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Lnamaria-IF_523第38話

Last-modified: 2008-02-01 (金) 17:50:27

「ロウに? まぁ、本人に聞いてみますか」
私は戦艦イズモに連絡を取り、ロウを呼び出した。
「……という訳なのよ。子供のような声だったけど、知り合い?」
「ああ! 確かに風花はサーペントテイルの一員だ! 会った事あるぜ! 確かにまだ6歳の子供だぜ」
「サーペントテイルってプレアの船を襲った? って6歳!?」
「ああ、年齢の割りにしっかりしてるんだ。たいした子だぜ」
「そう。じゃあ、案内していいのね?」
「頼むわ。俺もサーペントテイルがなぜプレアの船を襲ったのか聞きたい」
私は警備隊に、風花・アジャーの艇をイズモに連れてくるよう伝えた。
私もディープストライカーをドックに入れると、イズモに向かう。
「ひっさしぶり!」
「おう、ひさしぶりだな、ルナ」
「風花さんは、もうすぐ来ると思うけど。プレアの調子はどう?」
その時、ちょうどプレアさんが顔を出した。
「おひさしぶりです。ルナマリアさん」
「ひさしぶり、プレア。……体の調子はどう?」
「ええ、おかげさまで。それで……これからサーペントテイルの人が来るんですよね? 僕も同席させて下さい」
「……確かに、プレアにはその権利あると思う。どう? ロウ?」
「そうだな。とりあえず、直に事情を説明してもらわなきゃプレアも納得いかんだろう。いいぜ」
『ホーク中尉、風花・アジャーの船をお連れしました』
ちょうど、警備兵から連絡が入る。
「ありがとう。今ハッチを開けさせるわ。……じゃあ、行きましょう」
「ああ」
私達は格納庫へ向かった。


ちょうど、風花・アジャーの乗った小型艇が収容されたところだった。
小型艇のハッチが開く。
「案内ありがとうございます。サーペントテイルの風花・アジャーです!」
きりっとした顔をして、小さな女の子が出てきた。
「確かに風花だ。ひさしぶりだなぁ」
「ロウさん!」
女の子の顔がぱっと明るくなり、ロウに駆け寄る。
「私は地球軍のルナマリア・ホークよ。ロウの知り合い。まぁ、ここじゃなんだし、部屋を用意してあるの。プレアさんが待ってるわ。行きましょう。付いて来て」
「はい。ちゃんと、ご説明します!」


