Top > Lyrical DESTINY StS_第12話
HTML convert time to 0.071 sec.


Lyrical DESTINY StS_第12話

Last-modified: 2016-12-04 (日) 20:02:04

罪のありかはどこだったのか?
罪とは誰の?
罪とは許される?
誰が罪と決める?
決められるわけがない。
すべてが、罪人なら。

 

二つの光が激しくぶつかっている。

 

色は赤と緑。
二つの光はそれぞれ、アスランとフィルだ。

 

「いいのか!?あんな子供なんてロートはすぐに黙らせるぞ!!」
フィルはぶつかり合うたびに、アスランに警告にも似た言葉を放つ。
「安心しろ!エリオは強い・・・アイツは“モーメント・エース”だからな!!」
今度は軌道をそらされぬように気を配りながら魔力刃を振るうアスラン。
「肩書きだけじゃ勝てねぇんだよ!!」
防御をしつつも、ニーズヘグを振るうフィルの攻防一体の攻撃にアスランは攻めあぐねていた。
「たぁぁぁぁぁぁ!!」
(シャイニング・エッジ)
アスランの左手にブーメランのようなものが出現し、ソレをフィルに投げつける。
「!?」
フィルは再び完璧な防御体勢をとる。

 

だが、その隙にアスランは行動を起こしていた。

 

(ファトゥム)
アスランの背中に、小型の爆撃機のようなものが現れ、ソレがフィルに向かう。

 

「二段攻撃!?」
さすがにフィルもこれには焦り、回避行動を取る。
「ここだぁぁぁぁぁぁ!!」
「!?」
上空に回避したのだが、さらに上からアスランが待ち伏せしてラケルタ・ソードを構えていたのだ。
「ちぃ!」
(アルム・フォイヤー)
細かい魔力弾が無数に出現し、ソレがアスランを迎撃する。
「き、かない!!」
だが、アスランはソレを物ともせず、フォビドゥンの装甲ごと魔力刃をたたきつける。
「ぐっ!!」
フィルもその攻撃を必死に耐える。

 

─ピシッ!

 

音がする。
フォビドゥンの装甲にひびが入り始めているのだ。
「く、そ!」
(このままでは、装甲が持ちません)
「わかってる!!」
アスランの攻撃を防ぎながらも、フォビドゥンと言い合いをするフィル。

 

この時、フィルはラウルの言葉を思い出していた。

 

「いいかいフィル?確かに、君たちは体内のレリックを発動させれば
並みの魔道士はおろか、Sランク以上の魔道士とも互角以上の戦いが
できるだろう・・・だが、反動も大きい・・・もし、戦うことになっても
私の許可なしでは使ってはいけないよ?」

 

「博士・・・俺は、あなたのためにも、皆のためにも!使います!!」
フィルは決意をする。
その決意が結果、家族を悲しませることになることも知らず。
否、考えず。

 

「フォビドゥン・・・レリック・ウェポン起動」
呟く言葉。
ソレを聞いたフォビドゥンは何も言わず、フィルにすべてをゆだねた。
「・・・ごめんな」
(モードフリー・・・全システム、エモーションリンクセット)

 

そう言って、フォビドゥンはAIを完全に落とす。

 

ソレは、アスランにも違和感となって伝わっていた。
「(なんだ・・・嫌な感じがする)」

 

アスランの予感は正しいのか、ソレを実証するかのように・・・アスランには
それ以上フォビドゥンの装甲を砕く事はできなかった。
「急に・・・硬く!?」

 

「邪魔だよ」
低い声が響く。
防御に回っていたはずのフィルは、そのままアスランを近づけず、ニーズヘグで振り払う。

 

「なぜだ!?」
アスランは今起きていることが信じられず、目の前のフィルに問いかけた。

 

「教える、義理も・・・時間もない!!」
だが、フィルは何も語らず、ただアスランに突っ込む。
「ちぃ!!」
(イージスシールド)
どうにかシールドを展開し、真っ向からフィルの体当たりを受けるが
それでもアスランは少し押し負けていた。
「くっ・・・」

 

「援護しなきゃ!!」
ソレを見ていたスバルたちはあまりの動きについていけず
ただ傍観していたが今アスランが劣勢ということに対して反応していた。
「・・・キャロ、私にブースト頼める?」
「ティア?」
唐突に言い出すティアナ。
スバルは不可解な顔をするが、キャロは何も疑わずただ頷く。

