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Macross-Seed_◆VF791dp5AE氏_第11話

Last-modified: 2008-01-23 (水) 23:05:17

先のダータネルス海峡での戦闘は予測不可能な様々なミスがあったものの、ミネルバの勝利に終わった。
だが、ミネルバの被害も決して少ないものではなかった。
ディオキアまで戻ることも検討されたが、戦略的な意味を考えればミネルバは最前線に近い方がいい。
そういった司令部の思惑もあって、ミネルバは現在マルマラ海の中ほどに位置する前線基地ポート・タルキウスにて修理を受けていた。

 
 

タンホイザーの爆発で大きくめくれ上がった装甲の前で、タリアが先の戦闘の被害報告を受けていた。
「死者7名、重傷者12名、軽傷者も多数ですか。かなりの被害が出ましたね…」
「タンホイザーを撃つ直前でしたからね。艦の被害も人員の被害も相当なものでさあ。
 おまけに前部の推進システムもぶっ壊れちまってますから、復旧にはちょいとかかりますぜ」
アーサーの報告にマッド主任が補足する。
「応急措置で構わないわ、すぐにでも飛べるようにしておいて。
 死傷者のことは司令部がすぐに補充要員を送るといってきてるけど、問題は――」
「タンホイザーの方ですね。部品は送られてきますけど、できればディオキアのドックで修理してえもんです」
「連合の被害もかなりのものでしょうけど、スエズの諜報員からは向こうへの撤退は確認されていないそうよ。
 恐らくどこかで補給を受けてまた攻撃してくるでしょうから、ミネルバはここで待機ね」
難しい顔をしてタリアが答える。
「それと艦長、あのスピーカーについてはどうします?外そうと思えばはここで外せますが」
「……それなんだけど、司令部、というか議長の意向で減るどころか増設されるみたいよ」
「えええぇぇぇー!?ま、まだ増えるんですか!?」
「確かに増設できる電気はある程度余っちゃいますがね、これ以上増えるとバサラの歌のせいで指示が出しにくいと思うんですが」
「その辺は改善されるらしいわよ」
「そうですか……ならまぁ、あっしとしちゃあ何も言いませんがね」

 

と、そこに緑服の兵士が来る。手には指令が書かれた紙を持っているようだ。
「失礼します。グラディス艦長、プラント評議会並びにザフト司令部からの指令です」
「ご苦労様。議長がわざわざ指令をよこすなんて何かあったのかしら。
 ―――ハァ、もう。それなら最初から配属なんてしなきゃいいのに、あのタヌキは」
指令所を読んでいきなりため息をついたタリアに、不思議そうにアーサーが尋ねる。
「配属、といってましたけど何か問題でもあったんですか?」
「問題のある配属といえばバサラしかいないでしょ。
 バサラに対して異動命令よ。――――ニューシングルのレコーディングをするからジブラルタルまで来られたし、ですって」

 

 
 

真紅の機体が、空を駆けていく。バサラのファイヤーバルキリーだ。
司令部はプラントのトップアーティスト『Fire Bomber』の活動がバサラにとって最優先であるとし、新曲のレコーディングの為にジブラルタルまで出張、という扱いになるらしい。
人事でもバサラは議長直属のフェイスなので議長からの指示書一枚で片がつき、一般兵ほどの面倒な手続きがないだけマシ、といった所か。
「バサラさん、バルキリー一機でいっちゃいましたけど、護衛とかいらなかったんでしょうか?」
不安そうな顔でルナマリアが話しかけてきた。
「なぁに、アイツのバルキリーはヘタな戦闘機より速いんだ。全速力でぶっ飛ばしてりゃ、領空侵犯だろうが危険はないぜ」
「連合のジェットストライカー、でしたっけ?あれよりもですか?」
やはりシンも不安なのか、俺に確認を取るように聞いてきた。
「おうとも。たとえウィンダムが出てこようとカオスが出てこようと追いつけるはずがねえ。
 つーか、ある程度の高度さえとっちまえばミサイルでも追いつけねえんじゃねえかな」
「へえ、流石は高速戦闘用に開発された機体だ」
「ま、あれこそザフト脅威の技術力って奴だよ」
ザフトの軍人が自慢するときのお決まりの理論を展開しつつ、心の中で補足する。
(補助ブースター無しで大気圏突破できるようなMSなんざ、連合も開発できるわけがねえだろ。
 ザフトでも解析したデータを基に極秘裏に複製を開始してるらしいが、エンジンの問題で試作機の開発もまだだしよ。
 ピンポイントバリアは解析が終わって、こっちの世界の技術で生産できる目処が立ったらしいがなぁ)

 

心の声を聞いたのかは知らないが、レイが突っ込んだことを聞いてきた。
「ハイネ、バルキリーの技術は確かに素晴らしい。だが、他の機体での実用化の目処は立っているのか?
 あの機体でしか使えない技術ならあまり意味がないと思うんだが…」
ぅ、鋭い質問だな。
「俺がこっちに来る前の状況だが、とりあえずピンポイントバリアは使えるはずだぜ?
 グフとのコンペで敗れた重MSのドムだったか?で試してみて、試作された三機共に正常に機能したそうだ。
 おかげで開発中の新型機にはめでたく導入が決まったって話だ」
ピンポイントバリアシステム改めビームシールド=ソリドゥス・フルゴールについては、わざとクライン派に通じている技術者を使って開発させた。
疑惑のある技術者だったが働きは十分なものだったらしく、使い方次第ではピンポイントバリアパンチも使えるほどに再現されている。
恐らく、いや確実にクライン派側に技術が流用されるだろうが、それ以外の技術と比較すれば安いものだ。
特にバルキリーの動力である熱核バーストタービン、つまりこちらでは未だに実用化されていない核融合炉に比べれば雲泥の差だ。

 

