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PHASE-00 コスモス・カラー プロローグ

Last-modified: 2017-06-10 (土) 10:23:00

「―――ッ!? そういう事を言うからぁーッ!」
少女の叫びと共に、放たれた銃弾がモビルスーツへと吸い込まれていく……。やがてそのモビルスーツは力尽きたように四散し、太陽の方角へと、漂っていった。
少女の名は、クェス・パラヤ―――地球連邦軍参謀次官の娘で、天真爛漫で感受性が強く、我侭な、それでいて、どこにでもいるような少女だった。
父と母が不仲で、それを何とかするために、明るく振舞うような幼い日々もあった。しかし両親は別れた。
なぜ人はわかりあうことができないのだろう。なぜ人は、理解しあうことができないのだろう……。
彼女はそれが嫌で、家出をした。全てを知ることのできる、お互いを理解しあうことのできる存在―――『ニュータイプ』になることを夢見て……。
そして、彼女はある人物に興味を持った。過去の大戦で生き抜いた伝説の英雄、アムロ・レイ―――人々からニュータイプと言われ、あるいは恐れられてきたエースパイロット。
だが、その男のかたわらには女がいた。―――ベルトーチカ・イルマ、その存在がクェスには鬱陶しく見え、彼女はまた家出をした―――そう、ネオ・ジオンに……。
「―――あんなこと言うから……」
 少女は震える体を無理やり抑えようとする。だが震えは止まらない。友達を、殺してしまったという思いが彼女の心を支配する。どうしてこんなことになってしまったのだろう。自分はただ、素直にありたかっただけなのに……。どこで道を踏み外してしまったのだろう。
後悔の念が彼女を支配する。
「あたしが悪いんじゃない……」
―――ハサウェイ・ノア。出会ったばかりの少年。それでも、自分と共にいてくれた優しい少年。彼の咄嗟の言葉で―――自分を抑えきれずに……。
クェスを救うべくモビルスーツ爛献Дン瓩魘遒蝓△笋辰討た彼を、爛▲襯僉Ε▲検璽覘瓩瞭部バルカンが、撃ち抜いてしまったのだ。
それはまるで、自分を檻の中に閉じ込めるかのように巨大で冷たいクリーム色のマシン。
少女は唇を噛み締めながら、弱々しくつぶやいた。
「……みんな……嫌いだ……」
悲しみと絶望がクェスの心を支配する。少女の前に広がる冷たい漆黒の宇宙は、まるで自分の死を招くかのように広がっている。彼女の頼れるものなど、何も無かった。

 
 

「―――これは!?」
そこから少しばかり離れた戦場で、男が少年の危機を感知した。どうやって感知したのかなどわからない。ただ、知る事ができたのだ。白いパイロットスーツに身を包んだ青年の名は、アムロ・レイ。
彼は震えるように拳を硬く握りしめ、悔しそうに視線をそらす。
「馬鹿なことを!」
サイコ・フレームに包まれたコックピット内のアムロの思念が形となり、爨優ンダム瓩反応する。
そして彼は泣きそうになる少女の意識を辿り、その場所を目指した。

 
 

アムロは一瞬、激昂した。 
「クェス! 一体何をしたんだ!」
言ってから、彼はふと、少女と出会った時のことを思い出す。―――そう、彼女は優しい子だったはずだ。では、何故……? その問いに、彼は答えることができた。
彼女は……幼いのだ。 
アムロは強く目を瞑り、目の前にいる少女に優しく声をかけた。
「友達だったんだろう……?」
目の前に浮かぶ爛▲襯僉Ε▲検璽覘瓩凌搬里びくりと震えた。
「友達なんかじゃない!」
通信機など介していない。クェスの心が言葉となって、アムロの心に響いてくるのだ。
「彼の気持ちを思ったことがあるのか!」
これが、アムロには許せない。ハサウェイはクェスに惚れていたのだろう、愛していたのだろう。それを知っているアムロだからこそ、許せなかった。

 
 