 

「クロスミラージュ!ファントム・ブレイザー・バレル展開」
(了解)

 

「ティア!?」
スバルが思わず声を上げる。
「大丈夫・・・クロスミラージュのコントロールが
しっかりしてくれてるおかげで、暴発とかにはならないわ」
ティアナはクロスミラージュを構えて、バレルを展開。
そして、銃口に収束し始める魔力は肥大化ではなく、凝縮していく。
「ファントム・ブレイザー・・・ペネトリートシフト」
魔力弾の先がだんだんと尖っていく。
(敵の防御力がアスランさんの攻撃を受け付けないほどの強度
・・・なら、私のこれでも貫ける可能性は低い・・・だけど、ゼロじゃない!)
ティアナはさらにカートリッジをすべて消費する。

 

「・・・くっ!!」
さすがに制御が困難になりつつあるのか、ティアナも苦悶の表情を浮かべている。
(マスター、大丈夫ですか?)
「なん、とかね・・・けど、失敗はできないわ」
(わかっています)

 

ティアナはしっかりと狙いを定める。
(アスランさん!今から、援護射撃行きます!)
(・・・了解、当ててくれよ)
ティアナからの念話を返し、アスランは機会を伺う。

 

「落ちろ!!」
フィルはアスランに対し、力押しで迫る。
「ぐっ・・・この!!」
どうにか、イージスシールドの特性を活かして、フィルの勢いを利用し弾くアスラン。
「ちぃ!!」
盛大に舌打ちし、体勢を整えようと自身にブレーキをかけるフィルだったが
すでに彼はティアナの射程に入っていた。

 

「ここ!!」
照準はすでに定まっており、後は引き金を引くだけ。
そして、ティアナは引き金を引く。
「ファントム・ブレイザー!ペネトリートシフト!!」
高密度かつ、貫通力に優れているであろう弾丸がまっすぐフィルに向かっていく。
「いっけぇぇぇぇぇ!!」

 

「なめるなよ!!」
フィルは軌道修正し、体をティアナのほうに向ける。
だが、フィルもすでにティアナの放った魔力弾を回避する術はなく、防御に徹するしかなかった。

 

フィルが防御に回った瞬間、勝ったと思い、思わず口元が緩んでしまう。

 

だが、ソレはティアナにとって大きな油断だった。

 

「忘れんな!防御はすべてを受け止めることだけじゃねぇんだよ!!」
そう、フィルのフォビドゥンには回避しなくとも絶対に防御できるシステムが搭載されているのだ。
「ゲシュマイディッヒ・パンツァー展開!!」
フィルを守るフォビドゥンに先ほどまでの微弱な光ではなく
少し強めの光が帯び、ティアナの放った魔力弾を屈曲させる。
「嘘!?」
あまりの事態に、ティアナも落胆の色を隠せない。

 

「ウルティマ・フォビドゥンのコンセプトは決して非の打ち所がない盾!
貫くこともできぬ最強の盾なんだよ!!」
フィルの言葉に、アスランとティアナは少なからず、動揺している。
目の前の敵は単純な防御能力ではなく、いかなるものをも通さず、受けず
ただ弾くこともできる非の打ち所が見つからない防御。
これを貫く術をアスランたちは持ち合わせていなかった。

 

「ほぅ・・・面白いな、非の打ち所がない・・・か?」

 

声がした。

 

ソレは、その場にいた全員の耳に届いていたが、一体どこからしたのかが、わからなかった。

 

「・・・ヴィンター一等空佐?」
スバルはいち早く声の主が誰であるかを理解するが。

 

「どこだ?!」
フィルも全方位に神経を配り、声の主を探す。
しかし、声の主は見つからない。

 

(コロイド・アウト)

 

「!?」

 

突然だった。
まるで、初めからそこにいたかのように、ヴィンターは黒き鎧を纏ってフィルの後ろに佇んでいた。

 

「シール・グレイプニール!」
一瞬で、フィルの周囲にロープのようなものが現れ、ソレがフィルを縛る。
ロープの先には、三方向開閉式クローがついており、そのクローが
フィルのバリアジャケットに深く食い込む。
「ぐ・・・き、貴様!」
フィルは完璧に押さえつけられ、身動き一つ取れない。

