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Lnamaria-IF_523第47話

Last-modified: 2008-04-03 (木) 09:11:00

「落ちろ! 落ちろ! 落ちろおぉぉぉぉぉぉ!」
「隊長……俺……あんたについていけて……」
「まだ戦えるじゃないか! ぐわぁぁぁぁ!」
「棺桶がまた一つ増えたか……俺ももうすぐそっちに……」
「本部! こちらスカウト4……もう駄目だ。支えきれん! 御武運を!」
「うああああああああっ!」
「ぐわああぁぁぁ……!」
「レンジャー9! 応答せよ! レンジャー9!」
「……応答途絶しました」
「レンジャー10!応答せよ! どうした!? レンジャー10!」


周囲を固めるモビルスーツの数が薄くなる。
前面に立つ続けて砲撃を続けていたドミニオンはついに、装甲に深刻な損害を受ける。
アズラエルはちっと舌打ちをして、アークエンジェルに先頭を譲った。
地球軍の砲撃が弱まるあぶない瞬間。その時、敵の攻撃が微妙に弱まる。
「増援だ! 増援が来たぞ!」
ザフトの反撃の矛先が新たに現れた艦隊へ向けられたのだ。
「アズラエル理事」
「なんです?」
「第七艦隊のサザーランド大佐が戦場に到着しました」
「そうですか」
ん?
アズラエルは怪訝そうな顔をした。ナタルがまだ何か言いたそうな顔をしている。
「どうしました?」
「それが……撤退しているべき損傷を負った艦も連れてきたみたいで」
「なんですって?」
「第七艦隊残存艦隊から通信! 全ての艦が、同じ言葉を……『幸運を祈る』全ての艦が、そう通信を送って来ています!」
「……おい、あの艦全然攻撃しとらんじゃないか」
「ん、どれ……当たり前だ。艦砲を全てやられとるぞ! とっとと撤退させろ! ――馬鹿な! そのまま体当たりしやがった!」
「ちきしょう、ちきしょう、やつら!」
「ああ……また一隻――!」
「直ちにサザーランド大佐に撤退命令を送れ! 支援砲火を!」
「はっ。……返信来ました。撤退する、との事です」
「そうか……」
ナタルは溜息をついた。アズラエルも浮いた腰を椅子に下ろす。
「……おい、どこへ向かって撤退しとるんだ?」
アズラエルとナタルは、その声にぎょっとしてモニターを凝視した。
ドミニオンのブリッジからも見える。第七艦隊残存艦全ての艦が、一隻残らずジェネシスへ前進を継続していた。
「通信を送れ! おい! 早く!」
副官が叫ぶ。
「――サザーランド大佐から通信です!『我れ、無事ヴァルハラに向けて避退しつつあり。支援に感謝す。幸運を祈る』以上です!」
次の瞬間、満身創痍の姿のアガメムノン級宇宙母艦「ドゥーリットル」がジェネシスの前面を守るローラシア級にぶつかり、散華した。
ドミニオンのブリッジは沈黙に満ちる。
「……前進、再開です」
アズラエルは感情を抑えた、だがわずかに震えた声で言った。
「敵を殲滅せよ。命令に変更は、ありません!」




「奴ら……やる!」
「負けるな!」
「第七艦隊を見習え!」
「地球軍の方が数は多いんだ! 一人一機やれば勝てる!」
「「イエッサー!」」
「O.M.N.I.Enforcer! O.M.N.I.Enforcer!」
「地球のために!」
「人類の未来のために!」
「一人一殺!」
「「一人一殺!」」


「なんだよ! なんで地球軍のやつら! 死ぬのをなんとも思ってないのか!?」
「母艦が……やられ……!」
「離れろ! 巻き込まれるぞ!」
「やったぞ! ……!? 来るな! 来るな! 来るなーー! ぐわあぁぁぁぁ!」
「……馬鹿な! 体当たりして自爆なんて、そんなの聞いてないよ!」
「母さん! 母さんーーー! ぅぇっ……」
地球軍のパイロットは損傷を受けてもモビルスーツが動く限り脱出しようともせず、ザフトのモビルスーツに突撃し、死出の道連れにと図る。
すでにザフトも軍人の消耗が激しく。新兵が少なからずジェネシス防衛線に動員されている。
彼らは地球軍の死に物狂いの攻撃に恐慌を引き起こしつつあった。


