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Macross-Seed_◆VF791dp5AE氏_第05話

Last-modified: 2011-04-15 (金) 09:13:07

開戦から約二週間、プラント周辺宙域において――
「ええい、納得行くか、こんなこと!」
「落ち着けよ、イザーク。
 議長に直々に頼まれて二つ返事でOKしたのはお前だろうが。」
ジュール隊隊長イザーク・ジュールが咆えていた。
「別に訓練くらいいいじゃないかよ。
 ここんとこ連合との小競り合いばっかで、うちの隊の連中も疲れ気味だ。
 訓練でもやって気分転換になるんならそう悪いことでもないと思うぜ?」
 副長のディアッカ・エルスマンの意見にシホ・ハーネンフースも同意する。
「そうですよ、隊長。
 それに新型機のテストを兼ねているんですから、難しい仕事でもないじゃないですか。
 戦場で部下の誰かが死ぬより全然いいことですよ。」
「そんなことはわかっている!」
しかし、二人の言葉を聞いてもイザークの機嫌がなおる様子がない。
ディアッカがわざと聴こえるように大きく溜め息をつくと、シホからの通信が来た。
「どういうことなんです、あの隊長の荒れ様?」
「ん?あぁ、確かにいつもより酷いかもな。」
「なにか知っているんでしたら白状なさい。」
「大方、今日の相手が気に食わないんだろうよ。
 わざわざ議長に呼び出されたかと思えば、新しいフェイスの練習相手をしてやれ、じゃあいつも荒れるさ。
 しかも、そのフェイスってのがあのラクス・クラインの相方じゃあな。」
「ああ、それで・・・。
 隊長ってラクス様の大ファンでしたよね。
 ユニット結成が発表された時は隊長、買ったばかりのCDを叩き割らんばかりの怒り方でしたからね。」
「貴様等、無駄口叩く暇があるなら機体チェックでもやっていろ!」
「ヘイヘーイっと、了解しましたよ隊長。」
渋々機器をいじり始めたディアッカを見て、イザークは荒い息を吐いた。
ちなみにシホはそつなくすでに終わらせている。

「でも隊長、あのユニット結成は議長のナチュラルとの融和政策の一種じゃないですか。
 それについてあまり文句を言い過ぎるのはどうかと思いますけど・・・」
「うるさい、そんなことはわかってる!
 俺が気に入らないのは何故わざわざナチュラルの、それも民間人にザフトの新型機を与えるかということだ!」
「でも、フェイスに任命されてますけど?」
「そこも気に食わん!何故フェイスにする必要がある?
 歌うだけなら軍属にする必要などないではないか!」
「確か、戦意高揚のために戦場にもついてくるって話じゃないの。」
横から口を出してきたディアッカに対して激しい口調でいう。
「そこが一番気に食わん!
 戦場で歌手の護衛なぞやってられるものか!」
「だから、そのための新型、しかも奴専用のワンオフ機で、そのための訓練だろ?
 ある程度は自分で動いてもらわなきゃ護衛するほうだってだって身がもたねえぜ。」
「とにかく、俺は認めんぞ!」

(こりゃ何いっても無駄かな?)
ディアッカが見切りをつけた時、紅い機体が目に入った。
「ようやく来たみたいだぜ・・・ってなんだ、あの機体は?」
「スピーカーがついてる?」
「お、俺たちを馬鹿にしているつもりか、ニューフェイスめ!」
ブチ切れたイザークが紅い機体に通信を繋ぐ。
「貴様ァ、ふざけているのか!
 軍事演習だろうが、これは!」
だが、紅い機体のパイロットはイザークにとって冗談にもとれないような返事をかえしてきた。
「は?何いってんだよ、ライブのリハーサルだろ?」
「な、な、なななナnaな、き、キシャマァー!?」
あまりの興奮に言葉がだせないイザーク。
「ちょ、落ち着いてください隊長。祖数を数えて落ち着いてください、落ち着いてくださいってば。」
シホがイザークをなだめるのを横目で見て、ディアッカは相手との通信を繋ぐ。
「んで、えーと、熱気バサラさんだっけ?
 本当に俺たち撃っちゃっていい訳?
 いくら訓練用にペイント弾と仮視ビームに変えてるっても、あたったらかなりの衝撃があるはずだぜ?
 そんな状況で歌い続けられんの?」
が、相手は平然と答える。
「ああ、問題ない。いつでもいいぜ?」