 

「暴れても無駄だ。俺のシール・グレイプニールはいかなる者でも抜け出す事はできない」
「くっ!」
フィルを引っ張ったまま、ヴィンターは空中から地面まで下がり、フィルを地面にたたきつける。
「ぐぅ!!」
そして、フィルの頭に足を乗せ、思い切り踏みつけるヴィンター。

 

「言え、お前らの大元は誰で、アジトは?構成人数は?」
ヴィンターに容赦はなく、見ているアスランたちも視線をそらすほどに
厳しくフィルに尋問をしている。
「誰が、言うものか!!」
ヴィンターの足を跳ね除け、ヴィンターを睨むフィル。
「はっ・・・強気結構。だがなぁ、俺はそんなに優しくないぜ?」
今度はフィルの髪の毛を掴み、自分の視線まで持ち上げるヴィンター。
「・・・ぺっ!」
フィルの口からつばが飛び、ソレはヴィンターの右頬に付着する。
「・・・・・・死にたいのか?」
ゆっくりとフィルの唾を拭い、見開いた目は尋常ではないと感じさせる。

 

「ヴォルケ一等空佐!!もうよせ!」
その光景を見かねたアスランもたまらず、ヴィンターの肩を掴み、その行為を止める。
「・・・ち」
アスランの制止にヴィンターは舌打ち一つすると、フィルを放す。
そのまま地面に再び伏したフィルをティアナが軽く介抱する。
「大丈夫かしら?あなたも、ケンカを売る相手は選びなさい」
呆れ顔で言うティアナは、まるでさっきまで敵対していたとは
思えないほどの態度でフィルに接する。
「うるさい・・・放っておけ」
フィルはそっぽを向き、ただ憎しみを込めた視線をヴィンターに向けていた。

 

「・・・なんだ?手も足も出せない奴が鬱陶しいことしてんじゃねぇよ」
視線に気づいたヴィンターはまるで見下したようにフィルを射る。
フィルは何も言い返せず、ただ悔しさからか、歯を食いしばりながら俯く。

 

─支部・玄関─

すでに辺りの壁がボロボロになり、地面にはいくつもの穴が開いていた。
そんな状況の場所に、一人の少年は息を切らせ立っており
もう一人の黒いバリアジャケットの少年は、地面に伏していた。

 

「ふぅ・・・もう、終わり・・・ですか?」
かなり消耗しているのか、エリオは行きも絶え絶えだった。
そして、問いかけられたロートのほうは反応はない。

 

(マスター、限界時間です・・・フィアーフォルム、解除します)
エリオも限界だったのか、ストラーダの意向でドンナー・フォルムは
解除されて髪型も普通のエリオに戻り、軽く一息つくエリオ。

 

「クク・・・フハハ・・・ハハ!!」
「!?」
だが、ソレは失敗だった。
なんと、ロートは突然笑い声を上げて、立ち上がったのだ。
「あーあ!こんな所で、使うつもりなんてなかったのにさ!」
ギラリと、エリオを歪な瞳で見つめるロート。
「お前はもう限界だろ?」
口から流れる血をなめとり、ロートは砕けた鎧と、破けた服を修復し始める。

 

「なっ!?」
驚きの声を上げ、少し後ろに下がるエリオ。
「見せてやるよ?俺の・・・本気」
額から流れる血のせいか、ロートを照らす月の光で、彼の表情はとても残虐な顔に見えた。

 

「ストラーダ!!」
(了解、フォルム・フィアー再起動)
再び、髪の毛を逆立たせ、目つきをきつくし、雷を纏うエリオ。

 

「へぇ?なら、覚悟決めろよ!!スラッシュ・レイダー!!」
(了解、レリック・ウェポン起動開始・・・マスターとエモーションリンク開始、システムオールグリーン・・・頑張ってください、マスター)
スラッシュ・レイダーの応援の言葉が、ロートに軽くのしかかる。
しかし、ロートはソレを自身の決意に上乗せさせ、エリオを見る。

 

「・・・」
エリオは今、目の前で対するロートに恐怖を覚えていた。
彼は、“心”ある犯罪者をまだ知らない。
いずれも知る犯罪者たちには“心”がなかった。
というより、感じ取れなかった。

