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R-18_Abe-SeedDestiny-X_安部高和_18.5

Last-modified: 2007-11-09 (金) 20:43:50

〜機動戦士阿部さんSEED STARゲイZER〜

DSSD技術開発センター。
「ようセレーネ。宇宙に上がるんだってなぁ?」
無精ひげを生やした中年の男が、長い黒髪の女性――セレーネ・マクグリフに声をかけた。
セレーネはスターゲイザー計画の中心的人物っぽい女性だ。まぁ俺も詳しい事は知らない。
ただ三十路が近いという事だけは確かである。
「ええ。スターゲイザー計画がようやく軌道に乗り始めたから」
「そうかそうか。ついに始まるか」
そう言い、中年の男――エドモンドは、無精ひげを撫でた。
エドモンド・デュクロ。DSSD技術開発センターの保安副部長であり、過去に『伝説の鬼曹長』と呼ばれた男である。
とはいえ所詮は天下り、ロクな事を思いつかないのでセンターの研究員からは煙たがられているのだが。
ちなみにスターゲイザー計画とは一体のMSを宇宙に打ち上げるプロジェクトですが、本作品においては
別になんの意味も持たない計画です。
「ついでと言っちゃなんだが、土産を頼まれてくれないか?」
「お土産・・・・・・?」
「ああそうだ。その土地の産物と書いてお土産だ。宇宙に土地は無いがなぁがっはっは!」
「・・・・・・」
バカ笑いするエドモンド。セレーネは顔を顰めた。
お土産という物を得るためには金銭が必要、セレーネはエドモンドのために金を使うくらいならドブに捨てた方が
マシという考えの持ち主だった。
「口説きたい奴がいるんでな。そいつが喜びそうなのを頼むぜ」
「・・・・・・。分かったわエドモンド」
しかし相手は副所長。断ってイヤガラセでもされたらついカっとなって銃殺してしまいそうなので、セレーネは
渋々承諾した。
「じゃ、頼んだぜ」
セレーネの肩をぽん、と叩き、エドモンドは去っていった。
「・・・・・・はぁ。なんかテンション下がった・・・・・・」
エドモンドに触れられた肩をぱっぱっとはたき、セレーネはシャトルの発射場に向かった。
ちなみにこの世界ではユニウスセブンの破片は落ちていないので、南米の某市でのヒサンな出来事は起きておりません。

シャトル内。
「お待たせ」
セレーネがシャトルに乗り込むと、既に横のシートに人が座っていた。
「遅いよセレーネ。一分と十三秒の遅刻だよ」
ソル・リューネ・ランジュ。セレーネと共に宇宙に上がるパートナーだ。
年齢は16。16にしてはオデコがキラブリッジ大佐並に広いが、きっと色々苦労しているのだろう。
「相変わらず細かいわね。ハゲるわよ?」
手遅れっぽいけど、と心の中で付け加え、セレーネもソルと同じようにシートに着いた。
「そう言えば副所長からお土産を頼まれたわ。なんでも口説きたい人がいるんだって」
「へぇ・・・・・・」
「それでソル、あなたは何が欲しいの?」
「え・・・・・・?」
「口説きたい人にあげるんですもの。その人が喜ぶ物を買った方がいいでしょ?」
「・・・・・・それは、どういう事かな?」
「副所長が口説きたい人って、あなたしか思い浮かばないもの。あなたも薄々気付いてたんでしょ?」
「・・・・・・」
「ホント男って、知ってて気付かないフリをするんだから」
「・・・・・・」
気付かなかったわけではない。現実から目を逸らしたかっただけだった。この現実がソルの頭の砂漠化に
一役買っている事は間違いないだろう。
「あ、そうそう。300円以内で頼むわね」
そしてシャトルは、宇宙へと煙の尾を引いて上がっていった。