これ以上つっこまれるとかわし難い質問が続いていたが、シンが比較的どうでもいい質問をしてきた。
「あ、そうそう思い出した。ハイネ、バルキリーが持ってるマシンガンのスピーカーって殺傷性が限りなく低くないか?
 前の戦闘で、敵MSに何発か当ててもまるで効いてなかった様に見えたんだけど?」
話題変更はありがたいので、スピーカーのイントネーションが変だったのは気にしないでおく。
「お、ナイスな質問だなシン。いいトコついてきたぞ、お前。
 でも常識で考えれば分からなかったか?名前とかで予想つくだろ。
 あれはな、厳密に言うとマシンガンじゃなくてだな、その名の通りスピーカーを射出するランチャーポッドなんだよ」
「ええ!?スピーカーって、特殊な名前じゃなくてそのままの意味だったのか!?」
おいおい、どんな勘違いしてんだコイツは。普通、スピーカーっていったらどっかの業界用語で言うところの『ラッパ』だろ?
がっくり膝をつくシンの横でレイも同じように『OTZ』のポーズをとる。
「……スマン、シン。深読みだったらしい。俺の勘違いのせいで要らぬ恥をかかせた」
「お前ら、ホンットに仲良いんだな――」
コントやってんのか、こいつら。こいつらの仲のよさには呆れて歌も歌えないぜ。

 
 

 

バサラの見送りと、シンとレイのマヌケなコントも終わり、ミネルバの自分の部屋で休息を取る。
ゆっくりファイアーボンバーのCDでも聴いていようかとコンポステレオに手を伸ばしたが、外の異音に手が止まる。
一機MSの発進があったようだ。こんな時に一体誰が、とか不審に思っていると艦長から呼び出しを喰らった。

 
 

同じく艦長室に呼び出されたルナマリアと共に極秘任務であるという任務の内容を聞いた。
ルナマリアは請けるようだが、俺は即座に一蹴するつもりになった。
「つまり、アスランの監視をしろ、と。そういうことですか?」
一緒に戦う仲間を信用してないのか、という視線をタリアに向ける。
「確かにアイツは出戻りで元裏切り者です。が、今はザフトの人間でしょう?
 信用してやったらどうですか?」
「彼を信用しているかどうかの問題じゃないのよ。
 彼には彼なりの人間関係があるでしょうから、それに縛られて報告出来ないこともあるはずよ。
 それなら、いっそ報告する必要をなくしてあげるのが優しさじゃない?」
「どんな優しさですか…」
このオバサン、とんでもないタマだ。
それが優しさなら、フリーダムの乱入だって優しさになるぞ。
「俺が納得できない任務である以上、フェイスの俺には拒否権があると思いますが?」
こんな胸糞の悪い任務なんざやってられっか。公安部の人間にでもやらせりゃいいんだよ。
そう思っていたが、アスランが接触する相手を思い返してみる。
確か、足つきの連中と会うとか言ってたな――いや待てよ?
それならついて行ってあんな乱入してくるような馬鹿に一言文句言ってやるのも悪くないな。
「――ですが、あんな乱入をしてくる奴らの面を拝むのもまた一興。
 オーケー、ハイネ・ヴェステンフルス、この任務請けるぜ」
「助かるわ。MSだと目立つわ、タルキウスの部隊から使えそうな機材を用意してもらってるから、それで追って頂戴。
 確か小型ヘリとオートジャイロを用意してくれるはずよ」
そこにルナマリアが口を挟む。
「艦長、ヘリだとローター音がうるさくありませんか?オートジャイロのほうも風によって操縦が制限されてしまいますし。
 できればもう少し動かしやすいタイプとかあれば嬉しいんですけど…」
なるほど、正論だ。意外と細かいところに気づくな、ルナマリア。
「わかったわ、他に何か使えそうな機体がないか確認してみる」

 
 

「―――で、代わりにコレか」
「―――…あの、名前なんでしたっけ、コレ?」

 

俺達の為にミネルバの外で用意されていたのは、いわゆるパーソナル・ジェットとかホバー・バイクと呼ばれる代物だった。
地上の部隊がMSを使えない場合にコレに乗って付近を見回るらしいが、実際に使うのは初めてだ。
前後に電動モーターで動く二機のファンを持ち、十数メートルの高さまで飛行が可能な機体だ。
騒音もそこそこ少なく、尾行にはまさにうってつけといえる。

 
 
 

「確か名前は――――○ッパじゃなかったか?」
「……それは違うんじゃ、というかやばいんじゃないですか?」
「だがなぁ、よく見てみろよこの機体のシルエットを。
 二つのわっかにそれを繋ぐ鎖みたいにみえる胴体部分。こりゃどっからどう見ても警察が使う手錠、いわゆるワッ○だろ?」
「………いや、そっちの意味でならいいんですけど」
「そもそも劇場版で削られたエピソードである14話でちょろっと活躍しただけの機体だし」
「やっぱりそっちの意味で言ってんじゃないですかーー!!」
「いやだってな、ワ○パって某カードゲームでもカードになってないマイナーなもんじゃないか。
 それどころか今まで発売されてきたゲームでも出演してた覚えがないぞ?
 ○ッグンの方が偵察機としてはポピュラーなんだし、こんなマイナー機種いちいち気にしなくても――」
「近藤和久先生の漫画では色々と活躍してます! ていうか、あの爆弾作戦を敢行したクワ○ン曹長は有名じゃないんですか!?」
「うーん、そこそこって感じじゃね? 正直、マイナーの域を出ないキャラだろ。
 大体14話じゃ明らかに白い悪魔の大きさがおかしかっ―――」
「わー!わー!わー!! とにかく、もうこの話題は禁止です!」
「えー、じゃあコレの名前はどうすんだよ?」
「ホバー・バイクでいいじゃないですか! ○ッパはとにかく駄目です!」
「んじゃ、間を取って『手錠』ってことで」
「ハァ……わかりました、じゃもうそれでいいですよ」

