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Lnamaria-IF_523第19話

Last-modified: 2007-11-17 (土) 08:06:29

「えぇー! 私が中尉!?」
私が昇進をナタルさんから告げられたのは、翌日だった。
「本当だ。クルーゼ隊と渡り合い、アークエンジェルを守り、砂漠の虎を倒した。未確認情報だが、インド洋で破ったのは『紅海の鯱』の異名を持つマルコ・モラシムらしい。昇進するに十分な戦果だ」
「実感湧かないですねぇ」
「お前だけじゃないぞ。フラガ少佐も中佐に昇進。さらに、パイロットになる意思を示した事だし、サイ、トールは少尉に昇進だ。その他のヘリオポリス組も二等兵から一等兵になる」
「わぁ。すごいですねぇ」
「……こうやって会えるのも、次はいつかな」
ナタルさんは寂しそうに言う。
「え?」
「転属命令が出ている。大掛かりだぞ。私にフラガ少佐、ジョン少尉、ルナマリアにそれからお前の友達のサイとトールもだ」
「そんなに……ナタルさんはどこに?」
「ああ、新造艦の艦長らしい。少佐に昇進もさせてもらったよ。ルナマリアの余禄かな。ふふ」
「私達は、どこに?」
「なんでも量産だけはしていたモビルスーツががいきなり使い物になった物だから、フラガ少佐、いや、昇進して中佐か。を隊長にして、教導隊を作るらしい。ルナマリア、お前も、サイとトールもそこに行くらしい。あ、ジョン少尉だけは別だな。新設されたモビルスーツ隊に配属だそうだ」
「そうですか……」
「そう時化た顔をするな。軍と言う物は案外狭い。またすぐ会えるかも知れんぞ」
「はい。ナタルさんもお元気で」
「ああ。ルナマリアもな」


その日の夜、アークエンジェルクルーでちょっとしたお別れ会をやった。
さすがに修理中のアークエンジェルでやる訳にもいかなかった。豪勢にアラスカのレストランを借り切った。
店のキャパシティで、全員と言う訳にも行かなかったけど、ヘリオポリスからのみんなと、ジョンさんが出席。
そんなお金あるんですか? とフラガさんに聞いたら、
「使う機会もなかったんだから、溜まってるよ。気にすんな」
と答えが返ってきた。甘えちゃおう。
……そう言えば、私もお給料出てるんだよねぇ。ここで使おうとしても、アラスカ名物……思いつかない。サーモンぐらいしか。
確かにこりゃ、お金溜まりそうね。
パーティは、マリューさんの発声で始まった。
マリューさんも寂しいだろうな。フラガさんもナタルさんもいなくなって。
私は、ミリィと別れちゃうけど、まだサイやトール。それにフラガさんもいる。
「ルナちゃ〜ん」
あ、マリューさんが絡んで来た。もう出来上がってる?
「あなたと離れ離れになるなんて、寂しいわ〜」
「そんなー。そう離れるわけでもないんだし。ナタルさんこそ、一人ぼっちで転属ですよ」
「ナタルは優秀だからいいのよ〜。いい? つまりこの焼き鳥のようなものよ。この肉が私で、ネギがナタル。わかる?」
「さっぱりわかりません!」
「だからあんたは馬鹿なのよ〜」
「はいはい。お水、飲みましょうね」
「う……甘ーい! お酒じゃない。お酒はどこ? お酒……」
マリューさんはふらふらと行ってしまった。
代わりに、ナタルさんがやって来た。
「やれやれ。ここまで乱れる人だとは思っていなかったな」
「マリューさんの事ですか? 寂しいんですよ、きっと。みんなと離れ離れになって」
「私も寂しいぞ。少人数でやってきた期間が長いせいかな? 結構、辛い」
「でも、いきなり少佐になって艦長ですよ。評価されてるんですよ」
「でも、誰も知らないメンバーの所に飛び込んで行くと言うのも、怖いぞ」
「ナタルさんでも、そうなんですか」
「そりゃそうだ。結構昔から内気でな。ルールがあるならそれに従えばいいが、それに外れた行動を取られると、混乱してしまう。だんだん慣れては行くが」
ナタルさんも結構酔ってる。こんなに打ち解けた話を聞いたのは初めてだ。
「だから、ルナマリア。お前は頑張れよ。お前は私が持った部下の中で一番出来がいい!」
「はい」
お別れ会は、順次お開きになった。
フラガさんはナタルさんを送って行くようだった。


