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Lnamaria-IF_523第18話

Last-modified: 2007-11-17 (土) 08:03:36

アスラン達は軍港を始め、一般人が行ける所は隈なく廻った。だが……アークエンジェルは影の形もなかった。
「そりゃぁ軍港に堂々とあるとは思っちゃいないけどさぁ」
「あのクラスの船だ。そう易々と隠せるとは……」
「まさかぁ、ほんとに居ないなんてことはないよねぇ。どうする?」
「欲しいのは確証だ。ここに居るなら居る。居ないなら居ない。軍港にモルゲンレーテ、海側の警戒は、驚くほど厳しいんだ。なんとか、中から探るしかないだろ」
「確かに厄介な国の様だ。ここはっ!」
「はぁ……モルゲンレーテを張るしかないか」
「モルゲンレーテ?」
「足付きはあれだけの被害を受けている。もしいるならば絶対修理するはずだ。物資の搬入の様子その他から当たりをつけるしかない!」




その頃モルゲンレーテ地下――
「アサギ、マユラ、ジュリ! どうだ?」
「すごい! すごいですよ! カガリ様! まともに動きます!」
オーブのM1アストレイのテストパイロットの3人娘は歓声を上げている。
「そうか……よかった!」
「あーあ。ロウの所にわざわざ忍び込んだの、無駄だったなぁ」
ジュリがため息をつく。
「ロウ?」
「ロウ・ギュール。MBF-P02――レッドフレームを手に入れたジャンク屋ですよ、カガリ様。彼はナチュラルなので、動かしているOSを手に入れようとジュリが接触したのですが……」
M1アストレイの主任設計技師エリカ・シモンズが説明する。
「多少は動かしやすくなったけど結局使い物にならなかったのよね〜」
「実は、ロウ・ギュールの一行、今日オーブに到着したんですよ。会ってみます?」
その時、廊下を歩いてくる足音がした。
「ははは! ジャンク屋はだめで、ヘリオポリスの避難民の者が作ったら一発でOKか! こいつは愉快だ! オーブには広く人材が眠っている事を意味する。喜ばしい事だ。下賎なジャンク屋などに頼る事などない」
「ロンド様!」
エリカが振り向く。
「ロンド……? ……なんだギナか」
さすがにオーブの五大氏族同士、幼い頃から知っているだけある。カガリは即座に相手の素性を当てる。
現れた男。それはロンド・ギナ・サハクだった。彼は、オーブの五大氏族族長のひとりコトー・サハクの養子である。ロンド・ミナ・サハクと言う彼にそっくりな外見の姉がいる。
元来サハク家はオーブ五大氏族の中でも歴代軍事を司ってきた家柄で、言わば平和と中立を謳うオーブの国家理念と相反する裏の顔的な存在である。その所為か常に政の表舞台に立ち国家の象徴として君臨するアスハ家には批判的な見方をする者の多い氏族ではあるが、ロンド姉弟は取分けその傾向が顕著で元首であるウズミに対しても公然とその統治方針に対する批判を口にする程だ。
「久しぶりだな。カガリ。放蕩娘が帰って来たか」
「なにを!?」
「家出して、世の中を見て何か考えが変わったかね? 例えばウズミの中立政策に対して」
「……まぁいい。お父様の言う事は、夢だな。美しい夢。だが、それを他国の思惑に寄らずして自力で実現するためにはオーブは世界の覇権を握れるくらいの国力がなければ無理だろう」
「ほう」
そこまでは辿り着いたか。ギナは感心した。なにしろ彼らロンド姉弟が密かに抱いている野望――それはオーブによる世界の制覇――そして優れた者による大衆の支配なのである。
「まぁ、とりあえずは合格かな」
「なにが合格なんだ!」
突っかかるカガリを、もう用は終わったとでも言うように無視して、ギナはエリカに告げる。
「あのP02のパイロットか。興味がある。M1アストレイに乗せてみろ」


