Top > R-18_Abe-SeedDestiny-X_安部高和_09
HTML convert time to 0.007 sec.


R-18_Abe-SeedDestiny-X_安部高和_09

Last-modified: 2007-11-06 (火) 21:40:16

『じゃあまず僕が仕掛けるよ、兄さん』
「ああ。しかし我々の目的を忘れてはならんぞ、オルバ」
『了解、兄さん』
MA形態に変形したアシュタロンは、今しがた敵艦から発進してきた三機のMSに向かって行った。
「さて、お手並み拝見と・・・・・・ん?」
アシュタロンを見送ったヴァサーゴは、別方向から向かってくる艦の反応を察知した。
『シャギアさん。こちらにもう一隻の艦が接近しています』
ヴェサリウスにも反応があったようで、シャギアの乗るヴァサーゴにアビーからの通信が入ってきた。
「ああ、こっちでも確認済みだ。詳細は分かるか?」
『形状はザフトの戦艦ガモフのそれですが、航行速度は明らかにガモフのものとは異なっています。
おそらく何らかの改良が施されているものと思われます』
「そうか。では私はそちらに向かおう。アビーはその位置で待機だ。いつでも離脱出来るようにしておけ」
『いえ、シャギアさん。私もミネルバの撃墜に向かいます』
「・・・・・・確かミネルバだったな、おまえが配属される予定だった艦は」
『はい。ですからミネルバはなんとしても自分の手で落としたいのです。許可をお願いします、シャギアさん』
「・・・・・・いいだろう。ただし時が来たら命令に従ってもらう」
『了解しました』
通信が終わると同時にヴェサリウスは艦首の向きを変え、ミネルバの元へと向かった。
「さて、では私はあっちだ・・・・・・」
そしてヴァサーゴは、新たに飛来してきた戦艦に向かってバーニアを吹かした。

「イザーク、お客さんが来たぜ?」
ガモフ、ブリッジ。
モニターには、毒々しい赤のMSが真っ直ぐこちらに向かっている様子が映し出されていた。
「こちらはガモフ!そこのMS、応答してください!」
二コルがそのMS――ヴァサーゴに通信を入れる。
少しした後に返ってきた声は、阿部以外は聞き覚えのある声だった。
『誰かと思ったらニコルではないか。私はシャギア・フロストだが、何か用か?』
「シャギアさん!?それに乗ってるのはシャギアさんなんですか!?」
『同じ事を二度も言わせないでもらいたいな。一度でいい事を二度言わなければならないという事は、
そいつが頭が悪いという事だからな』
「シャギア貴様!!よくそんな口が利けるな!!」
『その声は・・・・・・ブチャラティか』
「イザークだ!それよりすぐに投降しろ!そしてヴェサリウスを返せ!!」
『それは出来ない相談だ。あの艦は我々の目的のために必要なものだからな』
「そうか。・・・・・・なら覚悟しろ!ディアッカ、突撃だ!!」
「了解!!」
ディアッカはアクセルを目一杯踏み、艦首をヴァサーゴに向けるべく舵を思いっきり回した。

と――
バキッ
「あ」
「どうしたディアッカ!?」
「舵蛾物故われた」
「なんだと!?」
舵は回転したまま外れ、ごろごろとブリッジを転がっていった。
「くそっ!ディアッカ、逆噴射だ!!」
「了解!!」
ペダルを思いっきり踏むディアッカ。
と――
メキッ
「あ」
「今度はどうしたディアッカ!?」
「ペダル蛾物故われた」
「なんだと!?」
勢いよく踏んづけたため、逆噴射ペダルはその中央から割れてしまった。
「あ、そこらへん直すの忘れてた」
「あ、阿部貴様!!!」
「ゴメン」
「ごめんで済むか!!このままではどこまでも飛んでいってしまうぞ!!」
宇宙空間には空気抵抗が無いので、一度付いた慣性は止めない限りずっとそのままである。
このまま放っておけば、ガモフはあのジェネシスの二の舞になる事は明白だった。
「ざっと計算したところ、4339年と3ヶ月後にはナメック星に到着出来そうだ。長生きしないとな」
「バカな事を言ってる場合か!!」
「やれやれ、冗談が通じないんだから」
そう言うと阿部は席を立ち、ブリッジの扉へ向かった。
「どこに行く気だ阿部!!」
「MSデッキさ。とりあえず止めないとやばそうだしな」
「MS・・・・・・インモラルか!?しかし出来るのか?MS一機で艦を止めるなど・・・・・・」
「ふっ・・・・・・忘れたのかイザーク?」
「なに・・・?」
「良い男に不可能はないんだぜ?」
ぱちっとウインクをして、阿部はブリッジから出て行った。