「あたしの邪魔ばっかりして!」
そして、それはクェスにとっても同じことだった。導いてくれると思ったのに、憧れていたのに、どうして自分を見てくれなかったのか……。何故、今になってここに現れて……。
叱るような声が、宇宙を飛んで聞こえてくる。
「なぜ理解しようとしない……。なぜ素直になれないんだ!」
彼の言葉に、クェスはカッと目を見開く。
―――理解しようとしない……? あたしは知ろうとしたのに! 気持ちも伝えようとしたのに……いきなりあんな事を言うから……! やるつもりなんかなかった!
「あなたに何がわかるって言うの!?」
そうだ、アムロは何もわかってくれていない。自分の気持ちも、こんなことになってしまった理由も―――。いつもいつも、上からものを見て、自分の気持ちなんてわかってくれない……!
「そんな、いつも偉そうな事ばっかりー!」
激昂したクェスの叫びに呼応するかのように、爛▲襯僉Ε▲検璽覘瓩慮にあたる部分からメガ粒子砲が火を噴いた。 彼女の思念に操られ、太い光が尾を引いて爨優ンダム瓩鮟韻Α
「クェス、よさないか!」
だが、爨優ンダム瓩呂修譴魄廖垢箸わし、背中のマントを翻す―――否、その物体は六つに割れ、コの字のように折れ曲がって爛▲襯僉Ε▲検璽覘瓩貿る。
爛侫ン・ファンネル瓠宗宗臭爨優ンダム瓩謀觝椶気譴拭¬祇誘導型の小型レーザ砲。 それらが一斉にクリーム色の巨大なモビルアーマーに襲い掛かってきた。
クェスはすぐさま反応して、爛▲襯僉Ε▲検璽覘瓩謀觝椶気譴拭△星濔の爛侫.鵐優覘瓩魃宙に放つ。
「落ちろ……落ちろぉー!」
クェスの心からダイレクトにイメージを受信し、爛侫.鵐優覘瓩凄まじい速さで漆黒の宇宙を舞う。そして、ビームが放たれた。
しかし、爨優ンダム瓩碌な回避運動も取らずに、慣性移動に身を任せるようにして、ゆらりと漂いながらビームの雨の隙間を縫うように回避してしまう。
そのままゆったりと漂いながら、一つずつ、宇宙を舞う爛侫.鵐優覘瓩魴發鼠遒靴討い。
その様子にクェスは唇を噛み締めた。こんな戦い方をしてみせるアムロが許せないのだ。こんなに強いのに、自分を見てくれないことが……。
そして、爨優ンダム瓩ら放たれた爛侫ン・ファンネル瓩砲癲攻撃の意思が無いように見えるのも、許せない。
やがて、アムロの意識が、爨優ンダム瓩離灰奪ピット内に組み込まれたサイコ・フレームを介し爛侫ン・ファンネル瓩謀礎され、凄まじい速さで爛▲襯僉Ε▲検璽覘瓩鯤餔呂垢襦
―――やられてしまう……!
クェスは唇を噛み締めた。だが、爛▲襯僉Ε▲検璽覘瓩鯤餔呂靴伸爛侫ン・ファンネル瓩蝋況發鬚垢襪海箸覆、瞬間、動きを止めた。
一瞬のち、一斉に淡い色をしたビームの膜が張られ、爛▲襯僉Ε▲検璽覘瓩鮖擁から包み込むように、ピラミッド状のバリアーを作り上げてしまう。
アルパ・アジール瓩必死にピラミッドの檻の中で抵抗をする。 そして爛侫.鵐優覘瓩、それにビームを放ち、あるものは体当たりを仕掛けるが、膜に弾かれて身動きが取れない。
そんなアムロの行為は、クェスにとって傲慢なものに感じられた。 子ども扱いされている……! と。
「……こんなの、嫌いだー!」
正面の膜を睨みつけ、クェスは指の部分にあたるメガ粒子砲を放つ。だが、それは光の膜に遮られ目の前で四散し、激しい光を放つ。その衝撃と光に、少女は悲鳴を上げた。

 
 

