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Macross-Seed_◆VF791dp5AE氏_第14話

Last-modified: 2008-05-14 (水) 13:06:55

「――――と、言うわけですので大至急宇宙へ上がる策を考えていただけますわね?」
前後を端折り、有無を言わせぬ笑顔でバルトフェルドへ依頼するラクス。
白々しい笑顔での依頼では、どちらかというと脅迫の類に近いものにも取れる。
が、いたって本人は真面目であるのが困ったところである。

 

ラクスの依頼に難しい顔で答える虎。
「確かに、議長の奇妙な動きが増えているらしいがねえ。
 いきなりそんなこといわれても困るんだが……」

 

が、ラクスはそんな情勢など知ったこっちゃないとさらに笑顔で虎に話を続ける。
「ですから、こうしてバルトフェルドさんに頼んでいるのではないですか。
 こんな時に働かないでいつ働くんですの?」
「いや、ダータネルスでもしっかり働いていたつもりだが……」
「結果が伴っていなければ意味がありませんわ。
 せっかく私が、皆さんからはあまり受け入れられていない貴方の趣味に対して、フォローをしてあげている意味をよく考えて欲しいですわ」
「うっ、痛い所を………」
キラとカガリが、普段から虎がFireBomberの曲を流している事に対して文句を言ってきた時、フォローを入れてくれたのはラクスであった。
敵を知る為、ということでラクスが二人へ理解を求めたのだ。

 

先の一件を持ち出されて虎が怯むと、好機と見たラクスがさらに追い討ちをかける。
「敵を知る為、ということであのFireBomberに対して、ある程度の理解を持って来たつもりですけれど……
 やっぱりここは全面禁止にするべきかもしれませんわね?
 CDからポスター、着うたに至るまで全て廃棄処分にさせても結構ですのよ?
 あぁ、モチロン隠し部屋においてある偽ラクスの秘蔵グッズも一品残らず海底に捨て――――」
「よぉし、分かったとも。ボクに任せてくれたまえ。
 君を三日以内にプラントに上げて見せようじゃないか」
全てを言い切る前に承諾した虎に対して、ラクスが満面の笑みを浮かべる。
見る角度を変えれば計画通り、とほくそ笑んでいるようにも見えたとか見えなかったとか。
「流石はバルトフェルドさん、依頼してよかったですわ」

 
 

 
 

「うーん、ラクスに大見得切ったのはいいけど、どうしたもんかねえ……?」
昼飯時からは少し外れている為か、AAの食堂に居るのはバルトフェルド一人だけだった。
きつねうどんをコンベアから受け取り、テレビの真ん前に位置取る。
「人質ならぬ物質を取られては流石に断りきれなかったが………どう考えても難しいよなぁ。
 さぁて、どうしたものか?」

 

とりあえず情報を仕入れようと、テレビのチャンネルを回す。
この時間のプラントのニュースでは昨日のFireBomberライブについてやっているはず、と思ってかけたが少々早かったようだ。
政治関連のニュースが続いているらしい。
『―――昨日行われたD.S.S.Dの会見によりますと、プラントとの相互技術提携はあくまでも深宇宙探査を目的としたものであり、
 軍事的意味合いは全く含まれていないし、一部の推進システムを含む火星圏からの技術流出には当局は関与していない、との事です。
 また、連合側の発表にあったマーシャンとプラントとの橋渡しにも関与しておらず、連合に対し強く抗議している模様です』
モニターの中ではD.S.S.D側の代表が時折身振り手振りを混ぜつつ、スピーチを行っている。
「おいおい、連合はプラントとの戦争中だってのに、深宇宙探査開発機構にまでちょっかいかける気か?
 自分とこの天下り先にまで疑いの目を向けるなんて、どうかしてるんじゃないのか?」

 

