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R-18_Abe-SeedDestiny-X_安部高和_16

Last-modified: 2007-11-09 (金) 20:43:14

明朝。
「ただいま戻りました」
「おそかったなアビ・・・・・・どうしたんだ?」
「何がですか?」
「いや・・・・・・やけにツヤツヤしているなと」
「お気になさらずに」
それだけ言ってアビーは席に着き、カタカタとキーボードを叩いていく。
ヴェサリウス、ブリッジ。今日にでもガモフは攻めてくるだろうと予測したシャギアは、
昨日の時点で朝にここに集まるようオルバとアビーに告げていた。
シャギアの見立てでは、おそらくローエンなんとかグリンでもガモフ、特にインモラルは落とせない。
故に彼はさっさとガルナハンを離れて、安全な位置でインモラルの力量を測ろうと、こうしてアビーに
出航の準備をさせていた。
カタカタとキーボードに指を走らせるアビー。その横顔は、まるでゆで卵のようにツヤツヤとしていた。
「ふむ・・・・・・エステにでも行ったのか?」
「兄さん違うよ。あれは――」
言いかけて、オルバは口をつぐむ。兄はまぁ言ってしまえば生粋の魔法使い予備軍であり、
――「あれはほにゃららを行った後の女性の肌に表れるごく一般的な変化なんだよ兄さん」
などと言っては、
――「ほう?流石は我が弟、博識だな。まるで実際に見たような知識ではないか弟よ。流石、私が
目を付けた女性全ての心をレイダーしただけの事はある・・・・・・くっくっく・・・・・・」
などという暗黒の空気がブリッジを包み込む事になってしまう。
だからオルバは、この件には触れまいと口を固く閉ざした。
「くっくっく・・・・・・」
「はっ!?この空気・・・・・・まさか!!」
しかし、オルバさんは思念の流れを閉ざすのをすっかり忘れていた。
オルバの予測通り、しばしの間このブリッジは暗黒の空気に包まれた。

ガモフ、MSデッキ。
昨日のブリーフィング通り、出撃するのはアスランとイザーク。
二人は各々のMSのコクピットで待機していた。
「・・・・・・おい、アスラン」
『なんだイザーク?』
「貴様の言っていた『考え』とやら、そろそろ教えたらどうだ?」
『・・・・・・。イザーク、おまえは言ったな?例え敵でも、助けを求める者を見捨てる事は出来ないと』
「・・・・・・ああ」
『それを見せてもらう。今日、この戦闘で』
「どういう事だ?」
『おまえの覚悟を見せてもらう。この条件下で、おまえがその信念を貫けるかどうか』
「・・・・・・」
今回の戦闘は、今までとは少し条件が違う。
立地条件が敵に都合が良すぎるのだ。しかもこちらが移動出来るスペース全てを焼き尽くす砲撃、ローエングリン。
いちいち殺さずに敵を無力化していてはローエングリンの餌食、しかもその無力化した敵を射線上に落として
しまっては彼らも巻き込まれるのは明白。
イザークが信念を貫くには、あまりに厳しい戦場だった。
「ふん、大方そうだろうとは思っていたさ。けどなアスラン」
『なんだ?』
「俺は昨日言った貴様の『考え』を訊いているのだ」
『・・・・・・、えっ?』
「まず阿部がさっさとローエングリンを無力化する。それが最善かつ唯一の方法だと俺は思っていたのだが、
貴様にはあるのだろう?俺達二人であれを落とす方法が」
イザークの信念云々以前に、ローエングリンは一般人にはヤバ過ぎるシロモノだ。そこで一般人から100万光年
ほどかけ離れた阿部にまずローエングリンを無力化させようとイザークは昨日提案したのだが、アスランは
それに異を唱えた。イザークは「何かあるのか?」と思いつつ彼の意見を呑んだのだが、
『・・・・・・』
「・・・・・・おい貴様。何とか言ったらどうだ?」
『・・・・・・。アスラン・ザラ、ガズウート出る!!』
「あ、アスラン!?貴様、さては!!」
その件に関しては、アスランは何も考えていなかった。
いくら通信を繋ごうとも、アスランからの返事はなかった。
『イザーク、いつでもどうぞ!!』
「くそっ!イザーク・ジュール、グフ出るぞ!!」
半ば、と言うかほぼヤケクソ気味に、イザークも出撃した。

