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Macross-Seed_◆VF791dp5AE氏_第07話_3

Last-modified: 2007-12-26 (水) 01:44:38

黒海沿岸の都市ディオキアの中心からかなり離れた海岸線。
その複雑に入り組んだ入り江の一つにて――


救難信号を出したのは日が沈む前だ。それから数時間、もう日も沈んだというのに。
「うたいはじめたころのー、こどうゆさぶるおっもいー」
どうしてだ?
「なぜかいつっかー、どこっかにぃおきわすっれってーいたー」
なにがどうなって俺はこんな所に居るんだ?しかも――
「なまぬるいまいにぃちにー、ここでさよならゆぅのさー」
なんで半裸(と言うよりほぼ全裸)の女の子と歌を歌ってるんだ?
「そーさだれっもー、おれっのあついおもーいとめられーなーいー」
あああぁぁぁ、(一緒に歌ってくれるよね?)との期待の籠められた視線が俺を射抜く。
もういい加減に歌いすぎで喉が痛いが、この期待に答えないとまたステラがなくんだろうなぁ。
くそっ、いいさ、声が嗄れるまで歌ってやるぜ!
「だいなまい、だいなまい、だいなまい、えくすぷろーじょんわんすあげん」
「ダイナマイッ!ダイナマイッ!ダイナマイッ!エクスプロージョンワンスアゲン!」
チクショウ、俺が一体何をしたってんだ!




時はしばらく遡る。
ホテルにて一泊したミネルバ隊のMSパイロット達がラクス・クラインを見送った後。
彼女と同行しているはずの熱気バサラとエレベーター前で衝突し、バサラの爆弾発言にシン・アスラン・ルナマリアの三名が固まっていた頃に戻る。


「冗談ではありません、戦場がどれほど危険か貴方は解っていない!」
何とか思考能力を取り戻したアスランがバサラに向かって叫ぶが、当の本人はどこ吹く風だ。
普段と変わらずギターをかき鳴らしつつ言葉を返す。
「は?アンタ何言ってんだ、別に戦場に出るのにアンタの許可なんざ要らねえよ。
 俺は俺で好きに演奏(や)るから俺の歌の邪魔をしねえように言ってるだけさ。」
その言葉を聞いてますますアスランの語気が強まる。
「いいえ!貴方は戦場について勘違いされておられるようですから申し上げますが。
 いいですか、戦場をニュース等の映像で流れるような煌びやかな場所と勘違いされているのでしょうが、あんなものではありません。
 戦場の本当の恐ろしさは言葉や映像ではまるで他人に伝わらない死の恐怖そのものです。
 そんな場所では貴方のようなミュージシャンは歌うどころか震えていること――」
「おう、お前ら。お前らにとって歌ってのは何だ?」
唐突にバサラがアスラン達に質問する。
その質問に勢いを殺がれたのか、アスランはため息をついて答えを返す。
「質問の意味が解りかねます。歌は歌でしょう?それが何だというのです?」
「なら、そっちの赤毛の姉ちゃんはどうだ?」
「え、ゎ、私ですか?そうですねぇ、オシャレな感じとか、ですか?」
「そっちのボウズはどうだ?」
「俺にとっての歌、ですか?急に言われてもそんなこと今まで考えもしなかったですからなんとも…」


三人の回答とも言えない回答に大きくため息で返すバサラ。
「アンタ達、解っちゃいねえな。歌ってのは心と魂だろうが!」
「…そうなんですか?」
「おうよ!歌とはハート&ソウルだ!!
 歌は時に人を癒し、時に人を勇気付け、時に人と解り合い、時に人以外の奴らとも心を交し合う。
 それが歌だ、心だ、魂だ。歌は人類が生み出した最高の存在だ!」
「そ、そこまで言い切りますか?」
「おうよ!歌があったからこそ人類の歴史があるんだ!歌が無きゃ人間なんざただの人形だ!」
「いや、バサラさん。いくらなんでも壮大すぎやしませんか?」
「オッシャア!燃えてきたぜ!!
 ウオオオォォォーーー、俺の歌を聴けぇ!!!」
叫ぶと同時にいずこかへと走り出すバサラ。