『このD.S.S.Dからの発表を受け、先程デュランダル議長は改めて公式会見を開き、自ら相互技術協与についての説明を行いました。
 同時に地球連合からの理不尽な言いがかりに対して、激しい非難を口にしました』

 

カメラが切り替わり、議長の会見の様子が映し出される。
『D.S.S.Dからの公式発表にもありました通り、今回行われた技術提携はあくまでも人類全体の利益を考えた上で行ったものです。
 深宇宙は未だ人類が自らの足で到達出来ていない未知の領域であり、我々が予想できない様々な危険があるものと考えられます。
 しかし、私はその危険の先にこそ、人類の未来を決める何かがあるのではないかと考えます。
 例として挙げるならば、あのエヴィデンス01のような未知の生命体が分かりやすいでしょう。
 彼らこそ、まさに宇宙に広がる可能性を指し示す生物です』

 
 

議長の演説にあわせ、後方にあるモニターが羽クジラの映像を流す。
開戦から数ヶ月たった今となってはもう見慣れた映像だが、わかり易く示すためだろう。
『皆さん、想像してみて下さい。
 羽クジラたちは何処から来て、何処へと向かうのか。
 何の為に、銀河系の辺境というべきこの太陽系へ姿を現し、そして去って行ったのか。
 彼らは一体、どのような生物なのか』
区切りのいいところで羽クジラの予想行路とされるルートへ切り替わる。
木星軌道を通ったクジラたちは、その後銀河系の中心方向へ向かったことが観測されている。

 

『―――それらを知るには、彼らの向かった深宇宙へ向かう技術が必要なのです。
 MSという同じ人間同士で争う為の技術も、深宇宙探査という崇高な目的に使う事が出来ます。
 その人類全体の崇高な目的の為に渡した技術を、軍事目的の物であると決め付ける連合の横暴こそ、まさに許されざるものではないかと私は考えます。
 この会見をお聞きの皆さん、今一度考えてみてください。
 人類全体の幸福を考えるプラントと、一部の権力者のみが幸福になろうという地球連合。
 どちらが統治者として、為政者としてあるべき姿か、という事を』

 

「流石はデュランダル議長、政治家ってのは怖いねえ。
 渡した技術の詳しい説明じゃなくて、渡した経緯だけで満足させようってんだからさ。
 ま、口先も上手くなきゃ為政者じゃないか。
 ―――しかし、なんだって技術提携先がD.S.S.Dなんだろうねえ?
 議長が宇宙にロマンを追い求める男だという話はあまり聞かないが………」

 
 

虎が知る議長像とは少々違うことに首をかしげていると、テレビから流れるBGMがノリのいいモノに変わる。
ベースを強めに設定されたPLANET DANCEのノンボーカルバージョン。
これが流れるということは毎日この時間に放送されている、プラントでも人気のある芸能ニュースに変わったということだ。

 

『さあ、続きましては芸能ニュースです。
 まずは恒例のFireBomberに関するニュースからです。
 昨夜のジブラルタルにおけるライヴでFireBomberの地上ツアーが全て終了しました。
 ラストライブだけあって凄まじい盛り上がりでしたので、折角ですから映像で見てみましょうか』

 

映像が切り替わり、バサラの「ファイヤー!」という掛け声にファンが「ボンバー!!」と返しているシーンが映る。
その後はダイジェストで特に盛り上がった場面を映していく。
ある程度流れると偽ラクスとバサラのMCが入り、新曲がサビだけだが流れた。
『―――と、この様に次のシングル曲[POWER TO THE DREAM]も初披露され、ライブ会場は異常なまでの熱気に包まれていました。
 なお、同時にラクス様の新曲[私の彼はパイロット]も初披露でした。
 こちらの曲については、後程詳しく特集しますので、ダイジェストの続きをどうぞ』

 

更にダイジェストが流れていく。
「そうそう盛り上がってたんだなぁ……くそぅ、ボクも行きたかったぞ!」
そんな画面を見ながらうどんをすすり、油揚げを咀嚼しつつ、くやしそうにつぶやく虎。

