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R-18_Abe-SeedDestiny-X_安部高和_30

Last-modified: 2007-11-09 (金) 20:46:11

「ネオさん、風呂掃除終わりました」
「サンキュー、シン。ほら、ご褒美だ」
そう言ってネオはシンにコーヒー牛乳を差し出した。
「あ、どうも。風呂上りもいいけど、仕事した後のコーヒー牛乳も美味しいですよね」
「汗をかいた後は何を飲んでも美味いモンさ。・・・・・・そう、夜の運動の後もな・・・・・・」
「・・・・・・?」
風呂屋の主人なのに夜中に自主トレでもやってるのかなと思いつつ、コーヒー牛乳に口を付けるシン。
何故か悪寒がしたが、それが何を意味するのかまでは分からなかった。幸運な男である。
「ところでシン・・・・・・そろそろ一緒に――」
「シーン!!掃除終わったかー!?」
ネオの言葉を遮り、二階からアウルの声が聞こえた。
「今終わったー!!」
「じゃあさっさと来いよー!次おまえの番だぞー!」
「?・・・・・・あ、そっか」
そういやアウルとのゲームの途中だったな、とシンは思い出した。
「今行くー!」
そう言うとシンはコーヒー牛乳を一気飲みし、瓶を置いた。
「ごちそうさまでした。・・・・・・それと、さっき何か言いかけてませんでした?」
「いや、気にするな・・・・・・」
「・・・・・・?」
何故かがっかりしたような表情(仮面だが)のネオを尻目に、シンは階段へ向かった。
「シン・・・・・・」
と、ちょうど降りてきたステラとばったり会った。
「ん?どうしたんだステラ?」
「これ・・・・・・」
ステラが差し出したのは一冊のノート。そこには『数学』と書かれており、ステラが何を言いたいのかシンはすぐに察した。
「あー・・・・・・ごめん!俺アウルとゲームの途中なんだ」
「ゲーム・・・・・・?」
「うん。アーマードコアってゲームを今アウルと・・・・・・」
ちなみに作者は3D酔いが酷いので、迷宮ミッション後は死にそうになります。
「ステラもやる・・・・・・」
「え?でも、宿題は?」
「・・・・・・ぽーい」
ステラはノートを放り投げた。
「だ、ダメだよステラ!ただでさえ素行がマズイ事になってるんだから、せめて宿題くらいはきちんとやらないと・・・・・・」
学外でまで暴れるので、今やステラはあらゆる所でブラックリストに載せられていた。当然苦情は学校にも来るので、
ヘタに教員の心証を悪くしたらなんのかんの理由を付けられて退学させられてしまうかもしれないのだ。てゆーか
退学させられてない今が奇跡。
「でも、シンと遊びたい・・・・・・」
「うーん・・・・・・じゃあ一時間だけだよ。その後はちゃんと宿題やるんだよ?」
「うぇ〜い」
「はい」とも「いいえ」ともつかないような返事をして、ステラはとてとてと投げたノートを拾いに行った。

