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R-18_Abe-Seed_安部高和_07

Last-modified: 2007-12-27 (木) 10:19:08

ヴェサリウス、格納庫。
「よしっ完成だ」
阿部はわずか一日で、大気圏離脱用のブースターを完成させた。
「ほう・・・すごいものだな、阿部」
「よしてくれよクルーゼ。これくらいの事、自動車修理工にとっちゃ朝飯前なんだぜ?」
「そうか・・・では次のメカニック募集要項には自動車修理工経験者優遇とさせよう」
「そいつは嬉しいねぇ。で、いつ宇宙に上がるんだい?こいつはいつでも準備OKだぜ?俺と一緒でな」
「まぁそう急ぐな阿部。その前にやらねばならぬ事が山積みでな・・・」
「へぇ・・・」
「まずは散った部下を回収せねばならん。今もどこかで、アスランとディアッカとニコルは助けを
待っているだろうからな」
「それもそうだな。で、俺はどっちを回収すればいい?」
「いや、その前におまえにはやってもらいたい事がある」
「なんだい?」
「・・・・・・イザークだ」

 

ヴェサリウス、イザークの自室。
仲間を三人も失ったとあり、イザークは塞ぎ込んでいた。
「くそっ、くそぉっ・・・」
同じ釜の飯を食った仲間・・・それが一気に三人も失われ、イザークは飯も
喉を通らない状態だった。
イザークはアスランらの消息が絶ったと聞いた時から、ずっと布団にくるまっていた。
「イザーク、阿部だ。入るよ」
と、阿部がやってきた。阿部はイザークの返事を待たずに部屋に入り、ベッドに腰かけた。
「どうしちゃったのよイザーク。らしくないんじゃないの?」
「うるさい!放っておけ!!」
「やれやれ・・・」
阿部はおもむろに立ち上がり、イザークから布団を強引に引き剥がした。
「な、何をする!?」
「イザーク。・・・おまえはおまじないを信じるか?」
「おまじない・・・だと?」
おまじない、とは言うまでもなく女子高生の間で大人気なアレである。
好きな人の名前を書いた消しゴムを使い切ると想いが成就するというものから
ライバルの名前を書いた消しゴムをバラバラに切り刻んで燃やすとライバルが消えるといった
一見するとキチ○イじみた行為まで、その種類は実に様々だ。
そしてイザークはお守り集めが趣味であるという裏設定どおり、おまじないの類も好んでいた。
「元気が出るおまじない・・・・・・教えてやろうか?」
「なんだと・・・?」
「まぁ別に信じないならそれでいい。いつまでもそうしてイジけているといい」
「・・・!?阿部、貴様!!貴様には俺がどんな気持ちでいるのか理解できんのだ!!」
「理解したくもないねぇそんなの。ずっとそうしているなんて、俺には理解出来ないよ」
「貴様・・・!・・・いいだろう阿部。そのおまじないとやらを教えろ!!」
「ひゅう♪そうこなくっちゃ。じゃあまずな、うつ伏せになって寝るんだ」
「こ、こうか・・・?」
「そうそう。そして手の平を地面に付けて、その後に体が平行になるように膝を立てるんだ」
「こ、こうだな・・・?」
「ひゅう♪上手じゃないの」
阿部の指示されたとおり、イザークは姿勢を取った。
――その姿は、まさしく四つん這いだった。
「で、次はどうすればいい?」
「力を抜くんだ。そう、ゆっくりと・・・全てに身を任せるように・・・」
「こ、こうか・・・・・・って、なんかオカシクないかってかどうしておまえは全裸――」
「フンッッッ!!!」
「ア ッ ー !!!」
イザークの嬌声が、部屋に響き渡った。

 

『阿部。アスランの居場所が分かった。至急迎えに行ってくれ』
クルーゼからの放送を聞いて阿部はベッドから立ち上がった。
イザークはうつ伏せになり、ぐったりしていた。
「じゃ、行ってくるよ。なかなか良い締め付けだったぜイザーク」
そう言って阿部はイザークの部屋を出た。
残されたイザーク。彼はシーツを握りしめ、涙を流しながらこう呟いた。
「こ、この俺が・・・・・・五秒でイかされただと・・・・・・!?」
悔し涙が、シーツに零れた。