 

「あなたは、どうしてそこまで戦えるんですか!?」
だから問いかけた。
その、あいまいになってしまった自分の気持ちを落ち着かせるために。

 

「家族のためさ」
ロートは静かにそう言い放った。
ソレと同時に、二人は動き出す。

 

「そらぁ!撃滅だぁ!!」
思いっきりミョルニルを弾き出すロート。
ソレは、先ほどまで放たれていた威力とは比にならず、エリオも左の盾で受け止める。
「ぐっ・・・おも、い!」
予想以上の衝撃に、エリオも後退してしまう。

 

どうにか、ミョルニルの勢いを止めるエリオだが、ロートの攻撃はそれだけでは終わらなかった。
「まだだぁ!!」
止まったはずのミョルニルに魔力を送るロート。
すると、ミョルニルのハンマーのブースターに火がつき
再び推進力が生まれ、エリオを押し始める。
「なっ!?」
「爆発しろ!!」
「!?」
ロートの掛け声に、本能が回避を告げるが、エリオはミョルニルの勢いに
それから離れることができなかった。

 

そして、ミョルニル本体はエリオを押さえ込みつつ、彼を巻き込んで爆発する。

 

「カハッ!」
あまりの爆発に、エリオは意識が飛びかける。
「まだまだぁ!!」
ロートはさらに踏み込み、エリオの腹部に強烈な一発を入れる。
ソレにより、エリオは吹き飛び数回地面をはね、転がる。

 

(・・・限界、ドンナー・・・解除)
限界が訪れたのか、ストラーダの剣は砕け散り、エリオが纏っていた雷も大気に分散していく。

 

その様をただ見つめるロート。
その目には殺意は映っていない。
「・・・褒めてやるよ。お前みたいなガキが、レリックまで使わせやがって」
倒れたエリオに賞賛の言葉を送るロート。
そして、レリックの力をオフにし、エリオに背を向け彼は遠ざかっていく。

 

この時、エリオは意識があった。
しかし、体が動かず、目も開けられない・・・ただ遠ざかるロートに何もできないのだ。

 

ただ意識が遠のき、走馬灯のようなものが見える。
(・・・たて!)
エリオは声を聞いた。
現実とは違う場所で目を開く。
そこに映る自身と瓜二つの少年。
(君は、立たなきゃいけないよ・・・)
少年はエリオにとても厳しい表情で言った。
「・・・あ、う」
その言葉にエリオは失いつつある意識を少しだが、取り戻す。
(だって!君は・・・君は!一人じゃないだろ!?)

 

─ドクンッ

 

鼓動が走る。
ソレは少年の言葉によるものなのか、わからない。
ただ、エリオは意識を取り戻した。

 

「・・・なんでだよ?」
ロートはエリオに背を向けたまま、問いかけた。
その問いかけは・・・ゆっくりと立ち上がるエリオに向けられる。
「僕も・・・負けるわけには、いきませんから」
苦しくも、笑ってみせるエリオ。

 

「そうかよ。そこまでの決意があるんなら、ここからは殺し合いだ!!」
厳しい表情のまま、ロートはエリオのほうに振り返り
再び自身の中のレリックの力を解放するロート。

 

だが、今まさにエリオに飛びかかろうとするロートだったが、その彼の腕を掴む者が現れる。
「そこまでにしておけ、ロート」
「!?」
聞きなれているが、まだ来れないはず。
そんなことを思いつつ、ロートは後ろを振り返る。
そこにいたのは、黒い髪と赤い瞳。不機嫌そうな表情を浮かべた少年。
しかし、管理局には脅威として存在する“赤い翼”
シン・アスカだった。

 

「シン!?」
ロートは思わず、シンの名を叫ぶが・・・シンはロートの顔を思いっきり殴りつける。
「ぐっ!」
そのまま、地面に腰をつくロート。
「何すんだシン!!」
殴られたことに対し不満が爆発し、ロートはシンを怒鳴る。
だが、シンは動じず・・・エリオのほうを見ている。
「ロート、レリックを持って帰れ・・・ここからは俺がやる」
「無視かよ・・・けど、お前左腕・・・」
ロートが心配そうな目でシンの左腕を見る。
「何・・・消耗しきった相手を殺すのに、両腕はいらない」
シンは左腕をぶらぶらさせ、右手にアロンダイトを構える。