地球連合軍基地、バー。
「俺はハスラーになりたかったんだけど、なっ!」
黒人の男の突いた白球が、そのままポケットに入った。
「ぃよっしゃストライク!ようスウェン。おまえもやらないか?」
著しくルールの間違ったビリヤードを楽しむ男が、カウンターでコーラを飲むスウェンに声をかけた。
「俺はルールを知らない奴とビリヤードをやる趣味はないんだ」
「なんだよツレねーな。このシャムス様が教えてやろうってのに」
「だから人に教える前にルールを覚えろと何度も言っているだろう・・・・・・」
「んな細かい事気にするなって」
そう言って、男はスウェンの隣りに座った。
男の名はシャムス・コーザ。色眼鏡をかけた黒人男性であり、スウェンと同じくファントムペインの一員だ。
彼は名前こそシャムス・コーザだが、その顔はどう見てもボブ顔です本当にありがとうございました。
「ルールがあるから楽しいんだ。そこのところを理解するんだな、ボブ」
「――!?てめぇ何度言ったら分かるんだ!俺の名前はシャムスだ!ボブでもトムでもなくなぁ!何万回言ったら覚えるんだ、
このドグサレがッ!」
顔を近づけ、怒鳴りつけるシャムス。彼は皆からボブと呼ばれ、そしてそう呼ばれるたびにこうして激昂する。
しかしそれは皆が悪いのではない。ボブ顔に生まれたシャムスが悪いのだ。
「相変わらずね、二人とも」

と、二人の元に一人の女性が近寄ってきた。
「よぉ、ミューディー。おまえからもなんか言ってやってくれよ。こいつ未だに俺の名前を――」
「落ち着きなさいよボブ。怒ったってなんにもならないわ」
「てめぇもかッ!どいつもこいつも腐った脳みそしやがって!」
ミューディー・ホルクロフト。緩い表情を作る彼女もまた、ファントムペインの一員だ。
「この際だから言っておく!いいかてめぇら!おい、全員聞け。今度俺をボブと言った奴はなぁ、例外なく
ナイルの川底に沈めてやるぞ!そうなりたくなかったら二度と俺をボブと呼ぶな!いいな!?」
カウンターの上に立ち、バーにいる人間全員に言い放つシャムス。
しかし彼らはシャムスの言葉など意中になく、皆テレビに注視していた。
『えー、先日コーディネーターによるコンビニ強盗事件が発生。店員一名が負傷しました』
そのニュースを聞いて、彼らは皆憐れみのこもった笑みを浮かべた。
「ったく、これだからコーディネーターは」
「遺伝子改良しても知性が猿じゃあなぁ」
「これだからブルコスはやめられねぇぜ」
永きに渡って反コーディネーター教育を施されてきたため、彼らはコーディネーターを毛嫌いしていた。
「ヘタに知能や身体能力が優秀だからタチが悪いよなぁ、コーディってのは」
「そんなもの、努力でどうにかなる。なまじ優秀な分だけ奴らは慢心するだろう。あしらうのは容易い」
「へーへー。さすがスウェン中尉は優秀なようで。しかしホント、コーディネーターって悪い奴ばっかだな」
そう言いながら、スウェンのコーラを勝手に飲むシャムス。彼らもブルコスの施設でコーディネーターの悪事
(自転車のサドルを盗む、お釣りをごまかす、川で小便をする等)を散々見せられたため、今では立派なブルーコスモス信者だった。
「先生が言ってた。良いコーディネーターは俺だけだって」
そう呟いたのはミューディー。衝撃の事実だった。

連合軍基地、司令室。
「テロリスト、でありますか?」
「そうだ。どうやら難民キャンプがテロリストの養成所になっているらしい。そこで、貴様らファントムペインにその
殲滅を命令する」
スウェンはこの基地の司令からそんな命令を受け取っていた。
「はっ!しかし・・・・・・どうやってテロリストと難民を見分けるのですか?」
スウェンがそう問うと、司令は椅子を回してスウェンに背を向けて、言った。
「スウェンよ。この世のどこにテロリストと一般人を見分ける術がある?」
「それは・・・・・・」
武装してたり胸に『I am TERORISUTO』と書かれたプレートを下げているのなら分かりやすいが、
一般人のフリをして人の中に紛れ込まれると見分けるのはほぼ不可能と言っていい。
「そう、無いんだよ、そんなもの。じゃあどうやってテロリストを殲滅する?簡単だよ。そこにいる者全てを
殲滅すればいい。難民だろうがTERORISUTOだろうが、皆殺しにすりゃあ結果的にTERORISUTOを
やっつけた事になる。違うか?」
「それは・・・・・・そうですが」
「つまり私が言いたいのはこういう事だ。・・・・・・関係ない、やれ」
そして話は終わりだとばかりに、司令は葉巻に火を点けた。
「・・・・・・」
スウェンは思った。
――こいつはダメだ・・・・・・早くなんとかしないと・・・・・・