 
 

「さぁて、仕切り直しだ。
 で、俺らはこの『手錠』でアスランを追いかけるわけだが……コレで追いつけるのか?」
そこそこの高度とスピードは出るだろうが、やはりMSに比べると遅いだろう。
「あ、それは大丈夫ですよ。ちゃんとレーダーがついてますからセイバーの反応を追えばバッチリですって」
「だが速度の違いはなんともならんのじゃないか?」
「いえいえそうでもないですよ。理由ですか?
 アスランはMSというデカイ移動手段を誰にも見つかることなく隠してなきゃいけません。
 街に行くならかなり離れた見え辛い場所、例えば森とかですね、に隠すはずです。
 対して私達のワッ…じゃない、『手錠』は小さいので隠す場所に困りません。それこそ潜伏先のホテルの屋上とかにでも平気で置ける大きさです。
 つまりセイバーさえ見失わなければ私たちが圧倒的に有利、後から街に入ってくるアスランを発見さえすればOKです。
 加えてこれは私物ですけど高性能オペラグラスに300m先まで大丈夫な集音マイク、さらに拾った音をノイズを除きながら編集できるパソコンまであるので完璧です!」
「――なるほど、それならバッチリだな。」
私物って、オペラグラスはともかく集音マイクなんかよく持ってたな。
支給されたものより高性能、って何に使う気だったんだ。
「ま、ともかく追うぞ。アスランに先に街に入られたら終わりだからな」
「イエッサー!あ、すいませんけどハイネが操縦してくださいね?
 アタシ、どうもMS以外の乗り物って運転が苦手で――」

 
 

 

俺とルナマリアは『手錠』でアスランが潜伏?するであろう街へ一足先に入る。
十分ほど待っただろうか、アスランが森のほうから出てきた。ルナマリアの言ったとおりか。
予想通り、レンタカーを借りて動くつもりのようだ。

 

「しかし、ルナマリア。お前さんこんなことどこで習ったんだ?
 なんか堂に入ってるが、最近の赤服ってのはそんなことまで教えてんの?」
「いえ、単に通信教育で習ったんですよー。ちょっと色々ありまして…」
「ふーん……通信教育も馬鹿に出来ないもんだな」
「あっ、目標が誰かと接触しましたよ!」
見るとアスランがカメラを持った女性に話しかけていた。カメラを持ってるって事は、ジャーナリストかなにかか?
会話を聞く限りだと女はミリアリアというらしい。二人はそのまま街に下りるようだ。

 

二人は喫茶店に入ったようだ。外のテラス席に座り、何か注文している。
「俺達も入って何か飲むか?」
「いいですねー。でも同じ店はまずいですよ、小型の集音マイクがありますから道の反対側の店に入りましょう。
 ――――ここは当然、ハイネのおごりですよね、なんといっても上司ですし?」
通りを挟んで反対側の喫茶店に入るとルナマリアが悪びれもせずにたかってきやがった。
「ハッハッハ、君は何を言っているのかねルナマリア。
 俺がいつもザフトに階級なんてないと主張しているのを忘れたか?」
あの主張は、こういった場所で上司だからおごらされる事態を防ぐのにも役立つのだ!
「えー!ハイネは男で、こういう所では男が払うのが基本マナーですよー?」
「そんな旧世紀の主張は受け付けないな、今は男女同権、ジェンダーフリーの時代だぜ」
「いいじゃないですかー、きっと公費で落ちますよ。ね、だからアタシの分も肩代わりしといてくださいよー」
「記録に残らない仕事じゃ特別な接待でもない限り、領収書受け取ってくれないぜ?」
「じゃ、アタシを接待したって事で」
「わざわざミネルバを離れて、この街まで来ての接待の理由は?」
「私物を使ってまでザフトの機密任務についたアタシへの感謝の気持ち、って事で」
「あのー、ご注文はいかが致しましょうか?」
俺達の実に非生産的な会話に痺れを切らしたかウェイトレスが注文を聞きに来た。
心なしか顔が引きつっている様にみえる。接客業なんだから笑顔じゃないといかんよ、キミ?
「レイコーのM。それとガーリックトースト一枚ね」
「(レイコーって、何?)あ、じゃあアタシはアイスティーとティラミスでお願いします」
「とりあえずおごり云々は置いといても、だ。ちゃんと聞けてんの、それ?」
ルナマリアのハンドバックからちょっとだけはみ出ている集音マイクは、バックごとアスランの方を向けている。
マイクの性能について何も知らない俺はつい気になって聞いてしまう。
「大丈夫ですよー、ちゃんと聞こえてますって。ワイヤレスのイヤホン、かたっぽはハイネに渡しますね」
「おう―――おぉ、意外と聞こえるな。ちょっと雑音が多いけど」
雑踏からの騒音にしか聞こえない音に辟易しながらアスランの会話に集中する。
「小さいとはいえ通りをはさんでますからしょうがないですよ。会話が聞けるだけマシと思ってください」

 
 
 

5分ほどはあまり関係ない会話だったがアークエンジェル、という言葉が出てからは雰囲気が変わったようだ。
しかし――
「―――おい、デザート喰ってないで会話に集中した方がいいんじゃないのか?」
ルナマリアは会話に集中せずにケーキに夢中だ。ちゃんと聴いてるのだろうか。
「大丈夫ですって、ちゃんと聴いてますよ。こういう時は尾行相手のほうを見ずに何かやってるほうが自然ですから。 
 あ、すいませーん。アイスクリームダブル、グリーンティー2つで追加でお願いしますー」
そういうものだろうか。
「そういうものですよー。それよりガーリックトースト、冷めちゃいますよ?」
そういうものらしい。ならば俺も軽く腹ごしらえと行くか。

 

『――いいわ、手が無い訳じゃない。貴方個人になら繋いであげる』

 

