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R-18_Abe-SeedDestiny-X_安部高和_08

Last-modified: 2007-11-06 (火) 21:40:05

「把握しました」
マルキオ駐車場に停泊中のヴェサリウス、そのブリッジにて。
電話帳並に分厚いヴェサリウスの説明書を閉じ、アビーはシャギアに問うた。
「それで、私はどこを担当すればよいのですか?」
「君は通信士科卒だったね?」
「ええ」
「加えて操舵、CIC、艦長も出来る、と?」
「はい。ブリッジの仕事なら一通りは」
「よし。じゃあ全部やってもらおう」
「了解しました」
「無理は承知だけど人がいないから・・・・・・え?」
「どうかしましたか、オルバさん?」
「い、いや、だって・・・・・・」
こんな無茶な要求は流石に通らないだろうと思っていたオルバは、あっさりと承諾したアビーの
言葉に戸惑った。
「ふっ、オルバよ・・・・・・私の目に狂いはなかったという事だ」
「・・・・・・!?こ、ここまで見抜いていたなんて!すごいや兄さん!!流石だよ兄さん!!」
「ニヤニヤ」
「シャギアさん。あまり人前でニヤけない方がよろしいかと」
「だらしないニヤけ顔も、私がすれば様になるというものだろう?」
「・・・・・・」
「なんとか言うんだアビー」
「私に暴言を吐かせるおつもりですか?」
「うむ、何も言わなくていい」
「助かります。しかし一人で全てをこなすとなると、このブリッジに若干の改良が必要となります」
「その辺りは全て君に一任しよう」
「それでは工具をお借りしたいのですが」
「うむ。オルバよ、すまないが工具を取ってきてもらえないか?」
「分かったよ、兄さん」

ヴェサリウス、艦内通路。
工具を持ってブリッジに向かう途中、オルバは厳重に封鎖されたドアとすれ違った。
「ここは・・・・・・?」
板を打ち付けられた、立ち入ろうとする者全てを拒むドア。
――「兄さん、なんだか怪しい部屋があるよ」
――「オルバよ。この艦は悪の母艦なのだ。怪しい部屋などむしろウェルカムではないか」
――「そうだけどさ兄さん。なんかよくない感じがするよこの部屋。なんかこう、ピンク色の
気配が・・・・・・」
――「ピンク色だと・・・・・・!?オルバよ、今すぐその部屋を開くのだ!」
――「・・・・・・分かったよ、兄さん」

兄が何を期待しているのかを理解してしまったオルバは、渋々そのドアの板を外しにかかった。
「これでよし、と」
――「じゃあ開けるよ、兄さん」
――「いや待てオルバよ、私が開けよう」
――「大丈夫だよ兄さん、僕は別にそんなのに興味はないから」
――「ほう?流石は私の弟だ。本やDVDに頼る必要はないと見える・・・・・・ククク」
――「そ、そんな事はないよ兄さん!僕だってたまには――」
――「たまには、か・・・・・・そうだな、私の弟は女にモテモテだからな・・・・・・ククク」
――「ひぃっ――!?ご、ごめんよ兄さん!」
兄の怒りにうろたえたオルバは、誤ってドアの開閉スイッチを押してしまった。
「あ――」
ドアが開かれ、そしてオルバの目にその部屋の全貌が映し出された。
「ひ、ひぃっ!?」
――ドアのプレートには、『アスラン・ザラ』と書かれていた。

ドタドタドタ――
「に、兄さん!!」
血相を変えたオルバが、ブリッジに駆け込んできた。
「どうしたオルバ、そんなに慌てて。狼狽は悪の美学に反するのではないか?」
「僻み妬みも美学に反すると思いますが」
「ふっ、アビーよ・・・・・・手厳しいな」
――「しくしくしく」
心の中でシャギアは泣いた。
「それより兄さん!この艦は呪われてるよ!!」
「どういう事だ、オルバ?」
「あの部屋は、とても正気の沙汰じゃない・・・・・・!」
「ほう?それは少し興味が湧いてきたな。どれ、私も見てみようじゃないか」
アビーに工具を渡し、二人はブリッジを出た。
そして問題の部屋の前。
「・・・・・・開けるよ、兄さん」
「ああ」
そして開閉スイッチを押すオルバ。
「こ、これは・・・・・・!」
露になった部屋の全てを見たシャギアは、思わず洩らした。
その部屋の壁には、少年の顔が映ったポスターが隙間なく貼り付けられていた。床には丸められたティッシュが
多数転がっており、部屋の持ち主がここでナニをしていたのかは明白だった。
「これって、まさか・・・・・・」
「ああ。この部屋の持ち主は、どうやらゲイブリッジ大佐であったようだ・・・・・・」
ポスターだけではない。アルバムを手に取るとそこにはやはり同じ顔の少年が映っており、しかも何故か
張り付いて開かないページもあった。
言うまでもない事だが、映っている少年とはキラ・ヤマトの事である。アスランが去った後もこの部屋は放置され、
誤って兵士が入らないように厳重に封鎖されていたのだ。
「兄さん、どうしようこの部屋・・・・・・」
「ふむ、なかなかに可愛い顔の少年ではないか・・・・・・」