「そんな攻撃では!―――そんな道具の使い方では、間違って人を殺すのも当たり前だ!」
そう、かつて自分がそうだったように。―――あの時、あの瞬間。出会えた少女を殺してしまった時のように……。
「それでは……家族だって殺してしまう!」
「あたしはそんな馬鹿じゃない!」
少女の怒りが、伝わってきた。それは悲しい叫びであった。クェスは知らないのだろう……、自分が既に、父を殺してしまっている事を―――。
「こんなものぉ!」
クェスの体から力が溢れ、それが爛▲襯僉Ε▲検璽覘瓩魏陲掘波動となって宇宙を駆ける。その押しつぶされるような圧迫感に、アムロは歯を食いしばった。
「―――クッ……何と力のある娘だ!?」
それは力強くも、若すぎた力だった。だからこそ、少女は少年の気持ちを受け入れられずに―――。そのとき、ふいに言葉が走った。
―――ああ、クェス。 怒るんじゃないよ―――
アムロははっと顔をあげ、周囲を見回した。
「―――ハサウェイ!?」
死んだと思っていた少年のイメージがアムロの脳裏に飛び込み、それを形作る。少年は、瀕死のように見えた。
「クェス、感じないのか。 ハサウェイは死んでいない!」
「ウソばっかりっ!」
クェスから聞こえてくる声は、涙声のように聞こえた。アムロは一度目をつむってから、優しく接するように努める。
「そういうクェスだから、ますます苦しい思いをする……。 クェスに助けを求めているのがわからないのか!」

 
 

宇宙を走ってきたアムロの言葉に、クェスは一瞬はっとする。―――ハサウェイが……あたしに助けを求めている? そう思った瞬間であった。
―――怒っちゃいけないよ、クェス。 それじゃあ可愛い顔が台無しだよ―――
一瞬にして、傷ついたハサウェイのイメージがクェスの脳裏に響き渡る。そして少し引いた位置に、傷つき力を失った爛献Дン瓩、ゆっくりと太陽に流れていくイメージが見えた。
「……ハサウェイ?」
そう言った彼女の声は、期待と嬉しさと、不安に満ちたものだった。彼女を諭すように、アムロが続ける。
「そうだ。太陽の方向だ」
太陽―――。じっと目を凝らして見つめるが、彼を見つけることができない……。―――遠い。クェスはそう感じた。それでも、彼女はどこか期待を込めた声でアムロに尋ねる。
「間に合うかな?」
「爛▲襯僉Ε▲検璽覘瓩離僖錙爾鮖箸┐弌⊇ける事もできる」
爛▲襯僉Ε▲検璽覘瓠宗宗修修譴麓分を包み込む巨大な檻。だが、先ほどまでは戦場の狂気と化していたモビルアーマーが、今では頼もしく、優しい巨人のように感じることができた。
「―――あとは、クェスがそれをどう使うかだよ」
尚も優しい言葉に、クェスは爨優ンダム瓩鮓やる。その姿は、まるで、「帰っておいで」、と家出した娘を優しく迎える父のようであった。
彼女は顔を上げ、太陽を見つめる。
「待ってて、今行くから!」
爛▲襯僉Ε▲検璽覘瓩鯀爐襯ェスの意識が宇宙を駆けた。その淡い光は素晴らしく美しい。
―――どこにいるの、ハサウェイ……!
少女から発せられた美しい光が無数の粒となり、太陽に向かって伸びていく。その向こうで、光るものがある。
「―――見つけた!」
クェスはぱっと表情を明るくし、子供のように喜んだ。少女に寄り添うように漂う爨優ンダム瓩呂匹海泙任睛イ靴ぁ
「そうだよクェス。 後は君の気持ちを繋げばいいんだ」
いつのまにか、少女を支配していた暗い感情は消えうせていた。少しばかりの照れを隠すように、クェスは言った。
「後ろから撃つなら撃ってもいいよアムロ」
そしてクェスは、爛▲襯僉Ε▲検璽覘瓩良霑を着脱させ、すっと前を見据える。
目の前に広がる宇宙は、どこまでも蒼く、優しく、命の光を称えてくれているかのように感じられた。

 
 