『キラの写真を焼こうとしたのはおまえかぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!』
『マユの写真を焼こうとしたのはおまえかぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!』
『この泥棒がぁ!!』
「こいつら、動きが・・・・・・!?」
inぱりーんなMS二機と、でっかい砲門を携えたMS。
彼ら相手には流石のオルバも防戦一方だった。
「くそっ、こいつら!!」
常軌を逸した彼らの動きに、オルバは苦戦を強いられていた。
まずデスティニー。このMSは最新機に相応しい動きで着実にオルバを追い詰めていた。
それは機体性能だけのものではない。パイロットの能力がまさに常識外れ――人の規格外のもの
だったので、AW世界でも屈指のパイロットであるオルバも苦境に立たされていた。
そしてガズウート。このMSはまさにウンコ、劣悪な性能なはずのだが、何故かこちらの攻撃が当たらない。
並以上のパイロットでも瞬・殺!されてしまうようなこのMSをこうまで扱える者がいるとは、中の人はある種の
変態なのではとオルバは思った。しかし性能故にFCSがデタラメなので、実際はただ鬱陶しいだけの
ものなのだが。
そして一番信じられないのがブラストインパルスである。インパルスの砲撃は、明らかに味方を狙っての
ものだった。それは精密で正確、回避の難しいポイントに的確に砲撃していた。ぶっちゃけ一番恐ろしいのは
インパルスだった。戦場では強い敵よりも、何を考えているのか分からない敵の方が数倍恐ろしいのだ。
『キラぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!』
『マユぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ!!!』
まぁその点で言えば残りの二機も充分恐ろしいのだが。
『冷静になってください、オルバさん』
背後からの援護射撃。母艦であるヴェサリウスがこの戦場にやってきた。
「アビー!兄さんは!?」
『シャギアさんは別の敵へ向かっています。それよりオルバさん、落ち着いて下さい』
「そうは言っても、こいつら・・・・・・!」
少しでも気を抜くと必殺必中のビームが飛んでくる。CEのMSに比べて装甲の厚いアシュタロンでも、こうも
連続で攻撃を受けてしまってはいずれは撃墜されてしまう。
『大丈夫です。策はあります』
「本当かい?」
『はい。彼らについての調べは尽くしてあります。お任せを』
するとヴェサリウスのハッチが開き、そこから細かい何かがパラパラと流れ出た。
「あれは――」
オルバが言うより早く、ガズウートが反応を示した。
『キラ!!!!!!』
そう叫ぶと、ガズウートは真っ直ぐその『細かい何か』に向かって行った。
「・・・・・・何を流したんだい?」
『写真です。あなた方が焼き払おうとした、キラ・ヤマトの』
「すると、あれはあの部屋の持ち主か。・・・・・・それにしても」
砂粒程度にしか視認出来ないような物をよく写真だと分かったなと、オルバは内心驚いた。

『何してるんですかアスランさん!?』
『バカヤロウ!!キラの写真がばら撒かれているんだ!!なら回収するしかないじゃないか!!』
『なんだって!?じゃあそこにはマユの写真も!!?』
『何を言ってるんだシン?なんでヴェサリウスにマユ・アスカの写真があるんだ?』
『え?いや、だってアスランさん、マユの写真が焼かれるって・・・・・・』
『ははは、バカだなぁシン。そんなのその場のノリで言ったに決まってるじゃ・・・・・・はっ!?』
『あ・・・・・・あんたって人はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!』
そしてデスティニーもガズウートの後を追った。ただそれは写真の回収ではなく、先輩の首を獲りにだが。
『・・・・・・計算外ですが、これで二機、と』
「一番恐ろしいのはあいつだよアビー。なんであいつは味方を撃っていたんだい?」
『あれはただの誤射です』
「・・・・・・誤射?」
『はい、誤射です』
「やけに洗練されてたけど・・・・・・」
『そういうパイロットなのです。それではオルバさん、ここは私に任せてあなたはシャギアさんの元に向かってください』
「分かったよ。だけどくれぐれも落とされないでよ?それは大事な母艦だからね」
アシュタロンは向きを変え、兄の元へと向かった。