ロシア、雪原。
テロリストを適当に逮捕したファントムペインは、休む間もなく次の任務――ボナパルト防衛任務に就いていた。
なに読者?展開が早い?逆に考えるんだ。「原作が短すぎるのがいけない」。そう考えるんだ。
「ったく、しつっこいったらありゃしない!」
ミューディーの乗るブルデュエルが、ボナパルトに群がるバクゥを蹴散らしていく。
『へへっ、みんなミューディーとヨロシクやりたいんじゃねぇのwww?』
そしてシャムスの駆るヴェルデバスターもまた、砲撃でバクゥを次々と落としていく。
「はぁ?なにそれ、ジョークのつもり?全然笑えねーんだよボブ公が!」
『オイ肉便器よぉ・・・・・・俺は言ったよな?今度ボブって呼んだらナイルの川底に沈めるってよォ――ッ!!』
『やめるんだおまえ達。任務は静かに速やかに、そして確実にだ。口論などしている場合ではない』
イマイチキャラの練られていないスウェン(阿部種仕様)が、二人をたしなめる。
『そういう時に限ってピンチが訪れるんだ。ミューディーもシャブも自重しろ』
『違法ドラッグみたいな名前で呼ぶんじゃねぇ!それにシャブってオマエ、シャムスって言いかけてボブに修正
したみたいになってるじゃねぇか!シャムスのまま突っ走ればいいんだよ!!』
「シャブうるさい」
『シャブじゃねぇ、ボブスだ!あれ?なんかおかしいな?』
「声でかいしつまらないジョークは言うし、あいつ死なないかな・・・・・・」
そう呟いてサーベルを振ろうとしたミューディーだったが、
「・・・・・・あれ?」
いつの間にかブルデュエルの右腕は切り落とされていた。
「うわ、やばいかも・・・・・・」
そう気付くも既に遅い。
あっという間にブルデュエルの四肢は、バクゥによって次々と切り落とされていった。
支えを失い地に転がるブルデュエル。
「ちょ、ちょっとタンマ・・・・・・!」
そして身動きの取れなくなったブルデュエルに、三機のバクゥハウンドが飛びかかる。
「だから、タァァァァァァァァァァァァァイムッ!!」
絶叫。
その瞬間、三機のバクゥハウンドの動きがぴたりと止まった。
『なんだよ、良いところで』
「ちょっと待ってよ。今助け呼ぶから」
『ああそうかい。早くしてくれよ』
「りょーかい」
タイムをもらったミューディーは、コクピットのキーを操作して救援メッセージの作成に当たった。

「よっしゃ、これで九機目・・・・・・ん?」
ボナパルトの上でバクゥを撃墜するシャムスの元に、メッセージが届いた。
「なんだぁ?差出人は・・・・・・ミューディー?」
戦闘中に何を、と思いつつも、シャムスはそのメッセージを開封した。
――『ボブけて』