お、ようやく核心に入ったか。
アイスコーヒーを飲み終わり、手持ち無沙汰に氷を回しているといつの間にか話は進んでいた。ルナマリアがデザートを五回ほど追加注文した頃には、だが。
「すいませーん。レモンのレアチーズとマロングラッセ追加でお願いしまーす」
まだ喰う気か!
「いい加減デザートばかり、やめといたらどうだ。そんだけ喰うと太るぞ?」
「大丈夫ですって、食べても太らない体質ですからー。
 それより、核心に入ってますから聞き逃さないようにしましょう」

 

『――連絡がつき次第、こっちから連絡を入れるわ。多分明日になると思う。
 ――ああ、頼む。今日はホテルに泊まるから、キラから連絡があり次第こっちにも連絡をくれ』

 

「どうやら一度別れるみたいですね。コレ食べ終わったら、アスランの方を追いましょう」
「ミリアリアとかいう女の方はいいのか?せっかく二人居るんだから別れて行動するのもアリだと思うが?」
「いえ、昔から尾行は二人以上でやれといいますし、ここは二人でアスランを追うべきです。
 確かに繋ぎのつけ方は気になりますけど、今回の目的はそっちじゃなくてアスランですから。
 あまり欲張りすぎて相手に気づかれて、足付きの連中が出てこなくなっちゃあ元も子もないですし」
「……ルナマリア、お前MSパイロットやるより公安部にでも入った方がよかったんじゃないの?
 ここまで来ると才能の無駄遣いだろ、どう考えても」

 

 

一方、こちらは地中海の海底にて潜伏中のアークエンジェル。
彼らはブリッジの大型モニターで各国のテレビを見ながら、先の戦闘では何故自分達の主張が受け入れられなかったかについての会議を行っていた。

 

「ボクは遠征軍のトップがユウナ・ロマ・セイランというのが問題ではないか、と思うがね。
 タケミカヅチのトダカ一佐はアスハ派だが、セイラン家にも重用されていると聞く。
 セイラン家のお坊ちゃんが遠征軍司令官だからな。同じブリッジに居ては停戦もやり難かろう。
 そういったしがらみのせいで思うように動けない、という状況が一番しっくり来るとは思わないか?」
砂漠の虎ことアンドリュー・バルトフェルドが意見を出す。先の戦闘ではムラサメに乗り、地味にだがオーブ軍と戦っていた。
それに同調するように操舵士のアーノルド・ノイマンも同じような意見を言う。
「確かにユウナ・ロマ・セイランの存在があるせいで、こちらからの呼びかけに応えにくいという事は十分考えられますね。
 前回の戦闘ではこちらを落とそうとイージス艦まで動員して、オーブ軍全てが躍起になって攻め込んでましたからね」
「彼からすれば前国家元首であるカガリが生きていては厄介、という事かねえ」
「そんな…ユウナが……」
好きではなかったとはいえ婚約者であった男が自分を殺そうとしたのではないか、という疑惑に驚きを隠せないカガリ。
落ち込むカガリの肩に、キラがそっと手を乗せ戦場で感じたことを言う。
「でも、オーブ軍が命令とはいえそんなことをするとは思えない。それ以前の問題じゃないかと僕は思うよ。
 あの紅いMSからの歌でカガリの声が掻き消されていたんじゃないか、とかね」
艦長のマリュー・ラミアスがキラの意見にうなずき、ラクスを見る。
「あの歌って確か、例のラクスさんの偽者のユニットが歌っている歌よね?」
「ええ。『Fire Bomber』というユニット名で、今プラントで一番人気のある歌手にまでなっているそうですわ」
本物のラクスがチャンネルを切り替え、地元の音楽番組を流す。
そこには何故かバサラの立て看板(腕部は可動式)と共に歌を歌う偽ラクスの姿が映っていた。

 

<みなさーん、私の歌を聴けぇー!>

 

「最近じゃ地上のザフト軍基地でのライブの影響からか、ザフトの基地周辺の住民にも人気が出てる様だ」
「オーブでもアメノミハシラ経由で輸入販売されているらしく、現在輸入盤では3週連続一位だとかいったニュースが流れてましたね」
朝見ていたオーブの番組でも『今一番ホットな海外バンド』として紹介されていたようだ。

 

「ラクスの偽者の方は置いておくとしても、もう片方の男の人が問題ですよ。
 戦場で彼の歌声が流れていたせいで、この間の戦闘でオーブを撤退させることが出来なかったんですから。
 戦場で歌うだなんて僕には信じられないよ、一体どういう人なんです?」
そういって虎に情報を求めるキラ。

 

<恋をするように 声を重ねれば KISS
 あたしのHEARTは ここにあるよいつだって…>
しかし虎は首をすくめて現在集まっている情報をまとめて話す。
「それが、ターミナルからの情報でも詳しい事がわからんのだよ。
 わかっている事といえばコレくらいだ」

 

そういってレポートを投げてよこす虎。手に持ったもう一つのレポートを読み上げる。
「熱気バサラ。出身地不詳、彼の出身地についてはシティセブン・アクショ・ゾラなど幾つかのキーワードが挙がるが、どれも詳しい事は不明。
 連合との開戦後、偽のラクス・クラインと共にロックバンド『Fire Bomber』を立ち上げる。
 何故かデュランダル議長がプロデュースし、バンド名も彼が決めたそうだ。これも詳しい理由は不明だが、ゲンを担いで命名したらしい。
 偽者とはいえラクスと組むには実力不足の無名の新人かと思いきや、相当の実力派。今まで無名だったのが信じられんほどにな。
 1stシングル『PLANET DANCE』2ndシングル『SWEET FANTASY』3rdシングル『突撃ラブハート』、全て爆発的な売れ行きだ。
 1stアルバム『LET'S FIRE!!』は発売以来様々な記録を更新中。
 その後ザフト軍特務隊フェイス所属として高機動戦闘実験機ZGVF-19P『ファイヤー・バルキリー』を受領、ミネルバにて任に就く。
 先の戦闘ではミネルバのエースたちに混じって戦闘に参加。連合軍及び所属不明軍――こりゃボクらの事だね、を撃退。
 現在はニューシングルレコーディングのためにジブラルタルへ異動。偽者と合流し収録中、といったところか」