残された三人はバサラを見えなくなるまで目で追い、三人ごとの感想を呟く。
「なんというか…ずいぶんと個性的な人なんだな、熱気バサラというのは。あのラクスの相方ができるわけだ…。」
「あそこまですごいと、テレビや雑誌だけでは流石にあれは伝えきれませんよね…どうやっても。」
「色んな意味ですごい人、ですね。それが良いか悪いかは別としても。」
どうやら三人共に似たイメージで決まったらしい。


「ともかく、俺は艦長と共に議長と司令部に対して意見をしておこう。
 彼がどう思っていようと、民間人のミュージシャンを戦場に連れて行く時点でおかしいからな。」
「まぁ、確かにそうですよね。
 軍に志願してたならしてたで基礎教育もされてない点でまちがってますし。」
「その辺りも含めて艦長と調査した上で議長並びに司令部に対して意見するさ。
 ともかくミネルバまで戻ろう。思わぬ時間を喰ったしな。」
「シンは久々のオフ、なにするつもりなの?やっぱ非番のときのおんなじ?」
「いや、せっかくだし外に行ってくるつもりだけど。ルナはどうすんのさ?街で食べ歩きか?」
「んー、それも捨てがたいけどメイリン辺りと合流してみんなに熱気バサラの情報でも流してあげるわ。
 すぐにばれるだろうけど、本人に遇って話したってだけでも教えてあげないとね。」
「いいけど、変な尾ひれまで付けるなよ。ヨウラン達がかわいそうだからさ。」




その後とりあえずミネルバに戻って、基地でバイクを借りて海岸線を飛ばしてたんだよな。
車も滅多に通らない場所だとか言ってたから無茶してスピード出してたはずだ。
で、この崖の上で一息つこうとしたら――ステラが踊ってたんだよな。
「おわらないたびなっのさー、いまをかんじていーたいー」
踊り回るステラの見えそうで見えないスカートの奥と生足に気を取られてたら、ステラが海に落ちるし。
踊ることに気を取られすぎて海に落ちる人なんてはじめて見たぞ、俺。
「もっとつよーくー、はげっしっくこころむーくまーまにぃ」
慌てて海に飛び込んで助けたら急に暴れだすし。「死ぬ」って言葉がトラウマ?みたいでものすごく暴れまわったんだよな。
助けようとした俺までおぼれるところだったぞ。
「はしりつづけるわーけがー、このだいちにないのならぁ」
で、「俺が守るから」って恥ずかしい言葉で何とか落ち着いてくれたんだよな。


その後、ステラに名前や家族みたいな人達の事とか聞いたはいいけど、それ以上会話が続かない。
「そうさとおっくー、ぎんがっのはてまでとっびっつっづけよぉー」
素っ裸の女の子二人で気まずかったせいで歌わないかって提案しちゃったんだよな…。
それがこんなに長く歌い続けることになるなんて思わないさ、思う訳ないだろ!?
「だいなまい、だいなまい、だいなまい、えくすぷろーじょんわんすあげん」




「あ、あのさ、ステラ。こんな状況でお互い見詰め合って黙っておくのもどうかと思うんだ。
 その、大声上げれば上を通りがかった人が助けてくれるかもしれないし。」
美少女に全裸に近い状態で見つめられ続けたせいですでに自分で何を言っているのかよく分からないシン。
「うん。ステラもそう思う。」
対してエクステンデットであるため性に対して無頓着、故に冷静というよりも何も考えてないステラ。
会話しながらもシンから目を離そうとしない。
「だ、だから。その、あのぅ、さ。」
「?」
「い、一緒に歌わないか?ってそうじゃなくて」
「うん。なに、歌う?」
「え?」
咄嗟に歌うという単語が出てきただけなので急に何を歌うの、と言われても出てこない。
「あー、じゃ、ステラの知ってる曲で。」
「ん。わかった。じゃ、いくよ。」
その場を切り抜けるつもりで言ったらすんなり通ってしまう意見。
すでにステラは何か歌う気満々だ。こちらも歌わないわけにはいかない。
(ってステラの知ってる曲を俺が知ってるとは限らないんだけどな。)
大きく深呼吸してリズムを取りながら歌いだすステラ。
うわぁ、どうしよう知らない曲かも、と思ったがその曲はシンも昨日知ったばかりの曲だった。