『なんのつもりだてめぇ!』
送信のすぐ後に、シャムスの怒鳴り声がコクピットに響いた。
「ボブ、助けて。ちょっとピンチなのよ」
『ぁあ!?知るか!俺をボブと呼ぶ奴ぁみんな死んじまえばいいんだよ!!』
そして一方的に通信回線が切られた。
「ちっ、使えねー黒んぼだな。ふんだ、じゃあスウェンに頼も」
そして今度はスウェンに回線をつないだ。
「ねぇスウェン、助けて。ちょっとピンチなのよ」
『いや、こっちも手一杯だ。自分でなんとかしてくれ』
「いや、そうしたいのはやまやまなんだけどダルマなのよ、私のブルデュエル」
『なにミューディー?ブルデュエルがダルマだって?逆に考えるんだ。「落とされちゃってもいいさ」。そう考えるんだ』
そしてまた一方的に回線が切られた。
「んだよもぉ、使えねー奴ばっかだなファントムペインってのは」
コクピットの中で悪態を吐くミューディー。
『あの、そろそろいいっスか?やっちゃっても』
と、ここでさっきからおあずけを喰らっているバクゥハウンドからの通信。
「あ、ちょっと待って」
するとミューディーはコクピットハッチを開け、ブルデュエルから飛び降りた。
そして数十メートル走った後、彼女は腕で大きな丸を描いた。
「おk」
『よぉーし、それじゃあヤっちまうぜ!』
ミューディーの合図を皮切りに、バクゥハウンド達はその牙でブルデュエルを滅多刺しにし始めた。
『うわはははは!美味い、美味いぞぉ!ブルデュエルの装甲はうンまいぞぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!ガフッ、ガフガフ、ガフッ!』
「さよならブルデュエル・・・・・・。さ、帰ろ」
ブルデュエルが貪り食われる様を背に、ミューディーはボナパルトへと歩き出した。
――ブルデュエル、再起不能。

DSSDステーション、管制室。
『本艦は第81独立機動軍所属、ナナバルクである。我々はこれより諸君らの施設を接収する。本艦には無許可で
諸君らの施設を攻撃する権限を持っている。死にたくなければ投降しろ』
ナナバルクと名乗る戦艦と多数のMSが、ステーションに接近していた。
『繰り返す。あー繰り返すの面倒だわ。全軍、突撃!』
そして艦長の号令と共に、MS――ストライクノワールとヴェルデバスターとスローターダガー達は一斉に施設へ向かった。
「や、やばいぞこれは!早く逃げなくては!」
「うわーん!まだ死にたくないんじゃワシは!」
じじいAとじじいBが取り乱す。
「こ、こうしちゃいられない!」
そして青年A――ソルは、管制室から飛び出した。

「許さねぇ・・・・・・別に理由はないけどおまえらコーディネーターはみんな許さねぇ!」
ビームを乱射し、シビリアンアストレイを落としていくシャムス。
ブルデュエルが欠けた今、まともな戦闘が出来るのはノワールとヴェルデバスターだけだった。
スローターダガーは例に漏れず皆棒立ちなので、二人でこの施設を破壊しなければならない。
ちなみにミューディーは部屋でメルブラをやっています。
『あまり派手にやるなボブ。ただでさえこちらはブルデュエルを失っているんだ。速やかに、そして確実に――』
「だから俺は、ボブじゃあないんだよッ!!」
『そんな事はどうでもいい。エネルギーを使いすぎると原作みたいにブザマな死に様を披露する事になるぞ』
「おまえが何を言ってるか俺にはわからねぇが・・・・・・とにかくあいつらは許せねーンだよ!特に理由はないけど」
そう言ってシャムスは、ダガーを引き連れて施設へと向かった。

セレーネとソルは、MSに乗り込んでいた。
スターゲイザーガンダム。眩いほどの純白の、複座式のMSだ。
ピッピッピ、とキーを押していくソル。その手は少し震えているように見えた。
「・・・・・・怖い?」
「・・・・・・、そうだね。怖くないと言ったら嘘になるかな」
ソルは実戦は初めてだった。しかもこのMSにはまともな武装はついていない。まともな武装なしでいきなり戦場に
突入して「怖くない」などと言えるのは、某ゲイくらいなものだろう。
「ま、それでもやってもらわないと困るんだけどね。ここ奪われたら職失うし、私」
「・・・・・・。そうだね」
ソルの士気が若干下がった。
『スターゲイザー、いつでも発進どうぞ!』
管制室からの通信。
「よし。・・・・・・行くよ、セレーネ」
「ええ」
そして純白のMSは、漆黒の闇に身を躍らせた。

