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MH-seed-第二話

Last-modified: 2011-06-08 (水) 23:49:40
 

〜ユクモ村

 

ロックラックの街へ飛脚が飛んだ二日後。
「これがギルドの登録証なんですか?」
「その通りです。それだけは絶対に無くしちゃダメですよ?」
二日経って、シン・アスカを始めとする三人組は集会浴場からの召集がかけられ、
ハンターズギルド・ユクモ村出張所窓口の前に立っていた。
夕日の光が村の向こうの山から見える程度になった時の事である。
受付嬢のコノハがにっこりと笑いながら、シンの手にカードと手帳のようなものを手渡す。
そしてレイ・ザ・バレル、ルナマリア・ホークにも、同じ木目調のそれを渡し、
それが、ハンターズギルドに登録した正式なハンターの証『ギルドカード』であると説明する。
何の縁も無く放り出された世界で‘職にありついた’という、言い方は悪いが喜ばしい事実。
しかし、三人は妙に居心地が悪かった。
自分達を取り巻いている鎧姿の男女の存在だ。
先任のハンター達が歓迎ムードで彼らを取り巻いていたのだが、
こうして物騒な物を背負った人間達が、
ずらっと周りにいれば落ち着かないのは当たり前だった。
この人達からすれば当然すぎて何も感じないのだろうが、
武器と言えば拳銃、そしてMSと言うのが当たり前だった彼らには、正直キツイ。
「このカードは、ギルドに登録されたハンターだという証明です!
 無くしたりなんかすると、『モグリ』扱いされることになりまぁす」
「『モグリ』…って、なんか嫌な予感するんですけど」
ルナマリアのこめかみを、冷や汗が一筋流れる。
基本的人権といった憲章そのものが存在しない(かもしれない)世界で、
巨大組織の定めたルールを破った人間がどうなるかを考えれば、
「モグリのまま狩猟などを行うと、密猟者扱いとなって、
 ギルドお抱えのギルドナイト達が直々に‘おしおき’を下すのです!」
おしおきとはなんぞやと考えたくないがために、
逆に顔に疑問符を浮かべていたシンの肩を、ポンポンと叩く者がいた。
振り返ってみると、あごひげの立派な中年ハンターが、
首をスッと切り落とすような仕草を見せてくれた。
((( ですよねぇ……… )))
青ざめる少年少女を見、コノハはクスクスと笑い、
「そこまでやることは無いと思います。
 せいぜい牢屋にぶち込まれるくらいかなぁ」
「その点については解りましたが、次に進んでくださいませんか?
 我々はまだ、このカードについて詳しく知らないのです」
レイがコノハに説明を続けてくれと促す。
このままでは別の方向に逸れていってしまいそうだと判断したのだ。
コノハもハッとなって、話をギルドカードに戻した。
「あ、そうでしたね、ごめんなさい。
 その『ギルドカード』なんですが、大切な事なのでもう一度言いますね。
 見ての通り、それは皆さんの身分証明書になります。
 渡した別の手帳にはホルダーがありまして、そこに入れておいてください。
 そして手帳には、色々と記帳できるようになっています」
コノハが手帳のサンプルを取り出して、どういったことを書くのかの説明に入った。
ギルドカードは、文字通りギルドに登録されているハンターの情報が記載されたカードである。
ハンターの現在のランクと、受注し成功させたクエスト(依頼)の数。
そしてその受注元の詳細が記載されている。
依頼を数多くこなすとカードの色が変更され、
そのハンターがどれほどの実力なのか解るようにもなっているそうだ。
次に手帳のページをめくって、使い方の説明に入った。
地域一帯の生態系の保持も考えなければならないため、
ハンターはこの手帳にモンスターの狩猟記録や、依頼中の日記などもつける義務がある。