「うたいはじめたころのー、こどうゆさぶるおっもいー
 なぜかいつっかー、どこっかにぃおきわすっれってーいたー」
FireBomberのライブでバサラがあの真紅のMS<バルキリー>に乗って歌っていた<DYNAMITEEXPLOSION>だった。
(確かにあれだけでかい音で基地の外にも流していれば誰でも知ってるだろうけど…)
「なまぬるいまいにぃちにー、ここでさよならゆぅのさー
 そうさだれっもー、おれっのあついおもーいとめられーなーいー」
ステラのイメージからいけばもっとゆったりめの曲が来るのではないかと思っていたせいか、ステラとあわせて歌えない。
むしろ、先程からのバサラのイメージが強く、曲を歌うことすらできない。
(・・・確かに昨日俺もこの曲でファンになったけどさ。)
「だいなまい、だいなまい、だいなまい、えくすぷろーじょんわんすあげん」
(本人を知った後だと、曲の良さとは別の考えが思い浮かぶな。)
「だいなまい、だいなまい、だいなまい、えくすぷろーじょんわんすあげん」
(ステラも歌い手があんな奇抜な人とは思いもよらないだろうな。)
「だいなまい、だいなまい、だいなまい、えくすぷろーじょんわんすあげん」
(むしろ奇怪な人なのか?謎が多いとか前にルナが言ってたし。)
「だいなまい、だいなまい、だいなまい、えくすぷろーじょんわんすあげん」
(謎が多いというより歌が上手いという以外謎しかないように思えるぞ。)
「だいなまい、だいなまい、だいなまい、えくすぷろーじょんわんすあげん」
(朝にハイネさんが問題が有り過ぎるパイロットっていったのも納得がいく。)

「――ってステラ、多いよ。ワンスアゲインのフレーズは最初は三回、次が三回、最後が五回だって。」
「?…あ、ごめん。」
顔を赤らめて下を向くステラ。その表情にどきどきしながらシンも謝る。
「いいって、こっちだってほとんど歌ってなかったしな。じゃ、もっかい最初っからな。」

二回目。
「ふう、さて次は何を歌おうか?」
「また、だいなまいと、歌おう。」
「え?あぁ、いいよ。じゃもう一回な。」

三回目。
「よし、じゃ…」
「次もだいなまいとえくすぷろーじょん。」
「えぇ!?あ、いや、勿論いいよ。」

五回目。
「ねぇ、ステラ。ひょっとして他の曲まだ覚えてない?」
「…ん。他は自信、ない。」
「じゃ、じゃあ仕方ないね。」

十回目。
「ス、ステラ。そろそろ止めないか?」
「うたいはじめたころのー」
「ってもう歌いだしてるし!?せめて休憩くらい――」



そして現在に至る。

「だいなまい、だいなまい、だいなまい、えくすぷろーじょんわんすあげん」
もう何度歌ったか数える気力もない。このまま行くと救助が来るまで歌い続けるだろう。
(な、何とかしないといい加減やばいって。てか、なんでステラはこれだけ歌い続けれるんだ!!?)
ステラがコーディネーターでもこれだけ歌えるわけがない。ナチュラルなら言うに及ばずだ。
軍隊でしごかれたシンでさえこれだけ息も絶え絶えなのに、ステラはほとんど疲れているようには見えない。
(とにかく別のもので注意を引かないと。付き合うこっちはホントにシャレになんないって。)
と、何処からか波の音に紛れて楽器の音が聞こえる。
「ス、ステラ、ストップ。何か聞こえてこない?」
「だいなまい、だいな…あれ? 何の、音?」
いまだ身体でリズムを取りながら音の出所を探すステラ。
(さっきまで聞こえてたんだけど……お、また聞こえてきたな。
 なんかどっかで聞いたことあるような。)