「兄さん!?まさか兄さん、モテなさ過ぎてそっちの道に――!?」
「冗談だオルバ。しかし・・・・・・今なんと言った?」
「――!?いやっ、何も言ってないよ!!?うん、何も!星条旗に誓って何も言ってないよ!!」
「そうか・・・・・・なら信じよう」
「・・・・・・ほっ」
星条旗をポケットにしまうオルバ。
「しかしどうするか・・・・・・この部屋をアビーが見たら発狂し兼ねん。士気を下げるのは好ましくないな」
「そうだね。・・・・・・思い切って焼却しちゃおうか?」
「いい案だオルバ。こういうのは派手にやるのがベストだ」
「じゃあ火炎放射器取ってくるね!」
そう言ってオルバは、再び格納庫へ向かった。

「――!?」
ミネルバ、レクリエーションルーム。
何かよくない気配を察知し、アスランはソファーから立ち上がった。
「どうしたんですかアスランさん?」
「や、焼かれる・・・・・・」
「はぁ?――ってまさか、連合軍が核を!?」
「焼かれる――キラの写真が焼かれる!!」
「・・・・・・なんだ」
またいつもの病気か、とシンは再び雑誌に目を落とした。
「シン!それがどういう事かおまえには分からないのか!?」
「分かりませんよ。まったく、少しは落ち着いたらどうです?」
「落ち着いてなどいられるか!!いいかシン!キラの写真を焼かれるという事は、おまえにとっては
マユ・アスカの写真を焼かれるのと同じ事なんだぞ!?」
「なんだって!?誰かがマユの写真を焼こうとしているのか!?」
「そうだ!なら阻止するしかないじゃないか!!」
「はい!でも一体どこで焼かれようとしてるんですか、マユの写真は!?」
「ヴェサリウスだ!!」
「ヴェサリウスって、あの奪われた艦の事ですか?でもヴェサリウスの位置は特定出来てない――」
「俺には感じ取る事が出来る!!シン、今すぐタリア艦長に掛け合ってくるんだ!」
「り、了解!!」

「ダメよ」
シンの申し出を一秒で却下したのは、ミネルバ艦長のタリア・グラディス。軍のお金で私腹を肥やす悪い人だ。
「そんな!お願いします艦長!マユの写真が焼かれようとしてるんです!!」
「少しは私情を隠しなさい。それにねシン、今この艦にはパイロットが不足しているの。とてもじゃないけど
単独で行動なんて出来ないわ」
レイは軍を辞め、ハイネは痔で入院中なので、今のミネルバにはシン、アスラン、ルナマリアしかパイロットが
いなかった。しかもMSも一機はガズウートたんなので、実質戦力になるのは二人だけだった。
「だから諦めてちょうだい」
「・・・・・・」
しかしそんな事で諦めるシンではない。シンは懐から手帳を取り出し、それを読み上げた。
「セイバー購入に際し軍から受け取った金額が一億円、そしてセイバーの金額が80万円・・・・・・」
「――!?」
「残りの9980万円はどこに行ってしまわれたのですか?」
「あ、あなた・・・・・・脅迫するつもり!?」
「マユのためなら手段なんて選びません!お願いします艦長!艦を出してください!!」
「・・・・・・、はぁ」
タリアは深くため息をついて、そしてこう言った。
「分かったわ。ただし、条件があります」
「はい!何でも言ってください!」
「・・・・・・その手帳をこちらに渡しなさい」