敵を撃ち滅ぼすために搭載された様々な武器が、鎧が、一斉に分離する。そして爛▲襯僉Ε▲検璽覘瓩脇部のみを残した姿となった。呪縛から解き放たれた瞬間である。
頭部のみとなったその姿は頼りなさよりも、少女を祝福してくれるかのような優しい力を、強く発しているように見えた。
ロケットブースターを吹かせ、太陽へと向かうクェスの声が、聞こえてきる。
「―――信じてみる」
彼女は確かにそう言った。アムロはもう一度深く目を瞑り、息をつく。そのままの優しい瞳で、彼は太陽を見つめる。
既に爛▲襯僉Ε▲検璽覘瓩了僂聾えなくなるほど遠くに行っていた。
「ハサウェイ、ちゃんと迎えてやるんだぞ」
この言葉は、もう届いていないだろう。それでも、アムロは優しく言った。
そのままシートに深く座りなおし、宙を仰ぎ見る。
―――愛しているという心は……愛しているという心は……。
アムロは……寂しいのだ。
だが、すぐに彼はキッと地球を見据えた。そう、まだ戦いは終わっていない。大人として子を導く優しい時間は過ぎ去り、戦士として決着をつける瞬間が迫っているのだ。
もう爨優ンダム瓩録兇蠍くことなく、地球に迫ろうとする巨大な隕石―――爛▲シズ瓩鯡椹悗后 その奥に、暗い闇に取り付かれ、血の様に赤い翼を羽ばたかせる、鳥の姿をしたモビルスーツの存在を感じる。
―――その血塗られた獣の喉が、低く唸った気がした。

 
 

PHASE-00 コスモス・カラー

 
 

爛蕁次Εイラム瓩寮鐺ブリッジでは、クルーは、なす術もなくその輝くアクシズの前進を見つめていた。と、その時―――。
「……ウッ……!」という嘔吐のような声が、艦橋内に響いた。 艦長のブライト・ノアが驚いてそちらを見やる。
「ベルトーチカ……!?」
ベルトーチカと呼ばれた金髪の女性が、ノーマルスーツの中の金髪を揺らしながらたどたどしい足取りで爛▲シズ瓩留任襯皀縫拭爾剖瓩鼎い討る。
「アムロは……?」
そうつぶやいた瞬間、彼女の体から蒼いオーロラのような光が溢れ出る。ブライトたちが驚愕して身を引いたが、ベルトーチカはそれに気づいた様子も見せずに、必死にモニターを食い入るように見つめている。
やがてベルトーチカは、目を見張った。地球と爛▲シズ瓩隆屬某びた蒼い光の帯にそって、爛▲シズ瓩竜霏腓頁吠劼、ゆったりと滑っていくのを目にしたからだろう。
しかも、後方の岩の先端からは―――爨優ンダム瓩痢▲▲爛蹐里い襪箸海蹐澄宗宗修修海ら発せられる力強い光が宇宙に舞うように広がっている。
「アムロォ……!」
突然の援軍、突然発した謎の光に唖然としていたブライトは、ベルトーチカの涙の入り混じった声にはっとして戦友のことを思い出し、キャプテンシートを勢い良く立ち上がりながら怒鳴り声をあげた。
「爛ンダム瓩法▲▲爛蹐謀舛┐蹐叩 離脱しろとっ!」
「無理です! オーバーロード・ウェーブで、無線はブラックアウトしていますっ!」
誰もが、目の前で起こっている事態を把握できていないのだ。モビルスーツが正体不明の光を発っしているなど、どうして知ることができようか? ブライトは古くからの友の死を悟り、呆然と立ち尽くした。

 
 

「ア、アクシズが、進路を変えました!」
艦橋内に、喚声が響く。それとほぼ同時だった。ベルトーチカの手に握られたサイコ・フレームが、目も眩むほどの光を発したのは。
「……命があるからこそ、光が発する……」
彼女が涙に濡れた顔でつぶやいた。蒼く美しい光の粒が、津波のようになってベルトーチカの握るサイコ・フレームから溢れ、それが爛▲シズ瓩妨かって伸びる。ベルトーチカは、その光のひとつひとつが生命なのではないかと思いついていた。
そして光の中、彼女はお腹の子が、泣いているように感じていた。パパを助けて、と泣き叫んでいる。だが、それは適わぬことなのだろう。人間にそこまでの力は―――。
そう思った矢先である。サイコ・フレームが更に震動を強め、爛蕁次Εイラム瓩隆篭兇らすり抜けるようにして宇宙に飛び出していったのは……。このような現象がどうやって起こったのかなど、わかるものはいない。
その金属片は、爛▲シズ瓩愀劼れた淡い光のレールを滑るように、引き寄せられていった。

 
 