 

ヴェサリウス、艦内通路。
軍服を身に纏った阿部は、壁に寄りかかってこちらを睨むイザークと出会った。
「アスランが見つかったそうだな」
「ああ。ちょいと迎えに行ってくる」
そう言ってイザークの前を通り過ぎる阿部。
そして数歩進んだ後、背中越しにイザークの声が聞こえた。

 

「今度は俺がイかせてやる。・・・だからそれまで、誰にもイかされるんじゃないぞ!」

 

オーブ市街、オーブ救急病院。
そこには、包帯でぐるぐる巻きにされたアスランが眠っていた。
「Zzz・・・」
ストライクと一騎討ちをしたあの日――
ストライクのミナゴロシコードによる自爆をモロに受け、アスランは重傷を負いつつ吹き飛ばされた。
そして駆けつけたオーブ救急隊員に発見され、この救急病院に搬送されたのだ。
「起きろ、このバカ!」
「あだっ!?」
不意に頭を殴られ、アスランは目を覚ました。包帯に血が滲んだ。
「・・・?ここは・・・」
「オーブの病院だ。おまえ、死にかけてたんだぞ?」
ベッドの横に、女が一人座っていた。
「お、おまえは・・・」
不時着した孤島で出会った少女。少女というにはいささか野生化が進んでいるが、
とにかくその孤島で出会った少女だった。
「起きたか。まったく、一体なにをすればそんなボロボロに――」
「てめぇコノヤロウこの前のカレー泥棒だな!?」
がばっと起き上がるアスラン。体の節々が悲鳴を上げた。
「ぐ、お、お、お、お、・・・」
「カレー泥棒?何を言っているんだ?私はオーブの姫だ、そんな事
するはずないだろう?」
カガリ様の脳みそは都合の悪い事をキレーサッパリ忘れてくれる素敵ブレインだった。
「それより何があったんだ?我がオーブの近くでキノコ雲なんて昇らせて・・・」
「キノコ・・・・・・そうだ、キラ!!」
再びがばっと跳ね起きるアスラン。体の節々が悶絶した。
「ぐ、お、お、お、お、・・・」
「キラだって!?おまえ、キラを知っているのか!?」
「キラ・・・・・・あいつは、俺の・・・」
「分かったぞ!おまえ、キラの友達なんだな!?」
「黙れ!おまえは何も分かっちゃいない!!キラと俺はな、友達という垣根を易々と越えた
仲なんだ!そう!お互いは二人で一人、どちらかが欠けても存在し得ないプラトニックな
関係なんだ!それはもはや純愛を超えた、世界にたった二人のアダムとアダムなんだ!!」
「そうか!すごいな!!」
素直に感心するカガリ様。もちろん、カガリにはアスランの言っている事は理解出来ていない。
本来学校に行かなければならない時期に砂漠でレジスタンスなどしていたため、カガリは
台形の面積を求める事が出来ないくらいのお馬鹿さんだった。

 

「そうだろう!分かったら早くキラを出せ!!」
「なんだと!?あいつは注文したら出てくるのか!?」
「出てくるわけあるか!!おまえが隠してるんだろ!いいから出せ!!」
「なんだと!?私はキラを隠していたのか!?」
「そうだ!そうに決まっている!!そうでなければキラが俺の前に出てこないはずがない!!」
「分かった!ちょっとキサカに訊いてみる!!」
ピッポッパ
「・・・あー、キサカか?私だ、カガリだ。ところでおまえに訊きたいのだが、私はどこにキラを
隠したんだ?・・・・・・いや、『ハァ?』じゃなくて。キラは私が隠したらしいんだ・・・。・・・なに?
キラは行方不明?そんなバカな!?だって私が隠したんだぞ!?いや、『ハァ?』じゃなくて。

 