「俺さぁ、やっぱり、ミリィの存在が大きいと思うのよね」
酔っ払ったトールが言う。
「はいはい。ご馳走様」
「俺なんか〜フレイを置いてー、戦争やってるんだぜ」
サイも、やっぱり酔っ払ってる。
「フレイって言えば、今オーブにいるの? それとも大西洋連邦?」
「大西洋連邦にいるってさー。オーブにいた時連絡取ったんだ。ルナお姉さまによろしくってさ」
「あはは」
最初は敬遠されてたみたいなのにね。なにがどうなったんだか。
「指導隊ってさ、教えて歩くんだろ? できるかなぁ。俺に」
「出来るわよ。私の作ったOSのシミュレーション、みっちりやったでしょう?」
「頑張るよ、俺。頑張るからさぁ」
酔っ払い二人を部屋に放り込むのは、結構骨だった。


異動翌日。私達に与えられたのは、私とフラガさんにストライクの改造型。改造点はなんでも、モルゲンレーテ社から提供された技術を組み込み、強化型バッテリーユニットである「パワーエクステンダー」の搭載によりエネルギー変換効率が向上し、機体の稼働時間が大幅に延長されている点。そしてもう一つ。エールストライカーを付けなくても、両腰のアーマー上部に常時ビームサーベルを装備した事で、ランチャーストライカーを付けていても、接近戦に対処できる点だろう。
トールはデュエルの量産機だ。デュエルダガーと呼ばれていて、フォルテストラと呼ばれる追加装甲、スラスター、それに右肩部のリニアキャノンや左肩部のミサイルランチャー等が付いている。
サイはバスターの量産型にあたるバスターダガーだ。両肩のミサイルポッドはバスターの6連装から3連装に変更されているが、腕の部分のハードポイントにビームサーベルを搭載することもできる。これは明らかにバスターとストライクとの戦訓のおかげだろう。……すぐ落とされていたものね、バスター。
私の手でサポートOSまで完成されていたストライクと違って、デュエルダガーやバスターダガーはサポートOSはこれからだ。私達の訓練で、直す所が決まるのだと言う。
「でも、電圧を強くする事でPS装甲の耐久力が上がるなんて……今まではなんでやらなかったんでしょうか?」
私の横で、カラーリングが赤主体に変化した私のストライクを見上げているフラガさんに尋ねた。
「今までは、バッテリーの問題があったからなぁ。必要十分な強度があれば、わざわざ稼働時間を短くしてまで、電圧を高める真似はしないだろう」
「でも、少しだけど、ビームに対しても耐久力上がってるんですよね?」
「ああ、だそうだ。ほんとにほんの少しだそうだけどな」
「もっと赤くする事はできますか?」
整備員さんに聞くと、多少稼働時間が短くなるが大丈夫と答えが返ってきた。
そして、実際に真紅に発色するストライク。
「じゃあ、バッテリーに余裕があるんだし、私はこの設定で行きます。そうね、赤だから……これからあなたの名前はストライクルージュよ!」


フラガ教導隊には、サイとトール以外に三人の人が入って来た。
「スウェン・カル・バヤン少尉だ」
「ミューディー・ホルクロフト少尉よ」
「シャムス・コーザ少尉だ」
若い! 一番年長のスウェンさんでさえ私より一歳上なだけだ。
スウェンさんは105ダガー、ミューディーさんはデュエルダガー、シャムスさんはバスダーダガーが乗機だ。
新しく来た3人は、フラガさんと握手する時、なんとなく嬉しそうに見えた。そりゃそうだよね。フラガさん英雄だもん。
でも……私と握手する時はみんなむっつりしていた。
「コーディネイターはお嫌いですか?」
私は聞いてみた。自分でも、強くなったと思う。昔なら、泣いて、リストカットしていたかもしれない。
「ええ、嫌いよ」
ミューディーと名乗った女が、感情を見せない顔で言った。
「そうか。好悪の感情は人それぞれだ。今ここではとやかくは言わん。だが、俺達はチームだ。チームの連携を乱すような事は許さん」
フラガさんが、ぴしりと言ってくれた。
「それから、この隊の副長はルナマリアだ。一番モビルスーツの経験がある。きちんと言う事聞けよ。さもなきゃ死んでも知らんぞ」
男二人は頷く。
「はーい」
ミューディーさんは仕方なさそうな顔で気のなさそうな返事をした。


私はまず新しく来た3人と訓練した。
強い! さすが指導隊に回されてくるだけあるわ。でも、ここで舐められたらたまらない。私はちょっと本気を出した。
シャムスさんなんかは本気で悔しがっていた。
私は3人に良かった点、悪かった点を教えた。そう。ただ私が勝つだけじゃだめなんだ。皆が、それぞれ人に教えられるくらいにうまくならないと。