「・・・・・・なんか、手のかかる妹みたいだな」
割としっかりしているマユとは対照的なステラ。色々と手を焼かされる事もあるが、こういう妹も悪くないよなとシンは思った。
もちろんNo,1妹は依然変わらずマユなのだが、基本的に妹は何人いても困らないのだ。
ともあれシンは、ここ『ネオの湯』で平穏な時間を過ごしていた。
平日は学校に行って、帰ったらスティング、アウル、ステラと遊ぶ。たまにネオの代わりに番台に立って、せくしぃなお姉さん
から「あらカワイイ子・・・・・・お姉さんここで着替えちゃおうかしら」とか誘惑されたりもする(もちろんマユ以外の女性からの
呪文や能力の対象にならないシンはそんな誘惑には乗らないのだが)。
まさに年相応の、くだらないストレスや消耗とは無縁な生活がここにはあった。
(でも、何か忘れているような・・・・・・)
だけど頭の片隅に何かが引っ掛かっている。何かとても大事な事を忘れているような、そんな感覚。
と、さっきまでつまらないバラエティ(ウエンツ英士が出ていそうな)を映していたテレビが、突如仏頂面したニュースキャスター
の顔に切り替わる。
『ここで緊急ニュースです。本日地球連合軍がプラントに進軍を開始しました』
「おいおい、またかよ・・・・・・」
半ば呆れ気味にネオが呟く。
しかしシンは違った。キャスターの言葉を聞いた途端、頭の片隅で引っ掛かっていたものが瞬く間に頭全土を支配した。
「そ、そうだ・・・・・・俺は・・・・・・・・・・・・ザフトの軍人だったんだッ!!」
すっかり忘れていた。
「平穏な生活の中でぬくぬくしていたけど、実は俺ザフトの軍人じゃん!つーか学校に通ってるしいつの間にか!
アレ?そういやデスティニーガンダムどうしたっけ?いやとにかくヤバイ!!」
頭を抱えながらその場に屈み込むシン。タリアに怒られるとか軍法会議にかけられるとかそんなチャチなものではなく、
もっと恐ろしい自分のアホさ加減に。
「シン・・・・・・?」
「ああステラ聞いてくれ。俺は実はザフトの軍人だったんだ」
「・・・・・・?」
何を言っているのか分からない、といった風に首を傾げるステラ。ちなみに言葉の意味が分からないのではなく、
何を今更的な感じである。
「おいシン!電話だぞ!」
今時レアな黒電話の受話器を片手に、スティングが隣りの部屋から顔を覗かせた。
「ってどうしたんだ?顔が紫色だぞ?」
「い、いや、気にしないでくれ・・・・・・ところでスティング、俺がザフトの軍人だって知ってた?」
「はぁ?何を今更。当たり前だろそんなの」
「だよね・・・・・・ところで電話は誰から?」
「オーブの姫さんからだ」
「姫さん?なんでまた・・・・・・あ、お電話代わりました」
『シンか!?』
やたらと大きい声に、思わずシンは受話器を遠ざけた。
「はい、シン・アスカです。父がいつも世話になってます」
前にも言ったが、ここのシンはカガリを恨んではいません。
『そうか、よく分からん!人の名前を覚えるのは苦手でな!』
言うまでもない事だが、『物事を覚えるのが』の間違いである。
「それより一体なんの用なんですか?」
『ああ!この前おまえから預かったデスティニーの整備が終わったからそれを伝えるために電話したんだ!』

「え・・・・・・あー・・・・・・あぁ!はいはい!そういや預けましたよね!」
そう――連合を撃退した後シンは、その整備を頼むためにモルゲンレーテにデスティニーを預けたのだった。
『ひょっとして、忘れていたのか?』
「い、いえいえ!そんな事は断じてないです!」
『そ、そうか。じゃあすぐに受け取りに来てくれ。場所はマスドライバーだ』
「え?モルゲンレーテじゃないんですか?」
『上がるんだろ?宇宙に』
「あ・・・・・・」
そうだ。今プラントは連合に攻め入られようとしている。だったら自分はすぐに宇宙に上がらなければならないし、そして
宇宙に上がるためにはオーブのマスドライバーが不可欠だ。
その事を察して、カガリはデスティニーをマスドライバーに設置してくれたのだ。
「ありがとうございます!すぐにそっちに向かいます!!」
『ああ、待ってるぞ!!』
電話が切れる。受話器を置いてシンは、ネオのいる番台に向かった。
「ネオさん!」
「おっ?もしかして風呂のお誘いか?」
「違います。ちょっと宇宙に上がってきますんで、みんなによろしく言っておいてください!」
「へ?」
「それじゃ!お世話になりました!!」
思いっきり頭を下げ、シンは『ネオの湯』から弾丸の如く飛び出して行った。