「あ、わかった。この曲。
 ――おまえがー、かぜになるならー、だ。」
「え?」
ステラの歌った歌とメロディがぴったり一致する。

(そうだ、この曲は――確か<MYSOULFORYOU>だ。)
波の音に消されかけてあまり聞こえないが、頭の片隅に残っていた音と確かに一致する。
続けて流れてくる音にあわせてステラが歌う。
「はてしないー、そらになりたーいぃー」
しかし、一体何処から?と不思議に思っていると上から歌声が聴こえる。
激しい雨音に立ちすくむ時は ギターをかき鳴らし 心を鎮めよう

<COMEONPERPLE 感じて欲しい今すぐ わからなくていいから>

歌声は恐らく熱気バサラ本人のものだ。。

<COMEONPERPLE 命の限り お前を守り続ける MYSOULFORYOU>

ステラの方をみると歌声に合わせて身体が動いていた。

<お前が道に迷ったら 微笑みで闇を照らそう>

(なんとなく、朝にバサラが言ってた事がわかったような気がする。
 本当になんとなく、だけど。)
<お前の悲しみが癒されるなら 声が枯れるまで 歌い続けよう>
(一緒に歌えばどんな奴でも分かり合えるってことかな。)


バサラの曲が終わってから、もう一曲演奏ろうとしていたバサラに声をかけバイクに積んであったロープを使い引きあげてもらった。
「ふぅ、いや本当に助かりましたよバサラさん。」
「あり、がと。」
「なぁに、気にすんな。
 それよりもお前もそっちの嬢ちゃんも怪我はないか?」
「俺もステラも怪我は無いんですけど、実はバイクの鍵を落としちゃってアシが無いんですよ。
 ステラは歩きでここに来たっていってますし、バサラさんの車に――」
「残念だが、俺もガス欠だ。ヒッチハイクしようと車を待ってたんだが、一台も通らなくてな。
 仕方ねぇから歩きながら歌ってたらお前等に会っただけだ。
 別に歩きは苦じゃねえからこのまま歩いて基地まで帰るつもりだが、お前らはどうすんだ?」
シンは空笑いを返すが、その表情には落胆を隠し切れていない。
ステラは解っていないのか、ボーっとどこかを見ている。

とにかくバサラと一緒に歩こうと思い、シンがステラの手を引こうとした時、三人の前にオープンカーが停まった。
慌ててその車から二人の少年が降りてきて同時にステラに向かって叫んだ。
「ステラ!」「やっと見つかりやがったか、この馬鹿ステラ!」
目つきの鋭い緑髪とやんちゃそうな水色の髪の二人組を見て、ステラも叫ぶ。
「スティング、アウル!」
「あ、ステラのお兄さんたちですか。よかった、ステラをどうしたものかと思っていたんですよ。
 流石にディオキアの基地に歩いて連れて行くわけにもいきませんし。」
ステラの安心した様子を見て、シンが二人に状況を話す。