そして使用している武器の種類やその回数なども記録する事が出来、
特殊な目標等を達成した功績として、勲章が授与される事もあるのでそれの保管も可能。
訓練所での演習記録も残すことが出来る、シン達の世界で言う『システム手帳』であった。
「それでは! 新しいハンターさん達の誕生でぇす!」
ひとしきりの説明があった後、コノハは両手を上げてバンザイをする。
それと同じくして、周りのハンター連中も雄叫びを上げ始めた。
ただでさえ人が多くむさ苦しい状態だったのに、さらに熱気が上がり、
そういうのが苦手な人間はそそくさと人混みを離れて行く。
シンとレイの首に丸太のような腕が回され、筋骨隆々のハンターが、
新入り歓迎会の準備を進めていたらしく彼らを引きずって行く。
「え! ちょ……!」
シンとレイの鼻腔に、強烈なアルコールと硫黄の臭い、
そして焼けた肉やドレッシングのツンと鼻を突く香りが入ってくる。
ただし量が尋常ではなく、ただ此奴等が、
飲み食いする理由を欲しがってただけだと直感で理解した。
「る、ルナマリア!」
血相を変えたレイが、ルナマリアの方へ顔を向ける。
このままでは、恐らく飲むことを強制されるのに間違いない。
当のルナマリアはと言うとコノハを始め、
この村に滞在する同じ年頃の女性ハンター達、そして受付嬢らと、
すでにおしゃべりの真っ最中でシンとレイに構っている気が無いようだった。
「「 ルナ(マリア)ぁあああああ!? 」」
男二人は抵抗むなしく、筋肉と鎧と肉の森に連れて行かれる事となった。
(あたしまで巻き込まれたく無いわよ)
と彼女が内心そう思っていたことは、誰も知らない。
それから約4時間、日の光が全く見えなくなり、
依頼から帰って来たハンター達が疲れを癒すために温泉へと入り始めた頃。
「「 うぅう〜…… 」」
少年2名は、カーッと赤くなった額の上にタオルを置いて、
呆れ顔の少女が見下ろす中、うめき声を上げてベッドで倒れていた。
二人に水の入ったコップを渡し、ルナマリアは、
「全くもう、断るとかあまり飲まないとか考えなかったの?」
「断れる状況かよ、アレが……」
「分厚い筋肉を持った漢共に囲まれれば嫌でもこうなるぞ……」
シンとレイは彼女を睨みつけ、恨み節のように言う。
「はいはい、悪かったわよぉ。
 でも二日酔いにはならないでしょアンタ等は」
薄情にも、ルナマリアは一通りの事を済ませるや、
自分に与えられることとなったマイハウスの部屋へとさっさと戻ってしまった。
正直、理不尽だと思う。男女の違いだって理解しているつもりだ。
しかし彼女は一人部屋で、自分達はこうして二人部屋なのだから。
村の規模や酒場で見かけたハンターの人数を考えても妥当な線であろうが、
明日からハンターとしての生活を送ることになるのに、
さい先の良いスタートは言えないこの状況をちょっぴり悲しむしかなかった。
そして二人を睡魔が襲い、一夜が過ぎて翌日の朝になる。
窓際に差し込んでくる朝日の光が、二人の目を刺激した。
目を覚ましたシンとレイは頭痛が取れていることに感謝し、
ベッドから身を起こして立ち上がると、部屋の壁際に設置された大きなボックスに歩み寄る。
ハンターの収集した物品や、依頼達成の報酬の品、
そして装備する武器と防具を収納できるボックスである。
その中からユクモノシリーズを取り出して、身につける。
狩猟生活を送る上で必要な物は、先日の新人歓迎会という名の飲み会の後、
ギルドスタッフであるコノハちゃんと、
隣で‘上位’と呼ばれる難関の依頼を扱っているササユちゃんが届けてくれた…らしい。
そのころはもうベッドでぐったりとなっていた頃であり、
情けない姿を年頃の女の子に見られたと考えると、顔から火が出そうだ。
あのおっさん共め、と二人は内心愚痴りつつ、支給された武器を一度部屋にひろげてみた。