 

ニュースは続いていく。
『ツアー終了後、マネージャーによる会見が開かれ、今後の活動が明らかにされました。
 会見の場には姿を見せなかった熱気バサラは、再びMSに載るとの事です。
 彼の所属する戦艦ミネルバはザフトでも優秀な軍人達の集まる艦ですから、戦場に立てば危険度は他の艦より高いといえるでしょう。
 連合軍にとっては脅威でしょうから、戦闘も先日のものより更に激しいものになるはずです。
 事務所側は安全面を考え、熱気バサラに戦場でのライブを自重するように申し入れたそうですが、一蹴されたとの事です。
 本人曰く「俺は歌いたい場所で歌う、それだけだ」との事ですが、この戦場ライブはあまりに危険。
 ファンからすれば、心臓に悪いので出来れば止めて貰いたいものです』

 

それを聞いて虎は肩を落とす。
「うーん、ライブツアーが終了したら、そのままミネルバから離れるかと期待したんだが、無理だったか」

 

前回の戦闘で、キラでさえ全く歯が立たなかった相手、熱気バサラ。
彼自身は何故か攻撃をしてこないが、あの紅いMSバルキリーには攻撃用の武装が幾つか装備されていることは確認済みだ。
キラのように追い込まれれば牙を剥くかもしれないのだ、ならば戦闘能力は奪うべきだろう。

 

ということで前回バルキリーへも攻撃を行ったのだが―――結果はほぼ無傷。
その上、カガリの演説も彼の歌でかき消されてしまい、こちらがやったのはただのテロ行為だ、と連合・ザフト両軍には認識されている事だろう。
このことについて良識派?のマリューやカガリは落ち込んでいたようだ。
だが、それもカガリを拉致っている時点で今更だと思う。
「ま、ボクとしちゃあ思いがけず彼の生ライブに遭遇してラッキーだったけどね。
 AAの参謀役としてはあまり喜ばしいことじゃないだろうが―――」

 
 

熱気バサラに関する部分は終わったのか、話題は偽ラクスの今後の活動についてのことになっているようだ。
『一方、ラクス様は一度プラントへ戻り、市民の戦争への不安を和らげたいとの事です。
 FireBomberとしての活動は、熱気バサラが不在でも引き続き行われる模様で――――』
「偽ラクスはプラントに戻るのか。どうせなら熱気バサラも引っ張って行ってくれればいいのにねえ。
 ―――――お、そうだ。いい作戦を思いついたぞ。
 さぁて、忙しくなるな。まずは彼女のスケジュールを確認してっと………」

 
 

そういって席を立とうとすると、モニターからFireBomberの歌声が響く。
『新曲[POWER TO THE DREAM]は、今までの彼らの曲と比べますと――――』
どうやら新曲についての特集をやるらしい。

 

半ば腰を浮かせていたがもう一度座り直し、モニターの方へ向き直る。
「ま、後でいっか。それよりも今は新曲の方が大事だよな、うん」

 
 
 

 

翌日。
ザフト軍ディオキア基地の宇宙港ターミナル前に一台のリムジンが停まった。
助手席から降りたマネージャーらしき人物が後部座席のドアを開け、座っていた女性と共に中へ向かう。

 

人目を引くピンク色の髪に、金色の髪留め、そしてお供のピンクハロ。
たまたま通りがかったザフト兵がその姿を見て大きな声を上げる。
「ラ、ラクス様だ!ラクス様が到着したぞー!!」
その声を聞いてたちまち辺りがざわつく。
遠巻きに携帯で写真を撮ろうとする者や、ありがたやと拝んだ後何か違うと首を傾げる者、果ては意味不明の歓声を上げる者までいる。
周辺は大混雑だ。

 