ベルリン市街。
「へぇ〜・・・・・・レイ・ユウキがセリエAに移籍ねぇ〜」
「ゲンさん、新聞を読みながら弁当を食べるのは行儀悪いですよ」
昼休み。キラを含む作業員達は、トンカツ弁当を食べながら体を休めていた。
「おっ、すまねぇすまねぇ。いい加減直さねーとな、この癖も。こないだも娘に――」
いつもと何ら変わらない食事の風景だった。一つのシートに5、6人で座り、お茶の入ったヤカンを囲んで他愛のない
お喋りをしながら食事をする。
この瞬間こそまさに、キラが望んだ平穏な生活だった。キラ・ヤマトは静かに暮らしたいのだ。
(ああ、平和だなぁ・・・・・・)
本日も世は事も無し・・・・・・そう思っていたキラだったが、それはとある男のセリフで打ち砕かれた。
「キラ様」
「ひぃっ――!?」
背後からの突然の声。驚き振り向くと、そこにはスーツを着た男が立っていた。
「も、モリタケさん!?」
モリタケ。ラクスのマネージャーであり、エターナルの操舵手を務める男である。いつもいつも気配を消しつつ背後から
声をかけてくるのでとても心臓に悪いお方だ。
「左様、モリタケにございます。ときにキラ様、不躾で申し訳ありませんが一つあなた様にお願いしたい事が・・・・・・」
そう言うとモリタケはゲンさんの新聞を拾い上げ、とある記事をキラに見せた。
「・・・・・・風俗が何か?」
ゲンさんが読んでいたのは下品と名高いスポーツ新聞だった。エロ記事目当てに電車の網棚からこっそり持ち帰る中学生も、
インターネットが普及した現代では存在しないんでしょうねぇ。
「違います。その下、この10平方センチメートルのセコイ記事にございます」
AVの宣伝欄よりも扱いの小さい記事。しかしそのセコイ記事は、キラの顔色を一変させた。

「な、なんで・・・・・・!」
「私にも分かりません。何故このような記事が風俗欄にあるのか・・・・・・」
「いや違くて。なんでラクスが襲われたのさ!?」
「それも分かりません。ですがラクス様が重体であるというのは事実。故にこうして馳せ参じた次第にございます」
「そ、そうですか・・・・・・」
記事をじっと見つめるキラ。じっと見ないと読み辛く、周囲の風俗店情報が勝手に目に入ってきてしまうからね。
べっ、別にショックを受けているわけじゃないんだからねっ!
「それで、僕に頼みたい事って?」
ラクスの救助は既に済んでいる。だとしたら・・・・・・襲撃者の始末?
「それをお願いしたいのはやまやまですが、それは暗殺チームに任せるとします」
「そんなんあるんスか・・・・・・冷遇して裏切られないようにしてくださいね・・・・・・」
実績がゼロなので既に冷遇されていたりする。
「それで、キラ様にお願いというのはですね・・・・・・」
モリタケが指をパチンと鳴らす。
すると、ビルの下から白いMSが飛び出してきた。
――ストライクフリーダムガンダム。それはキラの愛機であり、それは瓦礫を纏いつつ優雅に羽を広げていた。
「ラクス様のいるプラントを守って頂きたいのです。あなた様の愛機、ストライクフリーダムで」
「・・・・・・」
天使の姿を模したMSがキラに眼で語りかける――行 か な い か。
その眼を受け、キラは力強く言った。
「そこ・・・・・・直したばっかりなのにぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!」

そういうわけで、デスティニーとストフリはミネルバの元へとやってきたのだった。
『みんな、怪我はないか!?』
シンがミネルバのクルーに問う。
『ミネルバは無事よ』
『今までどこほっつき歩いてたのよ、シン!?』
『心配かけたな、ルナ!でももう大丈夫だ!俺か来たからにはすぐに終わらせてやる!!』
再会を喜び合うミネルバ組。一人忘れているような気もするが、たぶん気のせいである。
そしてもう一人の援軍であるキラは、手持ち無沙汰だった。
「なんか疎外感・・・・・・って、通信?」
入学早々一週間ほど病欠した中学生のような気分を味わっていたキラに、プラントから通信が送られてきた。
「誰だろ・・・・・・」
そう呟きつつ回線を開くと――
『キラ!』
「ひぃっ!?」
包帯でぐるぐる巻きにされたピンクがモニター一杯に映し出された。
『ああキラ・・・・・・わたくしのために宇宙の果て(プラント宙域)まで来てくださるなんて、やっぱりわたくし
愛されているのですね!』
両手をほっぺに添えつつグネグネするピンク。並の人間なら失心してもおかしくないくらい不気味だった。
「も、もしかして・・・・・・ラクス?」
『もぅ、キラったら!こんなプリティなピンク、わたくしことラクス・クライン以外の何者でもありませんわ♪』
「・・・・・・」
どう見ても西洋の妖怪以外の何者でもないのだが、それはさておき。

