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R-18_Abe-SeedDestiny-X_安部高和_14

Last-modified: 2007-11-09 (金) 20:42:54

ガモフ、ブリッジ。
「姿勢とか減速とかその他諸々OKだぜ」
「よし!ご苦労だったな貴様ら!!」
ガモフは無事地球に降下し、ブリッジを安堵の空気が包んだ。
「ヴェサリウスの位置は分かるか?」
「ええっと・・・・・・あ、いました!ヴェサリウスは南東に進んでいます。どうやらガルナハンに
向かっているようです」
「ガルナハンか・・・・・・」
ガルナハンとは連合の基地の一つで、エネルギー施設火力プラントを有している基地だ。
それを守るために基地にはゲルズゲーやローエングリンゲートが配備されており、地理的条件もあって
ザフトの間では「難攻不落」と称されていた。
まぁそんな事は大して重要ではなく、要するにガルナハンとは前作『機動戦士阿部さんSEED DESTINY』
において丸々カットされた基地だった。
「よし、それでは本艦はこれよりガルナハンへ向かう。ディアッカ、艦の航行を自動に切り替えろ」
「了解」
ガモフの操舵が自動に切り替わる。これでガモフは、手放しでもガルナハンへ向かってくれる。
「よし。それでは各員、休息を取れ。皆疲れているだろう」
イザークがそう告げると、クルー達は体をほぐし始めた。思えばプラントを発ってから、ロクに休息を
取っていなかった。
「イザーク」
そんな中。アスランは険しい表情でイザークに歩み寄り――
「なんだアス――」
そして、イザークの顔面を殴りつけた。
「あ、アスラン!?」
「うわ痛そ」
「へっくしっ!・・・・・・やべ、鼻水が」
目を丸くする一同。
そして殴られた当のイザークは、当然激昂した。
「貴様!いきなりなにをする!!」
殴られた頬を抑え、目を剥いて声を荒げる。
そんなイザークに対し、しかしアスランは少しも怯まなかった。
「なにをする、じゃない!おまえ、さっきのあれはなんだ!!」
「あれだと!?なんの事だ!!」
「メネラオスの事だ!どういうつもりであんな事をしたんだおまえは!!」
「なんのつもりだと!?あのままではメネラオスは燃え尽きていた!支えるのは当然だろ!!」
「当然じゃない!おまえは自分の立場が分かっているのか!?」
「当たり前だ!俺はガモフの艦長だ!それがどうした!!」
「それが分かっていて何故あんなマネをした!?」
アスランはイザークの胸倉を掴み、続ける。
「艦長であるおまえが死んだら誰がこの艦を仕切る!?あの時阿部がいなかったら、
おまえは間違いなく死んでいたんだぞ!!」

「・・・・・・!?」
それは間違いなかった。もし種世界に阿部さんがいなかったら、イザークはあそこでメネラオスと
心中していただろう。
「しかし!だから見捨てろと言うのか、メネラオスを!?」
「そうだ!冷たいようだがな。人には出来る事と出来ない事がある。おまえが大気圏でやった行為は
自殺行為に他ならない。単なる犬死だぞ」
「出来る事と出来ない事があるのが人なら、阿部さんは人ではないという事になりそうなんですけど・・・・・・」
「おいおいニコル。俺にも出来ない事くらいあるさ。例えばそう、女のエスコートとかな」
「くっ・・・!だが、例えそうだとしても俺には見捨てる事など出来ん!!助けを求める者を助けて何が悪い!?」
「自惚れるな!戦争はヒーローごっこじゃない!自分に出来る事を自覚しろ!!」
アスランはイザークから手を離し、そのままブリッジから出て行った。
「あ、アスラン!」
それを慌てて追いかけるニコル。
「・・・・・・ちっ」
イザークは軽く舌打ちし、同じくブリッジを出た。
そしてブリッジには、阿部とディアッカが取り残された。
「ひゅう♪青春してるねぇ」
「今気付いた産業」