ああ、ああ。・・・そういう事か、分かった。じゃあな」
ピッ
「すまん。どうやらキラを失くしてしまったみたいだ」
「すまんで済むかこのバカ!!」
三度体を跳ね起こすアスラン。体の節々の感覚がなくなってきた。
「あのー、アスランさん?」
と、そこで看護婦さんが入ってきた。
「はい、なんでしょう?」
「あの・・・・・・全裸の男性が迎えに来ているのですが・・・」
「阿部か・・・・・・分かった。すぐに行くと伝えてくれ」
「あの・・・・・・警察に連絡してもよろしいでしょうか?」
「いや、よしてやってくれ。あれがあいつの正装なんだ」
「はぁ・・・じゃあすぐに来てください。お年寄りの方とかが心臓発作を引き起こしていますので」
「了解、すぐに行く」
軋む体を持ち上げて、アスランは病室から出た。

 

「お、来た来た・・・・・・なんだ、酷い格好じゃないの」
ザフト製のヘリコプターの前で、阿部は立っていた。着てきたはずの軍服は、ヘリの中で
脱いでしまったようだ。
「そう言うなよ阿部・・・これでも軽い方なんだぞ?」
「そうかい。んじゃあさっさと乗りなよ。でないと患者をみんな食っちまいそうだ」
「さすがにまた騒ぎを起こすのは勘弁してほしいな」
「そうだろうと思って我慢してたんだ」
とは言われたものの、アスランは茂みの中に倒れる男性の姿を見逃さなかった。
「おい、おまえ!」
すると、病院からカガリが出てきた。
「うわ女だ」
「なんだ・・・おまえに用はないぞ消えろ」
「これを見ろ!!」
そう言ってカガリがポケットから出したのは、エメラルド色の石だった。
「それは・・・?」
「これはハウメアの守り石だ!危なっかしい奴が持つと効果があるらしいぞ!」
「・・・・・・それを、俺に?」
「んなワケあるか!単に見せびらかしたいだけだ!!」
「・・・・・・。ちょっと貸してみ?」
「ああ、いいぞ。汚すなよ?」
「ほい、阿部」
「ていっ」
ハウメアの守り石は、強肩阿部の手によって海の彼方へ投げ捨てられた。
「あ、あぁ〜っ!!おまえ、なんて事してくれるんだ!?」
「黙れ。さ、帰ろうか阿部」
「待て、帰さんぞ!!弁償しろ!!」
「・・・・・・やれやれ」
そう言うとアスランは、足元に落ちていた小石を拾った。
「ほら、これやるよ」
「なんだこれは!?ただの石じゃないか!!」
「バカだなぁ。いいか?これは世界で二つとない形をした貴重な石なんだ。分かるか?
世界にたった一つだけだ。おまえだって、これと全く同じ形同じ大きさをした石は見たことないだろう?」
「・・・・・・。おお、確かにそうだ!!」
「それをおまえにやろうというんだ。怒られる筋合いはないよな?」
「ああ!ありがとうアスラン!おまえ良い奴だな!!」
「そうか。じゃあ治療費を代わりに払っておいてくれよな」
「ああ、分かった!アスハの名にかけて必ず払ってやる!!」
そして、阿部とアスランを乗せたヘリは病院から飛び去った。

 

後日、アスハ邸――
「おいキサカ、これを見ろ!!これはな、世界に二つとない――」
そこには、カガリのあまりのアホっぷりに涙するキサカの姿があったという。

 

アラスカ基地に到着したアークエンジェルを待っていたのは軍本部の査問会であった。

 

「アークエンジェル艦長、マリュー・ラミアスです。」
「同じく副長のナタル・バジルールです。」
「ムウ・ラ・フラガであります。」

 

「軍政部のウィリアム・サザーランドだ。まあ座りたまえ。」
「まずは、よくぞ、ここまでたどり着いたな。
 道中の記録を見るに・・・まあ色々あったそうじゃないか。色々とな。」
サザーランド大佐はマリュー達を見回しながらフラガと目が合った。
フラガのウィンクに頬を緩める。(ふむ・・・エンデュミオンの鷹プレイもいいかもしれん・・・)

 

「それにしても・・・だ、よくこのような少人数の兵と1機のMS、1機のMAだけで、
 ここまで来れたものだな。」
「ハッ!それに関しては、彼・・・キラ・ヤマト少年の力があってこその・・・」

 