「あぁ、そうだったんですか。わざわざありがとうございます。
 お礼にしては少々変な形かもしれませんが、街までで良かったら送らせてください。なぁ、アウル?」
「ま、何したか知らねえけどステラも安心してたし、いいんじゃないの。
 そっちのおっさんも……って、ア、アンタ、ひょっとして熱気バサラぁ!?
 うぉ、マジかよ。すげーじゃん、本人かよ、コレ。
 おいスティング、なんか書くもんねえか!?サイン貰おうぜ!」
予期せぬ所で本人に遇ったファンの行動など概ねこんなものである。
スティングは、バサラに向かってなぜか敬礼している。どうやらスティングもファンらしい。
一方、アウルは必死で書くものを探しても何も出てこなかったので、ガックリきている。
発炎筒を引っ張り出して「コレで車にサイン書いてくれよ」と言おうかと思ったが、借り物の車なのでそんなことも出来ない。
「なぁなぁ、わざわざ四人乗りの車に五人目として乗っけてやるんだから街に入るまで歌ってくれよ。
 じゃ無きゃここにおいていくぜぇ?」
「こら、アウル。テメエ脅迫するんじゃねぇ!そもそも普通に詰めれば五人乗れるだろ。
 しかもそれを差し置いてもバサラさんに向かってタメ口なんかきくな、もっと敬意を払えよ!
 ――すいませんコイツが変な事言ってしまって。気を悪くされませんでしたか?」
「なに、気にしねえさ。それに、俺はかまわないぜ?」
ギターを掲げて二人ににっこりと笑いかけるバサラ。さっきから歌いたくてうずうずしているらしい。
「ぃよっしゃあ!んじゃ乗ってくれよ。おら、ステラ。お前もチンタラしてんじゃねえよ!
 ゆっくり走ろうぜ、スティング。こんなチャンス絶対ねえからよ、朝までくらいの気持ちで頼むぜ。」
「馬鹿、そんなに時間かける方が失礼だろうが!普通に走るぞ。」
「バサラ、何歌う、の? だいなまいとえくすぷろーじょん?」
「ごめんステラ、さすがにそれはもう勘弁して。」
運転席にスティング、助手席にアウル、後部座席にステラとシン、その間に背もたれに座るような感じでバサラが乗っかる。
車がゆっくり走り出すとバサラが叫ぶ。
「へヘッ、いくぜテメエラ!俺の歌を聴けぇ!!」



――歌ったり、聴いたり、一緒に歌ったりで。
そうやって楽しんだ時間も過ぎて、ディオキアの街の入り口に車が停まる。

「くそ、もう街かよ。気がきかねえなスティング、こういう時は乗り手の心情を察して多少回り道をするものだろ?」
「馬鹿言え、テメエが気付いていないだけでそんなものやってる。」
「ことばだけじゃー、とどかないー
 きえってくあつぅいおもーい うたにのせー、みつめあってー つたえようー
 あったたかな はーらんそー、はーらんそー、はーらんそーおー」
「ステラ、そう聞こえるけど実際は曲名と同じで<HEART&SOUL>って歌ってるんだってば。
 最初から<はーらんそー>で歌っちゃ駄目だよ。」
歌っているうちにしっかり打ち解けたシンと三人は車が停まってもうるさく騒いでいる。
バサラが車から降りると三人(とシン)も車から降りて挨拶をする。
「中々楽しかったぜ、じゃあなテメエラ。またどっかで逢おうや。」
「いえ、こちらこそ本当にありがとうございます。
 間違いなく貴方の歌を聴くたびに今日のことを思い出すでしょう。」
「次に逢ったら歌だけじゃなくてギターも教えてくれよ。」
「歌ってのは、HEART&SOUL。ステラ、覚えた。またね。」
三人とがっちり握手をして街の雑踏の中に消えていくバサラ。



バサラを見送って、シンも三人から一歩距離をとって別れの挨拶をする。
「じゃあ、俺も。三人とも、楽しかったよ。また機会があれば一緒に歌おう。」
「あぁ、次があるなら、な。」
「次までにゃちょっとはマシな歌い方になっとけよ。」
「シン、これ・・・あげる。ステラの、宝物。」
ステラがくれたのは貝殻の欠片だった。あの崖の下で拾っていたのだろう。
ステラの手にも同じような欠片がある。
「ありがとう、ステラ。次に逢ったら今度は俺が何かプレゼントするよ。
 それじゃ、またな。」


「―――行っちまったな。そういや、シンの奴は何でバサラさんには挨拶しなかったんだ?バサラさんの方もしなかったしよ。」
「シンの奴、ザフトだって言ってたじゃん?熱気バサラはプラントの人間だからまたすぐに会うからじゃね?
 どうせ今はバサラも基地に居るからすぐに基地で会うかも、とか。」
「ま、そんなところだろうな。また逢えると思うか?」
「シンなら、約束、守るはず。」
「かもな。さて、とっとと帰るぞオマエラ。休暇もコレで終わりだ。
 明日からはいつもの殺るか殺られるかのお仕事だ、最後くらいゆっくり休もうぜ。」
「そうそう、部屋でゆっくりバサラの歌でも聴いてさ。」