 

<だけどOh!君の 輝く目は何を さがし続けるの? Oh!MY FRIENDS>

 

「流石ターミナル、よくここまで調べられましたね」
キラは褒めたが虎とラクスは難しい顔をしたままだ。
「ほとんどは週刊誌でもわかる情報さ、ターミナルの手柄じゃない」
「彼が乗っている実験機についても、ほぼプラントのマスコミに公表されているものですわ。
 ターミナルが調べてわかったのはこの機体が独特の変形機構を持っている事、最初のビームシールド実験機だということくらいです。
 詳細なスペックについてはザフト軍司令部のデータベースにも載ってはいないそうですわ」
「ビームシールド!?アルテミスの傘の技術をザフトが手に入れていたなんて――」

 

<君と走り出す 夢の続く星へと>

 

「それとコイツは眉唾だが――あの紅い機体ファイヤー・バルキリーは羽クジラと共に現れた、という仮説もある」
虎が苦笑いしながら新たな情報を付け加える。
「開戦時に現れたエヴィデンス01の群れ――あれと一緒にですか?」
キラが怪訝な顔をして聞き返す。

 

<見つめあえば ほら 何もかも叶うから…>

 

「そうだ。嘘か真かはわからんが、クジラが出る前に歌が聞こえた奴が何人もいたそうだ。
 歌が聞こえた奴によればその歌を思い返してみると今をときめく熱気バサラの声に似ている、というんだ。
 確認の為、ターミナルで熱気バサラの歌声と映像に残った歌声のようなものを比べてみたが、クジラの鳴き声のせいで詳しいことは不明だ」
「機体が映像に映っていないかの確認は?」
「こちらの保持する映像では確認は取れなかった。クジラの映像なら幾らでも残ってたんだがねえ。
 調べた限り、ザフトの戦闘記録にも残っていない。議長が処分させた可能性も否定できんが――」
「――憶測の域を出ず、真偽は不明。その様なミステリアスな面も含めて、今では私の偽者よりも一部で人気があるとかないとかいう話ですわ」

 

「そういえば、何で偽者のラクスの歌っているシーンを流しっぱなしなんです?」
「そこはアレだよ、敵を知る為、さ。偽者は歌うのが仕事、ならば歌ってるとこを見ればわかりやすいだろうという判断さ。
 言っておくが、決してあの歌に合わせて大きく揺れる乳に見惚れて、というわけじゃあない。個人的にあの奇妙な立て看板が気になるだけさ、ああそうとも。
 ――ま、あの機体の出所はともかく、問題は次の戦闘にも参加してきた場合だ。
 お姫様の演説が歌に消されて聞こえない以上、このままではキラに頼るしかなくなる。だが、キラの武力介入は最終手段だ。
 何とかしてあの歌を無効化できないものか。何かうまい方法はないか、各自考えてみてくれ」

 
 

しかし、意見は出ない。うまい方法を、といわれてもこんな相手は初めてなのである。
前の戦闘ではオーブ軍に邪魔されていたとはいえ、キラの攻撃をかわし続けていたのだ。強制排除には時間がかかるだろう。

 

<涙も見せない強気なあたしの Oh!FACE
 何を言われても平気でいられたはずの…>

 

この偽者の歌だけが流れるという微妙な空間を嫌ってか、カガリが躊躇いがちに意見を述べる。
「あの、その歌っていた紅い機体なんだが、実際は一緒にいたオレンジの方からも音楽は流れていたんだ。
 ひょっとしたら、二機いるから何も聞こえないのかもしれない、と思う」
「なるほど…ステレオサウンドでないとあれだけの音は出ない、か」
カガリの意見を聞いて虎が考え込む。
「でもあのオレンジの機体も相当のパイロットが乗ってるみたいじゃなかった?」
「どれどれ、ターミナルからの情報によると……確かにコイツもかなり強敵のようだ。
 特務隊フェイス所属ハイネ・ヴェステンフルス。第二次ヤキンドゥーエの戦いを生き残った古強者だそうだ。
 開戦時のプラント防衛戦でもかなり戦果をあげていたらしい」
「じゃあちょっと難しいわね」
「僕からすればそうでもないと思いますけどね」

 

<近ごろのあいつ、不安になるくらい 遠くを見つめて Oh!MY FRIENDS>

 

再び皆で考え込む。
「ならこっちも対抗してスピーカーを各所につけるのはどう?
 紅いMSもオレンジのMSも機体の各所にスピーカーをつけてあったわ。条件が同じならキラ君とカガリさんが負けるわけがないわ」
今度はマリューが意見を出す。今度の意見は、皆が中々いいんじゃないかと思っていた。
だが、メカニックのコジロー・マードックがその意見を否定する。
「しかしフリーダムもルージュもPS装甲ですから何か増設するのはAAの設備だけじゃ難しいですぜ。
 ルージュはストライカーパックで何とかなるとしても、フリーダムには難しいと思うんですが」
「ストライカーパックも含めてターミナルに開発要請をすれば何とかなるかもしれん――が、そんな悠長なことを言える状況じゃないしな」
「そうだ、一刻も早くオーブをとめなくては!」

 

<君とさがしてた 未来の地図をもって
 走り続けたら たどり着くはずだから>

 