バサラがスイッチを入れるとこちらの世界では先日出されたばかりの曲〈PLANET DANCE〉のイントロが流れ出す。
(へへっ、あいつ等が初めて来た時を思い出すぜ。)
脳裏をよぎったのは、ミレーヌがはじめてバンドメンバーとして歌った、バロータ軍が初めて襲来したとき。
だが、あの時と違うのは歌に対する確固とした信念。
(行くぜ、こっちの世界の銀河よ、これが俺の歌だ。)
「ふざけおってぇ、各機、演習開始。
 近接武器を演習用出力に切り替え忘れるなよ!」
他の機体が動き出したのを見て、気合いを入れるかのようにより一層ギターを強く奏でる。
「行くぜぇ、俺の歌を聞けぇ!」
〈さあ始まるぜSATADAY NIGHT 調子はどうだい?〉
MSがマシンガンを、あるいはレールガンを、仮視ビームを撃ち出すのをみて、素早く機体を動かす。
〈LET'S STAND UP ビートを感じるかい〉
第一射を紙一重で避けつつ、バサラは一週間ほど前の出来事を思い出す。


「君にこれを授けたい。」
議長より渡されたのは、白い羽をかたどったバッジの様なもの。
ハイネがつけている物と同じもののようだ。
「なんだ、こりゃ?」
ギターのピックには流石に出来そうもないな、と思いつつ眺めているとハイネが驚いた声を出す。
「おいおい、フェイスの証だよ、そりゃ。」

議長がこれについて説明してくれる。
これはザフトの特務隊・フェイスのものが持つ証らしい。
フェイスとは議長直属の部隊であり、いかなる軍の命令系統の上位に位置している。
フェイスは戦闘に参加するのも自らの意思で行うのであり、議長と言えど強制出来るものではないとの事だ。

(つまりは軍へのお誘いかよ。)
「せっかくで悪いが、俺は軍に縛られるつもりはない。
 こいつは返させてもらうぜ。」
議長に返そうとするが、議長はそれを受け取らない。
「いや、何もザフトに入るなどと堅苦しく考えてくれなくていい。
 これはこの世界での身分証の様なものと考えてくれたまえ。」
「何かくれるって時は代わりに何かを頼まれるんだろ?
 で、代わりに俺に何をさせようってんだ?」

いぶかしんだ目で議長をにらむバサラ。
「代わりに、君にこの世界の戦場でも歌ってもらいたいんだ。」
「あ?どういうこった?」
「この世界ではナチュラルと我々コーディネイター、いわば地球と宇宙、この二つの対立がある。
 しかし、どちらも同じ人間であると私は思っている。
 だが、二つの種はまるでどちらかが滅びるまで戦いをやめようとしないだろう。
 そう、ちょうど君の世界の巨人族との関係のようなものだ。」
「確かにそう置き換えられなくもないですがね。」
議長の意見にハイネも同意する。
そうかもしれないな、とバサラも心中では思った。
「この世界と君の世界、違いはあれど、大筋では同じだと私は考えた。
 ならば、君の世界を救ったのが歌であったように、この世界を救えるのも歌であるかもしれない。
 だからこそ、歌の大切さを知る君にこの世界で歌ってもらいたいんだ。」
「つまり俺に、この世界のリン・ミンメイになれということか?」
「そうとってもらってもかまわない。」
(俺がリン・ミンメイに?)

しかし、その案にハイネは反対する。
「議長、確かに良い意見だと思います。
 ですが、それは文化を知らなかった巨人達だったから、と言う見方も出来ます。」
ハイネの意見に議長は穏やかに言葉を返す。
「そう、文化を知らなかった巨人族でさえ、歌を知ることで戦争をやめることが出来た。
 ならば、地球に住む人々も宇宙に住む人々も文化を知るこの世界なら、争いを歌で無くすことができるかもしれない。」
「確かにそうかもしれませんが・・・」
ハイネとて、それが出来れば良いと思う。
だが、それは理想論だ。
銃を向けられても歌い続けれる人間ばかりではないし、銃を向けている相手も銃を下ろしてくれるとは限らない。
言葉であれ歌であれ、それをどうとるのかは相手次第だ。
必ず解り合えるとは限らない、いやむしろ解ろうとしない人間が大半だろう。
それが解らない議長でもあるまいに、いったい何故?