「阿部高和、インモラル出るよ!!」
高速航行するガモフから、肉色のMS、インモラルガンダムが発進した。
「さて、まずは、と」
インモラルはガモフ以上の速度で回り込み、艦首を正面に捉える。
『あ、阿部!!ぶつかるぞ!?』
『危ないですよ阿部さん!!』
『ボンドで直るかな、舵・・・・・・』
そしてインモラルは両腕を広げ、真正面からガモフを受け止めた。
「フンッッ!!」
衝突の衝撃が艦を襲う。
『ぐっ!!な、なんて無茶を!!』
『で、でもインモラル、ガモフ共に損傷はありません!!』
『ぎゃぁぁぁぁ!ぼ、ボンドが目に!?』
「そしてフンッッ!!」
阿部は思いっきりバーニアを吹かし、ガモフの速度を殺していった。
『す、すごいじゃないか阿部!!』
『ガモフの速度が落ちていきます!!』
『目がッ、目がぁぁぁぁぁぁッ!!』
徐々に、そして確実に、ガモフはその速度を落としていく。
そして数分後、ガモフはようやくその動きを止めた。
「いっちょ上がり」
『よくやった阿部!』
『さすがです阿部さん!!』
『だれか いしゃ たのむ』
「褒めるなよ・・・・・・ペニスが疼いちまう――」

安堵の空気が立ち込める中、不意に阿部は鋭い殺気を感じだ。
「こいつはまずい――」
素早くガモフを上方に投げる阿部。
そして次に彼の目に映ったのは、黒い宇宙空間に映える紅いビームだった――

「ほう?アレを止めるか・・・・・・」
インモラルがガモフを止める様子を黙って見ていたシャギア。
『まだまだ僕らの知らない事がたくさんありそうだね、兄さん』
「そのようだな。しかし・・・・・・」
事が終わったのを確認したシャギアは、ヴァサーゴの腹部を開かせた。
『安心は油断に繋がる・・・だね、兄さん』
「その通りだ。奴らは今船を止めた事に安堵している事だろう」
腹部の砲門――メガソニック砲の砲門にエネルギーが充填される。
「それこそが致命的な隙なのだ――」
そして充填が完了すると同時に、メガソニック砲がガモフに向けて発射された。
数秒後にはガモフの船体を穿つであろう紅い光。
しかし――
「――なに?」
なんとガモフが、まるで投げられるようにして上方へと位置をずらした。
『兄さん!』
「艦を投げるか――しかし!」
それを投げたMSはガモフのいた場所の延長線上――即ちメガソニック砲の直線状にいた。
「貴様には死んでもらう――!」
肉色のMSにかわす術はなく、ほどなくして紅い光はそのMSに命中した。
『やったね兄さん!』
「・・・・・・」
撃墜は目に見えて明らかだった。メガソニック砲の直撃を受けて、無事で済むMSはいない。
だというのに、シャギアは嫌な予感が払拭出来なかった。
「・・・・・・オルバよ、そろそろ退却だ」
『え!?どうしてだい兄さん!?』
「ここは奴らを殲滅するステージではない。それに我々には新たにすべき事が出来た・・・・・・」
『すべき事・・・・・・って、それは?』
「ああ・・・・・・あのMSの撃墜方法を探す事だ」
『撃墜って・・・・・・え!?』
「さてオルバよ、退くぞ。こうなった以上長居は無用だ」
『り、了解兄さん!』
ヴァサーゴとアシュタロンは、ヴェサリウスに送った合流ポイントへと向かった。
――無傷のままこちらを見つめる、肉色のMSを背に。

