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Lnamaria-IF_523第31話

Last-modified: 2007-12-15 (土) 03:22:08

「ありがとうございます! 今日は私なんかのためにわざわざ……」
「なに、ジブラルタルの奪回祝勝会と、いよいよ宇宙へ出撃するための景気づけも兼ねていますからね。気にすることはありませんよ」
アズラエルさんが笑う。
今日は7月26日。私の誕生日だ。オーブの首都オロファトのヤラファトホテルでパーティが開かれている。
アズラエルさんは、誕生会はついでだと言うけれど、ステージの垂れ幕にはしっかりと『ルナマリア・ホーク中尉誕生日おめでとう!』と書かれている。ちょっと恥ずかしい。
「そうそう。ルナマリアさんにプレゼントを用意してきたんですよ。三郎」
「はっ」
お付の人からアズラエルさんは小箱を渡された。なんだろう。
「……わぁ! きれいな赤!」
開かれた小箱の中には、1cm位の大きさの深紅の宝石のネックレスがあった。
「7月の誕生石のルビーですよ。それに……ルナマリアさん、こんな色好きでしょう?」
「はい! よくわかりますね」
「そりゃあ、モビルスーツとか服装とか見ればねぇ、ふふふ。このルビーはピジョンブラッドと言うんですよ。あまり小さいと暗いだけの赤になってしまって価値が激減するのですが、3カラットもあればやはり見栄えがしますね。オロファトの宝石店で見つけて買ったのですがなかなかいい物を揃えていました。さすがオーブですね。さあ、つけてあげましょう」
「あ、お願いします」
私は後ろを向く。後ろからアズラエルさんの手がまわされ、胸元にルビーが置かれヒヤッとする感触。
「さあ、できました。見てみますか?」
「あ、はい」
私達は鏡のところまで歩いていった。
胸元で真紅の輝きを放つルビー……自分で言うのもなんだけど、似合ってる。
えへへ。顔がにやついてしまう。
「ありがとうございます! こんな素敵な物を!」
「ふふふ。喜んでもらえて嬉しいですよ。……では、一曲踊っていただけますか? レディ?」
「はい、喜んで!」


「あ、ルナ。今日はおめでとう!」
「カガリ! 来てくれたのね。ありがとう」
「まぁ、私は父の代理ってとこだな」
カガリは、髪をアップに結いグリーンのタイトなドレスを着ていた。
「……やっぱりカガリ、ドレス似合うわね。私はどう? 変じゃない?」
「変じゃないぞ。赤いドレスが、髪に合って綺麗だ。ネックレスもいいな」
「ネックレスは、さっきアズラエルさんがプレゼントしてくれたのよ」
「ふーん。私が見るところ、結構良い品だぞ。いい貰い物したな」
「そうなんだ? まぁアズラエルさんが直々に選んだんだから品物に間違いはないわよね。大事にしなきゃ。ところで、カガリのお連れの方はどなた?」
カガリの後ろには、髪を肩まで伸ばした男性が私達の会話を微笑みながら聞いていた。
「ああ、私の従兄で、婚約者のユウナ・ロマ・セイランだ」
「よろしく! カガリが世話になったそうで。色々と活躍を聞いているよ。紅の戦乙女殿」
ユウナさんが手を差し出して来た。握手をする。
「セイラン家は大西洋連邦に知り合いが多くてな。アズラエル家とも昔から知り合いだそうだ。オーブが地球連合に参加してから、色々と役に立ってくれている。……あ! ユウナ、この機会だ。ムルタ・アズラエルに紹介してくれ! 顔繋ぎをしておきたい。直接知り合いになっておくに越した事はないからな」
「そりゃもう、カガリのためなら!」
「じゃあ、またな。ルナ」
「うん、頑張ってね、カガリ」
カガリとユウナさんはアズラエルさんの所へ歩いて行った。
うん。カガリ、頑張っているなぁ。ユウナさんも、カガリの事が本当に好きそう。よかった。