「……クェス?」
ハサウェイは、傷ついた体を起こし、隣で呆然と座り込んでいるクェスに声をかけた。だが彼女は答えない。やがて、彼女は震える声でつぶやいた。
「アムロが……消えちゃうよ! アムロがぁ……っ!」
クェスの言っている意味がわからず、ハサウェイは彼女を優しく抱きしめながら聞いた。
「アムロさんが……消えるって……?」
「アムロはあたしのお父さんになってくれるかもしれなかったのにぃっ!」
泣きじゃくりながら叫ぶクェスの言葉に、ハサウェイは顔をあげた。ひょっとして、この子は父親を欲しがっていたのだろうか?
いや、なにも父親でなくても良いのだ。それが安心を与えてくれる人物ならば―――彼女は誰でも良かったのかもしれない。寂しい子なのだろう。
彼は拳を握りしめてから、一度だけキッと爛▲シズ瓩鰲砲澆弔韻討院△笋て優しく少女を抱き寄せた。
「僕、頑張るからさ……」
泣いたままの表情で、クェスは「え?」と顔をあげる。 彼はクェスをそのまま抱き寄せ、こつんとパイロットスーツのヘルメットを押し付けるようにして、優しく語りかけた。
「アムロさんに負けないように……頑張るから……。だから―――」
地球を包み込むように広がるオーロラをバックにして、子供の二人が力強く抱き合っている。
救助はいつ来てくれるのかわからない。だが、それでもハサウェイは、この寒い宇宙でぽつりと浮かんでいるこの状況を、寂しいものだとは思わなかった。
―――強くなろう。そう心に決めた瞬間であった。

 
 

爨優ンダム瓩鮹羶瓦砲靴秦鵑じに、地球から発した光が、吸い込まれていく。
その数は、知れない。地球の各地から発した光が、線から帯、帯から膜になり、時に低く、時には高く地球を取り巻くようにして、爨優ンダム瓩暴乎罎垢襪茲Δ妨えた。
それは、あたかも爛▲シズ瓩竜霏腓粉笋法行くべき道を示すようであった。
「ああ……な、なんだっ!? ぼくは、世界を見ているのか……!?」
コックピットの激震にもまれながら、灼熱のコックピットで、アムロは、ボロボロと涙を流しながら、うめいた。ふと、シャアが低い声を荒げた。
<―――そうか。しかしこの暖かさを持った人間が地球さえ破壊するんだ! それをわかるんだよアムロ!>
わかってるよ! だから、世界に人の心の光を見せなけりゃならないんだろう!?」
アムロはまだ、信じているのだ。狠狼縅∨瓩撚革が起きる事を。そして、世界が変わることを―――信じているのだ。
しばらくの沈黙ののち、深い息をつくような音がしてから、シャアが低い声でうめく。
<……クェスは、どうした?>
「帰ってきたさ! あんな純粋な娘を、貴様はマシーンのように扱って!」
カッとアムロが激昂した。彼にとって、あのような敏感な少女に人殺しをさせることは、許しがたい行為なのだから。
<ハッハッハッハッ! そうか、ではあの時の二の舞にはならなかったというわけだな!? ええッ!?>
通信越しから、嘲るような笑い声が聞こえてきた。
「あの時って―――!」
あの時―――そう、十四年前……全てが狂いだしたあの瞬間。アムロは言葉につまり、唇を噛み締める。 
「だ、だが……! あれは俺にとっても―――」
<ああそうだろうな、あれはお互い様だろう! だがな、それでも……わたしにとっては、あれが全てだったのだ……ッ!>
シャアの悲痛な叫びに、彼は全身を震わせた。この男は、それほどにあの少女―――ララァ・スンのことを……。アムロの脳裏に、あの時のことが蘇えってくる……。
その悲しみに追い討ちをかけるようにシャアが続けた。
<お前は何時だってそうだ! 全てを知った風な口で語り、常にわたしの先を行く!>
「何を言っている!?」
アムロには、シャアが泣いているように感じられた。

 
 