『こいつ、落ちろっ!!』
ブラストインパルスの放つケルベロスを回避しつつ(と言っても勝手に外してくれているが)、ヴェサリウスは
真っ直ぐミネルバに向かって行った。
「ルナマリア・ホーク・・・・・・あなたの相手は後でじっくりして差し上げます」
後でじっくり、とはもちろんX指定な事なのだが、それはひとまず置いといて。
「まずは艦を沈めさせてもらいます」
操舵と平行して艦の砲門をミネルバに向け、順次ミネルバに向けて放つアビー。
『回避しつつタンホイザー照準!!』
しかし相手も新鋭艦、巧みにこちらの砲撃をかわし、主砲で応戦してくる。
「さすがにやりますね・・・・・・けど」
ヴェサリウスの艦前方に陽電子リフレクターが展開し、タンホイザーを完全に防ぐ。
「ビーム兵器は無意味ですよ、タリア艦長」
阿部の魔改造により、このヴェサリウスには様々な装備が取り付けられていた。
その一つがこの陽電子リフレクターである。あまり目立たなかったけど、この艦は最初の大戦では
無敵戦艦として名を馳せていた。
『こんのぉ、調子に乗ってぇ!!』
後方からの砲撃。相変わらずの誤射かと思われたが、しかしケルベロスはヴェサリウスに命中した。
「こんな事があるはず・・・・・・なるほど、そういう事ですか」
ケルベロスはヴェサリウスに命中したが、しかしルナマリアは相変わらず誤射をしていた。
カラクリはこうだ。ルナマリアは確かにミネルバに向かって誤射砲撃を放った。しかしその時ミネルバ、ヴェサリウス、
インパルスは同一直線状にいた。つまりルナマリアのミネルバへの誤射の通り道にヴェサリウスがいて、その結果
ヴェサリウスにケルベロスが命中したのだ。
「損傷は軽微・・・・・・しかし鬱陶しい事には変わりありませんね」
アビーがとある武装のスイッチを押すと、ヴェサリウスの側面に無数の穴が開いた。
『な、何よコレ!?』
そしてそこから触手が伸び、それらはあっと言う間にインパルスの体を絡め取った。
「この艦の設計者は何を考えていたのでしょうか・・・・・・?」
ヴェサリウスの秘密武装その2、テンタクラーロッド。最初の大戦では使われる事のなかった、
良い男を無傷で捕獲するための兵器だ。
「色々な方面から怒られそうですが・・・・・・」
アビーは心の中で呟いた。
――ルナマリア・ホーク、ゲット。
彼女をこのまま持ち帰りアレコレイケナイ事をしてしまおうと、アビーは胸の中でほくそ笑んだ。
だがまずはミネルバの撃墜。インパルスを絡めたまま、アビーは砲撃を浴びせていった。
『アビー、時間だ。退却するぞ』
しかしそこで、シャギアからの撤退命令が届いた。
「もう少しで落とせるのですが」
『言ったはずだぞアビー。命令には従ってもらうとな』
「しかし・・・・・・いえ、了解しました」

命令は絶対――軍人にとっては基本中の基本である。
良い女を捕獲出来ただけでも良しとしよう――
そしてアビーは、インパルスを捕らえたままヴェサリウスを転身させたのだが――
『ルナーーーー!!』
ガズウートをバラしたデスティニーが、ヴェサリウスに向かっていた。
「――シン・アスカ!?」
そしてアビーが気付いた時には既に、インパルスを捕らえていた触手は断ち斬られていた。
「しまった・・・・・・私とした事が」
ルナマリアを捕らえた事で、アビーは多少浮ついていた。
その油断が隙を生み、インパルス・・・・・・ルナマリアをみすみす奪い返されてしまった。
「・・・・・・仕方ありませんね」
再度奪い返したいところだが、下されている命令は撤退。アビーはそのままヴェサリウスを走らせ、合流地点へと向かった。

「まだ直らんのか!?」
ガモフでは、舵とペダルの修復作業が行われていた。
「そうカッカしなさんなって。あと少しで終わるからさ」
「しかし、こうしている間にも!!」
「イザーク!ヴェサリウスがこの宙域を離脱していきます!」
「なんだと!?阿部!さっさとしろ!!このままでは見失うぞ!!」
「まぁまぁ。あいつらとはまた会えるさ」
「そんな保障がどこにある!?」
「おや?知らないのかイザーク?」
「なんの話だ!?」
「良い男同士は惹かれ合うんだぜ?」
この世界のものではない、二機のMS。
そのパイロットを阿部は、良い男であると見抜いていた。

ヴェサリウス、コンピュータルーム。
「しかし驚いたね、兄さん」
「ああ、そうだな。まさかメガソニック砲を受けて無傷とはな・・・・・・」
ノートパソコンを囲んで、兄弟は語り合っていた。
「データを洗ってもあのMSの詳細はどこにもない・・・・・・彼は何者なんだろう?」
「さてな。しかしオルバよ、一つだけ分かっている事がある」
「・・・・・・それは?」
「彼は我々の宿命のライバルだという事だ」
そう言ってシャギアは、ブラクラをゲットしていた。

機動戦士阿部さんSEED DESTINY X
第九話〜ヴェサリウスに漂う、このやっちまった感はいったい・・・〜