「よう、姉ちゃん。楽しんでるかい」
「あ、ダナさん」
ダナさんがグラス片手に話しかけてきた。顔がほんのりと赤くなってる。
「ここはいい酒が置いてあるねぇ。こんな酒が飲めるのも姉ちゃんのおかげだよ。誕生日おめでとさん」
「ふふ。私の誕生日はついでですってば。宇宙に行くのを前にした景気づけが目的のパーティですから、しっかり鋭気を養ってくださいね」
「おう、しっかり養ってるよ。食い物もうまいしな。それにしても宇宙かぁ。わくわくするねぇ、宇宙なんて初めてだから」
そう言えば、ミューディーも言ってたな。宇宙は初めてだって。
「ひょっとして、アークエンジェルとドミニオンも併せて宇宙でモビルスーツ動かした事あるのって私だけ? 教えきれるかなぁ、そんなにいっぱい」
「んー? 月にもモビルスーツ隊が編成されてるって話だろ。そいつらを教官にして教わればいいさ。姉ちゃん一人で気張る事もないさ」
「そうか、そうですよね。ありがとうございます」
「なーに。お、また新しい料理が来た! じゃ、またちょっくら鋭気を養ってくらぁ」
後ろ手に手を振りながら、ダナさんは運ばれて来た料理の方にふらふら歩いて行った。


ん〜? ドミニオン、宇宙。なんか引っかかる。何か忘れてるような……
まぁいいか。大切な事ならその内思い出すだろうし。


「サイ、残念ね。フレイがいればあんなように踊れるのに」
「しょうがないさ。オーブはカーペンタリアに近すぎる」
私達の視線の向こうではミリィとトールが楽しそうに踊ってる。
フレイとはサイから連絡先を教えてもらってこの間電話してみた。フレイは宇宙から地球に降りた時、オーブ本土には寄らずに大西洋連邦に帰ったと言う話だった。
マスドライバーがあってカーペンタリアにも近いオーブは危険だと言う判断だろう。
「そう言えばカズイ、アークエンジェルから降りなかったのね」
「そうだな。お前は降りてるかと思った」
「馬鹿にするなよ。みんなを置いて僕だけ軍を抜けられる訳ないじゃないか」
「馬鹿にした訳じゃないさ。お前は優しいからな。軍隊には向かないんじゃないかと思ってた」
「僕にだって、CICで座ってるぐらいできるさ。サイやトールやルナほど危険な訳じゃない。それに……安全だと思ってたオーブも結局攻められちゃうしさ。絶対に安全な所なんてこの世に存在しないじゃないか」
「そうね。……なんか、カズイ、きりっとして男らしくなったね。見違えた」
「そうだな。なんか逞しくなったな」
「よしてくれよ。照れるじゃないか」
カズイは顔を赤くして手を振る。
「ふふ」