ミネルバに戻り、自分の部屋に入るとレイが声をかけてきた。
「シン、戻ったか。隊長は一緒に戻ってきているか?
 艦上におけるルナマリアのザクの有用な運用の是非について打ち合わせを行いたいんだが。」
「いや、一緒じゃないよ。昼過ぎに別れてから一度も会ってないけど、アスランがどうかしたのか?」
「それはおかしいな。シンからの救難信号をキャッチした後、救助隊と一緒に小型艇で救助に向かったはずだが。」
「救助されたのは事実だけど、アスランにじゃなくてたまたま通りかかった熱気バサラさんにだよ。
 っていっても、、二人ともガス欠で動けなかったんで助けた女の子と一緒にヒッチハイクで戻ってきたんだ。」
一部ぼかして話してあるが、嘘は言っていない。
人助けで海に落ちただけならいいが、相手と服が乾くまで女の子と下着一枚で居ましたなんて恥ずかしくてレイにだって言えない。
ただでさえラッキースケベという不名誉な称号を持っているのにこのことがヨウラン達の耳に入れば、ますます酷い事になりそうだ。
とか考えてるとレイが難しい顔で呟いた。
「ふむ、そうだとしてもおかしくないか?」
「え、何がさ?」
やはり下着一枚は不味かったのか。仕方ないじゃないか、濡れたままだと風邪ひくんだし。
そりゃやましい事は少しは考えたけど、健全な青少年なら誰だってそうだろ?
若さゆえの過ちを犯して熱い何かが吹き出てしまったわけじゃないんだし、役得って事で納得してくれよ。
ラッキースケベの本領発揮って奴だよ。
「ミネルバにに戻ってくるまでの時間だ、あまりに遅すぎる。」
脳内で36通りほど言い訳を考えていたが、どうやら違ったようだ。
あまりこの話題について話してるとボロが出そうなので早々に話題を切り替えよう。
「そりゃ、基地から大分離れた場所だったから仕方ないよ。助けてくれた人と色々と話してたからな。
 アイツ等、ホントにいい奴等でさ。バサラさんと歌いながらゆっくり帰ってきたんだ。
 あ、それよりレイももう聞いてるかもしれないけどさ、バサラさんがこの艦に乗るらしいよ。
 新型か試作かは知らないけど、『バルキリー』って機体と一緒に配属されるんだってさ。」
「聞いている。同じく配属予定の新型『グフイグナイテッド』も含めてもう資料にも目を通してある。」



そういってレイが備付けの端末から資料を引っ張り出す。
「何々…あぁ、やっぱりライブで見たこの機体か。しかし、本当に真っ赤だよな。
 通常形態の他、巡航形態・高速走破形態があり機動性に優れる、か。うわ、何だよコレ。腰の曲がった爺さんみたいだ。
 熱気バサラ専用機。操縦システム、操作性能、運用法その他をを含めて彼以外でこの機体を扱えるものは皆無。
 …どういう意味だ?」
一見すると、変形機構は奇妙だがそれを除けば、シンプルな機体だろう。
全長18.47m、重量は記載ナシ、か。珍しいな。
武装はレーザー機銃、マイクロミサイル、中距離ミサイル、スピーカーガンポッド、ピンポイントバリアシステム?聞いたこと無いシステムだな。
「ピンポイントバリアシステムと言うのはユーラシアが開発した光波防御帯を流用したものらしい。要はビームシールドだな。
 スピーカーガンポッドはおそらくスピーカーと言う名のマシンガンだ。弾は特殊なものを使用、としか書かれていないが、特筆すべきものは無いだろう。
 ミサイルは機体各処に収納してあり装填数は多いようだが、被弾時に誘爆の可能性もあると見ていい。
 ビーム機銃は単純にミサイル迎撃用のCIWSと見たほうがいいな。」
「武装を見ても、特に変わった物といえばビームシールドだけだよな。」
「うむ、一撃離脱タイプの支援機という意味ではバビと同じように見えるが、運用方法は違うだろうな。
 バビは大火力による長距離支援、こちらはシールドで防御しつつマシンガンによる近距離高速戦闘か。
 だが、ミサイルのことを考えるとシールド以外で受ければ確実に機体が吹き飛ぶな。」
あまり良い面が無い機体だな。
近接戦闘用の装備も付けてないし、完全にデータ採取用のワンオフ機にしか思えない。
「突き詰めると欠陥機ってことか?」
「運用次第だと思う。が、近接戦闘ならばグフがあるし、中・遠距離では火力の面でバビに劣るように見受けられるな。
 オーブのムラサメといったか、あれと似通ったイメージだな。
 MA形態から遠距離からミサイルで体勢を崩しMSに変形、マシンガン斉射で敵機を撃墜後、すぐにMAに戻り距離を保つのがベストと思えるがな。
 客観的に見て使い所の難しい機体、と言うのが妥当な評価だろう。
 よほどうまく使わねば同じようなタイプのムラサメやウィンダム相手でも辛かろう。ましてや、強奪された三機相手ではまず勝てん。」
「高速戦闘ならインパルスとセイバーで何とかなるし、支援機としてもザク・バビに劣る、か。
 戦意高揚のためだけの機体かな?でも、それならラクス・クラインがやったようにザクでいいと思うけど。
 ――要らなくなった機体を適当に押し付けただけとか?
 でも、ハイネさんがデータが必要っていってたし、何でこの機体なんだろう。」
「案外熱気バサラが一目惚れした、辺りが一番妥当な説かもしれん。」