「アスラン!!」
ガモフ、艦内通路。
「ニコル・・・・・・」
「アスラン・・・・・・なんでいきなりあんな事を・・・・・・」
「なぁニコル。俺は間違った事を言ったか?」
「それは・・・・・・」
「あいつのやりたい事は分かる。けどな、死んだらおしまいじゃないか。このままだとあいつは近い内に
死ぬ事になる。そんなの、黙って見過ごせるはずがない」
「・・・・・・」
ニコルは不思議そうな顔でアスランを見ていた。
「なんだ?俺がこんな事を言うのはおかしいか?」
「ええ、まぁ。アスランはてっきりキラって人一筋かと思ってました」
「それは間違ってない。俺はいつだってキラ一筋だ。キラのためなら脱走だってなんだってしてやるさ。
いや、むしろ一度脱走したな。ガズウートで」
「アスラン・・・・・・そんな除隊処分にされても文句の言えないような事・・・・・・」
「だけどなニコル。それとこれとは話が別だ。イザークとはアカデミー時代からの付き合いだからな。
死ぬのを黙って見てなんていられない」
何かにつけて因縁をつけられていたが、アスランとイザークは親友と言っても差し支えのない関係だ。
確かにアスランは病的なまでにキラ一筋だが、だからと言って他の人間が――親友であるイザークが
死んでもいいなどとは微塵も思ってなかった。
「悪かったな、空気を悪くして。ま、あいつも分かってくれるだろ」
ニコルの肩をぽん、と叩き、アスランは自室に戻った。

ガルナハン基地、司令室。
「アルザッヘルから来たシャギアです。着艦許可を頂き、感謝します」
うやうやしくシャギアは、基地の司令に頭を下げた。
「アルザッヘルでは大変だったそうだな。まぁ、何もない所だがしばらくくつろぐといい」
「ありがとうございます。して司令、お伝えしたい事が」
「なんだ?」
「先ほど我が艦の高性能レーダーで確認したところ、この基地に向かっているザフトの艦影をキャッチしまして。
おそらく戦闘になるでしょうから、戦闘配備を命じられた方がよろしいかと」
「そうか。しかしなシャギアくん、それは不要だ」
司令はタバコに火を付け、そして窓の外を指した。
「見たまえ、あれを。あれがある限り我が基地は落ちんよ」
窓の外、その山の頂。
そこには、巨大な砲台が設置されていた。
「ローエングリンゲート・・・・・・あれさえあれば何人たりともこの基地を落とす事は出来んよ」
司令の言う通りだった。
この基地を攻めるには渓谷を通らなければならず、そしてそこを通るという事はローエングリンに狙い撃ち
にされるという事になる。
まさに天然の要塞、ガルナハンが「難攻不落」と称されるのはこの地形あってこそだった。
「だから貴殿らの心配は無用だ。安心して町でもぶらつくといい」
「そうですか。それではそうさせてもらいます」
シャギアは再び頭を下げ、オルバ、アビーを連れて司令室を出た。
そして基地を出る途中。
「よろしいのですか?」
「何がだ?」
「肉色のMSの事です。詳細は不明ですが、ビームの直撃を受けても無傷だという事は知らせておいた
方がよろしいのでは?」
「ああ、その事か・・・・・・」
ビームの直撃を受けても無傷なMSがいると知れば、司令はああも軽く構えはしなかっただろう。
むしろ知らない事によりガルナハンは落とされるかもしれないのだ。
「構わんさ。それに私は見たいのだ。あの肉色のMSがローエングリンゲートに対してどのような行動を
取るかをな」
インモラルガンダムの全容を知らないシャギアは、とりあえず色々な場所で戦わせてみる事にした。
ヴェサリウスがこの基地に来たのは偶然でも気まぐれでもない。全てはインモラルの能力を計るため、
故にシャギアは難攻不落とされたこの基地に艦を向けたのだ。わざわざ自分達の位置を知らせながら。
「そうですか。分かりました、ならばもう何も言いません」
「結構。さて、では町へ繰り出すとしよう。束の間の休息、といったところだがな」
「了解」
「時にアビー。私の愛馬でドライブなぞ――」
「もういないよ、兄さん」
既にアビーの姿は消えていた。
「なんと・・・!」
「さ、行こうか兄さん。久しぶりの兄弟水入らずだ」
「そうだな。時にオルバよ」
「なんだい、兄さん?」
「最近セリフが少なくないか?」
「・・・・・・それは作者に言ってよ」