このユクモ村がある地方で一般的な武器であり、そのどれもに『ユクモ』と名が付けられている。
こうして見てみると、バリエーション豊かだなぁと感じた。
大剣に太刀、片手剣に双剣、ランスなどの刀剣類。そしてハンマー等の鈍器。
ガンランス、スラッシュアックスと言う中でも特殊な構造を持つ武器。
狩猟笛という、ハンマーなのか楽器なのか解らない武器もあった。
武器の中には飛び道具として弓もあり、少し原始的だという偏見が、
彼らの中にはあったのだが、此方の世界にも銃器は存在していたようだ。
ボウガンと呼称されているものの、ボウガンより普通の銃と言った方が良い。
取り回しに優れた小型のタイプと、威力と安定さを重視した大型タイプ。
種類がありすぎ、それ故に最初の十分間ほど迷った。
その後シンは〈大剣〉と〈スラッシュアックス〉に絞り、
一方のレイは〈ライトボウガン〉と〈弓〉のどちらにするかで悩んだ。
パーティを組んで戦闘するにあたり接近戦を挑む人間と、
遠距離から援護する人間は必ず必要である。
あの世界で戦っていた時分を思い出し、得意分野は何かを考えた結果だ。
機体を動かすのと実際に身体を動かすのとでは全然違うが、
MSの動きを自分の身体で表現すればどう動くかを考えると、
不思議とその二つへと絞ることが出来たのだ。
シンに関しては、太刀というのも選択肢にあったものの、
日本刀は重たい上に技術も必要であったので、慣れるまで保留という事に。
レイは空間認識能力が高い人間であったので、自然と飛び道具系に落ち着いた。
「問題は、ルナだ。
 彼奴がボウガンをチョイスしたら……」
「ああ、全力で阻止しなければならないな」
二人の心配は、ルナマリアのことであった。
彼女は射撃の成績が芳しくなく、ガナー装備のザクの時も射撃を外す上、
オーブ戦の折セイラン家のシャトルを外した事を考えても、
ボウガンだけは何としてでも思いとどまらせるべきだと考えていた。
加えてあの天衣無縫な性格が合わされば、
場合によっては『誤射マリア』の称号が与えられかねない。
それから数分経ち、シンは〈古ユクモノ剣斧〉を、
レイは〈古ユクモノ弩〉を背負って、部屋から廊下に出る。
すると偶然にも、ルナマリア本人がちょうど廊下の角を曲がってきた所であった。
「あら、アンタ達起きてたんだ」
ルナマリアが背負っている物を見て、
思わず二人はホッと胸をなで下ろしていた。
この地方に生えている木材を切り出し柄を造り、
先端に、鉄で造り上げた塊を丸太をくりぬいた部分に、
ピッチリとはめ込み赤い紐で結わえた〈ユクモノ木槌〉を背負っていたのである。
「ねぇねぇ、良いニュースと悪いニュースがあるんだけど、どっちから聞きたい?」
いたずらっ子の笑みを浮かべながら、ルナマリアはシンの胸を小突く。
「はぁ? じゃ、じゃあ良いニュースから」
「はいはい。じゃあ早速なんですがぁ、
 私ら新米が受けられる依頼があるそうなのよ!」
ルナマリアは後ろに回していた手に握っていた羊皮紙を一枚、二人の前にひろげて見せた。
「“渓流”っていうエリアに慣れるにはうってつけなんだって」
「何々、『夢のキノコジュース』〜‘特産キノコ’20本の納品。
 で、依頼主は……主婦!? 本当に何でも屋なのなハンターって」
なんだか味気ないような気がしないでもないが、
先日のジャギィの一件もあり、油断だけは禁物であると身にしみていた彼らは、
こういった依頼を地道にこなすのが一番であると思い始めており、
レイが、最終的にこれを受けようと言う判断を下した。
「おっけ、コノハさんに了解って言ってくる。
 で、悪い方のニュースなんだけど」
「何だよ、早く言ってくれ」
「ハイネの事よ。
 彼依頼でロックラックの街に行っちゃってて、
 あの渓流って所に行くの私たちだけよ?」
「「 ……はぁっ!? 」」