三度考え込む。
と、これまで考察のみを行ってきた虎が意見を出す。
「ボクとしてはラクスが歌うことで相手の歌を無効化できないかとか思ったんだが――難しいかもな。
 オーブの連中の注意をこちらに引き付けさえ出来ればカガリの根性で何とかなるんじゃないか、とボクは思う。
 ま、ずいぶんと希望的観測が入ってるから説得力には欠けると思うがね―――」
「あら、私はいいアイディアだと思いますけど?」
「僕もそう思いますけど、何か問題でも?」
「――しかし、ラクスに歌ってもらう曲が問題なんだよねえ。
 昔のラクスの持ち歌はほとんど偽者の方にリメイクされてて、ラクスの曲じゃインパクトが薄いと思うんだよ。
 偽者の方には歌以外にも相当強力な武器があるしね」

 

何が、とはあえて言わない虎。一度死んだ身とはいえ、彼だって命は惜しいのだ。
「声が似ていてもリメイク版と原曲じゃ、かなり違うから問題ないんじゃないですか?」
「ボクもそう思うんだが、かつて聞いてた人間、特にザフトからすれば古臭い曲と思われるかもしれん。
 何かいい曲はないものか――――」

 
 

皆で唸っていると、唯一会議に参加せずオペレーターをやっていたチャンドラが叫ぶ。
「ターミナル経由で暗号電文を受信。解読します。
 ――『ダータネルスで天使を見た 赤のナイトが会いたいがっている 至急連絡モトム ミリィ』
 どうやらミリアリア・ハウからのようです。」
懐かしい名前に目を細めながらマリューが聞き返す。
「発信の手続きは?」
「ターミナル経由ですから、正規のものかと思われます」
「ミリィが連絡を入れてくるなんて珍しいね。ダータネルスで、ってことはあの戦場をどこからか見てたってこと?」
「それより、赤のナイトって――」
「うん。カガリの思っている通り、多分アスランのことじゃないかな」
「!! 急いでこちらからも連絡を取ってくれ!」

 

 

翌日、ハイネとルナマリアが『手錠』を使ってセイバーを追ってやってきたのはとある夕日の眩しい岬。
辺りには古代ギリシャだかの遺跡と思われる柱がある。
こういう海に突き出た岬なら遺跡じゃなくて灯台があるもんじゃないのか?とか考えながら、相手に見つからないように数百メートル離れた位置で機材を広げる。
ルナマリアに機材のセッティングを任せて岬の先を見ると、アスランとミリアリアが二人の男女と会話しているところであった。
「あれがヤキンの英雄…噂のスーパーコーディネーター様か?なんだよ、なよなよしたモヤシ君じゃねえか。
 隣の金髪の…ありゃ女か?とにかくあっちの金髪の方が断然鍛えられてんじゃん」
「コーディネーターなら見た目と実力は別物じゃないですか? ――…と、よし。これで聞こえるはず――」

 

『――…なんで、何でまたザフトになんか戻ったりしたんだ!?』
『あの時にはあれが一番オーブにとっていいと思ったからだ』
アスランと金髪の痴話喧嘩に聞こえそうな会話がよく聞こえる。
「ほ。よく言うぜ、女泣かせが。痴話げんかなんかやってないでとっとと本題に入れっての」

 

『俺は今、ミネルバに居る。先の戦闘でお前の乱入を見て、話をしたいと思ってこうなった。
 お前のせいで、いろんな犠牲が出たんだ。そのことを――』
「全くだ。おかげで俺とバサラのライブは失敗、華々しいデビューが一転して負け戦みたいになっちまって。
 まともに聴いてくれてたのは強奪された三機くらいだったんだぞ、この野郎」
「ハイネ、文句を言いたくなる気持ちもわかりますけど静かにしてくださいよ」

 

『何だと、私達はオーブをとめようとしてあそこへ行ったんだ、それを――』
「なぁ、とまってたか、オーブ軍?むしろ奴らに向かって攻撃ばっかしてなかったっけ?」
「……いや、だから、アタシに聞かないでくださいって」

 
 
 

『君がやるべきだったのはそんなことじゃないだろう!?
 そもそもオーブを同盟になんか参加させなれば、オーブ軍の犠牲だってなかったはずだろう!?』
「アスランの言い方からすると…ひょっとしてアレがさらわれたオーブのお姫さんのカガリ・ユラ・アスハか?」
「そうみたいですねー。でも、彼女がさらわれてから連合に参加したはずじゃありませんでしたっけ?」
「事前交渉の時点で決まってたが発表はまだだったのかもな」

 

『でもそれで……キミがまたザフト軍だというなら、僕達をどうするつもり?僕達を探していたのは何故?』
キラ・ヤマトのほうが口を挟んでくる。しかし、アスランは毅然と言い返している。
『辞めさせたいと思ったからだ、もうこんなことは。ユニウス7のことはともかく、その後の混乱は連合が悪い。
 なのにお前たちは!ただ戦場に出てきて、状況を混乱させただけじゃないか!』
「友人に優しすぎる優柔不断なヘタレのアスランのくせに、まともなこといってんな。明日は大雪か?」
「同僚に向かってずいぶん酷い言い様ですねー、ハイネも。まー、否定はしませんけど」

 

『じゃあ、あの偽者のラクスは?』
うっ、流石に痛いところをついてくるな。ルナマリアが信じられないという顔で聞いてくる。
「……偽者だったんですか、あの人?あれだけ歌上手いのに?」
「あんだけやれりゃあ、俺からすれば本物より本物らしいといえるけどな。
 歌を忘れたピンクのカナリアと歌を覚えたピンクっぽいサギじゃ、どっちがマシなのかねえ」

 

