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R-18_Abe-SeedDestiny-X_安部高和_13

Last-modified: 2007-11-09 (金) 20:42:42

「地球行こうぜ」
ガモフ、ブリッジ。
唐突に阿部がそんな事を言い出した。
「地球だと?・・・・・・まさかヴェサリウスの位置が掴めたのか!?」
「いや、ただなんとなく行きたいだけだよ」
「なんだそれは!!当然却下だ!今の我々には任務がある!!」
任務とは言うまでもなくヴェサリウスの奪還である。
アルザッヘルでの戦闘から丸1日が経過し、しかしイザーク達は未だヴェサリウスの足取りを
掴めていなかった。
「え〜」
「「え〜」じゃない!どうせ地球の男が喰いたいとかそんな理由だろ!?そうはさせん。
そんなに男が喰いたいのならガモフの艦長でも喰うといい」
ガモフの艦長=イザーク。
「いや、喰うけどさ・・・・・・」
地球にはまだ見ぬ良い男がたくさんいる。それを掘らずして生を終えるなど、阿部には考えられなかった。
いくら阿部さんでも寿命はあります。・・・・・・たぶん。
「任務が終わったらたらふく喰えますよ」
「課せられた任務をまずやり遂げる・・・・・・それがグレイ道だぜ阿部さん」
「キラ・・・・・・」
他のブリッジクルーも地球行きには反対な様子だった。
「味方が欲しいな・・・・・・ふむ」
阿部は少し考え、そして呟いた。
「そういや地球でキラに会ったな」
「ディアッカぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」
「非でぶゥレイト!!!??!?!?」
阿部の呟きとほぼ同時に、アスランはディアッカの側頭部に回し蹴りを見舞った。
「針路を地球に取る!!反論は認めない!!!」
ディアッカから舵を強奪したアスランは、それを回してガモフを転身させた。
「あ、アスラン貴様!!なに勝手な事をしている!!?」
「うるさい!俺に命令するな!この、おかっぱがぁぁぁぁぁ!!!」
「な、なんだと!?貴様、おかっぱのどこが悪い!!!」
「悪いさ!スティッキィ・フィンガーズも使えなければ囲碁も強くない、そんな奴がおかっぱを頭に乗せる
資格があると思うのか!?」
「貴様ぁ!!俺だって十分キャラは立ってるだろうが!!!」
「お笑い種だぞイザーク!なんの変哲もないキレキャラのくせによくそんな事が言えるな!!」

「・・・・・・はっ!?」
「ど、どうしたのシン!?」
「いや・・・・・・これはどうなんだ?あれも俺のセリフでいいのかな?」
「いや、私に訊かれても困るんだけど・・・・・・」
「・・・・・・まぁいいや」
「それよりシン、明日買い物に付き合ってくれない?」
「明日?明日はマユと一日中電話するからダメだ。ヨウランとでも行きなよ。・・・あ、もうこんな時間だ。
じゃ、俺マユとチャットするから」
「く、くじけないわよ・・・・・・!」

「貴様・・・気にしている事をよくも!!」
「気にしてたんですか・・・・・・」
「いてぇよぉ〜・・・」
「おまえが『なんの変哲もない』キレキャラから『変哲だらけの』キレキャラに生まれ変わる方法はただ一つ!
地球に行くしかないじゃないか!!」
「無理がありすぎですよアスラン・・・・・・」
「だれか、くび、もどして」
「よし!地球に向かうぞ!!!」
イザークは納得した。
「イザーク・・・・・・」
「フンッッ!!(ごきっ)」
「あだっ!?・・・・・・はっ!?治った!?さすがだぜ阿部さん!!」
「いい判断だイザーク!これよりガモフは地球に向かう!!」
なんだかよく分からない理由で、ガモフは地球へ向かった。

ヴェサリウス、ブリッジ。
「シャギアさん。こちらに接近する艦影を発見しました」
ヴェサリウスは今、第八艦隊と共にいた。
艦隊を指揮するハルバートンに経緯を話し(もちろん全部嘘っぱちだが)、大気圏を降下するための
準備を行っていた。
「ほう?して、その艦とは?」
「ガモフです。どうしてかは分かりませんが、こちらの位置を察知されたようですね」
別に察知されたわけではない。アスランのキラに対する想いが底なしだった結果だった。
「ふむ・・・・・・面倒な事になるな、それは・・・・・・よし、これで飛車は頂いた」
「二歩だよ、兄さん」
「馬鹿な・・・・・・!」
「二人とも、仕事してください」
『ヴェサリウス、応答してくれ』
メネラオスからの通信。モニターには、老け込んだ将兵の顔が映った。
「これはこれはハルバートン提督・・・・・・」
デュエイン・ハルバートン。知将と謳われた名将であり、定年間近のおっさんだった。
『悪いが大気圏の突入は延期だ。敵が来た』
「こちらでも確認済みです提督。しかしながら、我々は一刻も早く地球に降下せねばならんのです」
別にそんな理由はない。しかし未だインモラルの弱点を割り出す事が出来ていないので、ガモフと
事を構えるのは避けたかった。