「敵MS、発進しました」
「よし、ヴェサリウス浮上だ。気取られぬようにな」
「了解」
既に戦艦ドックから出たヴェサリウスは、低空飛行で基地を離れた。
ガモフに見つかっては元も子もない。密かにゆっくりと、そして確実にヴェサリウスは基地から離れていく。
『貴様、どこへ行くつもりだ!』
と、ガルナハンの基地司令からの通信。大層怒ってらっしゃるが、まぁ戦時下で勝手に基地を離れては
それも致し方のない事だ。
「ああ、これは失礼。実は我々、次の任務がございましてね」
『次だと!?まずはあいつらをなんとかするのが先だろう!!』
「いえ、なにぶん急な話でしてね。なんとかという基地がピンチなようなので」
『し、しかしだな!』
「それにこの基地にはアレ、ローなんとかグエンサード卿がおられるのでしょう?我々が手を貸さずとも楽勝
でしょう?」
『ローエングリンゲートな。まぁ、それはそうだが・・・・・・』
「そういうわけで、失礼させてもらいますよ司令」
そう言い、一方的に通信を切るシャギア。
「さてアビー、この辺りでいいだろう」
「了解。艦を停止させます」
「うむ。さて、肉色のMS・・・・・・その実力の程をしかと見せてもらうぞ・・・!」

渓谷。
「ちっ、結構な数じゃないか・・・!」
視界を埋め尽くさんばかりのウィンダム。その先には、でっけぇ蜘蛛のようなMA、ゲルズゲー。
ローエングリン抜きにしても、この数を二機でやるにはいささか骨が折れる事だろう。
『もう弱音かイザーク?』
「うるさい!そんなわけあるか!!物足りないとすら俺は思っているぞ!!」
既に敵の司令には勧告(ヴェサリウス出せ的なヤツ)をしてある。そして光ファイバーの如き速さでそれをはねつけられ、
結局はこうなるのかよ、やっぱりな状況になっていた。
「来るぞ、アスラン!!」
『分かってる!』
不意に連合のMSが散開し、そして開けたスペースの先に見えたのは、淡く光るローエングリン。
咄嗟に二人は崖の窪みにMSを挟ませた。
直後、赤いごん太ビームが彼らの眼前を通り過ぎた。どうひいき目に見ても、直撃を喰らったら金属片
一つ残らず蒸発してしまうだろう。どうでもいいがこんなミッションがアーマードコアにあったような気がする。
「――!?ガモフは!?」
ビームをやり過ごしたところで体を出し、イザークはガモフの姿を確認した。
『こっちは気にしなくてもいいぜ』
しっかりとインモラルが防いでいた。どうひいき目に見ても金属片一つ残らず蒸発してしまうであろうビームを、
インモラルは難なく体で受け止めていた。
もちろんオーブ製であるインモラルガンダムはPS装甲であり、ローエングリンの直撃になど到底耐えられない。
これも良い男の為せる業、である。

「・・・・・・。相変わらず腑に落ちなさ過ぎるが、まぁいい。いくぞアスラン!ついてこい!!」
『おいイザーク!考えなしに――』
アスランの制止も聞かず、イザークは敵陣に一直線に突っ込んでいく。
『たった一機でだと!?』
『ふん、舐められたものだな』
『このガルナハン四天王、死のウィンダム隊の前にノコノコとよくもまぁ』
『最初の生贄は貴様だ、覚悟!!』
「どけぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!」
『『『『ぐわぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!』』』』
死のウィンダム隊を一蹴し、イザークはローエングリンへと向かう。
アスランのアホゥが何も考えていなかったので、イザークは二発目を撃たれる前に討ってしまおうと考えていた。
しかし――
『ここから先は通行止めでやんすよ』
「ちぃっ!!」
ゲルズゲーがイザークの行く手を阻む。機体の情報は一切ないので、イザークは攻めあぐねていた。
そうこう手間取っている内に、ローエングリンの砲門が光り出した。
「くそっ、間に合わなかったか!」
素早く距離を取るイザーク。ゲルズゲーを始めとする連合のMSも次々と射線上から離れていくのだが、
「しまった!」
先ほど落としたガルナハン四天王が、射線上に転がっていた。ついでに言うとガズウートもモタモタと
走行していた。
(どうする!?このままではあいつらは・・・!)
今から戻って四天王を救助しようとしたところで、その最中に背中を撃たれるのは明白。
アスランに頼ろうとも、野郎はさっさと窪みに身を隠して動こうという気配は微塵も感じられない。
(どうする・・・どうすればいい!)
考えを巡らすイザーク。ここまで頭を使ったのはおそらく生まれて初めてであろう。
そしてイザークの頭がフットーしかけたところで、ある考えが頭をよぎった。
「――これならいけるか!!」
イザークはスレイヤーウィップを上方に伸ばし、射線から離れてくつろいでいるある機体の足を掴んだ。
『な、何事でやんすか!?』
ゲルズゲーの足だった。
ついさっきの出来事だ。ゲルズゲーはグフのドラウプニルを悉く、とある武装で防いでいた。
陽電子リフレクター、である。
陽電子リフレクターとはザムザザーについていたアレであり、ソレはミネルバのタンホイザーを易々と防いでいた。
その情報は当時プラントの警護に当たっていたイザークの耳にも届いていた。
そして眼前にはローエングリン。ローエングリンもタンホイザーも似たようなモノであり、そもそもゲル助は敵戦艦の
主砲からローエングリンを護るために配備されているMAである。
「ていっ」
ゲルズゲーを自機とローエングリンの間に引きずり下ろしたイザークは、胴体を蹴ってゲルズゲーをローエングリン
に向かい合わせた。
「さぁ!死にたくなければ陽電子なんたらでローエングリンを防げ!」
自分で防げないのなら、防げる者に防がせる。それがイザークが咄嗟に思いついた策だった。