「ちっ、どこから沸いてくるんだこのMS共はッ!!」
ビームを乱射するボブ。落とせども落とせども、敵のMSの数は減らなかった。その様はまるでマクロス7の雑魚パイロット
のよう。毎回あれだけ落とされてりゃ二十話あたりでシティ7のバルキリーは全滅してるだろ常考。
『ヴェルデバスター、エネルギーエンプティ!ボブ自重しろ』
「うるせェ――ッ!!」
ナナバルクからの通信を無視してビームを乱射し続けるボブ。
と、
「な、なんだアレは・・・・・・?」
ステーションとはまったく別の方角から、一機のMSが戦場に乱入してきた。
「あ、アレは、もしかして・・・・・・!」
それは最初の戦争の時だ。
その戦争の中、戦場を縦横無尽に駆け回ったMSがあったと聞いた。
曰く、彼の者は無敵である。
曰く、彼の者は容赦しない。
曰く、彼の者は――良い男。
「ま、間違いない、あいつは・・・・・・」
扇情的なフォルム、肉色の装甲。
今やその名を知らぬ者はいないほどの、ノンケにとっては畏怖の対象となるMS。
「い・・・・・・インモラルガンダムだァ――ッ!!」
インモラルガンダムは、敵味方関係なく自身の猛る暴君で次々とMSのアナルを貫いていった。
「みんな気を付けろ!あいつは――」
そう言って味方機に目を向けたボブだったが、
「・・・・・・掘られている・・・・・・スデに・・・・・・」
周囲のスローターダガー達は皆、力なく空間を漂っていた。
「・・・・・・はっ!?」
そして次の瞬間、ボブの目の前でインモラルの双眼が輝いた。
「てめぇ、このッ!!」
全砲門からビームを発射し、インモラルに浴びせるボブ。
そのビームを真正面から浴び、目の前に現れたMSは粉みじんに爆散して消えた。
「へ、へへ・・・・・・やったぞ・・・・・・」
同時にヴェルデバスターのエネルギーが切れる。しかしインモラルは目の前で爆散したので、落とされる心配はない。
「そうだよな・・・・・・やったんだよな、俺はよ・・・・・・」
ボブの頬に一筋の汗が伝う。
「だったら・・・・・・今俺の後ろに組み付いているのは誰なんだァ――ッ!?」

『ア ッ ー!!』
「――!?」
ボブとは別の方面で敵と交戦していたスウェンの耳に、そんな彼の嬌声が聞こえた。
「どうしたボブ!何があった!?」
慌ててボブに通信を送ると、まるで精根尽き果てたかのような声が返ってきた。
『お、俺よぉ・・・・・・ボブでもいいかなって思えてきたんだ。ああ、そうさ。おまえがケツを掘らせてくれるンなら、
何度だって俺の事をボブって呼んでいいんだ・・・・・・なぁスウェン、や ら な い か』
「な・・・・・・ボブ・・・・・・!?」
そんなボブのセリフを聞いたスウェンは、手早くボブからの通信をシャットアウトした。
そしてスウェンは、ボブなんて初めから存在しなかったんだと思い始めた。
「・・・・・・さて、仕事仕事」
気を取り直し、スウェンはアストレイとの交戦を再開した。