そんなザフト兵達の様子を見てマネージャーのキング[email protected]@…に変装した虎がラクスにだけ聞こえる様に話す。
(どうやら、キミが偽者だってバレてないみたいだな?)
虎の言葉に微かにうなずくラクス。
ラクスの偽者のミーアではなく、本物のラクスがミーアに変装している。非常にややこしい状況だ。
ごく一部だけ変装し切れていない部分もあったが。
(ええ、そのようですね。
 それもこれも、偽者さんが私に似てくれていたおかげですね)
(いや、本物に似ていないと偽者の意味が無いだろうが。
 ま、細かい違いが判るほど彼らの前に居る訳にもいかん、さっさとシャトルを奪うぞ)

 

サインや握手を求めるファン達で進めそうに無いので、付き添っていた虎が声を荒げる。
「アカン、アカン、もうちょいと後にしたってえや。
 ちょっと急いでいるさかいに、中の方まで通したってえな。
 サインは後で受け付けたるさかいに、責任者のトコまでいかせてーや」

 

虎の怪しげな関西弁?に追従するするような形でラクスが補足する。
「皆さん、シャトルの発進には、またしばらく時間があります。
 ですから、その待ち時間は皆さんとの交流とさせていただく予定です。
 ファンの皆様との貴重な時間を無駄にしない為にも、まずは中へと参りませんか?」
ラクスの言葉を受けて人垣が割れ、道ができる。
ラクスと虎は謝辞を述べつつ、先へ向かう。

 
 

しばらく進むと責任者らしき黒服の人物が、急ぎ足でやってきた。
予定よりも早い到着に焦っているようだ。
「コレはラクス様、当宇宙港へようこそおいでくださいました。
 しかし、ご予定されていた時間よりも少々早いご様子ですが、一体どうなされました?」

 

一歩前に出たマネージャー(虎)が、早口で説明する。
「あー、それなんやけどな。
 スケジュールのミスで、この後の予定が相当押しとるんや。
 ちゅーことで、一分でも早くプラントまで戻らなあかんねんけど、シャトルの準備は出来とるんやろうな?」
「ああ、はい。ですが予定よりも早いので、今しばらく時間がかかりますが………」
煮え切らない黒服の態度に、マネージャーが大声を上げる。
「ちょっぱやで動かんと、けつかっちんじゃゆうとるやろう!
 こっちが急いどるさかい、そっちも急いでや!」
「はっ、はい、了解しました!」

 

慌てて走っていく黒服を満足そうに眺めた後、周りのファン達に向かって虎が叫ぶ。
「はいはーい、ほうしたらさっきも言うた通り、この空き時間利用してラクス様のミニサイン会を開くさかいに、こっちの方に一列に並んでえな。
 ただ、待ち時間を利用したファンサービスの一環やき、サイン貰えんかったからって泣かんといてーや」
一緒に居たSP(勿論クライン派)に列の整理をさせ、虎自身は用意していた色紙やマジックをラクスの横に並べていく。

 
 

待合室の一角に、キュキュッ、とラクスの持つマジックが物の上を滑る音が続く。
それが途切れるとザフト兵の歓喜に包まれた声が僅かに響き、すぐにまたキュキュッと先程と同じ音が続く。
基本的にはマネージャー役の虎が用意した色紙に、一部の人間は持っていたFireBomberのCDにサインを貰っていく。
ザフト軍の制服や制帽にサインをねだる者もいたが、流石にそれは不味いと思った虎に止めされられていた。
それでも色紙にはサインを貰っているわけだから、例外無くサインを貰った人々は喜んでいた。

 

そんな歓喜の感情に包まれたサイン会の中で、暗い表情をした人物が一人だけ居た。
この待ち時間の間、延々笑顔でサインを行っているラクスではない。
ラクス本人は「二年前の現役の頃を思い出しますわ」と余裕の表情だ。

 