『そしてどうしてラクスがコーディネーターの特殊部隊に襲われなきゃいけないの?
 あんな新型MSまで出してくるってことは、デュランダル議長が襲わせたんじゃないの?』
何ィ!?それは俺も知らなかったぜ!!
「さらに超・驚きの新事実が発覚!議長は本物は消去するつもりだったの!?」
「馬鹿言え、議長がそんな眠ってる凶暴な猛獣にちょっかいかけるものかよ。どうせまたザラ派の仕業だろ」
「でも新型がどうこう言ってましたけど?
 それにザラ派って、ユニウス7みたく旧式のジンのマイナーチェンジばっか使ってるんじゃ無いんですか?」
「コイツは俺の憶測だが、大方カーペンタリアから持ち出されたんだろ、あそこは事なかれ主義だからな。
 MSが幾つか盗まれても司令部に報告せずに闇に葬ってんだろ。二年前の戦争で地上に居たザラ派の半分はMIAだ。
 その中の生きてた奴らが基地内のザラ派と共謀して盗み出してんじゃねーの?」

 

『それは…それは、ユニウス7を落とした奴らと同じ思いの人間がやったことかもしれないだろ!?
 何故議長の仕業と決め付ける!?』
「――ホント、今日はやけに冴えてるな。マジであれ、アスランか?」
「天変地異の前触れでしょうか?軍人からすると地震と火事は怖いですよねー……あー、後、整備のオヤジさんの雷も」

 
 

オーブのお姫様が信じられないわこの恥知らず、といった感じでアスランを問い詰める。いよいよ痴話げんかに見えるな。
『じゃあ、じゃあお前はアークエンジェルにも、オーブにも戻らないつもりなのか!?』
『俺はザフトに復隊したんだ、今更戻れない!』
そら次に裏切ったら、人として最低ってレベルじゃねーぞ。
むしろ復隊した際に何のペナルティもなかったんだ、そんな議長の温情に涙を流して感謝しろっての。

 

『じゃあまた連合とも、オーブとも戦うの?』
『俺だって討ちたくは無い。だが、あれじゃ戦うしかないじゃないか!
 それが嫌なら、カガリ。キミが国に帰って、オーブの連合との同盟を何とかするんだ!
 そうすればオーブも無駄な血を流さずに済むだろう!?』
なんという非の打ち所のない正論。お姫さんが自由(フリーダム)という名の犯罪者に拘束されてなけりゃ、すぐにでもそうすべきだろう。

 
 
 

正論に何も言い返せないお姫様の代わりにスーパーコーディネーター様が前に出て話す。
『でも、アスラン。それもわかっている、それでも、僕らはオーブを討たせたくないんだ』
『キラ!?』
どういった理論だ、オイ。平和的な解決法があるのにそれを蹴ってまで何しようってんだ。
『戦って、失ってしまったものは二度と元に戻らないから。もう、戦いは嫌なんだ。
 僕は、もうこれ以上、血を流すのも、血に濡れるのも嫌なんだ。
 だから………アスラン。討ちたくない、討たせないで』

 
 

ブッツーン、と来たよ。久々に。俺がシューユなら血を吐いてるところだ。
目の前に平和的解決法が提示されてんのにそいつを一蹴しておきながら、何たる言い草か。
歌を忘れたカナリアは大空を飛び回る自由を得て、ドラゴンになっちまいましたとさ。
ちょいとあの思想がフリーダムな小僧の性根だけは叩きなおしてやらなきゃな。
「ちょ、ハイネ前に出ちゃ駄目ですってば!幾らなんでもそれは――」
「邪魔だ、どきな。あのヤロウに直接文句言ってきちゃる!」
ルナマリアが何か言ってきたが気にも留めずに奴らに向かって歩く。
スーパーコーディネーター様よ、ちょいと頭冷やしとこうか――

 

 

 ・・・・・・ ・・・・・・
「討ちたくない、討たせないで!?」
急に僕たち以外の声が聞こえた。どこから聞こえたのかはわからないが、その声に確かな怒りが篭っているのだけはわかった。

 

「流石は泣く子も黙るヤキンの英雄、言う事が違う」
向かって右側の崖から出てきたのはオレンジ色の髪の毛をした男だった。
ゆっくりとした歩みでこちらへ向かいながら僕を見いてるその男の目付きは、抜き身の刃の如く鋭く、そして氷の様に冷たかった。。

 

「連合とザフト、二つの勢力を圧倒するその力を持って世界に二年の平和を築き、
 自らの考えを認めしモノには栄光を、認めぬモノには滅びを与える」
怒りに震える正体不明のオレンジ男、その手に持っているのは……拳銃!?

 

「何も変わらんね。二年前からオマエという存在は、スーパーコーディネーターは変わらん」
僕の正体を知っている!? この男は一体!!?
「ハイネ!?」
ハイネ? それってバルトフェルドさんが言ってたオレンジのMSのパイロット!?
そこへこの緊迫した空気を読めないカガリがハイネと名乗る男に話しかける。
「ハイネ…! ひょっとして、あの戦場で歌っていたMSの片方か! お前のせいで私達は――」
憤るカガリへ一瞥をくれてから、ハイネを名乗る男が再び僕に向き直る。
そして僕へ向かって何故か一礼する。

 

「はじめまして、カガリ・ユラ・アスハにキラ・ヤマト。そして――――さようなら、だ」
慇懃無礼に挨拶をしたかと思うと変な事を言い出した。さようなら、ってつまり僕を殺すって事!?
なんで、一体どうして!?僕が状況を理解しようと必死になっていると、右手に持った拳銃をこちらへ構えた!