もうそろそろ料理も出尽くし、帰る人も出始める頃、ふとアズラエルさんがテラスで風にあたってるのが目に入った。
――思い出した! どうして思い出さなかったんだろう……自分で経験した事じゃないからね、きっと。授業で習っただけだったから……夢の世界の記憶。
私はアズラエルさんに駆け寄った。
「どうしたんです? そんな緊張した顔をして?」
「聞いてください。笑われるかもしれないけど、御伽噺のような、夢の話だけど、でも――!」
「落ち着いて。聞きましょう。なんですか?」
私は、かいつまんで夢の世界の事を話した。私にもう一つの人生の記憶がある事を。そして――
「ふーむ。すると、その夢の世界では、僕はヤキン・ドゥーエで戦死すると言う訳ですか」
「はい。どんな状況かまでは教わりませんでしたけど、夢の世界ではアズラエルさんはプラントの、コーディネイターの敵の大物として有名でしたから、そのくらいは……笑いますよね? でも、思い出したら心配になって、それで……」
「笑いませんよ。ありがとう、心配してくれて」
アズラエルさんは微笑んだ。
「しかし、興味深い。平行世界、とでも言うのでしょうかね? 別の世界である事は確かなようですね、ルナマリアさんはプラントではなくオーブに生まれているし。しかし、参考になる事は確かです。うーむ、ジェネシスですか? その戦略兵器は。調査の必要がありそうですね」
「でも、この世界にはないかも知れませんよ? 無駄骨になるかも」
「大丈夫ですよ。相手がこう言う仕様の物を作っているか否かを探り出すのは、どんな物を開発してるかをあいまいに探るより簡単なんです。しかも、そんなどでかい物ならね。作られていないならいないで安心できます。……僕はやっぱりドミニオンと一緒に死んだのかな? くやしいな。結構愛着持ってるんですがね、あの艦に」
「んー、私がザフトに入ってた時はドミニオンって艦の名前聞いた事ないんですよね。あ、でも! アークエンジェルなら戦った事あります! パワーアップもしてました」
「パワーアップですか?」
「ええ! 敵だったから細かくはわからないけど、ジェットストライカーを着けたストライクと同じ位高く飛べるんですよ。思い出した時悔しかったなぁ。あれだけ高く飛べれば、アフリカからアラスカに行く時も楽に来れたのにって。ザフトの水中モビルスーツに一方的に攻撃されてどんなに悔しかったか……あ! それからローエングリンも地上でも発射可能なように、汚染が無いように改良されてました。地上の砲台に設置したりして……ザフトの艦にも搭載した新型艦あったんですよ。実は私が配属された最新鋭艦だったんですけどね」
「面白いですね。研究させて見ましょう。うーむCE.73年ですか、2年もあればそんな事も可能なんですねぇ。夢の世界では、アークエンジェルはどんな活躍をしたんですか?」
私は、知ってる限りの夢の世界でのヘリオポリス崩壊からのアークエンジェルの行動を話した。
「……ちょっと待ってください。三隻同盟ってのは何なんです!?」
「アークエンジェルは地球軍から脱走したみたいで……そのぅ、アラスカでザフトを誘い込んでサイクロプスで壊滅させるための囮にさせられたのが切っ掛けらしいですけど……」
アズラエルさんの口元がひくついた。
「あったんですか? そう言う計画」
「……正直に言えば、ありましたよ。ユーラシアと東アジアの軍隊を囮にしたね。しかし、その世界の僕は何を考えていたんだ? アークエンジェルと言う高性能な最新鋭艦を囮にするなんて。僕には理解できない――。……なんでその計画が実行されずに終わったかわかりますか?」
「えーと、なんでですか?」
「ルナマリアさん、あなたのおかげですよ」
「私!?」
「ええ。あなたの活躍のおかげで、低軌道会戦で第八艦隊は勝利した。アルスター事務次官もハルバートン提督も死なずに済んだ。結果、我が軍のモビルスーツの開発が夢の世界より進んだ。そして、ナチュラル用のOSをルナマリアさんが早期に完成してくれたおかげでモビルスーツ隊の編成がスムーズに進んだ。サイクロプスによるアラスカ本部の自爆と言う奇手に頼らずともザフトを撃退できる目算がついた――僕は神を信じたくなりましたよ。あなたに夢の世界の記憶を与えた神をね――」
アズラエルさんは、真剣に私の話を聞いてくれた。夢の世界で再び戦争が始まった後――私がザフトで戦っていた時の事も――。ロード・ジブリール――夢の世界での私達ザフトの一番の敵だった人。彼は、この世界でも存在するようだ。過激すぎて苦労している、とアズラエルさんは苦笑していた。
「彼は真剣にコーディネイターを憎んでいるようですからねぇ。困った物です。ユニウス7への核攻撃もどうやら裏で彼の差し金らしくてねぇ。人が作った物だと思って気楽に壊しやがって! いや、失礼……ジブリール家はプラント建設にさほど関わっていなかったのですよ」
「アズラエルさんは、コーディネイターを、その、どう思っているんですか?」
「うーん、やっかみ半分って所ですねぇ。実は子供の頃コーディネイターに憧れていましてね? なんで自分をコーディネイターにしてくれなかったのかと親を恨んだ事もありました。はは」
「コーディネイターになっても、幸せが約束される訳じゃないですよ」
「そうですね。失礼ながら、ルナマリアさんを知ってからコーディネイターに対するトラウマは消えました。それに、ナチュナルの可能性を信じさせてくれる人も見つけましたし」
「どんな人ですか?」
「傭兵のサーペントテイルってご存知ですか?」
「あ、なんか聞いた事あります」
「優秀な傭兵グループですよ。何回か仕事を頼んだ事があるんですがね、ギガフロート建設の警備とか。そのメンバーにイライジャ・キールと言う男がいるんですよ」
「あ、ギガフロートの」
「彼はコーディネイターですが、免疫系しかいじってないそうです。それにも関わらず、努力の末サーペントテールの一角を担うに相応しい実力者に成長しています。みんなサーペントテイルのエースの叢雲劾(ムラクモガイ)に目が行っていますけどね、僕はイライジャ君に注目しているんですよ。それに、我が地球軍にもコーディネイターに負けない活躍をしてくれている人達がいっぱい居ます。ジブラルタルで名を上げたジェーン・ヒューストン、ビクトリアで活躍したエドワード・ハレルソン、それに地球連合軍カリフォルニア士官学校の教官だった、彼らを鍛え上げたレナ・イメリア……。コーディネイターにも負けないナチュラルが居るって証明されれば……そうすれば危険を犯して子供をコーディネイターにしようなんて誰も思わなくなるでしょうし、コーディネイターは出生率が低いから自然と滅びます。僕はナチュラルの可能性を信じてるんですよ……人類はそのままでも前に進んで行けると……」
そうか。そんな人達がいるんだ。会ってみたいな。平和になったら、会って見よう。