「アスランさん!艦長が許可をくれました!!」
「そうか!よくやったぞシン!今晩どうだ?」
「食事ですか?それでしたらルナ達と食べますので結構です」
「いや、そういう事ではないんだが・・・・・・まぁいい。それじゃあ早速準備にかかるぞ!」
「はい!見てろよ知らない人・・・・・・マユの写真を焼こうとする奴がどういう目に遭うか、その身に刻んでやる・・・!」
大いなる勘違いを乗せたまま、ミネルバはヴェサリウスの停泊している駐車場に向けて発進した。

「これは・・・・・・!」
光の速さでブリッジの改良を終えたアビーは、真っ直ぐこちらに接近する艦の反応を見て眼を細めた。
「・・・・・・ミネルバ」
ミネルバ。それは自分が配属される予定だった艦であり、そして自分の居場所を奪った艦。
アビーは胸に怒りの火を灯し、艦内放送用のマイクを取った。
「シャギアさん、オルバさん。敵が接近しています。ただちにMSデッキで待機してください」
それだけ言うとアビーはマイクを置き、艦長席を囲むようにして取り付けられたキーボードを目に見えぬ速さの
指さばきで操作し始めた。
「システム、オールグリーン。・・・・・・ヴェサリウス、発進します」
エンジンに火が灯り、ヴェサリウスはマルキオ駐車場から発進した。

ガモフ、ブリッジ。
「・・・・・・お?」
今まで何の反応も示さなかったとあるポイントに、突如として艦の反応が浮かび上がった。
「イザーク、どうやら獲物さんが姿を見せたようだぜ」
「なんだと!!それは本当か!?」
「ああ、間違いない。通常のナスカ級の数倍のゲインだ。これは間違いなく俺が改造したヴェサリウスのものだ」
「よし、ディアッカ!すぐにそのポイントに向かえ!!」
「了解、イザーク艦長!」
急速転身、ガモフは一直線にそのポイントへと向かった。
「・・・・・・おや?どうやら俺達以外にもそこに向かってる艦があるようだ」
「なんだと!?一体どこのどいつだ!?」
「ミネルバだ」
「ミネルバ・・・・・・アスランの艦か!?」
「アスランか。懐かしいじゃないの」
「そう言えばヴェサリウスに開かずの間ってありましたよね」
「とある女性隊員が誤って入って卒倒したという、あの部屋か・・・・・・」
その女性隊員とはシホ・ハーネンフース。まぁセリフもクソもなかったのでこんな扱いだった。
「・・・・・・イザーク、まさか俺のヴェサリウスに女を乗せたのか?」
ギラリ、と眼光を放ちつつイザークを睨みつける阿部さん。女を艦に乗せるという事は、阿部にとっては
許し難い行為だった。
「――!?いや、あれは上層部の命令で!!」
「じゃあオシオキをしないとなぁ・・・・・・」
「ま、待て阿部!今は作戦行動中だ!そのような行為は――」
そう言いつつも、ケツを差し出すイザーク。
「問答無用!フンッッ!!」
「ア ッ ー!!」
ブリッジにイザークの嬌声が響き渡った。

『いよいよ始まるね、兄さん』
「ああ。我ら二人の初陣だ」
ヴェサリウス、MSデッキ。
シャギアはヴァサーゴに、オルバはアシュタロンにそれぞれ搭乗していた。
『アルザッヘルでは何の手応えも感じなかったけど、今度のはどうかな・・・・・・』
「どうやら一味も二味も違うようだぞ、オルバ」
『そう・・・・・・楽しめそうだね、兄さん』
「期待しようではないか。・・・・・・それよりオルバよ」
『なんだい、兄さん?』
「火炎放射器と消火器を間違えるのは、少しやり過ぎではないか?」
『・・・・・・ふふっ、そうだね、兄さん』
『ハッチ開放。MS、発進してください』
「了解した。・・・・・・よし、行くぞオルバよ」
『了解、兄さん』
ガンダムヴァサーゴと、ガンダムアシュタロン。
「シャギア・フロスト、ガンダムヴァサーゴ出るぞ!」
『オルバ・フロスト、ガンダムアシュタロン出る!』
CEの漆黒の闇の中に、AWの悪魔はその身を投じた――

機動戦士阿部さんSEED DESTINY X
第八話〜アスランニュータイプ説浮上〜