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R-18_Abe-Seed_安部高和_14

Last-modified: 2007-12-27 (木) 10:28:52

インモラルが去った後。
ドミニオンは、不気味な静けさに包まれていた。
「エネルギーは・・・ダメか。通信機も壊れている・・・」
ここまで無茶な航行をしてきたので、エネルギーは切れていた。ムルタが来てからは
ロクな整備も行っていなかったので、救難信号を味方に送る事も出来なかった。もっとも、
今の連合軍はインモラルの所業により混乱していて、とても航行不能になった艦を救出
できる状態ではなかったのだが。
今のドミニオンは、宇宙に漂う棺桶と化していた。
仕方ない、とナタルは艦内放送用のマイクを取った。
「各員に告ぐ!動ける者は気絶した者を脱出艇に運べ!この艦を放棄する!」
そうクルーに告げて、ナタルは気絶したムルタを担ぎ上げた。
「ば、バジルールさん・・・」
「アルスター、おまえも手伝え。この艦を脱出するぞ」
「で、でも!どこに行くっていうんですか・・・?」
フレイの言葉に、ナタルはにっこりと笑って返した。
「決まっている。・・・・・・帰るんだ、アークエンジェルに」

 

インモラルがドミニオンを落とした時。
アークエンジェル、クサナギ、エターナルは、ようやく戦場に現れた。
「ほいご到着だ・・・・・・って、あらかた終わってるみたいだな」
各所で小競り合いはあるものの、趨勢はすでに決していた。
「・・・・・・そのようですわね」
そう呟くラクスの顔は、苦々しいものだった。
――計算外ですわ。まさか、あんなに早く核を準備出来るなんて・・・
「で、どうするラクス?俺達はもう必要ないみたいだぞ?」
「・・・・・・いいえ。ダコスタさん、マイクを貸していただけますか?」
ダコスタからマイクを受け取ったラクスは、同時に手元のスイッチを押した。
「・・・・・・皆様。わたくしはラクス・クラインです」
――ですが、まだアレがありますわ・・・

 

ザフト軍、総司令部。
宇宙に点在する全てのMS、MA、艦船に、ラクスの声が届いた。
『ラクス・クラインだと!?』
『ラクス様がどうしてあんな所に・・・』
ラクス・クラインといえば、フリーダム及びエターナルの窃盗犯だ。
しかし同時に彼女はプラント屈指のアイドル歌手。拿捕すべき窃盗犯だとはいえ、
彼女のファンは軍の中にも大勢いた。
『皆様。どうか刃をお納めください』
ラクスの演説が始まった。
同時に、エターナルの艦上部に映像が浮かび上がった。
『あ、あれは・・・・・・ラクス様!?』
それは立体映像だった。自己顕示欲が他者の数百倍はあるラクス様は、自身の姿を
エターナル上部に映し出させたのだ。
――これでわたくしの魅力にイってしまわれる方は倍率ドン、更に倍ですわ♪
戦場に自身の姿を浮かばせつつ演説をするラクス。
その様を、酷くイヤな感じで見ている男が一人いた。
「うわ女だ」
そう呟くと彼は、コンソールを操作し出した。

 

「何故わたくし達が争わなければならないのでしょう?わたくし達は同じ人間、手と手を取り合い――」
ラクスの演説は続く。心酔する者が数多くいる中、それを「どうだっていいさ」な感じで聞いている者もいた。
「・・・・・・へっくしっ!」
砂漠の虎ことアンドリュー・バルドフェルト、である。ついでにダコスタ君もね。
「隊長・・・」
「まぁ見てなって。もうじき動くさ・・・」
アンディがそう呟くと同時に、周囲の将兵が不審な動きを見せた。
「・・・・・・ほらな?」
「わたくしは――って、何事ですか?」
演説を中断し、ラクスは通信士に問うた。
「そ、それが・・・・・・」
「要領を得ませんわね。キラ!何があったのですか!?」
出撃させておいたキラに問うラクス。そしてキラからの返答に、ラクスは目を疑った。
「な゛っ――!?」
エターナル艦上部に映し出したラクスの映像は、全裸の良い男の映像に成り代わっていた。