 
 

☆狩猟戦士モンハンSEED DESTINY☆
 第二話

 
 

「けっこう近いんだな、俺たちが迷ってた所……」
「馬車で一日足らずなんだもん、ラッキーじゃない」
送りの馬車の荷台から飛び降りながらシンは、
目の前に広がる日に照らされた自然が織りなす、
雄大な光景に見とれつつ、村にほど近い場所だったという幸運を噛みしめていた。
馬車と一口に言ってもこの世界の馬車は『ウマ』ではなく、『アプトノス』と呼ばれている、
恐竜のパラサウロロフスにそっくりな外観の生物に引かせているのだ。
鈍重そうでありながら意外と素速く動ける所もあり、道中は少し楽しかった。
空気は美味しかったし、何があるかわからないと言うことが、
逆に彼らの好奇心を刺激して楽しみを一層深めている。
それに、新生活というのはどんな形であれ新鮮な気持ちにさせてくれる。
先日までの荒んだ状況を忘れさせてくれる、川の流れる音や木々の葉が揺れてこすれる音。
それらは、痛んだ心を洗ってくれるほどに心地よく、
ふっと目をつぶりかけたシンは、馬車から支給品を降ろさなければならない事を思い出す。
「何に浸っているんだ、シン。さっさと手伝え」
彼らと馬車は渓流と呼称される地区の、山の中腹あたりにいた。
依頼は今日一日で終わるだろうが、帰るのは明日だ。
依頼をこなし夜を過ごす仮設キャンプを作らなければならない。
ハイネが案内してくれたあのエリアはすでに別のパーティが使っているそうで、
新しく安全でめぼしい場所を見つけなければならなかったので時間が掛かった。
モンスターの生息域から肉食系の生物がこれない急勾配と、
飛竜と種類分けされている生物(シン達は見たことがないが、相当強力な生物らしい)が、
着地して襲ってこれない程木々に隠れ、ちょうど良い広さを持った場所。
それがシンが立っている場所という訳だ。
キャンプ設営用のセットを下ろすレイが、シンを睨み、
彼は慌てて馬車の荷車の方へ駆け寄って、片方に手をかける。
ルナマリアは支給された実用品と、村で購入した道具担当であった。
・渓流の地区を大まかに記した地図
・負った傷を治す効果のある『応急薬』と、長期保存の加工を施してある『携帯食料』
・粘性の樹液を持つ葉で、染料と独特の臭いを有する木の実をくるんだ『ペイントボール』
・モンスターの体液や泥などで切れ味が落ちた武器を磨く『携帯砥石』
・粘性の樹液で細長い木の実を加工し、弾丸に仕上げた『通常弾』
・武器や防具の生産、強化などに用いる鉱石採掘用の『ピッケル』
・狩猟生活上必要になるそうで、昆虫類を捕獲するための『虫あみ』
等々、彼女は細かな物品のチェックを行い、男共はテントの準備だ。
天幕を張って、小型のハンマーで地面に打ち付け、雨風の入らぬようしっかりと固定する。
帰りは撤去するのであまり強く打ちすぎないよう調整するが、これが結構大変だ。
「よし、出来たぁ!」
シンは額に流れた汗を拭い、叫ぶ。レイも満足そうに、テントを見上げて頷いていた。
こうして、共に何かをすると言うのが気持ちの良いことだと、改めて気付く。
ルナマリアがテント脇にアイテムを置き終わった後、レイが荷車から少し大きめの本を取り出す。
「レイ、何なのソレ? 妙に分厚いじゃない」
「『図鑑』と『調合リスト』だ。
 ……俺たちが何も知らないことを忘れたか?」
「そ、そうだった。忘れてた」
この世界に来たばかりで生き物や植物についても、まだ少ししか知らないというのは十分致命的である。
故に、収集すべきアイテムの形がどうなっているか、効能はどうか、
モンスターはどんなものがいるのかについて、ある程度は知っておかなければならない。
今回引き受けた仕事は、依頼書のてっぺんにあったとおり、
キノコジュースを作るためのキノコを集めることが第一目標。
そして、自分達の武装を強化するための鉱石や、
今後の生活に必要になるであろう植物と昆虫の採集も行わねばならない。
まだまだ、自分達には覚えることはたくさんあるのである。
傷をいやしてくれる『回復薬』を作るには『薬草』と『アオキノコ』が必要な事。
体力を維持するために定期的な軽食が必要だが、そのためにはまず『生肉』を得なければならない事。
弾丸を作るために『カラの実』『カラ骨』という品が要る事。
粘性の樹液を分泌し石ころと組み合わせる事で、
色々な妨害アイテムの基礎となる『素材玉』を作るのに必要な『ネンチャク草』の事。
「何か頭痛くなってきた。二日酔いかな」
あまりに覚えることが多すぎて、シンは脳がオーバーロードしそうになる。
レイは一度分厚いソレを閉じると、テントの中に置いて、
「時間は黙ってたって過ぎるんだ。早く行くぞ」
「「 了解…… 」」