「その少年・・・今はMIAだそうだが?」
「・・・はい。」
うつむくマリュー。キラはオーブ付近での戦闘を最後に、MIAとなっていた。

 

「しかし、コーディネイターの少年が動かしていたという事ですが、ここに来るまでにMIAと
 なったのは不幸中の幸いですな。」
サザーランドの隣の連合士官が呟く。
「ああ、全くだ。」

 

「まあ、色々とあるだろうが、ひとまず体を休ませたまえ。今まで戦闘の連続だったのだろう?
 君達に関する事項は後日通達する。」
これに関してはマリュー達も喜んだ。ノイマン以下、一般兵や
ミリアリアら、民間人達も相当に疲労が溜まっていたからである。
無論、その「疲労」の中には、あの「インモラルガンダム」の出来事も相当に含まれていた。

 

「ところで、フラガ大尉?後で私の部屋に来てほしいのだが。」
「ウヒョー!まかせな大佐!」
意気投合する二人を前に頭と肩を落とした二人の女性士官は部屋を出て行った。

 

プラントの一角にある、謎の敷地。
「う、う〜ん・・・」
呻き声と共に、キラは目を覚ました。
「・・・・・・ここは?」
薄っすらと目を開けると、キラは自分が酷く趣味のよろしくないベッドに
寝かされている事に気付いた。
「ここはプラントですわ、キラ様」
不意に横から声が聞こえた。
「げ」
声の持ち主はラクス・クライン。キラにとってはあまり会いたくないピンクだった。
「『げ』だなんてキラ様・・・照れ隠しにしてもあんまりな言い様ですわ♪
ツンデレも過ぎると誤解を与えてしまいますわよ?」
「・・・・・・そーっすか」
相変わらずの脳みそお花畑に、キラはこれが夢であってくれと心の中で願った。
だが夢ではない。現実は非常である。
「で、ピンクさん。ここどこ?」
「わたくしの名前、もうお忘れになったのですか?」
「・・・・・・。ラスクさん、ここはどこですか?」
「そんなサクサクした名前ではありません。ラクスですわ」
「・・・・・・ラクスさん。ここどこ?」
「ここはプラントですよ、キラ・ヤマトくん」
ラクスの代わりに、今しがたこの場に現れた長髪オールバックの男が答えた。
「あ・・・あなたは?」
「マルキオ導師、と人は呼んでいます。まぁ、単なる世捨て人ですよ・・・」
「マルキ夫さん、ですか・・・」
そう語るマルキオの目は固く閉じられていた。まるで瞳は、その機能を失っているかのように。
「ああ、この目ですか?いやお恥ずかしい話なのですが、ママレモンを誤って目に入れて
しまった時から私は光を失ってしまいましてね・・・」
「そうですか・・・スゴイんですね、ママレモン・・・」
「そう心配する事はありませんわ、キラ様。マルキオ様は本来の目の代わりに心の眼

 

邪気眼を持っておられますから、生活に不自由はないのですよ?」
「心眼ですよ、ラクスさん」
「あらあら、わたくしとした事が。お茶目さんですわね♪」
ペロっと舌を出しながら、コツンと自分の頭を軽く叩くラクス。キラの胸に殺意が沸いた。
「・・・で、どうして僕はこんな所にいるんですか?」
「あなたはオーブの孤島で倒れていたのですよ」
「え・・・?」
――オーブの孤島で、倒れていた。
キラの頭に、あの日の出来事が蘇った。

 