 

「ひゅう♪我ながら上出来じゃないの」
やったのはもちろんこの男。不快極まりない映像を、阿部はコンソールの操作だけで自身の映像に
切り替えさせたのだ。
「自分の姿ながら・・・・・・うほっ、良い男」
己の姿に見惚れる阿部。そんな彼は、しかしある不穏な空気を察知した。
「この感じ・・・・・・良くないな」
そう呟くと、阿部はインモラルをプラントへ向かわせた。

 

最高評議会の議長であるパトリック・ザラは、将校にある命令を下していた。
「む、無茶です議長!アレは使用してはいけない兵器です!!」
「うるさいぞ!使わずして何が兵器か!?いいからそこをどけ!!」
将校を突き飛ばし、パトリックはパネルを操作した。
「・・・これぞコーディネーターの未来への、創世の光ぞ!!」

 

プラント周辺空域。
何も無い空間から突如現れた巨大なオブジェに、皆が目を疑った。
「あ、あれは・・・!?」
ミラージュコロイドを解いたそれは、デュエルの数十倍はある巨大なオブジェだった。
まるで漏斗のような形をしたそれこそ――
『・・・ジェネシス』
「た、隊長!知っておられるのですか!?」
『ああ・・・あれはなイザーク――』
――ザフト軍の最終兵器、ジェネシス。巨大なガンマ線レーザー砲であり、その姿が示すとおり・・・
大量虐殺兵器だった。
「そんな!そんな物がどうして今!?」
趨勢は既に決していた。もはや連合軍にプラントを攻撃する戦力はなく、あとは撤退を待つのみと
なっていたのだが・・・
『ナチュラルを滅ぼす気かも知れんな、パトリックは・・・』
「なんですって!?」
いち早く反応したのはアスラン。父の行おうとしている事に、アスランは耳を疑った。
『アスラン・・・』
「そんな・・・・・・父上が・・・」
ショックを隠しきれないアスラン。しかし、次の瞬間アスランの思考は切り替わった。
『みなさん!足付きが現れました!!』
『キラ!!!!』
ニコルの言葉を聞いたアスランは、ジェネシスそっちのけでAA――キラの元へ向かった。
『・・・・・・。パトリック・ザラ・・・不幸な父親だな・・・』
クルーゼはパトリックに同情した。
『各員!ジェネシスから距離を取れ!巻き込まれるぞ!!』

 

「よし、発射だ!!」
「待ってください!今撃ったら味方も巻き込む事になります!!」
「構わん!尊い犠牲として手厚く葬ってやる!!」
「議長!!」
将校の抗議もむなしく、ジェネシスはその発射ボタンを押された。

 

「艦長!!」
地球軍艦隊、とある戦艦。
突如現れ、そして速攻で放たれたジェネシスのガンマ線に、ブリッジは混乱の極みを見せていた。
「か、回避だ!あれを浴びたらぷく〜ってなってパーンってなる!!」
「ま、間に合いません!!」
「ぐおぉぉぉぉぉぉ!!」
断末魔を上げる艦長。
しかし、来ると思われた死の予兆『ぷく〜っ』は、いつまでたっても来なかった。
「ど、どうなって――」
「艦長!!」
「こ、今度はなんだ!!?」
「が、ガンマ線が・・・・・・・・・・・・集束していきます!!」

 

ジェネシス、正面。
そこに、インモラルはいた。
「これは、なかなか・・・」
放たれたガンマ線は、そこに立つインモラルに集束していった。
インモラルの発射を察知した阿部は、素早くインモラルをジェネシスに向かわせた。
そして彼はジェネシスの正面に背を向けて立ち――尻部の穴を開放した。
するとジェネシスより放たれたガンマ線は、不自然に集束してその穴・・・インモラルのアナルに
注ぎ込まれていった。
早い話が、ジェネシスはインモラルに吸収されていったのだ。
「――気持ち良いじゃないの」
そしてジェネシスの砲撃が終わり、全てを吸収し終えた阿部は恍惚の笑みを浮かべてこう呟いた。

 

「ふぅ・・・・・・腹の中がパンパンだぜ」