では誰か?
マネージャーに扮した、アンドリュー・バルトフェルドである。
暗い表情の理由は簡単だ。
虎にはこの後、彼らががっかりすることが解っているからだ。
(あぁ、さっきCDにサインを貰った彼も、今色紙に貰っている彼も………
 そのサインが本物じゃないと知ったら……ものすごく落ち込むんだろうなぁ。
 いや、ある意味本物だろうけど、偽者が書いた本物ではなく、本物の書いた偽者だからなぁ。
 ………だがそれも、ある意味本物なんだ。
 スマンが解ってくれよ……)

 
 

―――と、虎の心の中で何度目かの懺悔が終わると、先程の黒服が声をかけてきた。
「ラクス様に申し上げます、シャトルの発進準備が整いました。
 後はラクス様とお付きの方がご登場するだけであります!」

 

黒服の言葉に腕時計を確認する虎。
腕時計が移す残り時間は、作戦の予定時間とほぼズレが無いようだ。
期待通りの仕事をしてくれた黒服に向かって、満足げに笑いかける。
「ほうかい、ご苦労じゃったのう」
「いえ、ラクス様ご到着までに準備が完了しておりませんでした我々の手落ちでありますので」
「いんや、事情が事情じゃけえしかたないわい。
 ――――ほしたら皆の衆、どうやら時間切れのようやけえ、サイン会はここいらで勘弁してつかあさい」

 

虎の言葉に今書いていたサインを書き上げ、ラクスが立ち上がる。
「では皆様、申し訳ありません。
 少々急いでおりますので、これで失礼させていただきますわ。
 サインを貰えた方にも、貰えなかった方にもこれからも変わらぬご声援をお願いしますね」

 

そういって頭を下げたラクスに対して拍手が巻き起こる。
貰えなかった人間からの軽い落胆の視線はあるものの、皆優しい声援と拍手で見送ってくれている。

 
 

ファン達に見送られゲートをくぐり、ファンの兵士達が見えなくなるとラクスが溜め息をつく。
「なんだか、少し悪い気が致しますね……」
その言葉をサインが貰えなかった兵士達に対するものだと受け取ったのか、黒服が畏まって返事をした。
「ハッ、ですがあの者達は、ラクス様のお姿を拝見し、お声を聴けただけでも幸せというべきでしょう。
 ラクス様はプラントの民の、いえ地球圏の民の平和の為に歌い続けておられるのですから、
 時間的な都合がつかないこともあるのは仕方ありません」
「え?ええ、まぁ……」
虎ではなく、黒服の人物から答えが返ってくると思っていなかったのか、ラクスが困惑気味に返事を返す。
そんなラクスに虎が殊更陽気に声をかける。
「ま、こればかりは仕方ないさ。
 時間的に綱渡りであっても無くても、結局最後にやることは同じだしねえ」

 
 

そうこうしている内に、シャトルの搭乗口まで来ていた様だ。
「お勤めご苦労様です」
内部にSP、ラクスの順番で入り、最後に虎が入る。

 

その前に案内をしてくれた黒服に挨拶をしておこうと、搭乗口から首だけ出して声をかける。
「わざわざ見送りご苦労様。
 キミもこれから大変だろうが、頑張ってくれ」
それだけ言って返事も聞かずに扉を閉める。

 
 

後に残されたのは困惑する黒服だけになる。
扉が閉まる前に言われた言葉に困惑しつつ、ゲートまで戻る。

 

ゲートを抜けて司令室に向かう、という所で入り口の方からから走ってきた人物とすれ違う。
その特徴的な容姿を間違えるはずも無い、さっきまで傍にいたはずの―――

 

「―――― えッ!? ラ、ラクス様!!?」

 

 

シャトルのコックピットに居たパイロットをSPと共に縛り上げていると、基地の航空管制塔から緊急通信が入ってきた。
しかしそんな事は気にせずに操縦席に座り、シャトルの発射準備を進める。
「お、もうばれちゃったのか。
 もうちょっとくらい持つかと思ったんだけど、案外早かったねえ」

