしさ。ギリギリ来て戦えたって、帰れないからなぁ」
「ディンも、スエズからでも無理ですわよね」
「洋上艦や航空機なら、いくらなんでも見逃さないだろうけど、水中はこっちも慣れてないからねぇ」
そうなのだ。マリューは思う。アークエンジェルは元々宇宙用で、大気圏内航行能力はあるものの、それは付け足しみたいな物だ。
それほど高空は飛べない、最も強力な兵器ローエングリンは地上の汚染に配慮して使えない。艦体下面の武装の貧弱さ。ソナーすらも最初は付いていなかったのだ。バナディーヤでザフトの物を非正規に補給できなければどうなっていたか。マリューは頭が痛かった。
「今度来たら、そっちも叩かないと。下手すりゃずっと追い回されるぜ」
「ですわねぇ……しかし……」
「ガンバガンバ!」
「うわっと」
また悩みのスパイラルに落ち込もうとした時、いきなりフラガに背中を叩かれた!
「どうにかなるよー。なるべく浅い海の上行くようにしてさぁ。これまでだって、どうにかなってきたんだから」
「まーた根拠なくそんなこと!」
「それが励ましってもんでしょ」
「あっ……」
「あはははは」
「もう……うふ……」
ありがとう。
マリューは心の中でフラガに礼を言う。
貴方のおかげで悩みも軽くなるわ。




「やっぱ駄目かなぁ」
「だって、目的地アラスカだぜ? オーブへ寄るなんて、遠回りになるだけじゃないか」
「大体寄ってどうすんの? 私達今は軍人よ? 作戦行動中は除隊できないって言われたじゃない」
「でもこんな予定じゃなかったじゃないか! アラスカへ降りるだけだって……だったらって僕もさぁ!」
「戦争には相手があるんだ。しょうがないだろ!」
「サイ……」
「カズイ、ルナの前で今みたいな事言うなよ? 一時はコクピットで寝泊りするぐらいに気にしてんだ。俺達を巻き込んじまったってさぁ!」
カガリは立ち上がって食堂を出た。
「カガリ!」
キサカが慌てて追いかけて来る。
艦長の所にでも行ってオーブに寄れと言うとでも思ったか?
カガリは苦笑した。
「分かっている。何も言うな。私は何も言ってないぞ」
「なら、いいですが」
「そりゃ、何かあれば、と思ってはいるが」
「カガリ!」
「しょうがないだろ? いきさつも分かってはいるが、この船とあいつは沈めちゃいけないって、どうしてもそんな気がするんだから……」
「んー……」
「きっとハウメアのお導きなんだろ? うん。あ、や! ルナ」
「あ、カガリ。食事済んだの?」
「うん、ルナはこれからか?」
「うん。士官になったんだからって、暇な時間あると艦長さん達に色々教わってるのよ」
「そうか、大変だな」
「結構面白いわよ」
「そうか? じゃあ地球軍を除隊したらオーブ軍に来い。優遇するぞ」
「あはは。じゃね!」






「アスラン! クルーゼ隊は第二ブリーフィングルームに集合ですって」
「ああ」
アスランとニコルが部屋に入ると、イザークが大声を上げていた。
「お願いします隊長! あいつを追わせて下さい!」
「イザーク、感情的になりすぎだぞ」
「ですが……」
「失礼します!」
「ぁ、ふん!」
「よう、お久しぶり」
「足付きがデータを持ってアラスカに入るのは、なんとしても阻止せねばならん。だがそれは既にカーペンタリアの任務となっている」
「我々の仕事です隊長! あいつは最期まで我々の手で!」
「私も同じ気持ちです隊長!」
「ディアッカ……」
ニコルが呟く。
「ふん! 俺もね、散々屈辱を味合わされたんだよ」
そうだな。イザークとディアッカは二度もあいつにやられている。いや、やられているのは俺も同じか。
アスランは嘆く。
ルナ、ルナ、何でお前はそこまで、ザフトのエースに目を付けられるまでに強くなっちまったんだ。
「無論私とて、想いは同じだ。スピットブレイクの準備もあるため、私は動けんが……。そうまで言うなら君達だけでやってみるかね?」
「はい!」
「ではイザーク、ディアッカ、ニコル、アスランで隊を結成し、指揮は……そうだな……アスラン、君に任せよう」
「え!?」
「うっ!」
「カーペンタリアで母艦を受領できるよう手配せよ。直ちに移動準備にかかれ!」
「うっ……うっ……」
すごい目付きでイザークがこちらを睨んでいる。
そんなに俺の下に入るのが嫌か?
アスランは少し傷ついた。
「隊長……私が?」
「色々と因縁のある船だ。難しいとは思うが、君に期待する。アスラン」
「ザラ隊ね……」
「ふん!お手並み拝見と行こうじゃない」
(ストライク……討たねば次に討たれるのは君かもしれんぞ)
ルナ……俺は今度会ったら討つとまで言ったのに、あいつは、それでも俺と戦いたくないと言った……
アスランの顔が一瞬苦渋に満ちた。






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