「あなたが、サーペントテイルの人ですか?」
風花さんを見た時、プレアは軽く驚いたような表情を見せた。
「これでも立派にサーペントテイルの一員です」
風花さんはちょっとむっとしたようだ。そんな表情も、風花さんの年齢ではなんともかわいらしいのだけど。
「まぁまぁ。驚くのも無理はないがな、風花はサーペントテイルの交渉やなんかきちんとやってんだ。しっかりしてんだぜ」
ロウがフォローする。
「そうですね。能力に年齢は関係ありませんか。では、聞かせてもらえますか? あなた達がなぜ僕を襲ったのかを」
プレアが顔を引き締めて風花さんに向き直る。
「はい、実は……」
「ああ、座って頂いて結構ですよ」
「はい。では失礼します。……依頼人の名前は明かせませんが、依頼があったんです。プレアさんが持っているニュートロンジャマーキャンセラーを奪取せよと」
「僕達はプラント評議会議長の庇護下にあったのに、その人には、そこまで掴まれていたと言う事ですか……理由は聞いていますか?」
「はい。今の段階で地球連合にニュートロンジャマーキャンセラーを渡すと、核兵器が復活される恐れがあるからと……でも、別ルートでニュートロンジャマーキャンセラーの技術は地球連合に渡ってしまったようですね」
「なんだって!?」
あ……私が口を挟む時間も無く、ロウ達がざわめき出す。しまったなぁ。
「もう、アタシ達が持っていても無意味なのでプレアさんに返還しようと思って、その前にこうして事情説明に来たんです……」
風花さんはすっと立ち上がった。
「プレアさん、ご迷惑をかけて申し訳ありませんでした」
風花さんはプレアに向かって深々と頭を下げた。
「事情はわかりました。頭を上げてください、風花さん」
プレアは溜息をついた。
「そうですか……地球連合の手にはすでにニュートロンジャマーキャンセラーが……」
「まだ極秘事項よ? こんな形で漏れるとは思わなかったけど。ロウもいいわね?」
「ああ、他には漏らさねえよ。ルナは知ってたんだな?」
「まぁ、その場に立ち合わせちゃったしね」
「しかし驚いたな。ニュートロンジャマーキャンセラーか」
「マルキオ様はオーブのウズミ様なら軍事転用する事はないだろうと言っておられたのですが……無駄になりましたね。核ミサイルの復活――ユニウスセブンの悲劇……ああ……そんな事にならなければよいのですが」
んー、ちょっと聞き捨てならない!
「あら? アズラエルさんだって、ニュートロンジャマーキャンセラーを軍事転用する気なんてないわよ?」
「「え?」」
プレアさんと風花さんの声が被った。
「もうっ。ずうっと先の事までは保証できないけどね? アズラエルさんが私に説明してくれたんだけど、製造には莫大なコストがかかる上に材料も稀少なものが多いため、大量生産が不可能なんだって。まずは地上のエネルギー状態を改善する事を最優先にするそうよ? たっくさんある核ミサイルに搭載なんて無駄遣いする訳無いじゃない? コロニー壊すってんならもっと楽な方法もあるし……」
思い出しちゃった。――そう。ヘリオポリスは、たった数機のモビルスーツの手で……
「アズラエルさんって以外に理性的なんですね。驚きました」
落ち込みそうになった私の耳に、プレアさんの声が入って来た。
「以外って〜。アズラエルさんは理性的な人よ? ユニウスセブンは一部の過激派の仕業らしいわ。ブルーコスモスって言っても穏健派から過激派、色々な派閥や、ただブルーコスモスの名前を使っているテロリストから、色々あるのよ。アズラエルさんはプラントを元のように使いたいって考えね。自分が建設したプラントが壊されて怒っていたほどよ?」
「アズラエルさんを誤解していたようですね。でも、よかった。そういう人で。人類はまだ捨てたもんじゃない……」
「色々、誤解があったようですね。すみませんでした」
もう一度風花さんは頭を下げる。
「いいんですよ、もう。でも、ドレッドノートの頭はちゃんと返してくださいね? ニュートロンジャマーキャンセラーの技術が地球連合に既に渡っているとしても、僕は、ウズミ様に渡したいから」
「はい! お約束します!」
「ありがとう。これで心残りなく……」
「え?」
「あ、何でもありません。じゃあ、僕はこのままイズモにいます。よろしくお願いしますね」
「はい、すぐに連絡を取ります!」
風花さんは元気に手を振って去って行った。


「……う……ぐ……」
急に、プレアさんが胸に手を当てて苦しみだす。今までにも苦しそうな様子を見せる事はあったけど……! こんなひどいのは初めて!
「どうしたの!? 大丈夫!? お医者さんを!」
「はい! すぐに呼んで来ます!」
リーアムが慌てて駆け出していった。
「あ……大丈夫……もう、落ち着いてきました」
「ひょっとしてプレア、本当は重い病気なんじゃないのか?」
ロウが気遣わしげに問う。
「ええ。困った事に、治せない病気なんです。不治の病ってやつですね」
プレアさんは、透き通った微笑で告げた。
「なんだよ! なんとかなるって思わなきゃあ、なんとかなるもんもなんとかならんだろう」
「残念ながら……僕に残された時間は残り少ない」
プレアさんはかぶりを振った。
「僕は……失敗したクローンなんです。クローンニング技術が不完全な……」
「なんだって!?」
「告白させてください。僕はメンデルで作られ、それから色々あってマルキオ様の所に辿り着きました。前々から発作は始まっていて、自分でも長くはないなと感じていたんです。でも、どうせならこの世に僕の生きた証を……なにか世の中のためになる事をしてから死にたい。そう思っていました。マルキオ様は、それを与えてくれたんです……だから、あなた達には感謝しても足りない。あなた達には話してもいいでしょう。ドレッドノートの頭部は広範囲型ニュートロンジャマーキャンセラーです。プトレマイオス基地に亡命したと言うモビルスーツにつけられている物は、デチューンされ、そのモビルスーツしか効果の無い物でしょう。ドレッドノートのニュートロンジャマーキャンセラーは通信の回復にも役に立つはずです。有効に役立ててください」
「プレア……」
ロウ達はそれきり言葉が継げず、俯く。
「私も告白するわ。私もメンデル生まれらしいの。あなたは言わば……私の弟よ。あなたは一人じゃない」
「――! ルナマリアさんが、ねえ、さん……?」
「そうよ。あなたがもしこの世からいなくなっても、私は絶対あなたを忘れない。約束するわ」
私はプレアを抱き締める手に力を込めた。
「ねえ、さん……ねえさん!」
プレアは私の胸に顔を埋めた。
私はプレアをぎゅっと抱きしめた。