『しかしだなシャギアくん。戦闘中に突入を敢行するという事がどういう事か分からないわけではあるまい?』
「ええもちろん。それは重々承知しています」
シャア少佐!助けてくださいシャア少佐!!
「しかしご心配には及びません。必ずや我々は地球に降りてみせます」
『し、しかしだな。ワシには予感がするのだよ。貴殿らの艦が摩擦で燃え尽き――』
『提督!ガモフからMSが発進されました!!』
『くっ――』
そこで通信は切れた。同時に第八艦隊は戦闘体勢に入り、次々とMSを吐き出した。
「アビー、すぐに降下だ」
「よろしいのですか?提督の言っていた事は決して間違ってはおりませんが」
「いいのだよアビー。摩擦で燃え尽きる者はな、小物と相場が決まっているのだ。よし、王手だ」
「既に詰んでるんだけど、兄さん・・・・・・」
「待った、だ」
「これで何回目だよ兄さん・・・・・・」
「せめてシートベルトくらいは着用してください、二人とも」

「どけ貴様らぁぁぁぁぁ!!」
『でぇぇぇぇぇいっ!』
テンペストがストライクダガーを両断し、ランサーダートがウィンダムを射抜く。
今回はイザークとニコルが出撃していた。よって今のガモフは艦長不在という由々しき事態に陥っているが、
別にイザークだしなんの問題もなかった。
「繰り返す!我々は戦闘をしに来たのではない!ヴェサリウスさえ引き渡せばおとなしく引き下がる!!」
『やかましいわ!あの艦は既に地球軍の物だ!!』
「貴様、よくもぬけぬけと!!」
『ぐわぁぁぁぁぁぁ!!』
群がるダガー&ウィンダムを悉く斬り伏せていく白いグフ。イザークは馬鹿だけど強いのだ。馬鹿だけど。
「ニコル!!」
『こっちは順調です!』
ニコルは艦の足を止めていた。メネラオスやモントゴメリィのエンジンを撃ち抜き、航行不能にしていく。
「ちっ、ヴェサリウスは!?」
見ると、ヴェサリウスは既に降下体勢に入っていた。
「くそっ、行かせるか!!」
機体をヴェサリウスに向け、一直線に向かっていく。
イザークの狙いは既に知られている。ダガーやウィンダムは当然、そんなイザークの進路を阻みに掛かる。
『ふっ・・・・・・ここを通りたければ我々を倒し――』
「邪魔だぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
『なんという瞬殺』
しかし敵の数は多く、思うように進めない。
「しまった!!」
そうこうして手間取っているうちに、ヴェサリウスは降下を開始した。

「行ったか・・・・・・」
メネラオス、ブリッジ。
既に航行不能になったこの艦から、ハルバートンはヴェサリウスを見送った。
「てっきり降下中に攻撃を受けて燃え尽きると思ったんだがなぁ・・・・・・」
ハルバートンの予感は外れた。こういう状況下ではうっかり引力に引かれて燃え尽きるMSや艦が出てくるのが
相場なのだが、この戦場ではそういった者は一機たりともいなかった。
「て、提督!!」
と、ここで操舵手が声を張り上げた。彼は顔中にびっしり脂汗なんぞかいていた。
「どうした、そんなに慌てて」
「い、引力に引かれていきます!!」
「やはりいたか・・・・・・。して、どこの艦だ?」
「ほ、本艦です!」
「へ?」
そういえばなんか景色が赤いな〜と思っていたら、メネラオスは引力に引かれていた。
当然メネラオスに大気圏を突入する能力などなく、このままではクラウンの二の舞だった。
「誰かしら引っ張られると思っていたら・・・・・・・・・・・・メネラオスでしたぁ〜wwwww」
訂正。ハルバートンの予感は当たっていた。

ふと、ダガーやウィンダムの様子がおかしい事にイザークは気付いた。
「なんだ?戦闘中にあるまじき行動だなこいつら・・・・・・おい!」
気になったイザークは、近くにいるウィンダムに尋ねた。
「何をうろたえている。今は戦闘中だぞ」
『め、メネラオスが・・・・・・』
「メネラオス?・・・・・・ああ、あの艦か。なんだ、あれも降りるのか」
『違う!そもそもメネラオスに大気圏突入なんか出来ない!』
「なんだと!?」
メネラオスは赤く染まりつつあった。このままいけば、数分後には塵となって消えるだろう。
『【追悼】ああ提督・・・【通夜】』
変な言葉を呟きながら、ウィンダムは胸の前で十字を切った。
「バカ者!!!」
そんなウィンダムのパイロットを叱責し、イザークはバーニアを思いっきり噴かした。
『お、おい、どこへ行くつもりだ!?もうヴェサリウスは無理じゃね?』
今から行ってもヴェサリウスには追いつけない。それどころか、到着する前に燃え尽きるだろう。
そんな事はイザークも承知済み、そして彼はウィンダムのパイロットにこう言った。
「メネラオスだ!あのままでは燃え尽きるぞ!!」