 

基地側から無理矢理に繋げられた回線が、コックピット上部のモニターに映し出される。
モニター内では黒服の人物が、こちらの真意を探るような言葉を吐いている。
その後ろには、本来このシャトルでプラントに戻るはずの偽ラクスの姿もあった。
状況がわかっていないらしく、不安気にモニターを覗き込んでいるようだ。
そんな彼女の表情を見ていると、一ファンとして非常にいたたまれないが、こちらにも事情はある。

 

基地側からの言葉を適当にあしらい、シャトルの発射準備を完了させる。
最後のチャックをしつつ、後方のシートに着席しているラクスに向かって注意を呼びかける。
「ちょっと揺れるかもしれないが、我慢してくれよ?」
暗に基地のMS隊から攻撃されるかもしれない、とのニュアンスを含めての注意だった。

 

しかし、この程度では彼女の覚悟は揺るがないようだ。
「構いませんわ、出発しましょう」
穏やかな笑みを浮かべたまま、出発するように命じてくる。
「オーケィ、それじゃ行きますか」

 
 

シャトルを離陸させ、そのまま高度を上げようとするが、MSからの射撃がシャトルの上を通り過ぎる。
慌てて高度を上げるのを止めると、基地側からの通信がシャトルに入る。

 

「今の攻撃はあえて外させた。
 今は2、3機のみの威嚇射撃だったが、次からは違う。次は容赦しない。
 その何の武装も無いシャトルのみでは抵抗も出来まい、投降するなら今の内だ。
 これは最後通牒だ」
温情を見せたつもりなのか、再度投降を呼び掛けてくる。

 

その呼びかけに神妙な顔をして虎が返答する。
「確かにシャトルだけなら勝ち目は無い――――そう、シャトルだけなら、ね。
 その敵に対しても紳士的な気遣いは時間に余裕が無いボクらにとって非常にありがたいが、君達は今に後悔するよ。
 『何であの時落とさなかったんだ』ってね」
そう返答すると一気にシャトルの高度を上げ始める。

 

挑発的な言葉を受けて指揮官の顔が真っ赤に染まる。
「……言ってくれるじゃないか、恐れ多くもラクス様を騙る盗人無勢が。
 MS隊、攻撃開始! 拿捕する必要など無い、撃墜しろ!」
「MS、発進開始。
 シャトルに対し攻撃を開始せよ、繰り返すシャトルへの攻撃を開始せよ」

 
 

基地の格納庫から新型MSバビが続々と吐き出されるのを見て、虎が呟く。
「やれやれ、こんな安い挑発に乗るようじゃ、指揮官失格だねえ」

 

地上ではザウートの発展型ガズウートが戦列をなし、一斉にミサイルを打ち出す。
「ボクとしては平和的に行きたかったんだが、こうなっちゃあ仕方ない」

 

バビがシャトルの後ろについて、両翼のミサイルを発射する。
同時に、ビームライフルとガンランチャーでも攻撃を開始する。
「キラの武装解除を受けてもらうしかないねえ」

 
 

近くの入り江に伏せていたフリーダムのコックピットで溜め息をつくキラ。
予想通りの展開に呆れながら、機体を急上昇させる。
「―――はぁ、やっぱりこうなるのか……キラ・ヤマト、行きます!」

 
 

シャトルを追い越し、シャトルへ追い縋るミサイル群へ向けてフルバーストを撃つ。

 

シャトルを狙っていたミサイルが、さらに上空からのフリーダムの攻撃により撃ち落とされる。
小さなシャトルを狙うために密集していたミサイルが次々と誘爆を起こし、ライフルやランチャーの攻撃をかき消していく。

 

そのままバビの編隊へむけて降下しつつプラズマ砲やビームライフルやレールガンで狙撃する。
上空からの攻撃など念頭に置いていなかった攻撃隊は、なす術も無く頭部や主翼を撃ち抜かれていく。
続けて数発撃ち、そのままサーベルを抜き放ち突撃する。

