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Lnamaria-IF_523第32話

Last-modified: 2007-12-22 (土) 00:07:36

「いよいよ見えてきましたね」
「ああ……」
宇宙を進むリ・ホームの前に、オーブの宇宙ステーション『アメノミハシラ』が姿を現し、次第に大きくなっていく。
「ザフトの捕虜達の様子はどうですか?」
「一人騒いだのがいたでしょう。彼にはおねんねしてもらっているわ。それより、そろそろアメノミハシラの管制と連絡しなくちゃね」
「ああ」
プロフェッサーに言われて、ロウはアメノミハシラの管制に連絡する。
「アメノミハシラ! こちらジャンク屋ロウ・ギュールだ。ザフトの捕虜を連れて来た。どうすりゃいい?」
『こちらアメノミハシラ。ロウ・ギュールか。話は聞いている。そのまま入港せよ。ユーコピー?』
「アイコピー」
リ・ホームは管制に従いアメノミハシラに入港した。
「うへぇ! なんだか兵隊さんが集まってきてらぁ。悪い事にならなきゃいいがなぁ」
「不安、ですねぇ」
リーアムも眉を潜める。
……ロウ達の心配は杞憂だった。集まってきた多くの兵隊達は、捕虜を受け取りに来たのだった。
「――さて! お疲れ様でしたね、あなた達」
残ったオーブの士官が言った。
「なーに。俺達はこれからどうすりゃいいんだ?」
「このアメノミハシラの責任者、ロンド・ミナ・サハク様がお待ちです。案内するように言われています」
「不安、ですねぇ」
リーアムはため息をついた。
「ははは! 大丈夫ですよ。心配しなくても。確かに迫力がある方達ですけどね、サハク様達は。さあ、カートに乗ってください」


ロウ達はカートに乗り港から居住区に入り、更に厳重に警備されたエリアへと入り、廊下を歩いて行く。
「この部屋です。どうぞ」
ドアが開く。
部屋の奥には背の高い黒い長髪の人物が二人、一人は椅子に座り、もう一人はその傍らに立っていた。
「……え、えーと」
雰囲気に呑まれてロウは舌がもつれる。
「ふふふ。アメノミハシラへようこそ、と言ったところかな。私はロンド・ミナ・サハクだ」
椅子に座った人物が口を開く。
「私が弟のロンド・ギナ・サハクだ。ロウ・ギュール、お前と戦った相手だ」
続いて立っていた人物も自己紹介をする。
「……あ、あの時のはあんただったのか! ……しかし、ほんとにそっくりだな、あんた達。どっちがどっちだかわからねぇや。俺は……」
「よい」
自己紹介しようとしたロウを、ミナが遮る。
「お前達の事は調べさせてもらったよ。くくく。悪運に恵まれたジャンク屋か」
「い、いやあ。弟さんには見事に負けまして」
「ふふ。弟が命を取らない気になったと言うだけで、充分悪運が強い」
「そうか。あははは……」
「それで……私達をどうなさるおつもりかしら」
ロウに任せていると話が進まないと見たのだろう、プロフェッサーが口を挟む。
「さて……どうした物か」
ミナの傍らに立っていたギナがあごをさすりながら答える。
「面白そうな人材だと思ってな、とりあえず手元に置いて置こうと思ったのだが」
「……それだけですか!? それなら解放してくださいよー! ジャンク屋の仕事だってあるのに」
「うーん?」
ギナは樹里の方をちらりと見る。
「ジャンク屋か……いつまでも続けられる商売ではあるまい。お前達は幸運かも知れんぞ。私の配下になれるのだからな」
「――もうすぐ戦争も終わる。地球連合は現在のジャンク屋組合に与えた権利を大きすぎる物と考えている。戦争が終わり次第、それを取り上げる方針だ。これは確定事項だ」
ミナがギナの発言を補足する。
「ジャンク屋の天下も終わりだ。廃業するにしろ、戦争前のようなデブリ掃除屋に戻るにしろ、オーブとのコネは無駄にはなるまい。確かに、悪運が強いな。お前達は」
「はー。わかりましたよ。とりあえずあんたらの手下をやりますよ。……じゃあ、休んでいいっすかね? 色々疲れて……」
「悪いが、休むのはイズモ――オーブの宇宙戦艦の中でにしてもらおうか」
ロウの願いはギナに素気無く断られる。
「私はこれから出かける。供をせよ」
「へいへい。どこに行くんで?」
「――月だ」