 

「・・・ストラーダ、僕死んじゃうかな?」
エリオは自身の前にいる敵が二人に増えたことにより、多少絶望感がひしめいていた。
しかし、表情には出さず、自身のデバイスに問いかけていた。
(私は、あなたを死なせるつもりはありません・・・優先するべきは、あなたの命です。あなたは任務のために命を張る年齢でもないでしょう?)
ストラーダは厳しくも優しく、エリオに諭す。
エリオはソレを笑顔で享受して、前を見る。
「なら、二人で戦おう・・・僕たちはまだ、死にたくないからね」
(・・・リカバリー開始。ドンナー・フォルム3分使用可能)
「行くよ、ストラーダ!!」
(了解!)
再びストラーダのドンナー・フォルムを発現させるエリオ。

 

だが、すでにシンは動いていた。
エリオがドンナー・フォルムをセットした瞬間に、ものすごいスピードで
エリオのほうにダッシュし、アロンダイトを突き出す。
「死ねぇ!!」
瞳孔が開ききった光のない瞳でエリオを捉えるシン。
シンの刃はエリオの体にめり込んでいく。

 

そして、エリオの体を貫通して、アロンダイトはエリオの背中から生えるかのような光景となる。
「かかり、ましたね」
だが、エリオは笑っている。
シンもそれにはっとし、急いでエリオから離れようとする。
(サンダー・シャドー・・・シュトゥルムシフト)
瞬間、エリオだと思われたものは破裂し、雷の嵐となってシンを吹き飛ばす。
「ぐあぁぁ!!」
意表を疲れたこの攻撃にはさすがのシンもダメージを受け、壁にたたきつけられる。
「シン!!」
ロートは思わず、シンに駆け寄る。
「おい!大丈夫かよ!!」
やはり、病み上がりということもあって、ロートもシンを心配する。
「くっ・・・アイ、ツ!!」
シンはロートの姿を視界に入れず、エリオの姿を探す。
だが、いくら探しても、気配すらもうその場にはなかった。
「・・・どうやら、今のは撤退用の技だったみたいだな」
「うる、さい!!」
シンはロートの言葉すら跳ね除け、自身の前に突き刺さる
アロンダイトを力任せに抜き、手中から消す。

 

「ハハ、うまくいったよ・・・ストラーダ」
どうにかシンたちから逃げ切ったエリオだが。
(今回の戦いで、色々と改善面がありそうです)
「ホント・・・だね」
満身創痍のエリオ。
右目は開けていられないのか、閉じており、ストラーダもフォルムがボロボロだった。
「とり、あえず・・・少し、休もう」
そして、エリオはそのまま眠りについてしまう。
(ジャマーは展開しておきます。今は、休んでください)
ストラーダは最後のカートリッジを消費し、エリオの周りにエリオが
シンたちに発見されぬよう、仲間たちに発見できる用のジャマーを張るのだった。

 

「ロート、俺はフィルのところに行く。お前は確保したレリックを持って行け」
エリオを逃したことに、まだイラついているシン。
とりあえずロートに指示を下すと、ゆっくりと地面から足を離していく。
「待てよ!俺も行く!」
「・・・聞こえなかったのか?邪魔だって言っているんだ」
シンの瞳に射られたロートは思わず、腰をぬかしてしまう。
「わ、わかったよ!」

 

そう言って、ロートは転移魔法を展開し始める。
ロートが転移魔法を展開し始めたことと同時にシンはスピードを上げて空をかける。

 