 

 〜こうして、シン達にとって初めてのクエストが、スタートした〜

 

道中アイルー達とすれ違ったりしながら、彼らはまず山の中腹にある岩場に出る。
以前見かけたシカのような生き物『ケルビ』が数頭いるくらいで、このあたりには肉食生物はいないようだった。
耳をそばだてて足音などを聞いてみても、近くに何かいる気配はない。
シンは腰にぶら下げた袋からピッケルを一本取り出すと、
岩場の中でも鮮やかな色が剥き出しになっている所へと近寄った。
こういう所から鉱石が取れるのだと、さっきの本に書いてあったのだ。
ルナマリアとレイもそれに続いて、草をはむケルビの脇を通り抜ける。
「すげぇ、鉄鉱石ってこうやって取れるんだな」
周りの石をピッケルで丁寧に削り、灰色に輝く鉄鉱石を取り出す。
ずっしりとした重みが手に伝わってきて、達成感を感じた。
『砥石』も、このあたりではよく取れるようだ。好調な出だしだと、その時は思った。
鉄鉱石の塊と数個と、削ったときに出来た、
手頃な大きさの石ころを腰のアイテム用のポーチに入れる。
今は何もかもが貴重品なのだ。それがただの石ころであろうとも。
その時、一度振り返ったルナマリアが、崖際に生えている大きなキノコに気が付いた。
先程図鑑で見た『特産キノコ』と『アオキノコ』が、あんな所に生えているではないか。
喜びの色を露わにした彼女は、そちらに向かおうと一歩踏み出し、
ぐにぃ……と何かを踏みつけた。柔らかくて、まだ温かい何かを。
「え……っ!?」
ぷぅ〜んと、彼女の鼻に覚えのある臭いが漂ってくる。彼女の顔が、青ざめる。
彼女の動向に気が付いた男二人は振り返って、彼女の足下を見やり、青ざめる。
黒くてこんもりとした、生命体の生理活動によって生み出される物体。
それを、思いっきり彼女は踏んづけてしまっていたのである。
首だけ振り向けて、涙を目元に溢れさせた彼女は、
「どぉしよぉ……踏んじゃったよぉ……」
さめざめと立ったまま泣き始め、
男二人は別の袋にその『フン』を回収する羽目になる。
これも必要な貴重品(?)なのだというから、男連中は泣くにも泣けなかった。
ルナマリアのハカマを洗うために一度坂を下りて、
滝と川のあるエリアへと移動し、彼女に一度川辺の石に座らせ、
三人で臭いが落ちるまでごしごしと川の水で洗う。
「二人ともごめん、油断してた」
「いや、臭いに気付かなかった俺も悪かった」
誰が悪いという訳ではないのだが、思わずそういう言葉がでてしまう。
少し萎えてしまった気持ちも、川の音が流してくれるのではないだろうかと、ふと思う。
ひとしきり洗い流した後、川辺にネンチャク草が生えているのを見つけ、
シンはそれを回収して先程の石ころに巻き付け始める。これで素材玉の出来上がり、らしい。
一方レイは、別の登り坂を見つけて二人を呼びよせる。
携帯している地図によれば、この上には広々としたエリアがあるらしい。
こういう湿気の多いエリアの近くであれば、キノコも見つけられるはず。
そう判断した三人は、坂を上って行く。
ユクモ村近辺に生えるという木が並ぶ広々とした場所が、三人の目の前に現れる。
中心にはかつて山の主であったろう大木の切り株があり、
近くに新たに生え始めていた苗木のあたりには、ハチが巣を作っている。
あたりを見回してみると、キノコの生えている箇所が確かにある。
キノコの収集はルナマリアに任せて、シンは近辺の枯れた木などから木材を収集。
レイはハチの巣からハチミツを、とそれぞれが持ち場へと駆け寄って行く。
時間を食ってしまった以上、依頼をこなしつつ必要なものも早めに回収しなくてはならない。
「けっこうべと付くな……」
レイはハチミツのベタベタに悪戦苦闘していた。
回復薬の効能を上げたり、そのほか薬品に手広く使われるハチミツは、
是非ともこの場で収穫しておきたい品であった。しかしレイは一つだけ、引っかかっていた。
こういう森でハチミツが絡んでくると、どうしても一つの生き物の名前が頭から離れないのである。
アイテム袋にハチミツを詰めた小袋を詰めながら、気のせいだと彼は頭から消し去った。
その心配が、ものの見事に的中しているなどと、考える事もなかった。