「ふーむ。ロウ達はとどめを刺されずにザフトの兵士を回収した後アメノミハシラへ向かったか……何か言いつけられでもしたかな?」
ロウ達の動きを知ると劾は感心したように言った。彼なりに心配して様子を伺っていたのだ。
「ああ、悪運の強さは健在のようだな」
イライジャも答える。
「一安心だ。な、風花」
「うん!」
「しかし、エリカ・シモンズにはなんと報告したものかな……ロンド・ギナ・サハク。態度は傲慢だが、言っている事は頷ける点がないでもない……」
「イライジャー! 仕事だー!」
そこへリード・ウェラーが部屋に駆け込んで来る。
「ほう、俺にか?」
「おう! なんとあのムルタ・アズラエル直々のご指名よ!」
「内容は?」
「オーブから、月基地へのシャトルが打ち上げられる。今回は、なにか特別な物でも打ち上げられるのか、軌道上の打ち上げ予定宙点付近から月基地までの経路を念入りに哨戒してくれってさ。もちろん地球軍も哨戒はするだろうがな、目立ちすぎる。念のためにって事だろう」
「わかった。油断しなきゃ楽な仕事だな。受けよう」
「でも、劾じゃなくてイライジャをご指名とは、やるわね!」
ロレッタがイライジャの背中を叩く。
「イライジャ、頑張ってるもんね!」
風花もはしゃぐ。
「ムルタ・アズラエルか……」
劾はちょっと考えこんだ。
「どうした?」
「あ、いや。なんでもない。しっかりやってくれ」
「ああ、もちろん!」




久しぶりの宇宙!
私達はオーブのカグヤマスドライバーから月基地への補給物資の護衛として打ち上げられる貨物シャトルと一緒に宇宙に上がった。
幸いザフトの妨害を受ける事もなくすんなり月のプトレマイオス基地に着いた。
地球からはアークエンジェルとドミニオンが上がり、そしてオーブの宇宙ステーション「アメノミハシラ」からも戦艦イズモが合流して来た。
「おお! マリュー・ラミアス! 元気そうだなぁ! 活躍は聞いておるぞ!」
あ! ハルバートン提督が早速駆けつけて来てくれた!
「ハルバートン提督こそ、よく宇宙で頑張っていてくれました。おかげでいよいよ反撃の時です!」
「おう! お、フラガ中佐! アラスカでの活躍は聞いておるぞ。モビルスーツ隊が活躍できたのも君の作戦案あっての事だったと聞く」
「いやぁ。皆が頑張ってくれたからですよ。ホーク中尉とか」
「おお、ホーク中尉もよくやってくれた! 地球軍のモビルスーツが早期に完成したのも君が作ったOSがあってこそだよ。礼を言わせてもらう」
「そんな……もう一度やれと言われてもたぶん出来ませんよ? ふふ」
ハルバートン提督は、ドミニオンの人達が降りて来ると、真っ先にアズラエルさんの所へ挨拶に行った。
「アズラエル理事、モビルスーツの開発には常日頃から尽力頂いているそうで。ありがとうございます」
「何、当然の事をしているまでです。モビルスーツの有用性は僕もしっかり理解していますからねぇ」
「理事の発案で新型モビルスーツも開発されたそうで。これからもよろしくお願いします……お、バジルール少佐! 立派になったなぁ……」
ハルバートン提督はそのままナタルさんとかとも話をしてる。
あ、今度はオーブ艦から人が降りてきた。
うわぁ、あの長髪の人、背が高いなぁ。あれ? もしかしたらビクトリア奪回のニュースで出て来た、サハク家のギナ様?
「あ、あんた、ルナマリア・ホークさん?」
「え? そうですけど」
オーブ艦から降りて来た赤いバンダナをした人が声をかけて来た。
「俺、ロウ・ギュールってんだ! いやーM1アストレイに乗せてもらったんだけどさ、あんたが作ったナチュラル用のOSに惚れちまって。あんなに動かしやすいのは見た事がない! 会いたかったんだ! どんな人か。こんなに可愛い女の子だったなんて!」
「オーブの関係者ですか? よろしくお願いします。それから……オーブのM1アストレイのOSの作者については秘密にしてくださいね? 地球軍にばれると困るんです」
私はにっこり笑った。
「あー。なんか事情がありそうだな。了解!」
「後ろ……女の子が睨んでますよ?」
「え? あー、樹里ってんだ。おい、何ふくれっ面してるんだよ」
「もうロウったら、鼻の下伸ばして! 知らない!」
樹里と言うらしい、ロウを睨んでた茶髪の外跳ねした髪の女の子は目に涙を滲ませて行ってしまった。
「お、おい! じゃあ、あんた、またな」
「女の子泣かせちゃだめよー!」
ロウは女の子を追いかけていった。