「こ、これは・・・・・・!」
ソルの口から、そんな言葉が勝手に出た。
それもそのはず。ステーションを護ると心に誓って出撃したはいいが、肝心の敵MSが軒並み無力化されていた。
「いったい、何がどうなって・・・・・・」
味方?いや、それにしてはアストレイまで無力化されている。
ではいったい誰がなんの目的でこんな事を――
「ソル!前見て前!」
「――!?」
セレーネの言葉に反応し、慌てて前を見るソル。
そこには――
「あ、あれって・・・・・・」
「ええ、間違いないわ。・・・・・・インモラルよ」
インモラルガンダム。これが彼の仕業だと言うのなら、全てに納得がいく。
彼には敵も味方も関係ない。ただアナルを突けさえ出来ればいいのだ。
「や、やるよ、セレーネ!」
操縦桿をぐっと握るソル。彼はノンケであるが故、インモラルを酷く恐れていた。
「おk。ヴォワチュール・リュミエール展開!」
スターゲイザーの背中から、輝く光輪が展開された。
これが、スターゲイザーに唯一備わっている装備、ヴォワチュール・リュミエールだった。
本来は次世代の加速装置であるこのヴォワチューry。しかし応用すれば立派な武器になり得るのだ。
「喰らえ!!」
その光輪を糸のように伸ばしてインモラルに向けて放つソル。見た目はか細い糸だが、MSだって斬れちゃうんだぜ。
「な・・・・・・そんな!?」
しかしインモラルはそれをまるで体に纏わりつく鬱陶しい蜘蛛の巣であるかのようにあしらい、まっすぐスタゲに突進してきた。
「ソル!回避よ!」
ヴォワryが通用しないといち早く悟ったセレーネは、ソルに回避行動を促す。
しかし、
「も、もう遅い・・・・・・奴はスデに・・・・・・」
セレーネが反応するより早く、インモラルはスタゲの背後に回っていた。
「振り解くのよ!早く!!」
「いや・・・・・・もうダメだ」
ソルは自分がこれから起こそうとしている行動の全てが無意味に終わると直感し、静かに操縦桿から手を離した。
そして――
「ア ッ ー!!」
ソルの座るコクピットシートが変形し、彼のアナルを突き穿った。
事が終わり、スタゲから身を離して新たな獲物を探しにいくインモラル。
「・・・・・・?あ、そうか。女は関係ないんだった」
ケツ穴の貞操を心配していたセレーネだったが、その事を思い出してほっと一安心した。
「ねぇソル?・・・・・・大丈夫?」
前の座席でぐったりするソルに恐る恐る声をかけるセレーネ。
「う・・・・・・せ、セレーネ・・・・・・」
どうやら意識はあるようだった。

「あ、生きてた」
「聞いてくれセレーネ・・・・・・」
まるでうわ言のように呟き、そしてソルは続けた。
「僕・・・・・・射精してしまっているんだ」
「ソル・・・・・・!」
「ああ、今ならエドモンドにプロポーズされてもいいって気がしてきたよ。僕は今、誰かにケツを貫かれたいって思って
しまっているんだセレーネ・・・・・・」
「・・・・・・」
それを聞いたセレーネは静かに首を振り、そしてとあるスイッチを押した。
「せ、セレーネ・・・・・・!?」
同時に、ソルのコクピットシートが宇宙に投げ出された。
「さよならソル・・・・・・あなたの事は忘れる事にするわ」
「セレーネ!待ってくれセレーネ!頼む!射精してしまった事はみんなに内緒にしてくれ!頼んだよセレー――」
ソルの声が途切れ、コクピットにはセレーネ一人になった。
「・・・・・・さて、仕事仕事」
機体を転身させ、セレーネはまだ残っている連合のMSの元へと向かった。

「くっ!なんだこいつは!?」
拳銃のようなビームライフル――ショーティーで、敵機を牽制するスウェン。
しかし敵機――インモラルはそんなものを物ともせず、まっすぐノワールへと機体を疾らせる。
「まさか、こんな所で出くわすとはな・・・・・・!」
腰部のリニアガンを放つも、しかしインモラルは無傷。
戦局は誰が見ても明らかだった。これは戦闘ではない。絶対的強者が獲物を追い詰める、狩りのようなものだった。
「しまった!?」
さしたる見せ場もなく、ノワールはあっという間に追い詰められてしまった。
後ろに回られ、アナルを貫かれるまでに1秒と掛からない。
――もう終わりだ。俺もあの黒人のようになるんだ・・・・・・
自身のゲイ化を覚悟したスウェンだったが、次の瞬間にMSの体当たりを喰らっていた。
「な――!?これは!?」
自身に組み付き猛スピードで戦場から離れていくのは、純白のMS。
『あ、間違った』
スターゲイザーガンダムだった。セレーネは無謀にもインモラルをやっつけようとして、誤ってノワールに体当たりを
喰らわせてしまったのだった。
『まぁいいや、コイツで』
「お、おい待て!なんだそれは!間違ったのなら離れて再びやりなおせ!」
スウェンのそんな言葉も届かず、スタゲは組み付いたまま離れなかった。