『ひぃっでやんす!!』
今にも火を噴かんとするローエングリンを前に、ゲルズゲーのパイロットはたまらずリフレクターを展開させた。
どばばばば、と発射される、暴力的なごん太ビーム。しかしそのスペック通り、陽電子リフレクターは
ローエングリンを自機の眼前で受け止め防ぎきった。
『ひぃっ!?近くで受け止めたため色々な武装がおしゃかでやんす!』
「ならばそのまま寝ておけ!」
バーニアやらサブ射撃のライフルやらを手早く斬り取りゲルズゲーを無力化し、そして彼を踏み台にして
そのままゲートへと踊り出る。
そしてイザークはローエングリンにビームソードを突き立て、ゲートを無力化させた。

「うわやべっ」
イザークがローエングリンをゲルズゲーに防がせる少し前。
発射の予兆を察知したアスランは、素早くガズウートを窪みに挟ませた。
「よし、これで一安心だな」
ここからではゲートは見えないので、アスランはイザークも既に退避を済ませていると思い込んでいた。
と、アスランの目の前、渓谷の中央にバーニアを破壊されたウィンダムが転がっていた。
彼はガルナハン四天王、死のウィンダム隊の一人だった。ランク的にはカイナッツォ。
バーニアは破壊され、脚部も何かおかしな事になっている彼のウィンダム。発射までに退避出来るとは
到底思えなかった。
それを知ってか、そのウィンダムは身じろぎ一つせずにその場に転がっていた。
「気の毒だとは思うけどな・・・・・・」
アスランは、別に敵を殺したいとは思ってなかった。しかし彼はイザークのように『殺さないように無力化する』という
戦術を取るつもりはなかった。アスランが今まで敵を殺さなかったのは単なる偶然であり、これから先も同じような
戦い方をすればいつかは殺してしまう日も来るだろう。
「それの何が悪い・・・・・・」
相手はこちらを殺す気で銃を向けてくるのだ。それなのにこっちは殺してはいけないなんて、そんな不条理な話はない。
イザークの言っていた言葉は単なる綺麗事に過ぎないのだ。
「さて、そろそろ・・・・・・ん?」
と、ガズウートのスピーカーから聞き覚えのない声が聞こえた。
心霊現象かと思ったが、違う。出撃前にイザークからの通信を切るためにチャンネルを適当に回したため、偶然この
戦場の誰かとチャンネルがぴったり合ってしまっていた。
『お、俺はもうダメだ・・・・・・バーニアも足もイカれちまっている』
「これは・・・・・・もしかして・・・・・・」
バーニアと足がイカれたMS。
それに該当するMSを、今アスランは視界に収めていた。
カイナッツォである。
『くそっ。せめて死ぬ前に・・・・・・』
「・・・・・・」
死ぬ間際の人間の言葉。加害者側の人間にとっては、一番聞きたくない言葉だった。
アスランは回線を閉じようとダイヤルに手を伸ばしたのだが――
『死ぬ前に・・・・・・スカルミリョーネのケツにペニスを突き立てたかった、ぜ』
「――!?」
ぴたりとその手が止まる。
(こ、こいつ・・・・・・!!)
似ている。