「思い出しましたか?」
「そうだった・・・僕はストライクを自爆させて・・・。そうだ!あいつは!?アスランは!?」
「その事でしたら心配はいりませんわ、キラ様」
「じゃ、じゃあ!」
「ええ。アスランは生きておりますわ」
「・・・・・・マジかよ」
キラの胸に暗雲が立ち込めた。
あの至近距離でミナゴロシコードによる自爆を受けてなお、アスランは生きている・・・
「あいつは不死身か・・・?」
「恋する男は強いものなのですよ、キラ様」
「限度ってモンがあるでしょ・・・」
「そんな事よりキラ様」
ラクスは佇まいを直し、キラを正面から見据えた。
「あなたはこれからどうなさるおつもりですか?」
「え・・・?」
これから、どうするか。
キラは寝惚けた頭をフル稼働して考えた。
「もしよろしければ、わたくしが新しい剣を――」
「この辺にハローワークってあります?」
「・・・はい?」
「いや、だってもうストライクないし。だったらもうプラントで働くしかないじゃない?」
「・・・・・・。もしよろしければわたくしが新しいMSを――」
「要らない」
ラクスの申し出をキラは速攻で断った。
新しいMSを受け取るという事は、それ即ち再びインモラルとまみえるという事――
そんなのはもう全身全霊を込めてノーサンキューだった。
「そうですか。では私が職を斡旋しましょう。さて、なら今日はキラくんの
歓迎会でも開くとしましょう・・・ふふ」
光を失ったはずの目を光らせて、マルキオは奥へ引っ込んだ。
「・・・・・・ロックオン、されましたわね」
「はい?ロックオン?」
「キラ様。マルキオ様の異名をご存知ですか?」
「異名・・・?」
異名というのは、エンデュミオンの鷹とか砂漠の虎とか紅海の鯱とか
そんな感じの、畏怖の対象となる者が付けられる二つ名の事である。
「彼の異名は『砂時計の捕食者』・・・狙った獲物は決して逃がしません」
「ええと・・・話が見えないんだけど」
「彼はノンケでも食ってしまわれる男、と言えば分かるでしょうか?」
「――!!??!!??」
ノンケでも食っちまう男・・・キラには覚えがありすぎた。

 

「それではわたくしは失礼いたしますわ。どうぞマルキオ様と二人っきりで
歓迎会をお楽しみください」
「ちょ!ちょ、ちょ、ちょ!」
そう言って去ろうとするラクスを、キラは引き止めた。
「・・・・・・。新しい剣、お受け取りになりますか?」
「そ、それは・・・」
キラは口ごもる。ここにいてはマルキオに食われるのは確定だとしても、
戦場であの男と再び対峙するのは憚られた。
「・・・・・・怖いのですね?」
「――!?」
「気持ちは分かりますわ。わたくしにも怖いものはありますから」
「ラクスさんが怖いものって・・・」
「自分の美貌と自分の才能と自分の魅力、ですわ」
「・・・・・・」
「で、乗るのですか?乗らないのですか?」
「・・・・・・」
キラは少し考えたあと、あるアイディアが閃いた。
「乗る、乗ります!キラ・ヤマトは新しいMSに乗ります!!」

 

ザフト軍、秘密の格納庫。
そこに連れてこられたキラは、しかし真っ暗で何も見えなかった。
「ここは・・・?」
「照明、オンですわ」
ラクスの声と同時に、格納庫に明かりが灯る。
その中心に、灰色のMSが浮かび上がった。
「これは・・・ガンダム!?」
「ZGMF-X10A フリーダムガンダム、ですわ」
「フリーダム、ガンダム・・・」
語感悪いなぁと思いつつ、キラはフリーダムと呼ばれたガンダムを見つめた。
「つい先日ロールアウトされたばかりの最新機ですわ」
「これを、僕に・・・」
「ええ。これはあなたが乗るのに相応しいMSですわ」
「ありがとうラクスさん!!」
そう言うやいなや、キラは素早くコクピットに駆け上がり、OSを立ち上げた。
「すごいやコレ・・・・・・ストライクの四倍のゲインがある・・・」
「ザフト脅威のメカニズム、ですわ」
「じゃあ早速発進します!」
PS装甲に電流が流れ、白く染まる。
「キラ・ヤマト、フリーダム行きます!!」
そして、キラはフリーダムと共に宇宙へ出た。

 