「はっはっは! どっちを向いても敵ばかりだ! こいつはいい!」
そんな中、相変わらず地球軍を殺し続けているザフトのモビルスーツがいた。
リジェネレイトだ。
だが……
「……ちっ、これで予備パーツは終わりかよ。ほんとにこいつら――恐れを知らん!」
絶え間ない地球軍の攻撃により、さしものリジェネレイトも破損が続き、とうとう、予備パーツが尽きた。
「一人一殺!」
地球軍のモビルスーツが、何機もビームサーベルを構えながら突っ込んでくる。
アッシュ・グレイは、こんな経験は最近すっかりなかった。すっかり、リジェネレイトの機能に頼ってしまっていた。いざとなったらパーツを変えればいいだけと思っていた。回避の腕が鈍っていた。もう、予備パーツは無いのだと言う焦りがアッシュ・グレイを襲う。
リジェネレイトの人型パーツにビームサーベルが突き立つ。
「――一人一殺!」
リジェネレイトの動きが止まった時、後ろからも地球軍のモビルスーツが切り込んで来、ついにコア・ブロックを切り裂かれる――
「…………へへ……何笑ってんだ……もう……いいんだ……て? ……一緒……ああ……行こ…………」
死の間際に何を見たのか――アッシュ・グレイの死に顔は微笑んでいた。
次の瞬間、リジェネレイトは核エンジンの暴走により他のモビルスーツより一際大きな爆発を起こして――宇宙に散った――




文字通り、地球軍の自らを磨り潰すかのような攻撃は続く。
「正面から来るぞ!」
「引き付けて一斉に撃て!」
「了解!」
「任せとけ!」
「地獄へ行けぇ!」
「恐れるな!」
「喰らえ! 喰らえぇぇぇぇ!!!」
「誰だ? たった一人でジェネシス前面の敵艦と戦っています!」
「ストーム1だ! まだ生き残っていたか!」
「ストーム1は、たった一人で敵戦艦と交戦中です!」
「スカウト5、ストーム1を支援する」
「この老い耄れの命などくれてやる! しかし、未来の芽を摘む事だけは絶対に許さん!」
「死なせるな!」
「うっ……ああああぁぁぁぁぁ!」
「やったか!」
「――やった! やったぞ! ストーム1がジェネシス前面のナスカ級を倒した!」
「見たか! 本部! やったぞ!」
「爆発に巻き込まれるぞ! 逃げろ!」
「馬鹿野郎! 続け! 付け入り時だ! 勝利の女神はお前達に下着をちらつかせているぞ!」
「「イエッサー!」」




「戦闘可能な味方は何隻残っておるか」
「まともなのは本艦を入れて25隻です。ハルバートン提督。アークエンジェル、ドミニオン、イズモ共に健在!」
「それだけあれば……十分だ。なんとしてもローエングリンをぶち込んでもらうぞ!」
「イエッサー!」
この段階で地球軍の被害――
大破・轟沈19隻。中破32隻。モビルスーツ、モビルアーマーの未帰還機は328機を数えた。
だが、とうとう……ジェネシスへの道は開けた。