(そうだ。俺だって・・・・・・)
死ぬ間際になったら、キラのケツにもう一度ペニスを突き立てたいと思うに違いない!
※アスランはまだ一度もキラのケツに突き立てていません。
(・・・・・・。きみの〜す〜が〜た〜は〜 ぼくに〜に〜て〜い〜る〜)
アスランはミサイルの砲門をカイナッツォのウィンダムに向け、発砲した。
『うおっ!?なんだぁっ!?』
ミサイルはウィンダムの手前に着弾し、そしてウィンダムは奥の崖の窪みに吹っ飛ばされた。
「・・・・・・はぁ、なんで俺はこんな事を・・・・・・」
コクピットの中でため息をつくアスラン。
しかし、そう悪い気分ではなかった。

「ヴァ、ヴァカな!!!??!?」
ガルナハン基地、司令室。
ローエングリンゲート陥落の報告を受けて、基地司令は平常心を失った。
「ろろろローエングリンががががが・・・・・・」
「司令、お気を確かに」
「こ、これは夢だ!夢だッ!!ワハハハハ!バンザーイ!!」
もう何もかもがダメになっていた。
「仕方ない・・・・・・総員、脱出だ!基地を放棄する!!」

「・・・・・・、あれ?」
アスランは不審に思った。
いくら待っても、ローエングリンが発射されない事に。
いきなり撃たれたら怖いので、アスランはそっとガズウートの半身を窪みから出した。
「こ、これは・・・・・・!?」
アスランの見た光景。
それは、悉く無力化された連合のMSと、ローエングリンゲート。
そのMSの屍の中、一機悠然と立つ白いMS。
『アスラン!!』
イザークのグフイグナイテッドだった。
イザークはグフのモノアイでアスランを見据え、そして言った。
『俺は絶対に死なん!そして信念も貫く!これで文句はあるまい!!』
グフはボロボロだった。ビームソードは中央から折れ、ドラウプニルは消し飛んでいる。
もはや立っているのがやっとの状態。しかしそれでも、そのグフの姿は堂々としていた。
「・・・・・・まったく、おまえって奴は」
呆れ混じりに呟くアスラン。
しかしその顔は、どこか清々しかった。

ガルナハン。
連合から解放されたという事で、住民達はお祭り騒ぎだった。
「ひゃっほーい!エロゲだ2ちゃんだブラウザゲーだー!!」
「俺は寝るぞー!朝から夜まで寝るぞー!」
「ksk、ksk、ksk、ksk、ksk、ksk、ksk・・・・・・」
などなど。イザークが聞いたら憤慨しそうなセリフで溢れかえっていた。
「イヤッフー!!・・・・・・ん?あれはコニール?」
そんな中、ふらふらとおぼつかない足取りで自宅へ向かうコニールの姿を、住民の一人が発見した。
「ようコニール!どうしたんだ昨晩は?帰って来なかったそうじゃないか」
「・・・・・・え?あ、いや、それは・・・・・・」
顔を真っ赤にしてうつむくコニール。よく見ればコニールは連合の制服を羽織っていた。
「その服は?・・・はっ!?もしかしておまえ、連合の人間と・・・・・・」
「ば、バカな事を言うな!これは、その・・・・・・拾ったんだ!寒いから!」
「ふぅ〜ん・・・・・・」
「と、とにかく私は帰る!じゃあな!」
そう吐き捨てて、コニールは自宅へと向かった。
その途中。彼女はぽつりと呟いた。
「ちくしょう・・・・・・108回も・・・・・・」
108回もナニされたかは、各自の想像にお任せします。
そんな中、住民の一人が空を見て叫んだ。
「おい見ろ!連合の兵が逃げていくぞ!!」
ガルナハン基地から、ケルゲレンのような戦艦が飛び立った。
あの中には言うまでもなく、ガルナハンにいた軍人全てが乗っている。
「あいつら・・・・・・このまま逃がすものか!!」
そして住民達は、町の倉庫に向かった。