「元気そーっスね、ラクスさん・・・・・・」
ラクスは絶好調だった。
『そんな事ありませんわ。全身串刺しでわたくし死にかけたんですから』
実際本当に死にかけた。しかし今のラクスを見るにとてもそうは思えない。どちらかと言うと重傷を負って治療されたと言うよりも、
10月あたりに悪ふざけをしていそうな感じだった。ちなみにラクスは頭のてっぺんから爪先まで包帯で巻かれているが、
顔に包帯を巻く必要は全くない。
「そ、そう・・・・・・まぁなんにせよ、元気そうで良かったよ」
『まぁ!こんな所でプロポーズなんて、キラったら大胆ですのね♪』
「あ、ダメだ。脳がやられてら」
『まぁそれはともかくとして。キラ、どうかプラントを守ってください』
「守るって・・・・・・ええと・・・・・・あの二機から?」
『そうですわ。何か変な感じがしますけど、おそらくあの二機がわたくしを襲った者に違いありませんわ。そして
彼らこそ、ムルタ、ジブリールに続く第三のボスに違いありませんわ!・・・・・・たぶん』
「そうかもね・・・・・・なんかおかしな感じがするし」
ふと目を離すとまるで脳みそにぽっかり穴が空いたようにその存在が消えてしまう二機のMS。ラクスの言う通り、その二機
からは何か異質な気配が感じられた。
「ま、とにかくやってみるよ。だからラクスは安静にしてなよね」
『わたくしはいつでも絶好調ですわよ、キラ』
「そういう事にしておくよ」
それだけ言って通信を切り、キラはデスティニーと共にヴァサーゴ、アシュタロンに攻撃を仕掛けた。

ザフト軍総司令部。
キラとの通信を終えたラクスは、そのまま崩れるように倒れ込んだ。
「・・・・・・無理はいかんな、ラクス嬢」
「これくらい、平気ですわ・・・・・・」
痛む腕に力を入れて身を起こすラクス。クルーゼの手助けもあり、ラクスはどうにか車椅子に座る事が出来た。
いくらラクスでも、あの怪我を数日で完治させる事は出来ない。心配させじとキラの前では平気そうに振舞っていたものの、
やはり無理がたたって包帯に血が滲み出していた。
「衛兵!至急ラクス嬢に然るべき処置を!生死は問わん!」
「あれっ?わたくし始末される?」
「ふっ、冗談だよラクス嬢。キミが死んだら誰が目を離すとすぐに遊んでしまう議員を律するというのかね?」
「主犯格が言うセリフじゃありませんわよ、それ」
「なに、私だってTPOはわきまえているつもりだ。よもやこの場で遊ぼうなどとは思わんさ・・・・・・」
「おいクルーゼ!次おまえのターンだぞ!」
「ばっはっは!勝負はついたようなものだがな!」
遠くでいつもの面子が呼んでいた。
「・・・・・・お仲間が呼んでいますわよ」
「ま、逃げ出したい気持ちも分かるけどねぇ」
「7ターン目なのにGが2枚しか並んでいないからな!ばっはっは!」
「・・・・・・。などと意味不明な事を口走っており、動機は不明。近く二人を書類送検――」
「ときにクルーゼ様。その右手に持っている物はなんですか?」
「右手?なんの事だラクス嬢。私に右手などありはしないよ」
クルーゼは右手を素早く背中に隠した。
「・・・・・・どうして同じ手札にプロヴィデンスガンダムとシグーが入っているのですか?」
「ふっ、簡単な事だよラクス嬢・・・・・・3ターン目にシグー、5ターン目にプロヴィデンスだ」
「ガンダムウォーでのスライは初心者のする事ですわよ・・・・・・」
中には例外(青スライやサイクロプス隊)もありますが。
「ほう?そう言うからには強力なデッキを持っているのだろうな、ラクス嬢・・・・・・」
「当然ですわ」
そう言うとラクスは、懐(包帯)の中からデッキケースを取り出した。
「あなたの未熟さを教えて差し上げますわ・・・・・・わたくしの熱狂デッキで!」
「ぬぅっ・・・・・・!熱狂によって全COをパワーアップさせるデッキだと・・・・・・!これは手強いな・・・・・・」
と、クルーゼは言っていますが、割とどうしようもないデッキです、熱狂デッキ。
「あらあら・・・・・・怖気づきましたかですわ?」
「バカな事を言う・・・・・・こちらこそ目に物を見せてくれる!」
こうして、総司令部ではもう一つの戦争が始まったのでした。
ところでラクス、怪我は?

機動戦士阿部さんSEED DESTINY X
第三十話〜そもそもシグーをデッキに入れるセンス〜