ジェネシス目指して突出して突進を続けるアークエンジェルは、残存するザフト軍の周囲からの砲撃に曝され続ける。ついに、右足部のゴットフリートがぐずり、と船体内部に向かって崩れ落ちる。
だが、とうとう彼らはジェネシスを指呼の間に捕らえたのだ。
ジェネシスに作業用らしき穴が確認された時、マリューは叫んだ。
「総員退艦用意! アーガイル少尉、ケーニヒ少尉は救命艇の護衛を! カル・バヤン少尉、ホルクロフト少尉、コーザ少尉! アークエンジェルはジェネシス開口部に左足を突っ込ませ、ローエングリンを撃ちます! その後は令無くして開いた破孔からジェネシス内部に入り、内部から制圧しなさい!」
マリューは矢継ぎ早に命令を下す。
――衝撃――
ブリッジが大きく揺れる!
マリューは脇腹と左足に衝撃を感じた。
……気がつくと、ブリッジが……あちこち崩壊している。
「無事な……者は……いないか!」
「……ラミアス艦長、貴女の左足は役立たずになっていますぞ」
近くで倒れこんでいるリーが答える。マリューの左足の膝から下はつぶれていた。どうやら肋骨も折れたようだ。折れた所が突き出てしまったのか、血がじくじく滲んでくる。
「……そう、ありがとう。あなたの助言はいつも適切だったわね」
寒い……身体が冷たい。大分血を失ってしまったようね。
マリューは感覚の無くなった左足を他人事のように見つめる。
「大丈夫ですか!?」
「艦長さん……大丈夫ですか!?」
ノイマンとミリィが駆け寄ってくる。
「あなた達も無事だったのね。総員退艦を! リー大尉、指揮を執って!」
返事はなかった。
「……リー大尉は、もう……」
ノイマンが言いにくそうに告げる。リーはすでに口から血を吐いて事切れていた。
「そう、じゃあ、あなたが指揮を執りなさい。ノイマン中尉」
「艦長、貴女はどうなさるのですか?」
マリューに応急手当をしながらノイマンが聞く。
「座席に座らせて頂戴。ジェネシスにローエングリンをぶちかましてやらなければ気がすまないのよ」
「脱出を……」
「アークエンジェルはまだ戦えるわ。生きられる者は、行きなさい!」
「艦長、一緒に!」
「だめよ。これでも軍人よ? もう自分が長く持たないことはわかるわ」
マリューは笑って頭を振った。
「艦長! だめです! そんな! 一緒に! 私もここに残……」
「ハウ一等兵! 命令を下す!」
マリューがいきなり顔から笑みを消し、覇気のある声を上げる。
「は、はい!」
「しっかり生きて、それから死になさい。いいわね?」
再び、マリューはミリアリアに微笑みかける。
「ミリィ、艦長の意思を無駄にするな。脱出しよう」
カズィが額から血を流しながら、言う。
「あなたにも、世話になったわね。さあ、行きなさい」
マリューはにっこり笑う。
その顔に、翻意出来ない事を悟り、ノイマンは敬礼すると生き残った皆を促しブリッジを出て行った。


「総員退艦!? どうしたんだ?」
「……お前ら、さっさと行け!」
「え、機関長? だって!」
『何をしてるの? 機関室、全員退艦しなさい』
艦内通話機からマリューの声が響くと同時に、モニターにマリューの姿が映る。
「か、艦長!」
「ラミアス艦長、今若いのをおん出す所だ。あんたは?」
『私は、もうだめです。コントロールはブリッジからやります。あなた達は早く脱出を』
「儂は残るわ。いざって時は『ドキ! 年寄りだらけの戦場パーチー』をやろうと話し合っておったんでなぁ。艦長のあんたであっても、途中からの飛び入り参加者の言う事は聞けんよ?」
『……わかりました。では、よろしくお願いします、機関長』
マリュー・ラミアスは、にっこり笑った。
そして頭をぺこりと下げると、マリューからの通信は切れた。
「さあ、わかったろう? これから年寄りだけのパーチーが始まるんでな。とっとと出てけ」
「で、でも……アークエンジェルはまだ戦うんでしょう? だったら!」
「ああ、まだ戦えるさ。それは年寄りに任せてほしいのさ。行け!」


「なんですって!?」
アークエンジェルから通信が来た時、アズラエルは唖然とした。
「ええ。零距離からのローエングリンの発射、それしか手はありません。既に行動に移っております。ご了承を」
血が抜けて青ざめた頬に妙に晴れやかな笑みを浮かべたマリューに、アズラエルは既視感を覚えた。
アルベール――S2インフルエンザで死んだ、皮肉屋だったアズラエルの友人。
最後にビニールの薄い膜を隔てて会った時、『さっさと帰りなよ、休養の邪魔だ。治ったらまた遊ぼうぜ』と言って彼を病室から追い出した。あの時の笑顔に似ている。ああ、アルベール、ラミアス艦長、君はもう自分が死ぬ事を……
「……わかりました。全軍でアークエンジェルの突入を支援します」
「ありがとうございます!」
マリューは見事な敬礼でそれに答えると、通信は、切れた。
アークエンジェルが速度を上げたと言う報告が入る。
アズラエルはマイクをつかんで叫んだ。
「アークエンジェルがジェネシスに突入する! 残存全艦支援砲火を絶やすな!」






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