アムロは彼の怒りを交えたような声に、必死に耳を傾けていた。通信から聞こえてくる言葉の一つ一つが胸に突き刺さるようだ。
<……わたしは、お前と互角に戦いたかっただけだ。そのために、わたしの開発したサイコ・フレームの技術を提供した……!>
「貴様が!? 馬鹿にしてっ! そうやって貴様は永遠に他人を見下すことしかしないんだ!」
激震するコックピットの中は、既に真っ赤だった。
<ララァ・スンは私の母になってくれるかもしれなかった女性だ!>
彼の悲痛な叫びに、アムロは身を引かせる。呆然とし、彼はつぶやいた。
「お母さん……? ララァが……」
シャアのコックピット内は、自分のそれよりも更に辛い状況だろう。だが、彼の怒りに満ちたような叫びが途絶える事は無かった。
<ザビ家への復讐を捨てて、戦いも、憎しみも、何もかも忘れて! 地球のどこかで二人だけの生活を営もうかと考えたこともあった!>
アムロの目に、また涙が溢れてきた。過去の大戦―――牋貲戦争畛代からの宿敵であるあの男が、こうまで考えている事を、この直前まで彼は知ることができなかったのだ。
<―――そのララァを殺したお前に……言えた事か!>
それが、聞こえてきた最後の言葉だった。
シャアの乗っていたコックピットは炎に包まれ、彼の燃えゆく身体がサイコ・フレームを介してアムロの脳裏にイメージとなってはっきりと浮かび上がる。
「―――シャアッ!」
言葉は、返ってこなかった。
アムロはシートに深く座り込み、もう一度―――あの時のように涙をこぼした。
「俺は本当に―――本当に取り返しのつかない事をしてしまった……」
溢れ出る涙が彼の頬を伝う。やがて、燃え行く爨優ンダム瓩亮蠍気妨える赤いコックピットに―――シャアが、つい先ほどまでそこにいたコックピットに、周囲の景色には似つかない、白く美しい白鳥がそっと近いていく。
やがてそのイメージは女性の姿へと変わり、爆炎をあげるコックピットを優しく抱きしめた。
「ラ……ラァ……?」
あの時自分が殺してしまった少女が。ララァがシャアを迎えに来たのだ。アムロにはそれがとても悲し存在に見えてしまう。
「待ってくれララァ! 俺は……。 ―――シャア! 俺たちはまだ何もしちゃいないんだぞ! それを、こんなところで……!」
震える声で叫んだが、その声は届かない。淡い光の中のララァは、悲しそうに、それでいて愛おしそうに、光に包まれたシャアのイメージを優しく抱きしめる。ふとララァがこちらを見て微笑んだ。彼女は優しい笑みを浮かべたまま、アムロに手を伸ばす。と、その時―――。
『―――狆石瓠帖弔蓮
『駄目だよ、パパぁ!』
同時に二つの声が聞こえてきた。低く唸るような、人とは思えない何者かの声と、先ほど聞こえた我が子の声だった。
ふと、モニターの中に、ちらりと動く影が見えた。それは、再び起動を始め、今まさに羽ばたかんとする爛淵ぅ船鵐押璽覘瓩世辰拭赤く力強い飛翔をせんとするモビルスーツのモノアイが、アムロじっと見つめている。
―――いったい、何が起こっている……。 俺は……。
そこから先は、言葉にも、思考にもならなかった。
目の前のララァが、驚いた表情で何かを叫んでいる。だが、聞こえない。そこに、先ほどいたシャアの魂は見えなかった。
アムロは力の限りを尽くして叫ぼうとする。だが、喋れない……。
ついに、爨優ンダム瓩離灰奪ピット内にも炎が走った。それに呼応するかの用に、爛淵ぅ船鵐押璽覘瓩力強く羽ばたき、宇宙を舞う。
アムロは薄れゆく意識の中、必死に手を伸ばすララァの姿を捉えながら、彼もまた、手を伸ばそうとした。だが、届かない。
爨優ンダム瓩眩い閃光に包まれ、コックピットもその光に包まれる。そしてその光に爛淵ぅ船鵐押璽覘瓩爨優ンダム瓩慮紊鯆匹Δ茲Δ法飛び込んだ。
アムロに確認できたのは、そこまでだった。彼は最後の直前に、妻と子に思いを馳せる。死に行くように目を閉じていく彼の口元は、確かに「……ベル……トーチカ」と言ったように見えた。
もう……爛淵ぅ船鵐押璽覘瓩里気┐困蠅蓮∧垢海┐覆った。

 
 

つづく

 

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