「うひょー! すげえ! 動かしやすい!」
ロウ・ギュールは有頂天になっていた。何しろ秘密基地のような地下の工場案内され、ずらりと並ぶオーブの秘密兵器に乗せてくれると言うのだ。少年のような部分を残しているロウが喜ばないはずがない。
そして、実際に乗ってみたら、その動かしやすさはレッドフレームと段違いだ。今まではレッドフレームに試験的に搭載されているナチュラル用OSと、『8(はち)』――ロウが宇宙空間を漂流していた宇宙戦闘機から発見したオーパーツのような人工知能搭載コンピュータの助けを得て操縦していたが、これなら自分ひとりでもコーディネイターと同様に操縦できる! と彼は思った。
「でしょー!? オーブにもすごい人がいるでしょ? ヘリオポリス崩壊の時から今までのたった3ヶ月で作っちゃったって言うのよ?」
ロウが座っている座席の後ろからジュリが我が事のように自慢げに言う。
「なぁ。会ってみてえなぁ、そいつに。どんな奴なんだ?」
「残念ね」
スピーカーからエリカ・シモンズの声が流れる。
「一日違いで、オーブから出発しちゃった所よ。16歳のかわいらしいお嬢さんだったけど」
「へー。そいつは残念だなぁ」
「ロウ! 鼻の下が伸びてる!」
「いててて!」
ジェラシーを感じたのだろう、ジュリが後ろからロウをつねる。潜入任務の時から、ジュリはロウが気に入っているようだ。
「なぁ、シモンズ主任。頼み事があるんだけど」
「何かしら?」
「このOS、ぜひレッドフレームのOSの改良の参考にさせてくれ!」
「あら、あなたは立派にP02を操縦してるじゃない?」
「まぁ、そうなんだが……ちょっと……8(はち)頼りの所があったり……ごにょごにょ」
「……いいわ」
「本当か!? サンキュー!」
「その代わり、ちょっとM1アストレイと模擬戦をしてほしいのよ。運動性を見たいの。レッドフレームに乗り換えてくれない?」


「お前もやるか?」
ギナはカガリに声をかける。
「んーん……」
カガリはちょっと考え込んだ。
「いいや。ギナと違って、私が乗れても大した事はないからな」
「ほう?」
めずらしい事もあるものだ、とギナは首を傾げる。昔ならこう言う事には真っ先に首を突っ込んできたのに。
「ルナマリアから言われたんだ。この世の中をよくするために、あなたは上で頑張れ、私は現場で頑張るから……って。私が今しなきゃいけない事は、モビルスーツの操縦じゃない」
ルナマリア……あの天才プログラマーか。ギナはちょっと嫉妬を感じた。二人の関係にだろうか? それとも、カガリが自分より少し先を行ってるように感じたからか。
「では、そこで見ておけ。私のダンスをな」
ルナマリア・ホークか……オーブ出身の連合のエースパイロット――不思議と、彼女と戦いたいと言う思いは起こらなかった。天才プログラマーと言う第一印象からだろうか? 彼女は自分にとってダンスの相手ではなくダンスの演出家、振付師、あるいは服のデザイナー、仕立て屋に思えたのである。
だが、これから戦う相手は違う。自分に土をつけた男――見極めねばなるまい。その実力を。




……勝負は付いた。
終始ギナが押し気味に試合を運び、レッドフレームが実体剣を抜き押し返した物の、ギナはそれを白刃取りして奪い、逆に切りつけ、とうとうレッドフレームは倒れた。
「まるで素人のダンスだったな。殺す価値もない。こんな男……」
P02のコクピットが開いて、ロウ・ギュールが現れた。
「やあ! あんたやるなぁ! まさかガーベラ・ストレートを受け止められるとは思っていなかったぜ!」
屈託のない笑顔。ギナはちょっとむっとした。
「お前は! 戦いに負けて悔しくないのか!? 恥ずかしいと思わないのか!?」
「別に――だって俺はプロのジャンク屋だぜ? あんたはプロのパイロットだろ? 戦いで勝つのは当たり前じゃないか!」
ふいに、カガリにルナマリアが言ったと言う言葉が蘇る。
『あなたは上で頑張れ、私は現場で頑張るから』
ギナはまるで、自分に言われてるかのように感じた。
五大氏族の息子たる身が自らパイロットとして戦いたいと望むのは、本道から外れた我侭だと言うのか?
「それよりあんたの機体――早くメンテした方がいいぜ。無理な体勢でガーベラ・ストレートを振ったろ? モーター類が過負荷で悲鳴を上げてるのが聞こえるぜ。俺のレッドフレームはOSからチューンしてあるから大丈夫だが」
「む?」
確かに腕にアラート表示が出ている。ガーベラ・ストレートと言うらしい実体剣を取り落とす。
「……メカを見る目は確かなようだな。ジャンク屋がやっていけなくなったらオーブに来い。雇ってやるぞ」
言い捨てると、ギナは模擬戦場を後にした。




オーブを出て2日も過ぎた頃だろうか? ちょうどマーシャル諸島をすぎた辺りだ。
「レーダーに感! これは! F-7Dスピアヘッドです! 数、10機!」
「味方か!」
「とうとう来たのね……」
『こちら空母ジョージ・ウォーカー・ブッシュ所属航空部隊。貴艦を護衛します』
10機のスピアヘッド中隊は、2機ずつ小隊を組んで5つに分かれて全包囲からの敵の襲来を警戒している。
「感謝する、と返信を」
「はっ!」
それから1時間後。
「レーダーに感あり!」
「スピアヘッドは!?」
「位置、変わりません!」
「これは……友軍です! ラジエダ級護衛艦5隻!」
北進を続けるアークエンジェルに、護衛艦が5隻近づいて来た。
『こちらパスカルメイジ艦長、ミサキ少佐です。本部からの命令により貴艦を護衛します』
「了解しました。護衛を感謝します」
『それから貴艦に対する指示も預かっています』
「なんでしょう?」
『モビルスーツのパイロットと協力して、ナチュラル用OSを火急に作ってくれとの事です。モビルスーツは大分生産されていますが、OSがどうもうまく行かないようです』
「はっ。わかりました」