ガルナハン。
場所が場所なだけに、町は栄えているとは言い難かった。人の数もまばらで、まるで寂れたウェスタン
のようだった。
「コンビニすらないとはな・・・・・・」
「道路も舗装されてないし・・・・・・僕少し酔ってきたよ」
ガタガタと車体を揺らしながら、シャギアとオルバの乗った車は町を走る。
「オロナミンCが飲みたいのだが・・・・・・店がないぞ」
「あ、あそこに人がいるよ。道を訊いてみようよ」
「いい考えだオルバ」
シャギアは車を止め、そして鍬で畑を耕す農夫に近付いた。
「失礼。この辺りに店はないかね?」
シャギアがそう訊くと、農夫は疲れきったような目を向けた。
「・・・・・・あんた、連合の兵士か?」
「ああ。だがこの基地の者ではない。故に地理には疎くてね。よかったら道を教えてはくれないか?
もちろんタダでとは言わない。この空薬莢を差し上げよう。子供にでもやるといい」
「ふん、そんな物要らんわ!それよりさっさと出て行ってくれ!」
農夫の目は憎悪に満ちていた。それはまるで、強制労働を課せられている者のような目。
「どうやらあまり快く思われていないようだが・・・・・・よかったら話を聞かせてはもらえないか?」
「ふん、いけしゃーしゃーと!おまえらが来てからこの町はおかしくなったんだ!」
「ほう?」
「別におかしいようには見えないけど?」
確かに町は閑散としている。しかしそれはプラントや地球の首都と比べてであり、むしろこの立地条件では
当たり前とも言える光景だった。それにAWの町と比べれば立派なものだ。少なくともこの町には襲い来る
『脅威』の姿も、飢えに苦しむ住民の姿も見えなかった。
「おかしいのだ、十分に!この町ではな、こうして作業に精を出す者はおらんかった!」
「強制労働、という事か?」
「ああそうだ!おまえらが来てからというもの、皆が働かされたのだ!これをおかしいと言わずして
なにがおかしい!!」
「なるほどね・・・・・・確かに無給での労働はおかしいよね」
「いや、給料はちゃんと出る!月に二十万ほどな!」
「・・・・・・。確かに年中無休での労働はおかしいよね」
「いや、休みもちゃんとある!完全週休二日、祝日元日も休みだ!」
「・・・・・・。どこがおかしいの?」
「おかしいさ!俺は・・・・・・俺達はな・・・・・・働きたくなんかないんだ!!!」
「・・・・・・」
「毎日昼過ぎに起きて、一日中パソコンにへばりつく!そんな夢のような生活をおまえらは奪ったんだ!!」
「いや夢のようってかそれ、単なるニート――」
「ああニートさ!それのどこが悪い!この町の者は皆、働きたくなどないんだ!!生まれついての
生粋のニートなんだ!分かったら出て行け!」
「・・・・・・」

ガルナハン。この町は、ニートのすくつ(何故か変換できない)だった。
連合が来る前は住民全てが労働を放棄し、好き勝手にやっていた。2ちゃんは言わずもがな、ネトゲや
エロゲ等等、皆が堕落しきった生活をしていた。むしろ連合が来る前はどうやって食べ物とかを調達していたの
だろうか?生活実体の不可解さは嘘つき村に勝るとも劣らなかった。
「・・・・・・さてオルバよ。そろそろ行くとしよう」
「そうだね」
話にならないという事を悟った二人は、諦めて車に戻った。
「待て!!」
と、そこで農夫からの制止。
「何か?」
「薬莢くれよ、薬莢!!」
「・・・・・・」
シャギアは呆れた様子で、懐から空薬莢を取り出した。

同じくガルナハン。
シャギア達とは別の場所を、アビーは一人で歩いていた。
(労働に従事しているのは良い事ですね)
アビーはこの町がどういう所かを知っていた。出番がなく暇だったので、アビーはあらゆる町の事情を
知り尽くしていた。ただそんなアビーでも、連合が来る前ここはどうやって生計を立てていたのかは
分からなかった。
(・・・・・・おや?)
そんな中、アビーは少女の運転する車を発見した。
(おかしいですね・・・・・・)
アビーの調べたところによると、その車が向かっているであろう方角には何もないはずだった。
あるのは長い長い渓谷の道。そしてここから抜け出すにしては、あまりにも粗末な車。
ここから一番近い町でも車で一週間は掛かる。見たところ食料も何も積んでいなかったので、
このままでは町に着く前にガス欠、そして飢え死に必死だった。
「・・・・・・匂いますね、これは」
何かを察したアビーは、その車の尾行を開始した。

機動戦士阿部さんSEED DESTINY X
第十四話〜嘘つき村住人「私は嘘つき村の者だ」←無限ループって怖くね?〜