宇宙空間。
「さぁて、っと」
キラはシートの下から地図を取り出し、適当な箇所に印を付け始めた。
キラの閃いたアイディア・・・それは、この機体をタクシー代わりにしてどこかへ
逃げてしまおうというものだった。
「もう僕は戦いたくないんだ・・・」
そして、誰も知らない土地で一からやりなおす・・・それが、キラがフリーダムを受け取った真の理由だった。
『キラ様?聞こえますか、キラ様?』
と、不意にラクスからの通信。
「なんですか?僕は今忙しいんですけど」
『アークエンジェルは今アラスカにいます』
「それが何か?」
キラはアークエンジェルに戻るつもりは全くなかった。フラガ少佐がああなってしまった今、
アークエンジェルは危険地帯なのだ。
「僕はアークエンジェルに戻るつもりはありませんよ」
『そうですか・・・。あ、そうそう。一つ言い忘れていましたわ』
「なに?早くしてよね」
『そのフリーダム・・・実は盗品ですの』
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・は?」
『ですから、それは盗んだMSですのよ、キラ様』
「ちょ!でもコレ、あの格納庫に最初からあったように置いてあったじゃないか!
あそこはラクスさんの格納庫でしょ!?」
『単なる不法侵入ですわ』
「何やらかしてんスかあなたは!」
『あ、今ザフトの方々に盗みがバレましたわ。もうじきそちらにMSが向かわれると思います』
「ちょwww」
『お分かりですか、キラ様。そのMSはザフト製ですので連合には下れません。そして盗品
ですので、ザフトにもまた下れません。例え知らない土地に行ったとしても、そんなMSを
引っ下げてではすぐにバレてしまわれますわ。例え道中でそれを捨てられようとも、その
MSにはあなたの個人データがぎっしりと詰まっておりますので、すぐに身元が判明して
しまう事でしょう。あ、もちろん自爆機能なんてシャレたものは付いておりませんので』
「・・・・・・」
『連合にもザフトにも行けない・・・でしたらもう、行くべき場所は一つしかありませんよね?』
「ま、まさか・・・」
『そう、アークエンジェルですわ。あの艦は何かをやらかしたみたいで、今は連合とは決別
しています。盗品のMSが身を隠すには絶好かつ唯一の艦だと思いますわ』
「――!?」
――ハメられた。あのピンク、僕の目論見を最初から見破ってやがった・・・!
『それでキラ様、あなたはどうなさるおつもりですか?アークエンジェルに行きますか?
それとも、ザフトと連合を相手に孤軍奮闘をいたしますか?』
「――ああもう!分かったよ!!アークエンジェルに行けばいいんだろ!?」
『素直でとてもよろしいですわ。今度サインを差し上げますね♪』
「ちっくしょぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」

 

そしてキラは、不本意ながらも地球のアラスカへと針路を取った。

 

キラがフリーダムを受け取る数時間前、アークエンジェル。
アラスカへ向かうため、紅海をのんびりと航海していた。
「アーノルド。あとどのくらいだ?」
「あと30分弱で到着します、サー!!」
「そうか・・・」
ナタルはシートに深く座った。
今のところ敵の反応はない。あと30分、このまま何事も起こらないでくれと
ナタルは祈った。
何故なら、今この艦には主戦力となるMSが存在しないからである。
「ヤマト少尉・・・」
呟きながら、ナタルは懐から胃薬の瓶を取り出す。
キラが心底しんどそうな顔をしながら自分の胃薬を分けてくれと言ってきたのが、
随分と昔の事に感じられた。
「そういえばさ、ナタル〜」
心底気の抜けた声。実はおまえ単なる穀潰しなんじゃないかというその女性は、
一応この艦で一番偉い女性、マリュー・ラミアスだった。
「なんでしょう、艦長?」
「あのガングロくん、どうしてる?」
「ああ、彼ですか・・・」
ガングロくんとは、先日無様な投降劇を披露してくれたディアッカ・エルスマンの事だ。
「彼なら――」

 