「……と言う訳でね、せっかくのんびり出来る所を悪いけど、お願いできないかしら」
私は、マリューさんにナチュラル用OSの制作を頼まれたのだった。
「……こんな事もあろうかと……」
「え?」
「ナチュラル用基礎OSなら、もう組んであります! ストライクの中に! シミュレーターの中にも移植してあります」
「きゃー♪ なんて子なの?」
マリューさんに抱きしめられた。
「じゃあ、早速乗せてみましょう。フラガ少佐や、ヘリオポリス組にも暇そうな顔しているのもいるし」


「えー、俺が乗るの? 俺はアーマー乗りだぜぇ?」
「時代は変わっていくんですよ。フラガ少佐。範を示す意味でも、どうか」
「しょうがねぇなぁ」
フラガはおずおずと乗り込んだ。
ルナマリアも下で手を組んでどきどきのご様子だ。
「お? お? おおー!」
ストライクは、格納庫の中を一歩一歩、スムーズに歩いている。
「やったなぁ! お嬢ちゃん! 自分で歩いてみても、俺が護衛してたパイロット候補生の動きよりだいぶましに歩いてるって事がわかるぜ!」
やったぁ! と声を上げてルナマリアはガッツポーズを作った。


「次、次俺!」
「いや、俺だ!」
「しょうがねぇなぁ。じゃんけん」
「やった! 勝った!」
その後はサイとトールが争うようにして順番で乗り込んだ。
「おお! 初めて乗るにしちゃあ、ずいぶん動きが滑らかじゃねぇか!」
マードックさんが驚いたように言う。
「へへ。俺ら、ナチュラル用OS組み込んだシミュレーターでさんざんやりましたからね」
「なに? お嬢ちゃん、そんな事までやってたのか?」
へへ。と笑う私。
「これなら、微調整程度で済みますわね」
「そうですね。幸いな事です。訓練もやらせましょう。……ルナマリア。お前を軍に誘った事、間違ってはいなかったようだな」
ナタルさんはにっこりと笑った。


念の為にとOS構築をやっておいたおかげで、私は空母護衛群本体と合流する時ものんびり見物できた。アークエンジェルは、旗艦のジョージ・W・ブッシュの右に占位した。
きっと、旗艦の人達もアークエンジェルが見たいんだろう。


「どうです? ストライクの動きを見せちゃあ?」
「そうですわね。慣熟訓練も兼ねて」
まず私が、エールストライカーで艦の周りを飛び回った。周りの船は甲板が鈴なり状態で、みんな声を上げているのがわかる。
次は、フラガさんだ。スラスターを慎重に使い、空母の甲板に降り立った。
『現在乗っているフラガ少佐はナチュラルです』
放送が流れると、どよめきが起こった。


「どうじゃな、お前さん。お前さん以外の者がモビルスーツを扱えるようになって寂しいんじゃないのかね」
「あ、デンギル先生。あー。んー。寂しいと言えば、寂しいです」
「正直じゃな。いい事じゃ。いいか。あんた自分の役割を取られたように感じているかも知れん。自分の存在価値が減ったような気がしているかも知れん。じゃが、それは間違いじゃ。前にも言ったが戦争はいつか終わる。その時に自分が何をやりたいのかが大切じゃ。お前さんはたまたま兵士をやっとるが、本質は違う。一個人のルナマリア・ホークじゃ。兵士のルナマリア・ホークじゃない。それを忘れなさんなよ」
「はい……」


それから五日程度の航海で、アラスカ本部に着いた。
4月3日か。こんなに早くアラスカに着けたなんて。オーブで徹底的に修理していたら、まだオーブにいたかも知れない。もし、オーブにいたら、上陸許可が出たのかもなぁ。それを考えると残念。でも、うん、ザフトに用意周到に網を張られてせっかく修理したのが無駄になっていたかも。
アークエンジェルはすぐに修理ドッグへ入り、ストライクも基地内工廠に移動した。
「電磁流体ソケット摩耗が酷いな」
「駆動系はどこもかしこもですよ」
「限界ギリギリで、機体が悲鳴上げてるようだぜ」
ストライクを見ている技師さん達が色々言っている。
頑張ってくれたもんね。ごめんね。そしてありがとう。







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