 

 |  |     *、、、、
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 |  |       _|_|_|_|
 |  |      〈〈〈〈 ヽ
 |  |___∩〈⊃  }
 |  |ノ     ヽ !   !
 |  | ●   ● |  / 
 |_|   ( _●_) ミ/
 |  |   |∪|  /
 | ̄|   ヽノ /
 | ̄|      /
※《 青熊獣アオアシラ 》

 

「……………………」
シンは、目の前の茂みの向こうに二足で立っている、
5mはあろうかというあまりにも巨大な熊の姿を、呆然となって見上げていた。
回収した『ユクモの木』をポーチにねじ込んで顔を上げたとき、目に入ったのである。
心臓を鷲づかみにされたような恐怖が、シンを襲ってくる。
レイとルナマリアと呼ぼう。そう思って口を開けても、恐怖のあまり声が出ない。
ジャギィと出くわしたときとは比べ物にならない、圧倒的存在感。
シンは、熊の顔を見据えたまま後ろに一歩一歩下がっていく。
確か、熊は背中を向けて逃げては行けないと言われていたような記憶がある。
人がクマを恐れるとき、クマも人を恐れていると言うが、
コイツには通用しなさそうだとシンは直感で理解していた。
手に持っていた残りのユクモの木を、後ろへと放り投げ、
地面へと落ちたそれから発した音に、レイとルナマリアも振り返る。
「「 ……………… 」」
二人も、声を失って立ち上がる。
しかし、シンの近くへとジリジリと寄っていった。
一人でなく、三人いるぞと奴にアピールすれば、奴も去って行くかも知れない。
シンの背後に回ったレイが、シンの耳元で、
「シン、素材玉を一個よこせ」
「素材玉を? 何に使うんだよ」
「……フンを使う」
モンスターのウ●コで何する気なんだと聞く余裕もなく、
シンは後ろ手でポーチから素材玉を手渡す。
ルナマリアは、すでにハンマーを構えて臨戦態勢に入っていた。
シンも同じように背中からユクモノ戦斧を抜き、アックスモードで構える。
大きなクマは一度地に前足をついて四足になると、のそりのそりと彼らに近づいてくる。
テリトリーに進入してきた異分子を、排除する為に。
その動きにはに恐れなど微塵も感じなかった。
「レイ、まだか?」
「すまん、もう少し時間をくれ……」
「……レイ、もう無理みたいよ」
ルナマリアがレイに早口で言って、レイはクマの様子を見やって、
確かにアイテムを作っている暇はなさそうだと理解する。
弾丸入れから通常弾を取り出し、ユクモノ弩に装填させた。
〈 GUAAAAAAAA! 〉
「……来るぞっ!」

 
 

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