ハイネが自問自答している間に、議長はバサラに問う。
「どうかな、バサラ君。
 私の案に協力してもらえないかな?
 君が協力してくれるのならば、こちらは全力で君をサポートさせてもらいたい。」
議長の誘いに、バサラは少しだけ悩んで答えを出す。
「いいぜ、やってやろうじゃねえか。」
「バサラ、お前本当に良いのかよ!?
 確かに議長の意見は素晴らしいと俺も思う。
 だがな、お前が歌ったからって解ってくれるとは限らねえんだぞ?
 特に、ブルーコスモスの私兵のファントムペインなんざ、俺たちを完全に滅ぼそうとしてるくらいだ。
 そんな相手にお前はどうやって渡り合おうってんだ?」
ハイネがバサラを心配して意見を出す。
しかし、バサラは平然と答える。
「相手が解らねえなら、解るまで聞かせてやるさ。」
「つまり、私の案を受け入れてくれるということかね。」
「ああ、ただしいくつか聞きたいこともある。」
「何かね?」
「リン・ミンメイはマクロスシティで有名なアイドル歌手だった。
 だが、俺はこっちじゃ実力で誰にも負けてるつもりはねえが無名のミュージシャンだ。
 その辺の違いが後々響いてくるんじゃねえか?」
「もっともな意見だが、安心してくれたまえ。
 その辺りは私も考えてある。
 君にはこの世界でもっとも知られている歌手とユニットを組んでもらう予定だ。」
「議長、まさかそれは先日歌手として復活した・・・」
驚愕するハイネと誰だかわからないバサラに向かって議長は相手を教える。
「そう、ラクス・クラインだよ。」

BGMに一緒に録音された新しい相方の歌声とハモらせて歌う。
〈HEY! EVERYBODY 光を目指せ〉
(まさか、ラクス・クラインの影武者と一緒にやらされるなんてな。)
青いザクが斧槍を振り回す。
それらを全て紙一重で回避し、バトロイトからファイターへ変形する。
「かわされただと!?」
そして一気に突き放し、ガンナータイプのザクの砲撃をかわして懐に入る。
〈踊ろうぜ DANCIN'ON THE PLANET DANCE〉
慌てて近接攻撃用の斧で攻撃してくるが、あっさりとかわす。
「信じられん動きをしやがる、歌ってる内容に間違いねえ!
 こりゃ本当に踊りを踊ってるようだぜ!」

短い間奏を挟み、今度はラクスの歌声だけになる。
〈諦めのSAD SONG 嘘つきは歌う〉
(しかし、本当にニセモノなのかねえ?
 歌だけ聞けば完全に同一人物だぜ。)
〈NO THANKS! お呼びじゃないぜ〉
盾に鳳仙花の意匠をあしらったザクが迫る。
ビームと近接武器のコンビネーションに惑わされず、確実にあたるものだけを避けていく。
「クッ、流石にフェイントには引っ掛からないか。」
攻撃を避けながら、ラクス・クラインを名乗る少女ミーア・キャンベルと初めて引き合わされた時を思い出していた。


「はじめまして、あたしがラクス・クラインです。」
「熱気バサラだ、これからよろしく頼むぜ。」
引き合わされたピンクの髪をした少女は写真でみたよりも柔らかい雰囲気がした。
というか、体の一部分が柔らかそうだ。
(しかし、ミレーヌといい、このラクスといい、俺はピンクの髪の人間に縁でもあんのかね?)
元居た世界での相方、ミレーヌの顔を思い浮かべ暫し無言になっていると、不安そうに目の前の少女が声をかけてきた。
「あ、あのー、何か、顔に変なものでもついてますか?」
「ん?いや、別に大したモノはついちゃいねえよ。」
「なっ、貴様ラクス様のお顔が大した事がないだと!
 どういう美的センスをしているんだ!」
何気無く言った言葉は周りの人間には感に触ったらしく、烈しい憤りを露にして詰め寄ってくる。
その剣幕に圧され、顔が引きつりながら弁明する。
「別に、そういう意味じゃねえよ。」
言われた本人はクスクスと笑いを噛み殺しながらバサラに言う。
「解ってますよ、そういうつもりで言った訳じゃないくらい。
 皆さんもそう目くじらを立てることは無いじゃないですか。」
ハロー、ハロー!
少女の周りを赤くて丸いロボットが飛び跳ねる。
「渡されたディスクで貴方の歌は聞かせていただきました。
 いい曲だと思いますけど、随分と激しい歌ですのね?
 あたしに歌えるかしら?」
柔和な笑みを浮かべたかと思うと、急に自信がなさそうな表情に変わる。