「しかし、心配でしょう。妹さん、メイリンさんですか。もしこの世界にもいたら」
「ええ、でももしこの世界にメイリンがいても、向こうは私を知らないだろうし……無関係なんですよね、結局。夢の世界の知り合いに拘るより、こちらの世界の家族、友達を大切にしたい……」
「夢の世界では……恋人とか、いたんですか?」
「……あは。いたんですよ」
「会いたかったり、しますか?」
「それが〜、笑っちゃうんですよ。その人オーブ出身だったんですけど、この間、こっちの世界でも会っちゃったんです!」
「……そ、そうなんですか」
アズラエルさんは、なぜかとてもショックを受けたような顔をした。
「でもね? 夢の世界じゃ、私より一歳年下だったのにこっちの世界じゃ、まだ10歳以下だったんですよー。いくらなんでも恋愛対象外ですよ。私ショタコンじゃないし。それに彼には妹がいたはずなのに、こっちじゃ私と同じくらいの年の姉がいるし。やっぱり、夢の世界とこの世界は違うんだなって思い知らされました」
「そうですか。ふぅ……」
アズラエルさんはため息をついた。
その後も話は弾んだ。結局、パーティが終わるまでアズラエルさんと話し込んでしまった。
私が乗った、そして敵にしたザフトの新型モビルスーツにはとても興味を示してくれた。そしてニュートロンジャマーキャンセラーの存在を知ると、とても喜んでくれた。私が、技術までちゃんと習ってない事が……詳しく教えられない事が悔しい、と言うと、確実に出来ると言う事がわかるだけで、非常に役立つと言ってくれた。
……今まではフラガさんに、予知夢と言う事で話しただけだったけど、アズラエルさんにはすべて話せて、すっきりした。うん、やっぱり吐き出したかったんだ。もう一つの人生の記憶なんてね。アズラエルさんに荷物を持ってもらったようで、楽になった気がする。
艦に帰る車の窓から入る夜風がとても気持ちよかった。






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