その頃、アスランたちは、フィルに軽い尋問をしていた。
「名前、出身世界を言ってもらおうか?」
「はっ・・・誰が言うかよ」
フィルは口を割らず、憎まれ口のみが彼の口から出ていた。
アスランも答える気がないフィルにそれ以上は無駄だと思い
何も言わないでおこうか迷うが、ひとつ浮かんだことを口にする。
「お前は・・・レリックと融合したのか?」
その言葉には、フィルだけではなく、ヴィンターやフォワードたちも驚いていた。
「おい、ザラ・・・どけ」
質問に返答はなく、代わりにヴィンターがアスランを押しのけてフィルの前に立つ。
「貴様・・・レリック・ヒューマンか?」
「・・・気づくのが、遅いんだ。ナンバー9」
フィルは哀れむようにヴィンターを見る。
一方のヴィンターはその顔を不可解さで埋めていた。
「そっか、覚えてないんだな・・・一体、何度壊されたんだ?」
その会話に、アスランはフィルとヴィンターの両方を見るが、いまいちの見込めなかった。
「共鳴に苦しんだはずだよな?お前の中にある・・・レリックが!」
「!!」
その一言に、アスランをはじめスバルたちもヴィンターに視線を集める。
だが、ヴィンターはそんな事は気にせず、フィルの胸倉を掴んで持ち上げる。
「俺は・・・ヴィンター・ヴォルケだ」
「悲しいな?“プロジェクトD”の産物として生まれたお前が幾度も壊されて
今は管理局の犬・・・博士が聞いたら、きっと泣くぜ?」
フィルはヴィンターをまるで使い物にならなくなったもののように見つめる。
「く・・・なに、を」
フィルの言葉に少しずつだが、奥底に何かが巡るヴィンター。
その感覚を否定するように、顔に手を当て、悶え始める。
「ヴィンターさん!」
思わず、スバルが駆け寄る。
「う、ぐ・・・熱い・・・いや、だ」
この時、ヴィンターは自身が知らない、自身の過去を垣間見ていた。

 

「それ以上、しゃべる事はない・・・帰るぞ、フィル」
「!?」
上空から声が聞こえたと、思った瞬間・・・ヴィンターに向かい魔力砲が放たれる。
「危ない!!」
アスランはどうにかヴィンターをかばい、障壁を張る。
「やっぱり、いつでも俺の前に立ちはだかるんだな、アンタは」
「?!」
アスランの横から声がする。

 

その声は、アスランにとって驚愕的なものの声だった。
「シ・・・ン?」

 

「あぁ・・・久しぶりだけど、死んでくれ」
狂気の笑みを浮かべ、アスランに静かにアロンダイトを突きつけるシン。
「死ねないさ・・・まだ」
アスランは抵抗はしない・・・しかし、その目にはたぎる何かがあった。
「・・・まだ、本調子じゃない・・・こんなときに、アンタを殺しても意味がない」
そう言ってシンはアスランからアロンダイトをゆっくりと下げる。

 

「そぉか!そりゃよかった!!」
だが、アスランの後ろから声がした。
同時に、アスランの右頬をかすめて、ヴィンターのグレイプニールがシンに向かう。
「お前を拘束する!!」
そして、フィルと同じようにシンを絡め、締め上げる。
「はっ!“赤い翼”!!てめぇの命運もここまでだな!!」
「しゃべんな」
一言とともに、鋭い目がヴィンターを射抜く。
「へぇ・・・威勢だけはいいな!」
ヴィンターはそのままシンをグレイプニールごと振り回し、投げ飛ばす。
「はっ!」
だが、シンはグレイプニールのロープをたやすく切り裂く。
「なっ!?」
そのままシンは静かに着地し、視線をヴィンターに向ける。
「ち!ブリッツ!!」
(トリケロスセット)
ヴィンターの右腕が光り、そこに巨大な盾のようなものが現れる。
「ランサーダート!!」
盾内部には三本の杭が内蔵されており、ソレがシンに向け放たれる。

 

「フィル・・・帰るぞ」
だが、シンはそんなものは気にせず・・・ただ、そう呟いた。
「ああ」
フィルも一言返事をする。
ソレを聞いたシンは、アロンダイトの切っ先を向かってくる
ランサーダートに向け、その先に魔力をため始める。
「何を!?」
「爆ぜろ、ケルベロス」
一瞬で巨大な魔力が切っ先に集中し、放たれ、ランサーダートは跡形もなくなり
ケルベロスの光はヴィンターにまで到達する。
ヴィンターはソレに対し、上にはねてケルベロスを回避するが
その回避した場所にはすでにシンが先回りをしていた。
「何!?」
ヴィンターは反応が遅れてしまい、シンはそのままヴィンターの顔面に拳を直撃させる。
「ぐっ!!」
吹き飛ぶヴィンター。
シンはそんな彼を見下したまま、フィルと合流して転移魔法を発動し、その場を去っていった。

 

戦いは結局、敗北という形になってしまった。
敗北から学ぶ事はあると、人はいうけれど・・・一体ソレは、どれだけの人が学べるのだろう?