「やべぇwwww」
提督は焦燥に駆られていた。
現状でも十分やばい事に加え、敵機がまっすぐこちらに向かってきていた。
「て、提督!!」
「熱ぃwwww」
提督は錯乱していた。
目前には白いグフ。このままでは燃え尽きる前にお陀仏だ。
「う、うわぁぁぁぁぁぁぁ!!」
テンペストで串刺しにされるか、ドラウプニルで穴だらけにされるか。
どちらにせよ結果は同じ、故に操舵手は悲鳴を上げたのだが、しかしグフは目前で進路を変えた。
「・・・・・・、あれ?」
不審に思っていると、艦に軽い衝撃が走った。
「・・・・・・!?提督!グフが――」
「パトラッシュwwww」
「グフが艦底部に取り付き・・・・・・艦を押し上げています!!」
「ネロカオスwwww・・・・・・なに?」

『イザーク、無茶です!!』
無茶は百も承知。しかしイザークは、一心不乱に落ちゆくメネラオスを支え続ける。
『このままではイザークも一緒に燃え尽きます!!』
当然だ。そもそも艦とMSでは質量に差がありすぎる。MS一機で艦を押し上げるなど、とても正気の沙汰ではない。
しかしそれでもイザークは、メネラオスから離れなかった。
『イザーク!なにをやっているんだ!?』
アスランからの通信。見れば、ガモフもすぐ近くまで来ていた。
「なにを、だと!?見て分からんか!!」
『そういう事を言っているんじゃない!なんのつもりでそうしているのかを訊いているんだ!!』
「見過ごせというのか、これを!!このままではメネラオスは燃え尽きるのだぞ!!」
『イザーク・・・・・・。アルザッヘルでもそうだったが、どうしておまえは敵を助けようとするんだ?』
アスランだけではない。ディアッカもニコルも、イザークの行動を疑問に思っていた。
当然だ。敵を助けるという行為は、回り回って自分の首を絞める事になるからだ。
「言っただろ、俺達は戦争をしに来たのではないと。それに――」
グフの右腕が重圧に耐え切れず圧壊した。

「クルーゼ隊長は評議会の議員になられた。戦争とは別の手段で地球と友好関係を築くためにだ。
血で血を洗うような戦争は愚かしいと、そうお考えになってクルーゼ隊長は議員になられたのだ。
だったら、その部下だった俺がどうしてこれを見過ごせるか!!」
尊敬する上官の意志を、イザークは戦争を主とする軍人の立場で成し遂げようとしていた。
『イザーク、おまえ・・・・・・』
「ニコルはすぐに帰還しろ!ガモフはさっさと降下体勢に入れ!こいつを押し上げたら俺もすぐ戻る!!」
グフの両腕は既に使い物にならなくなっており、イザークは体でメネラオスを支えた。
しかしメネラオスの降下は止まらない。グフもメネラオスも、徐々にその装甲が剥がれていく。
まさに絶体絶命、グフとメネラオスの命は刻一刻と摩擦によって削られていく。
しかしそんな中、イザークは唇の端を歪めてこう言った。
「――遅かったじゃないか」
赤く染まる大気圏内でなお映える肉色、扇情的なフォルム――
『すまん、ションベンしてた』
インモラルガンダム。言うやいなや、インモラルはグフと共にメネラオスを押し上げた。
「ションベンか。ちょうど俺もしたいと思っていたところだ」
『ケツならいつでも貸すぜ?』
「当然だ。それより――」
『ああ。まずはこいつを、だな』
大気圏内もなんのその、一体何で出来ているんだって感じのインモラルガンダムは、バーニアを噴かして
メネラオスを押し上げた。
メネラオスは徐々にその高度を上げていった。もちろん腕やバーニアがぶっ壊れるなんて事はなく、
もし彼がいたらシャアはアクシズを落とそうなんて考えなかっただろう。
『よし。んじゃさっさと帰ろうぜ、イザーク』
メネラオスを安全圏にまで押し上げた阿部は、半壊したグフを抱えてガモフへ帰還した。
「すまんな阿部。俺のわがままに付き合せて」
『水臭いじゃないの。阿部さんはな、良い男の味方なんだぜ?』

メネラオス、ブリッジ。
「ガモフが降下を開始します!」
ほっと安堵したのも束の間、CIC担当の兵士はガモフの動きをハルバートンに伝えた。
「そうか・・・・・・」
正気を取り戻したハルバートンは、モニターに映るガモフの姿を眺めた。
ガモフは無防備だった。ここから砲弾をしこたま撃ち込めば、ガモフは瓦解して塵となるだろう。
「どうします、提督・・・・・・」
CICが命令を求めてくる。
そんなのは決まってる。CICに言われるまでもなく、彼の下す命令は最初から決まっていた。
「総員、ガモフに敬礼!!」
メネラオスのみならず、第八艦隊所属の全兵士がガモフに敬礼をした。

機動戦士阿部さんSEED DESTINY X
第十三話〜結局第八艦隊ってなんなのさ?〜