「いくわよぅ」
「手加減。手加減」
フラガさんと私が戦った後、サイとトールの相手をする。フラガさんは他の部署の人達と効率的なモビルスーツ戦術を検討すると言う事で、途中で抜けた。
……ま、最初から全力出すわけにもいかないものね
それなりにサイとトールの相手をしてやった。でも、いくら105ダガーを基に高い柔軟性を持つと言っても砲撃戦用機とストライクとじゃ相性が悪い。トールのデュエルダガーがストライクに比較的善戦したと言う感じだ。
「でもわかってる? 私達は巡回指導を行わなきゃいけないのよ? 早く強くならないと」
「まだまだ指導なんてがらじゃないけどなぁ」
「もう、明日から指導の予定入ってるわよ」
「えひゃー!」
「なぁ、ザフトでビーム兵器持ってるのってXナンバーだけだよな?」
サイが私に質問する。
「わからないわよー。技術はすぐに取り入れられるものだから。砂漠で、最初は持ってなかったのに、ビームサーベル搭載のバクゥすぐに出してきたじゃない。……あ! ビーム兵器、あったわ。ザフトにも。ほら、ヘリオポリスでアークエンジェルが襲われた時、ジンが抱えてきた奴。確か……バルルス改特火重粒子砲とか言う大仰な名前だったわ。でも、威力はビームコーティングシールドで簡単に防げちゃう位だから。こっちのビームライフルの方が威力強いかも。取り回しやすいし。」
「そうか。バスターにはシールドないんだ。前に出ないように気をつけないとな」
「その代わり、バスターダガーにはラミネート装甲あるじゃない」
「PS装甲もそうかなぁ。俺のデュエルダガーのリニアガンじゃ役に立たなくなっちゃうって事?」
トールが心配そうに言う。
「そーんな事ないわよ。PS装甲であっても、実弾兵器の着弾時の衝撃までは消せないわ。現に、私が最初にストライク乗った時、ザフトの重突撃機銃の衝撃、結構あったもん。それにミサイルの衝撃も」
「そうかー。安心したよ」
「機体が無事でも、中の人が気絶しちゃえばどうしようもないものね。だから、ダガーにはPS装甲は使われていないのかも? 壊れる事で衝撃を吸収するように?」
「じゃあ、そろそろ再開しよう。次は2対1でいいか?」
サイが言う。
「えー。フラガさんとも戦って疲れてるのに。女の子に優しくないなぁ」
「たまには善戦しておかないと、精神が萎縮するからね〜。へへ」


「ちょっと待てー!」
何事?
「は! 指導隊の宿営地に侵入しようとした者が居るのです」
「ああ! ゲイツ博士!」
侵入者は、私がナチュラル用OSを納入した時に立ち会った、ビル・ゲイツ博士だった。
「どうしたって言うんです?」
「ルナマリア君! 君は実戦部隊になんかいちゃいけない! 君の納入したOSは完璧だ! 君を失う事は人類の損失だ!」
「はいはい。ちゃんと許可取ってから来て下さいね。ここは軍機地域なんですから」
ゲイツ博士は引きずられて行った。
でも……そんなに期待されても困るのよね。あの時は、最初から答えがわかってるようにプログラムを組めたけど、今、他のプログラムを組めと言われても同じようにできる自信は無い。


スウェン達が、いつも耳にイヤホンを当てているのはちょっと話題になった。三人揃って音楽好きと言う事かも知れないが。
フラガが問いただすと、スウェンは顔をしかめながら素直にイヤホンを渡してきた。
「なんだこりゃ!?」
フラガが大声を上げる。
「お前ら……どんな育ち方をしてきたんだ?」
「それを言う事は許可されておりません」
スウェンはすげなく答える事を拒む。
「だいたい想像付くけどな。ブルーコスモス絡みの施設ででも育ったか? コーディネイターと一緒に行動する事になって、洗脳を解いている最中か」
「答えられません」
スウェンの顔が強張る。
「まぁ、早いとこ洗脳解いてくれよな。チームのためにも」
そう言うとフラガはスウェンにイヤホンを返した。


「一体、なんだったんですか?」
私はフラガさんに聞いた。
「ん〜。まー、あんまり気持ちのいい話じゃないよ?」
「私はチームの副長です」
「そう言われちまうとなぁ」
フラガさんはしぶりながらも答えてくれた。スウェンさんが渡したイヤホンからは、
『地球連合に属するコーディネイターは信頼できる戦友だ』
とか言う言葉が延々と音楽に乗って繰り返されていたそうだ。
「あいつら、おそらく孤児だな。ブルーコスモスが運営する養護施設の中に、子供の頃から反コーデイネイターの洗脳をして、戦闘訓練を施す施設があると聞く」
「そんな非人道的な事!?」
「噂だが、確証は高いよ」
「私はどうすれば……」
「今までどおりでいいんじゃないか? ほら、フレイって子がいたろ? 最後には仲良くなれたじゃないか」
フレイ……フレイのような関係に、なれるのかな? あの3人と。







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