 

今回の戦いで幸いにも死者は出ず、少しの人達には喜びもあった。
しかし、それ以上に怒りを買うこともしばしば。

 

─時空管理局本局・高官室─

 

「一体何をしているんだ!?何のために貴様らを呼んだと思っている!?」
レリックを奪われてしまったことに対し
管理局少将ゲーエン・アードリガーにねちねちといびられていた。
「申し訳、ございません」
アスランをはじめ、第5支部のレリック防衛に関わっていた者たちは
深々と頭を下げることしかできなかった。
「命に代えても・・・弱い者たちへの災害を防ぐことが貴様たちの使命だろう!?
ソレを真っ当にできなくては、意味がないだろう!?」
任務失敗において、存在否定までされてしまう始末。
さすがに頭に血が上りそうになるアスランだったが、どうにかこらえる。

 

「・・・そこの娘」
「はい?」
ふと、ゲーエンはティアナのことを指差す。
「お前、名前は?」
何か意味があるのか、ゲーエンはティアナに名前を聞く。
「ティアナ・ランスター二等陸士であります」
とりあえず、名乗りを上げるティアナ。
そんな彼女の名前を聞いたゲーエンは目を見開く。
まるで、亡霊でも見ているかのような・・・そんな感じで。
「そうか、道理で似ているはずだ・・・ランスターの生き残り、か」
今度はティアナのことを見下すように見るゲーエン。
その視線に、ティアナは怯えにもにた感情と同時に、自分の家のことを知っているのか?
ということが渦巻いていた。
「あ、あの!」
そして、口に出そうとするが。
「まぁいい!貴様らに期待などできるはずもないからな・・・はっ」
なぜか鼻で笑い飛ばされ、下がれ、という指示を出されてしまい
何も聞けずに部屋を後にする。

 

部屋を出てからも、ティアナは多少昂ぶった様子だった。
「どうかしたの?ティア?」
スバルが心配してティアナに問いかける
「う、うぅん・・・なんでも」
「嘘だよ!」
なんでもない、と言おうとしたのだが、ソレはスバルに一蹴される。
「ティア、何か・・・凄く考えてる」
どうして、こういうときだけ鋭いんだ、と心の中で思うティアナ。
ため息を一つつき、そのまま彼女は歩を進める。
「ちょっとティア!」
「うっさい!アンタには関係ないのよ!」
この時、ティアナはとても辛そうな顔をしていた。
ソレがスバルにはたまらなくイヤで、だから彼女は問いかけたのだ。
苦難も幸福もともにした相棒だからこそ、隠し事などされたくないのだ。
「・・・ごめん、今回は・・・話せそうにない」
ティアナはまるで関わって欲しくないかのように、そう呟いた。

 

「ティア・・・」
ティアナが前を歩いていくのを、スバルは立ち止まって見送ることしかできなかった。
スバルの目に映るティアナの背中は何か、危うさすら覚えた。

 

「スバル・・・」
ポン、と肩にぬくもりを感じる。
「・・・ザラ、執務官」
ソレはアスランの手だった。
「アイツ、きっと・・・迷ってる。少将の言葉に、何か・・・感じたんだろう。支えてやれ」
「は・・・はい!」
スバルは元気よく返事をし、眩しいほどの笑顔をアスランに見せ、ティアナの後を追うスバル。
「・・・転ぶなよ?」
その後姿に、少しの配慮を込めてそう呟くアスラン。
スバルたちがいなくなり、一人になったアスランも、とりあえずエリオの見舞いに行くことにした。

 

─???─

 