(ま、見ていて飽きないって意味じゃミレーヌと同じか。)
「歌ってもらえなきゃ困るぜ。
 静かな曲もあるが、激しい曲にも対応できない様じゃ俺の相方はつとまらねえぜ?」
「無礼者め、ラクス様が相方にふさわしくないだと!?
 貴様の方こそラクス様の相方になぞ・・・」
「まあまあ皆さん、落ち着いてくださいな。
 バサラ様、あたしに至らない点がありましたら遠慮なく申し出てください。
 可能な限り変えさせていただきますので。」
再び険悪な雰囲気になりかけたのを察して、少女が周りを抑える。
その後、周囲の人々にこういった。
「皆様が居られますと、バサラ様との打ち合わせが進みません。
 ですので、できれば部屋の外にて待機されていただけませんか?
 何かありましたらこちらからちゃんと申し付けますから。」
「しかし、それでは万が一ラクス様の御身に一大事でもあられては・・・」
「まぁ、この方はデュランダル議長がわざわざ推薦された方ですのよ?
 その人を疑うのは議長を疑うのと同意義ではありませんかしら?」
少女が周囲の反論をピシャリと抑える。
議長の名を出されては強く言うこともできず、渋々といった感じで周りの人間が出て行く。


「さて、これで周りに気兼ねなくお話できますわ。」
大きな笑顔を浮かべ、ラクスがリラックスした声を出す。
少女の動きに年相応のものを感じつつ、バサラは少女に尋ねる。
「議長のおっさんから聞いてるぜ。
 あんた、ラクス・クラインの影武者なんだってな。」
ピタリと動きを止め、ラクスいやミーア・キャンベルはバサラの問いに答える。
「え、ええ、そうです。
 あたしの本名はミーア、ミーア・キャンベルです。
 でも、今のあたしはミーアではなく、ラクス様として歌うことが仕事です。
 それが何か?」
「何で本当の名じゃなくて借り物の名で歌おうなんて考えたんだ?
 あのおっさんの命令だからか?」
「いいえ、これはあたしの意思でです。」
ミーアははっきりと力強く答えた。
「あたし、今はラクス様と同じ顔をしてますけど本当の顔はすごく地味なんです。
 いくら声が良くてもその顔じゃあね、と昔所属していた事務所の社長に言われたこともあります。
 ですが一年ほど前、無名だった私は急に議長に呼び出されたんです。」
昔を思い出しているのか、ミーアは遠い目をしたまま言葉を紡ぐ。
「デュランダル議長はなんだかよくわかっていない私に対してこうおっしゃいました。
 君の声はすばらしい、どうだね、君の声を世界のために役立ててみるつもりはないかね、と。
 あたしは詳しい話を聞いて心が震えました。
 あたしのような者にとっては雲の上の存在であるはずのラクス様の姿になってプラントのために歌うことができるなんて。
 極秘裏にあたしは整形手術を受けてラクス様の顔を手に入れ、ラクス様として動く為のレッスンを受けました。
 そうして今、あたしはあこがれのラクス様として動いているんです。」
ミーアの言葉を聞いて、バサラはさらに尋ねる。
「それであんたは幸せなのか?
 自分と言う存在を棄ててまでラクスとして歌う必要があるのか?」