ひとまず基地の居住区画に落ち着く。今日はこのままお休みだ。1/6の重力が、うーん、ふわふわマシュマロみたいでいい感じ。
まーろまっしゅまろまろまっろーん♪ 私はいい気持ちで眠りについた。


翌日。アークエンジェルやドミニオンのみんなはプトレマイオス基地のモビルスーツ乗員から、宇宙でのモビルスーツ操縦の訓練を受けている。オーブから来た人達は……何をしてるんだろう? 宇宙ステーションから来たから宇宙での訓練は必要ないだろうし。
私は一人、アクタイオン・インダストリー社の人の訪問を受けていた。
「……いや、私共もユーラシア連邦の依頼を受けて自社でモビルスーツの開発をしていたのですが、ユーラシア連邦は大西洋連邦のダガーシリーズの供与を受ける事に決定してしまい……」
「はい」
それで? 何が言いたいんだろう、この人達。
「悔しいのですよ! このままでは終われない! モビルスーツの開発も、大西洋連邦の技術も取り入れて自社独自で継続しています。いずれあなたにも乗ってもらおうと思っていますが、今回は新しいストライカーパックの試験をして頂きたいのですよ」
「新しいストライカーパック?」
「ええ。実際に見てもらった方が早いでしょう」
私はアクタイオン・インダストリー社の格納庫に案内された。
「こ、これは……」
私は絶句した。
そこには、全長100mにも及ぶかと思われる一門の巨大なビーム砲――戦艦の主砲? がそこにあった。その両側にあるのはウェポンベイ? そして、数機付けられているあれはブースターユニット?
「どうです? このディープストライカーは」
アクタイオン・インダストリー社のカトキハジメ設計主任は自慢げに言った。
「ディープストライカー?」
「現在我が社で開発されているモビルスーツ、コードネームι(イオタ)の強化パーツとして作られた物ですが、ストライクにも、もちろん装着可能です。その名の通り、莫大な加速力で敵陣深くに突入し、戦艦の主砲で一点突破を図るという強襲型のコンセプトです。艦船攻撃用の大型ビームサーベルも装備されております。その他、ウェポンベイにはマイクロミサイルがたっぷりと詰まっており、モビルスーツの迎撃に威力を発揮する……予定です。防御面でもパイロットの生残性を高めるため、我が社が誇る技術――アルミューレ・リュミエールを短時間ですがモビルスーツ本体前面に展開可能です!」
「アルミューレ・リュミエール?」
「ヘリオポリスに住んでいた事があるなら聞いた事があるでしょう? ほら、L3のアルテミス要塞の全方位光波防御帯ですよ。それを改良しまして内側からの攻撃を可能にしております」」
「そんなにたくさんの武装、私一人で扱えるでしょうか?」
「心配はいりませんよ。ディープストライカーには、ι(イオタ)に搭載される予定の人工知能『ALICE』が搭載されています」
「ALICE?」
「ええ。Advanced Logistic&In-consequence Cognizing Equipmentの略です。これを生かした簡易ガンバレルも装備されています。一般人でも充分扱えますよ。まぁ2次元的な挙動が限界ですがね、敵の意表を突ける点で効果が高いでしょう」
「でも……この大きさだとアークエンジェルに収容できませんね」
「はっはっは。まぁ、しょうがないですよ。それは。基地から発進させるか、戦艦の甲板から発進するかにしてください。なにしろまだ試作段階の物なので、運用まではまだ手がまわらんのです」
「はぁ……」
私はなんとも言いようが無くそう言うしかなかった。




「地球軍もいよいよ宇宙で反撃ですか。でも、俺達、ザフトと戦う気は無いかんな。俺達は兵士じゃないんだ。それだけは言っておくぜ、ギナ様」
ロウは、それだけは譲れない、と言う様に力を込めて言う。
「ああ。別にジャンク屋のお前達を戦力に数えるほどオーブは落ちぶれてはいないぞ? まぁ暇だったら基地の見物でもM1アストレイの整備の手伝いでもしておけ」
「あー。はいはい、あ! 整備って言えば! ちょっと行きたい所があるんだが……」
「ああ、話は後にしろ。これから私は地球軍の幹部達と会議だ。その後聞いてやる」
ギナはロウ達を置いて会議に行ってしまった。
「……本当に、私達ギナ様の気まぐれで連れて来られたみたいねぇ」
プロフェッサーが嘆息する。
「みたいだな。まぁ、こうなったら思いっきり見物して回ろうぜ! ジャンク屋の俺達が地球軍の基地に来られるなんて滅多に無いからな!」






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