「そう……わかったわ。引き続き情報を集めて頂戴」
『わかりました。では……』
地球連合軍特殊情報部長マティスは、部下が収集した情報を整理すると、取捨選択してアズラエルをはじめとする地球軍上層部に送る。
「ふぅ……」
マティスは憂いの篭ったため息をついた。
「結局ニュートロンジャマーキャンセラーはアズラエルに渡ったか……サーペントテイルに依頼したのが無駄になっちゃったわね。まぁ、いいか。プラントに対して使われても。……地球に対して使われないように注意しておけばね。それよりも……問題はザフトの秘密兵器よね」
状況はさらに悪くなっていた。
パトリック・ザラの情報に比べて、ジェネシスは強化されているようだった。特に防御力。全体にPS装甲を張り巡らせ、核攻撃でも破壊できるかどうか。
そして……ジェネシスの目標として地球が予定されていると言う。
そんな事とんでもない! 人類絶滅だ!
……実は、マティスは表には知られていない裏の顔を持っていた。
人類を存続させると言う大目的のため、時には戦争すら画策する組織――人類の大多数に幸福を実感させると言う目的を持つその秘密組織の名を『一族』と言う。
マティスはその『一族』の党首だった。
当然、人類全体を思いやる責任感が強い。
だが、この状況に及んでは彼女にやれる事はそう多くは無かった。
この戦争は『一族』が引き起こした、そう、ちょっとした動乱に終わるはずだった。
まさか人口千万単位の集団が、人類を滅ぼす力を持つに至るなんて悪い冗談だ。
どこでどう間違ってしまったのだろう。
ちらり、と一枚のリストに目をやる。
マティスが『一族』党首になってから作らせた物だ。
『一族』の不利益になるかもしれない恐れのある者達――マティスは彼らを「イレギュラー」と名づけた。
これでは……「イレジュラー」達への対処は後回しになりそうね。それにしても……
マティスは「イレギュラー」リストの一番上を見る。そこにはシーゲル・クライン――と記されていた。
一体シーゲル・クラインは何を考えているの? このままでは人類絶滅よ?




「そうなの!? 風花、うまく言ったのね?」
『うん、うまくいったよ! 無事ロウ達に会えて、プレアさんにも会えた』
「よかった……」
『それからね、朗報があるの。地球連合のアズラエルさんも、ニュートロンジャマーキャンセラーを軍事転用する気無いって!』
「なに? 風花、それは本人から聞いたのか?」
劾が思わず口を挟む。
『ううん、でも、アズラエルさんから直接そう聞いてるって、ルナマリア・ホークってお姉ちゃんがそう言ってた』
「劾、ルナマリア・ホークって言えば地球軍のコーディネイターのエースだよな?」
「ああ、まぁアズラエルはオーブのロンド姉弟と接触があったりと単純なコーディネイター排斥論者では無い事は確かだが」
『ルナお姉ちゃん、ずいぶんとアズラエルさんと親しそうな口ぶりだったよ』
「男は女に弱いって事かな? くひひっ」
酒の小瓶をぐびりとやりながらリードが笑う。
「そうか……アズラエルが愚かでなかったのは喜ばしい事だな」
ふ……と劾は微笑む。
「じゃあ、あなたはそのままイズモにいなさい。こちらの船でドレッドノートの頭届けに行くから。識別信号伝えておいてね?」
『うん、わかった。じゃあまた後で!』


「結局、俺達のやった事は徒労になっちまったなぁ、劾」
「ああ、しかし、あの時点ではしょうがない事だった」
「みんな! 話してるとこ悪いけどこちらに近づいているモビルスーツがいるわ!」
ロレッタが警告の声を上げる。
「追っ手か!?」
「わからない。識別コードに反応しないわ」
「風花からはうまく言ったと連絡があった……とするとザフトか?」
「わからん。地球軍も一枚板ではない」
「どっちにしろこのままじゃ補足されるぞ、劾」
「ああ。アレを第三者に渡す訳にはいかない! 出るぞ、イライジャ!」






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