 

そのフリーダムの動きを見たバビが慌てて変形を解除し、隊伍を乱しながら散開するが、反応が遅れた二機がサーベルに切り裂かれる。
そして敵中突破を終えると急制動をかけてバビに向け反転、そしてまたフルバーストを行い、時にサーベルを持って駆け抜ける。
バビ隊も必死に反撃するが、機動力の違いに翻弄され、数を減らしていく。

 

状況によって遠距離・近接を上手く切り替えるフリーダムによって、大した抵抗も出来ずに次々と撃ち落とされていくバビ隊。
そのどれもが武装、もしくは頭部や四肢といった経戦能力の低下する部位のみを攻撃されている。
一部のバビは中途半端に避けたためにメインスラスターを損傷したりしているものの、フリーダムがバビを一機も撃墜はしていない所がキラの技量であろう。

 
 
 

フリーダムはシャトルに群がるバビ隊を壊滅させると、基地へ向けて降下していく。

 

地上からはガズウートが対空射撃を絶え間なく行っているが、一発も当たらない。
こちらへ攻撃してくるガズウートには目もくれずに、基地のレドームを狙い打ち、破壊していく。
シャトルの位置を基地側に把握できなくするためにだ。

 

レドームを粗方破壊し終わると、シャトルへ向けて上昇を開始する。

 
 

こうまで容赦なく破壊されては、基地としてしばらく使い物にならないだろう。

 

 

フリーダムをシャトルと同じ高度まで上げ、通信を繋ぐ。

 
 

虎がねぎらいの言葉をかけてくる。
「キラか、ご苦労さん。
 これだけやっとけば、ザフトも第二波まで繰り出してきそうに無いな。
 もっとも出してきたとしても、追いつく頃にはシャトルは宇宙に出てるだろうけどね」
「そうですね、流石にもう追ってはこないみたいですね」

 

そういってレーダーに目を向けると、下には反応がない。
ただ、同じような高度で飛ぶ機体が、こちらに接近しているようだ。
「――――え、レーダーに反応?まさか、別働隊がいたの!?」

 

キラの反応に、それまで笑っていた虎も表情を引き締める。
「たまたまここまで上がっていた高高度用偵察機かもしれんが、注意しろ。
 レーダーでは形式番号までは解らん、目視は―――流石にまだ無理か?」
「この速度なら十秒後には目視できると思います。
 見えたらそっちにも映像を回しますから、攻撃してきそうなら急いで宇宙まで上がってください」
「了解――――来るぞ!」

 

フリーダムのツインアイが接近する機体の姿を捉える。
その映像を持ち前の情報処理能力も使って解析し、サブモニターにその映像を写す。
ついでにシャトルの方へも同じ映像を送る。
それに映っていたのは―――

 
 

「――――そんな、これはファイヤーバルキリー、熱気バサラ!?
 どうしてこんな所に!?」

 
 

ファイターモードと呼ばれるMA形態で、ミネルバへと高速移動中のファイヤーバルキリーの姿だった。

 
 
 

機動戦士ガンダムSEED DESTINY feat.熱気バサラ
第14話 大同小異

 

 

次回予告

 

ハイネ「高度数千メートルの空に歌声が響く。勿論バサラのライブだ。
    観客はシャトルのラクス・クラインと、テロリストとしておなじみのキラ・ヤマト」
虎  「宇宙に出ようとするシャトルに、余裕で追いついてくるだって?
    バルキリーってのは一体、なんだってんだい?」
ハイネ「シャトルと共に宇宙に出るバルキリー。バサラの歌に、ラクスは何を思うのか?
    次回、機動戦士ガンダムSEED DESTINY feat.熱気バサラ 第15話 届かない声 に――」

 

バサラ「過激にファイヤー!」