 
 

「オマエは友人の提案する平和的解決を模索しようともせずに、オマエの持つ自分勝手な理想だけを押し付けた。
 オマエ、生きてここから帰れると思うなよ。
 ブチ殺すぞ、ヤキンの英雄(引きこもりニート)!!」
アスランもミリアリアもカガリも突然現れ、意味のわからない言葉を叫びながら僕を殺そうとするこの男をただ呆然と見ている。
そして僕は訳のわからないこの殺し屋に拳銃を突きつけられ、一言の弁明も出来ないまま引き金を―――

 
 

「なにを訳のわからん事言って乱入しとるか、あんたはーーーーー!!」

 
 

――引かれなかった。

 

男はさらに乱入してきた赤いアホ毛の女の子のとび蹴りに、後頭部をクリーンヒットされて昏倒したのだ。
勢いよく地面に衝突したのでさらにダメージが増えているだろう。見ていて非常に痛そうだ。
「全く、急に飛び出してくれちゃって――おかげで今までの潜入捜査が全部パーじゃないですか!」
昏倒する男の腹部に2、3発蹴りを容赦なく入れた後、男が手に持った拳銃と何かを回収し、女の子はこちらに向かって笑顔を向けた。
「すいませんねえ、うちの馬鹿がご迷惑をおかけして……あ、コレご迷惑をおかけした御詫びです。
 それじゃあまた、続きをどうぞ!」
そういってアホ毛が渡してきたのは……男が持っていた銀色の何コレ、CD?
『LET'S FIRE!!』って書いてあるって事は、『Fire Bomber』のアルバム?お詫びって言ってたけど、なんでコレ?本人のサインまで書いてあるや。
アホ毛はオレンジを抱えると素早く崖下へおりて、ワッ○っぽいモノに乗って去っていった。
彼女達は一体なんだったんだ?

 
 

「ゴホン。ともかく、さっき俺が言ったことをもう一度だけでいい、アークエンジェルの皆と考えてみてくれないか。
 無駄な血を流したくない、というならまずはカガリを国に戻せ。それでも駄目なら、その時はお前の好きにすればいい」
アスランもそういうと乗ってきたMSに乗ってミネルバへと飛んでいった。
あれは先程の暗殺未遂?について、僕たちからの追及を恐れて逃げたんだろうか。

 

急に去っていったアスランに不安になったのか、カガリが小さく呟く。
「一体、なにを考えているんだ、アスラン……」
問題はアスランだけじゃなくて他にも色々あるんだけどそれは気にしないんだね、カガリ……まぁいいや。
今日は疲れたよ、もう働きたくない。
ゆっくり天使湯に浸かって早く何も考えずに寝たいよ。

 
 
 

 次 回 予 告

 

レイ 「ミネルバにて待機中の俺達に任務が下った。その任務とはロドニア郊外の地球軍のモノと思わしき施設の調査、というものだ。
    MSを駆って、施設の内部へ突入する俺とシン。そこで見たものとは!?」
シン 「なぁ、何でレイがここの代役やってるんだ?これってハイネの仕事だろ?」
レイ 「任務中に負傷し出演不能、との連絡があり上に繰り上がっただけだ。本来なら今シンがいる位置に俺がいて色々と声にならない叫びをあげる予定だったのだがな。
    一体何をやらかしたらここに出れなくなるほど酷い負傷をするのだろうな。不思議でならん。
    次回、機動戦士ガンダムSEED DESTINY feat.熱気バサラ 第12話 幼き記憶に――」

 

バサラ「過激にファイヤー!」

 


おまけ

 

地中海の海底に今で潜伏中のアークエンジェル。
先日アスランを説得するためにとある岬で話していたのだが、乱入者のせいで段取りを無茶苦茶にされてしまい説得できなかった。
説得は失敗したが戦利品として(?)手に入れたものがある。
それは僕らの天敵とも言える存在、『Fire Bomber』の1stアルバム『LET'S FIRE!!(サイン入り)』だ。

 
 

「ほほぅ、これはまた実にいいモノを貰ってきたねえ」
バルトフェルドさんに持ち帰ったブツを見せると非常に喜ばれた。そんなにレアモノなのか?
「熱気バサラと偽ラクス、両方の直筆サイン入りなんてマニア垂涎の一品だよ?
 偽ラクスは人当たりがいいからかサイン入りは意外と出回ってるんだけど、熱気バサラのほうはそんなに出回って無いんだよ。
 彼はライブでのアンコールとかのファンサービスはいいんだが、サインすることは滅多に無い。
 彼曰く、『サインを求めるよりも俺の歌を聴け』らしい。そういうことで、レアモノさ」
「はぁ、そうなんですか。僕は別に要らないんであげますよ、ソレ」
「ホントかい、それは嬉しいなぁ。
 ――なぁ、キラ。暗殺されかけるくらいでこういった代物が手に入るんなら、今後も暗殺されかけてみないか?」
「絶対に嫌ですよ!
 次もアホ毛が乱入してくるかはわからないじゃないですか!」
「いいじゃないか、ちょっと怖い目にあうだけだろう?」
「他人事だからって無茶苦茶言ってますね……」
「しかしそうなるとあのオーブでの暗殺部隊は惜しい事したかなぁ。自爆して全滅しちゃったもんなぁ。
 せっかくのキラが暗殺される機会が減ってしまった。くうぅ、実に惜しい」
既にバルトフェルドさんの中では『暗殺者撃退=レアCD』で固定ドロップ化されているらしい。
どう考えてもレアドロップだろう、ていうか暗殺者自体が滅多に出ない敵なんじゃ?

 

そんな感じでバルトフェルドさんが唸っているとカガリがその意見を否定しようと口を出してきた。
「オイ馬鹿虎、いくらなんでもそんな展開は二度も無いだろう?
 こういうラッキーなのは『柳の下の土俵』で二回目は無いって相場は決まっているんだ!」
「カガリ、噛んだのかもしれないけど正確には柳の下の泥鰌だよ、ドジョウ」
なんかRIKISHIとかが稽古してそうだなぁ、柳の下の土俵。アフガン航空相撲じゃないんだから。
「と、とにかくもうそんな物はくれないだろうからキラに暗殺されろとか言うなよ!」
「わかってるわかってる、ちょっとした軽いジョークだよ。
 ボクだってキラに死んで欲しいなんて思っちゃいないから安心しなって」
嘘だ。アレは絶対本気の目だったよ。
こういった何かに熱狂的なファンってのはやっぱり恐ろしいよ。

 
 

機動戦士ガンダムSEED DESTINY feat.熱気バサラ
番外編 まくろすSEEDぷらす  暗殺未遂とその後