アポロンA。
『こちらセレーネ!プロパルションビームを出力30%でスターゲイザーに発射して!こいつを排除するわ!』
セレーネからそんな通信が届き、管制室はざわざわってなった。
「そ、そんな事をしたら色々とマズイ事になるわよ!?」
『いいからやって!これを逃がしたらチャンスは無いわ!』
『いやだから誤爆なんだろ!?プロパルなんとかってすげぇマズそうな響きだし離してよ!』
『黙りなさい。私の面子を潰す気?今更「誤爆ですた」なんて言えるわけないでしょう?』
『面子で人を殺すのかおまえは・・・・・・!』
『それが大人ってものなのよ』
『なんて汚い大人なんだ・・・・・・。こんな事になりたくないから天文学者になりたかったのに・・・・・・』
「あー、えーっと・・・・・・撃つべきなのかしら?」
二人の会話を聞いて、オペレーターは困惑した表情を浮かべた。
『問題ないわ、やりなさい。あなたのその手が人類の未来を担うのよ』
『人類の未来っておま、ただのドグサレの証明だろうがァ!面子で人を殺すってどういう神経してんだ!』
「あー、なんか色々間違ってるみたいだし。私休憩行ってくるわね」
『待ちなさい。行くなら撃ってから行きなさい』
「いや、だって、ねぇ?私だって人殺しはイヤだし」
『そう・・・・・・どうしても撃たないっていうの?』
「うん。悪いけど。射精しちゃったソル君共々、たっぷり恥をかくといいわ」
『ふぅん・・・・・・』
するとセレーネは意地の悪い笑みを浮かべ、言った。
『撃たないのならあなたの秘密をバラすわよ?』
「・・・・・・は?いきなり何言ってるのよ」
『あー、みなさーん。このモブであまり顔のよろしくないオペレーターは、実は自作の詩をホームページに
載せていま〜す』
「――!?な、ななななんでそんな事を!!?!?!?」
オペレーターが周りを見ると、皆苦笑いをしていた。
『m9(^Д^)プギャーww』
「な、なによなによ!評判は良いんだから、問題ないでしょ!?」
『おっと現実の見えていないアホが一人登場〜。おまえのサイト2ちゃんで晒されて笑い種になってるって知ってた?』
「な、なんですってぇぇぇぇぇぇぇぇ!?」
すぱやく専用ブラウザ(かちゅ〜しゃ)を開き、ネットウォッチ板で検索をかけるオペレーター。
「そ、そんな・・・・・・」
自分のHPの名前のスレタイをクリックするとそこには、数多の嘲笑のレスがついていた。
『さぁ、これ以上バラされたくなかったらさっさと撃ちなさい』
「・・・・・・。でももう無いもん。秘密なんて」
『あら?あるわよとっておきのが』
「な、なによ・・・・・・?」
『あなたのケツ、毛が生え過ぎて――』
「セレーネ死ねぇ!!!」
レバーがぐいっと押され、プロパルションビームが発射された。

『おまえ最低だな・・・・・・』
「うるさいわよ。これであなたもオシマイね」
ビームはノワールに命中し、その機体を押し潰す。
『ぐおぉぉぉぉぉ!重い、重いぞ!!』
それはコクピットにまで及び、スウェンの体までも押し潰していった。
「ふふっ、これで私は英雄・・・・・・ってちょっと、私の機体まで潰れてない?」
ノワールと同じように、スタゲの体も強烈なGに押し潰されていた。
「どういう事よこれは!・・・・・・ヘイ!ケツ毛バーガー、ヘイ!これはどういう事!?」
『いや、そんな近くにいたらおまえも押し潰されるだろ、常識的に考えて』
「聞いてないわよ私は!」
『無知は罪なり、ってね。私の秘密をバラした報いを受けるといいわ、あっはっは!!』
そして通信が途切れた。
「ちっ、あのクソビッチ!騙したわね!?」
『いや、どう見てもおまえの方がクソビッチなんだけど・・・・・・』
「やかましい!それよりこの先生きのこる方法を考えないと――」
『もうだめぽ』
そして二機は、宇宙の彼方まで飛ばされた。