それにしても変な機体だよな、と資料を眺めていると他のページもあるようだ。
「レイ、こっちのページは?」
「ん?ああ、単に送信したファイルに紛れていたものだろう。内容も馬鹿げてあるし、おそらくジョークの類ではないか。
 興味があるなら見てみるといい、中々奇抜で笑える構想だぞ。」
レイがジョーク扱いするようなファイルじゃ、見る価値も無いだろうけど飯までもう少しあるし暇つぶしにはいいか。


――って、何だよ、コレ!?

第24回MS開発コンペ プレゼン用資料

<試作重機動兵器 ―デストロイドシリーズ―

<様々な局面に対応する、超期待の新作機>
<デストロイド α>
<デストロイド β>
<デストロイド γ>
<デストロイド δ>
<デストロイド υ>



「(゚Д゚;)」
そこに載っていたものは、お世辞にもMSとは言えない代物だった。
戦車の主砲らしきものとグレネードランチャーっぽいものを取り付け火力を全面に集中させたタイプ。
ミサイルランチャーを肩に乗せガトリングガンを腕に取り付けて対空防御を飛躍的に向上させたタイプ。
腕が四本ありそれぞれにビームライフル・ロケットランチャー・実体剣・ビームサーベルを持たせたタイプ。
大口径のビームキャノンとミサイルを多数装備し圧倒的な火力で敵を殲滅するタイプ。
両腕にドリルを装備させ地中を掘り進み奇襲をかけるタイプ。
そしてそれらを一体化させた巨大な何か。

この案を出した奴は間違いなく病気だ、宇宙的に危険な■チガ■だ。

「どうだ、シャレとしては面白いと思わないか。」
レイが微笑みながらこちらを見ている。レイ流のシャレだと判断して慌てて引きつった笑いを返す。
「あっ、ああ、な、中々笑えるんじゃないかな。
 このどっかのキ■■イ博士が作りそうなドリル装備の奴なんか、もう、笑うしかないよな。」
「そうだろう、詳細なスペックまで書いてあるのがますます笑える。
 400t以上もの重量でありながら、それだけの推力ではまともに動くこともできまい。
 固定砲台にするにしても装甲その他に対しての信頼性が足り無すぎる。誰が考えたか知らんが面白いジョークだ。」
おかしそうにレイが笑っている。
一見まともに作ってなさそうでありながら、奇妙なまでに細部にわたって作りこまれた資料。どうやっても作るのに時間かかるぞ、コレ。
本当にこんな構想が進んでたら笑うしかないよな、ハハハ。


こうしてシン達のディオキアで過ごす最後の休暇は過ぎていった。


機動戦士ガンダムSEED DESTINY feat.熱気バサラ
第七話 ステラ達との出会い〜Resonance〜