「ええ、とっても幸せです。
 歌われなくなったラクス様の代わりに、歌姫としてプラントのために、世界のために歌う。
 それは自由は少ないかもしれないけど、それ以上の幸せがあるはずです。」
ミーアの言葉によどみは無い。
その言葉を聞いてバサラは悲しそうにいう。
「馬鹿だぜ、アンタ。
 世界を救うために自分の歌を棄てちまうなんてよ。
 自分の歌を持ったまま世界を救えればもっと幸せを感じれただろうに。」
「素顔のあたしのままで救えればよかったかもしれない。
 でも、議長はあたしの歌声が世界を救えるとおっしゃっいました。
 顔がラクスさまでも、あたしの歌声が世界を救えるのならば、それは素敵なことだと思いませんか?
 ――さて、この話はこれでお仕舞いにしましょう。
 バサラ様も、あたしのことはミーアとしてではなくラクス様として扱ってくださいね?
 でないと、あたしは何のために自分を棄てたのかわからなくなってしまいますから・・・。
 で、この曲のこの部分なんですけど――」
ミーアの仕事用の顔に切り替わった表情を見てバサラは悲しく思う。
(この娘は自分が役割を演じていることも、演じている役割に対しても微塵も疑問を感じちゃいねえ。
 たとえ役割でもいい、自分の歌声で何かを支えれるならば・・・そう信じてやがる。
 この娘が一人の歌手としての人生を殺してまで、そうあろうとするラクス・クライン。
 奴は一体何をしてやがるんだ・・・。
 なんでテメエ自身で歌おうとしねえんだ?)



〈HEY! EVERYBODY 心のままに〉
一部の機体の弾切れで散発的になってきつつある攻撃を避ける。
「何故、何故当たらん!?」
〈叫ぼうぜ JUMPIN! ON THE PLANET DANCE〉
再び間奏に入る。
「そこだ、っておい、嘘だろ。
 どうやったらあんな回避が出来るってんだ?」
「新型機というだけで、ここまで性能が違うというの?
 それとも、パイロットの技量?」
「チィッ、何をやっとるか貴様ら、連携を心掛けろ!
 こいつにジュール隊の意地を見せつけてやれ!」
イザークの隊長機を中心に包囲するように円陣を組む。
そしてビームライフルの一斉射。
(今度こそやらせてもらうぞ、新顔め!)
どうやっても避けきれない程のビームの弾幕。
だが、バサラは全く臆することなくビームの嵐の中を動き続ける。
ほぼ全てを避け、僅かな避けれないものもシールドで防ぐ。


間奏が終わり、再びバサラの歌声が辺りに響く。
〈NO MORE WASTIN'LOVE お前を愛したい 明日へと投げつけるこのビートを Ahh〉
ラストへ向け、曲調が激しくなる。
合わせてバサラのギターも激しい音を出す。
〈HEY! EVERYBODY 光を目指せ 踊ろうぜ DANCIN'ON THE PLANET DANCE〉
「このまま終わらせるかぁー!」
再度、イザークの青いザクが斧槍を構え突撃する。
それにあわせ、ディアッカのガナーザクとシホのブレイズザクが援護射撃を放つ。
〈HEY! EVERYBODY 心のままに 叫ぼうぜ JUMPIN! ON THE PLANET DANCE〉
二人の射撃をかわし、体勢の崩れたところへ見舞う必殺の一撃。
だが、大きくふりかぶった一撃は虚しく空振る。
「馬鹿な、あれをかわすだと!」
〈HEY! EVERYBODY HEY! EVERYBODY〉
バサラが当たる直前にバトロイドからファイターへ変形し急加速したために、振り下ろした場所にはすでに居なかった。
〈HEY! EVERYBODY HEY! EVERYBODY YEAH YEAH YEAH!!〉
歌が終わり、激しい音だけが続く。
「そ、そんな馬鹿な。
 ジュール隊総出でかかっても一撃も与えられんとは・・・。」

そして演奏が終わり、辺りに静寂が訪れる。
「こんな情けない結果が認められるか!
 貴様、もう一曲歌え!次こそ貴様の機体に一撃ブチこんでやる!」
「おっ、アンコールとは嬉しいじゃねえか。
 いいぜ、何度でも歌ってやるぜ。」
バサラが次の演奏に入ろうとすると、ディアッカから待ったがかかる。
「オイオイ、先に補給とかやらねえともたねえってば。
 俺らはザクだから良いけどよ、他の機体の事も考えてやれよ、ジュール隊長。」
「ウルサイ、言われんでも分かっとる!
 全機ボルテールならびにルソーまで補給にもどれ!急げよ!」
イザークは怒鳴り声を巻き散らしながらいち早く補給に戻る。
そんな様子を見つつ、ディアッカがバサラに声をかける。
「バサラだっけか、あんた凄いぜ。
 普通五分もやり合わないのに、バッテリー切れか弾切れの症状が出るなんて有り得ないぜ?
 明らかに撃ちすぎってレベルだ。
 そんだけ撃たれて一発も直撃を喰らわないなんて、正直信じられねえ。
 アンタ、本当にナチュラルのパイロットかよ?」
バサラは笑ってギターをひくだけで、質問には答えない。
「ま、本当にナチュラルでも実はコーディでも俺らが情けないことにかわりないか。
 だがな、次こそは俺もイザークも確実に当てるぜ?」