宇宙空間。
「・・・・・・?」
何時間か経った頃。スウェンは薄っすらと目を開けた。
「ここは・・・・・・?」
「スターゲイザーのコクピットよ」
「なに・・・・・・痛っ!?」
「ああ動かないで。色んな所が折れてるから」
自身の体を見ると、医療器具でぐるぐる巻きにされていた。
「・・・・・・コーディネーターの捕虜になるつもりはない」
「捕虜にするつもりなんてないわよ。これ必要なら返すわね。弾は抜かせてもらうけど」
スウェンに向けていた銃を放り投げるセレーネ。弾が入っていないという事実にスウェンは非常にがっかりした。

「ったく、とんでもない事をしでかしてくれたな」
「ホントよね。あのアマ、帰ったらしばき倒してやるんだから」
「今俺がしばき倒したいのはおまえなんだがな・・・・・・」
どこからどう見ても弾が入っていなかったので、スウェンは銃をぽいっと捨てた。
「さて、これでよし、っと。あ、あなたのMSのエネルギー、勝手に拝借したから」
「ああ、それは構わないが・・・・・・ここはどこなんだ?」
見渡す限りの漆黒の闇。視認出来る範囲には、自分を助けてくれそうなものは無かった。
「さぁ?位置も何も分からない海の中、ひょっとしたらカーズ様に会えるかもね」
「そうか・・・・・・」
その事実を知ったスウェンは、考えるのをやめ始めた。
「まだ諦めるのは早いわ。スターゲイザーならもしかしたら戻れるかもしれないから」
「ノワールの残りエネルギーじゃ今の流れを止める事しか出来ないぞ」
「あら、何も知らないのね。このスターゲイザーに取り付けられたヴォワryはね、無限に加速出来るのよ」
最初の1秒では0,5センチしか進まないが、一分後には18メートル進む事が出来る。しかも太陽風を推進力
とするので、実質エネルギーは無限だった。
「しかし酸素は持つのか?」
「ドラッグで代謝を抑えるとして・・・・・・うん、一万と二千年は持つわ。心配はいらないわね」
「餓死しそうなんだけど・・・・・・」
「まぁなんとかなるでしょ。ドラッグ使うし」
「あの、小便したいんだけど」
「大丈夫よ。私の元知り合いにコクピットで射精した人がいるんですもの。今更寝小便くらいで驚かないわ。
それにドラッグも使うしね」
「そのドラッグって言い方やめてくんない?」
「さ、手を出して。注射するから」
お互いがお互いの手にドラッグを注射し、そして二人は寄り添うようにしてシートに並んだ。
「・・・・・・」
「・・・・・・なに?私の顔をじっと見て」
「いや・・・・・・おまえに似ている女性を知っているような気がしたが、気のせいだった」
「なにそれ?口説いてるの?」
「いや、気のせいだったって言ってるじゃん」
「私を口説きたいのなら札束でも積む事ね。一億もあれば喜んでついていくわ」
「ホント最低だなおまえ」
「Zzz・・・・・・」
「寝てるし・・・・・・」
間もなくスウェンも眠気に襲われ、二人は静かに寝息を立てた。

669時間後。
「・・・・・・?」
スウェンは目を覚ました。同時に強烈な尿意に襲われたが、それどころではない。
こちらに通信を送っている者がいると、コクピットのモニターに表示されたからである。
スウェンは手早く通信を繋ぎ、その者に呼びかけた。
「こちらスターゲイザー。不慮の事故で遭難している。救援を求む!」
『・・・・・・ガガッ、ピー・・・・・・』
「くそっ、調子が悪い!」
だん、とコンソールを叩くスウェン。
すると奇跡的に回路が復活し、相手からの声がはっきりと聞こえるようになった。
そして通信を送っていた男は、彼に向かってこう言った。

――『や ら な い か』

〜〜fin