アークエンジェル、捕虜の間。
どう見ても独房です本当にありがとうございましたなこの部屋の一室。
鉄格子の中で、ディアッカは膝を抱えながら隅っこでガクブルしていた。
「・・・・・・(ガクガクブルブル)」
ミリアリアに刺されそうになってから丸一日。ディアッカは心身共に憔悴していた。
〜回想〜
「おっさんじゃない・・・・・・良い男だ」
ミリアリアとフレイにぶち殺されそうになったところを、ディアッカはフラガに助けられた。
「危ないところだったな、少年」
「はぁ・・・どうも」
などと礼をいいつつ、ディアッカは言い知れぬ不安に襲われていた。
「あの・・・良い男さん」
「ムウ・ラ・フラガだ。ムウでいいぜ、兄弟!」
「・・・・・・フラガさん。もう大丈夫ですから、仕事に戻ってください」
「おいおい、つれない事言うなって。・・・・・・お楽しみは、これからなんだぜ?」
「いやっ、ほら俺捕虜っすから!捕虜は捕虜らしく独房にでもぶち込んでくださいって!」
「まぁまぁ。うちの捕虜の扱いは、少し特殊でな・・・」
そう言いながらディアッカに近付くフラガ。もちろん、その特殊な扱いはフラガが今勝手に
作ったものだ。
「ちょ、さっきよりやべぇww誰かボスケテwww」
「良い子だから、おとなしくしな・・・」
ぐっと身を寄せるフラガ。逃げようにも手足は縛られている。
まさに絶体絶命、風前の灯火。
しかしそこで、救世主が現れた。
「なにをしているのですか!」
軍医が戻ってきた。軍医は明らかにおかしな行動を取るフラガを一喝した。
「ちっ、邪魔が入ったか」
「た、助かったぜ・・・」
「フラガ少佐!!捕虜への暴行は重罪ですよ!?」
「あーあー、分かってるって。ちょっとしたスキンシップだよ。なぁ、少年?」
「・・・・・・」
ディアッカは何も言えなかった。
「フラガ少佐はお戻りください。あとは私がやりますから」
「いや、それがねぇ。艦長に頼まれててさ」
「何をですか?」
「捕虜の件だよ。俺に一任するってさ」
「・・・本当ですか?」
「ああ、もちろんだとも。このエンデュミオンの鷹、嘘はつかないぜ!」
当然嘘っぱちである。
「・・・そういう事でしたらお願いします」
「OK。さ、少年。まずはその忌々しい縄を外してやる」
そう言いながら、フラガは縛られたディアッカの手足を解いていく。
その途中でディアッカの体にいきり立ったフラガの暴君が何度も当たり、
ディアッカは泣きそうになった。
「さ、これで良しだ。じゃあ行こうぜ、少年!!」
「・・・・・・はい」
捕虜であるディアッカは逆らえない。
そのままディアッカは、フラガに連れられて医務室を出た。

 

「フンフンフフ〜ン♪」
「・・・・・・上機嫌っすね」
「そりゃあな。何せ・・・・・・うひひひひ」
嫌な笑いをするフラガ。
と、そこで天パの少年が駆け寄ってきた。
「フラガ少佐!!」
「おお、トールか。どうしたんだ?」
「あの・・・今日も操縦訓練に付き合ってもらえませんか?」
「それはスカイグラスパーのか?それとも・・・・・・おまえさんのか?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・俺の、です」
「そうか。しかしなぁ、俺は今・・・・・・ん?そうだ・・・」
フラガの妙案。
「いい事思いついたぞトール!!」
それは、ディアッカにトラウマを植え付ける事となった。

 

「フン!フンッ!!」
「ア ッ ー !」
フラガの自室。
そこでは、フラガとトールがベッドの上で繋がっていた。
「・・・・・・」
そしてディアッカは、その行為を見せ付けられていた。
「・・・・・・誰かタスケテ」
「そいっ!そいっ!!・・・よう少年!そろそろ欲しくなってきたんじゃないか!?」
「いいえ全く。早く帰してください」
「つれないねぇ・・・っそいっ!!」
「ア ッ ー !」
そして両者は絶頂を向かえ、トールの腸内にフラガの精液が流し込まれた。
「さぁ・・・お次はおまえさんの番だ」
「――!!??あ、あのさ、その前に飲み物なんてどうかな!?」
言うやいなや、ディアッカは冷蔵庫に駆け寄り、ペットボトルを取り出した。
「おう、気が利くなぁ。んじゃ、一本もらうぜ!」
そしてディアッカはペットボトルのキャップを空け、
――気付かれないように、その中にさっき医務室でくすねた睡眠薬を入れた。
「どうぞ」
「おう」
そして程無くしてフラガは眠りに落ち、ディアッカは部屋から脱出した。
〜回想終わり〜