「結局ヴェサリウスは取り逃がしたか・・・・・・」
ガルナハン基地、戦艦ドック。
パイロット達を全員基地に送り、そして副指令にヴェサリウスの事を問いただしたイザークだったが、
既にヴェサリウスは別の基地へ向かったとの事。
無人となったこの基地で、イザークはそう呟いた。
『どうやら向こうはこっちの動きを把握しているようだな』
「ちっ、面白くない話だ。よし、じゃあさっさと戻るぞ。もうここに用はない」
そしてガモフへと戻るその途中――
「――なっ!?」
イザークは見た。
逃げる連合の戦艦に向けられた、対空ミサイルの砲門を。
「何をしているんだあいつらは!」
その砲門は、町から向けられていた。
大方今まで圧制を強いていた連合に対する住民の憂さ晴らしであろうとイザークは推測し、そしてそんな馬鹿げた
事を見過ごせるはずのないイザークは外部スピーカーで住民に呼びかけた。
「貴様ら、何をやっている!すぐにそれを引っ込めろ!!」
しかし住民はイザークの声など聞こえないのか、無視して逃げる戦艦にミサイルを発射した。

「くそっ!!」
ミサイルを撃ち落そうとドラウプニルを向けるイザークだったが、
「しまった!さっきの戦闘で――」
既にドラウプニルは使い物にならなくなっていた。
「くそっ!!」
このままミサイルが直撃すれば、あの戦艦が撃墜されるのは火を見るより明らか。
今度こそもうダメかとイザークが思ったその時――
「――!?」
ミサイルが爆発した。もちろん、戦艦に着弾する前に。
ミサイルが粗悪品だったわけではない。
その答えは、グフの横で機関砲を構えるガズウートにあった。
「これでいいんだろ、イザーク」

「副指令!ミサイル四基、来ます!!」
「な、なんだと!?」
操舵手が副指令に報告した。ちなみに司令はまだ正気を失っていた。
「回避だ!」
「間に合いません!!」
「くそっ、なんという事だ・・・!」
せっかく全員無事に脱出出来たというのに、これでは一網打尽もいいとこだ。
そして副指令も平常心を失いかけたその時――
「――!?み、ミサイル全基、ロストしました!」
「なに?どういう事だ!!」
「は!あの、信じ難い事なのですが・・・・・・ザフトのMSが撃ち落としたようです!」
「ザフトだと!?」
副指令がモニターを見ると、確かにそこにはミサイルに向けて機関砲を撃ったと思しきMSの姿があった。
「パイロットを全員生かして送り返してきた事といい、奴らは何を考えているんだ・・・?」
彼らの行動は、全くもって腑に落ちない。そもそも戦闘前に「我々は戦闘をしに来たのではない!」と言う時点で
彼らはどこかおかしい。
「・・・・・・まぁいい。助かったのは事実だからな」
副指令は考えるのをやめ、そして心の中で彼らに敬礼をした。

ヴェサリウス、ブリッジ。
「以上がインモラルの戦闘記録です」
「ご苦労。いやしかし・・・・・・」
シャギアはインモラルガンダムの先頭記録に目を通した。
通した、と言っても、それはすぐに済んだ。
何しろ今回、インモラルはほとんど何もしていないからである。
「これじゃあ何も分からないね、兄さん」
「いや、一つだけ分かった」
「なにが分かったの、兄さん?」
「あのMSは無敵だという事だ」
「それって、分かりたくない事だよね兄さん・・・・・・」
「ふっ、まだまだ青いなオルバよ。無敵だからこそ良いんじゃあないか」
「え?どういう事だい、兄さん?」
「こういう事だ。アビー、針路をオーブに向けろ」
「了解」
ヴェサリウスは転身し、オーブへと艦首を向けた。
「どういう事?どうしてオーブに行くのさ?」
「オルバよ。あのMSがオーブ製であるという事は知っているな?」
「うん。この前調べたらそんなデータが出てきたよね」
「だったら話は簡単だ。あのMSが無敵ならば、それを造ったオーブに秘密がある。それを紐解いてさえしまえば、
無敵は無敵でなくなるのだよオルバ」
例えば無敵のATフィールドは、同じATフィールドをぶつけて中和してしまえば無敵ではなくなる。
無敵にも無敵なりの理由がある。理由なき無敵――即ち完全な無敵などこの世には存在し得ないのだ。
「――!?そ、そうか!それにオーブの技術を盗んでしまえば、僕らが無敵になる事だって出来るね!」
「そういう事だ。賢いなオルバは・・・・・・どれ、角砂糖をやろう。いくつがいい?」
「いや、それは要らないよ兄さん・・・・・・」
こうして、ヴェサリウスの次の目的地はオーブに決まった。

機動戦士阿部さんSEED DESTINY X
第十六話〜連ザのゲルズゲーのサブ射撃は鬼〜