バサラは自分以外居ない宇宙を見てひとり思う。
(こっちの世界のモビルスーツとやらの性能はこんなもんなのかよ。
 何であんだけ武装が少ねえんだ?
 普通、ミサイルの10発20発くらい各部に標準装備しねえか?
 ビームガンポッドかマシンガンポッドと副装がひとつに近接武器だけで良く戦えるもんだぜ。
 あれじゃ、初代バルキリーの方がよっぽど強えんじゃねえのか・・・。
 距離さえとっときゃ難無くかわせる程度の射撃じゃ、牽制くらいにしかなりゃしねえだろうに。
 いや、こっちじゃ基本遠距離はただの牽制で、近接攻撃でやりあってるだけなのかもしれねえ。)
バルキリーとMSの性能差について一人考えていると、出てきた戦艦から通信が入った。
「バサラさん、補給はよろしいのですか?
 新型機とはいえ、そちらもずいぶんと動き回っていますから一度戻られたほうが・・・」
「あ?別に戻る必要はねえよ。
 後10曲以上演奏(や)ってもぜんぜん余裕だぜ。
 それに、俺の聴衆がもう来たからな。相手を待たせるのも失礼だろ?」

「待たせたな、ニューフェイス!
 次こそは貴様の紅い機体をペイント弾でショッキングピンクに染めてくれるわ!」
「いや、お前の機体はペイント弾じゃなくて演習用の擬似ビームだろうがよ。
 当たったって演習用の機器がヒットを教えてくれるだけだって。」
「やかましい!細かいことにいちいち突っかかるな!」
二機のザクだけが先行して出てくる。
他の奴らはどうしたんだ、と思うと相手の通信がこちらまで流れてきた。
「ちょっと二人とも、他の隊員はまだバッテリーの再充電が終わってません。
 先に出られてもお二人で戦うことになりますよ?」
「かまわん、俺とディアッカだけで十分だ!
 先ほどは油断していただけだ、貴様らはそこで俺たちの勝利を眺めていろ!」
「ま、つう事らしいから先にゆっくり休んでてくれよ。
 俺らもあとちょいで行くからさ。」
「はぁ、解りました。
 そういうことでしたら私達はブリーフィングルームの大型モニターでゆっくり観させていただきます。」
通信が途切れると、青いザクのモノアイが光る。
「いくぞディアッカ、気合を入れろよ!」
「はいよ、援護は任しときなって。」
「それじゃあいくぜ!もう一度俺の歌を聴けえ!!」

「も、もう一回、もう一回だ!次こそは!」
「アンコールにゃできる限り答えるぜ!
 いくぜ、突撃ラブハート!」


結局、一発もまともに当てれぬまま、イザークとディアッカはザクの中で11回もバサラの演奏を聴くことになった。
内訳はPLANET DANCEデュエット版を3回、バサラソロ版を3回、次週発売予定の突撃ラブハートデュエット版を3回、バサラソロ版を2回だ。
12曲目の突撃ラブハート ソロ版の演奏の途中でイザークが脱水症状で気絶しなければ、もう一周は確実にしていただろう。
こうしてバサラはこちらでの演習とはいえMS戦というものを体験したのだった。
延々歌を聴かされ続けたジュール隊の面々は自然とバサラとミーアの新FIRE BOMBERの大ファンになり、全員がCDを一枚ずつ購入した。

ただ、隊長のイザークだけは通常版だけでなく、ミーアの写真がレーベルに印刷された特別限定版も購入したようだ。
「な、こ、これは違うぞ!?
 本人の歌を聴いて本当にいい曲だと思ったからこそ布教用に一枚だな・・・」
「や、限定版買ってる時点でバレバレだからさ。」


機動戦士ガンダムSEED DESTINY feat.熱気バサラ
第五話 新しい相棒〜FELLOW〜