パチンッという音が二回ほど響く。
「つ・・・」
「いってぇ〜!」
フィルとロートは帰ってきていきなり、ラウルに強烈なビンタをもらっていた。
「君たちは・・・そんなに死にたいのかい?!そんなに私を悲しませたいのかい!?」
珍しく、声を張り上げているラウル。
リリウェルは怯えながら、ラウにしがみついている。
かく言うラウもこれほどラウルが怒るとは思わず、少し冷や汗を浮かべていた。
シンは腕を組んだまま、黙っているだけだった。
「けど!レリックは回収できたし!」
ロートが反論する。
その一言に、その場にいる全員がごくり、と生唾を飲んだ。
「私がいつ!君たちのケガと引き換えに、これを望んだ!?」
だん、とテーブルに拳をたたきつけるラウル。
「博士、リリウェルが怯えています・・・あまり、大きな声は」
思いかねたラウはラウルに声をかける。
「む・・・す、すまないリリウェル」
それほど熱くなっていたのか、ラウルはリリウェルの頭をなでる。
「博士・・・もう許してあげては?彼らも、あなたのためにしたことです」
ラウが言うと、ロートとフィルは少し明るい顔をする。
「・・・博士、勝手な行動を取ってすいませんでした」
今まで黙りこんでいたフィルが謝罪の言葉を口にする。
ソレを聞いたラウルは、少し考え込むしぐさをする。
「博士・・・俺、もう一度会いたいやつがいる。戦いたい・・・そいつと、命を懸けて」
ロートは、自身が今思っていることを・・・純粋な気持ちをラウルに告げる。
それには、ラウルも目を見開いて呆然としてしまう。
「初めてなんだ・・・こんな気持ち。俺、皆意外とあんまり話したことないからさ
・・・名前聞くの、忘れたけど・・・俺より小さい雷を纏った子供!
俺、アイツともう一度戦いたい!」
成長・・・今のロートに一番合う言葉だろう。
ライバルと呼べる存在を見つけたロートは、強くなれる・・・ラウルはそう予見した。
ソレが、果たしていいことなのか悪いことなのかはわからない。
だが、ラウルは少しうれしかったのだ。
「そうか・・・いいだろう。今回の事は許す・・・
だが、調整のために少し診察させてもらうよ?」
いつの間にか、ラウルは笑顔になっており、コーヒーを入れるためにコンロに火をつける。
「あ〜シン君?君もまだ調整を受けてもらうよ?」
「ああ」
シンはただ返事をし、その場を後にする。

 

「そうだ・・・博士」
フィルが口を開く。表情は少し厳しい。
「なんだい?フィル?」
ラウルはコーヒーを入れる手順をふみながら返事をする。
「ナンバー・・・9と交戦しました」
パリン、とものの割れる音がする・・・ラウルがコーヒーカップを落としたのだ。
「なん・・・だって?」
先ほどまでとはまるで顔色が違うラウル。
声にも力はなく、振るえが止まらなかった。
「おそらく・・・ナンバー7以降の者たちは管理局で利用されています
・・・俺のことも覚えていなかったし、おそらく・・・何回か“壊されている”」
やるせない顔をしながら、フィルは語る。

 

ソレを聞くラウルは、やはり・・・嫌な顔をするしかなかった。
「そっか・・・私の責任だ」
ラウルは皆に背を向け、テーブルに手を着く。
「博士?」
リリウェルが心配そうに声をかけようとするが、ソレはラウに止められる。
「今は・・・そっとしておこう?」
「・・・いや、だよ!」
だが、リリウェルはラウの手を振りほどいてラウルにしがみつきにいく。
「博士!」
「・・・なんだい?リリウェル?」
ラウルは目尻に涙をためながらも、笑ってリリウェルのほうを向く。
「皆、家族・・・だから!皆で、どうにかすれば・・・いいんだよ!」
必死に言葉を紡ぐリリウェル。
リリウェルは家族の中で一番幼い・・・だから、純粋でもある。
その純粋さを守るためにも、ラウルは涙を拭う。
「よし・・・もう、大丈夫だ・・・ありがとう、リリウェル!」
また一つ、心に現れそうになった影が消えていく。
ラウルはリリウェルを抱きかかえ、肩車する。
「あはは、高い高い!」
リリウェルは大はしゃぎし、その光景をほほえましく見つめるラウたちだった。

 

アスランたちは、レリックを守り通すことができなかった。
ソレは、責められる事ではあるが、咎められることではない。
次に活かすかどうかが、ソレを決めるのだ。
次の同じ失敗がなくなれば、ソレはそれでいいのだ。
それでも、理解を狭めるものは存在する。
この悲しみは、誰が理解しようと・・・変える事などできないのだろう。
故に、散るものは・・・出てくる。

 

次回 散り行く“黄金の意志”

 

ただ、奪わぬ戦いを・・・して欲しかっただけなのに。