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R-18_Abe-SpecialEdition_安部高和_04

Last-modified: 2007-11-06 (火) 21:38:23

スペシャルエディションその4
〜ツインテールと良い男〜

プラント、市街。
「晩ご飯どうしようかなぁ〜」
ツインテールの少女メイリン・ホークは、そんな事を思いながらあてもなく歩いていた。
『そんな事』とは言葉通り今日の晩ご飯の事なのだが、主婦や一人暮らしの女性が考えるような「今日の献立
どうしようかしら?」ではなく、「今日は誰に奢らせようかなぁ?」という意味である。
メイリンはその容姿の通り、とにかく男にモテた。男に日照る事は決してなく、部屋の中は付き合った男達からの貢ぎ物で
一杯だった。今着ているおしゃれな服も、今付けている高そうなイヤリングもそうである。
そして今日もどの男に飯を奢らせようかと街を歩いていたのだが、困った事に好みの男性の姿は見受けられなかった。
一人で歩いている男性ならたくさんいるのだが、
――オタクボーイなんて御免よ、キモチワルイ。
な理由でスルーしていた。俺の胸に殺意が沸いた。
そしてそうこうしている内に時間は過ぎ、やがてオタクボーイの姿すら見られなくなった。
「・・・・・・まさか自腹でご飯を食べるというの?この私が?」
そんなのはプライドが許さなかった。一人寂しくご飯を食べるのは顔や体型が酷く残念な女だけ、この美しい私が一人で
ご飯を食べるなどあってはならない・・・・・・メイリンの心情である。該当する女性の胸に殺意が沸いた。
そうしてふらふら歩いていると、公園でベンチに座る一人の男が目に映った。
「・・・・・・あれでいいや」
おそらく二十代半ば。服装からはとてもお金の匂いはせず、そして顔は好みではなかったが、メイリンは仕方なく妥協した。
メイリンはベンチに近付き、そして男を惑わす魔性の笑顔を浮かべてその男にこう言った。
「隣り、いいですか?」
「断る」
「どうも・・・・・・・・・・・・え?」
腰を下ろそうとしたところでようやく、男の言葉の意味を理解した。
「えと、あの・・・・・・」
意味は理解したがその理由は理解できず、メイリンはしどろもどろ。
「失せろ」
更に追い討ち。
「・・・・・・」
メイリンは固まってしまった。今まで男に冷たい言葉を吐かれた事は一度としてなかったので、それも無理のない事だった。
――私にそんな態度を?
理解不能、理解不能。男は皆自分に跪くべき存在であり、自分を邪険に扱うなどあってはならない事。
故に彼は何か女性に対して不信感を持っているのだとメイリンは思い、それを解こうと彼の横に座った。
「私、メイリン・ホー――」
「フンッッ!!」
「きゃっ!?」
勝手に座ったのはまずかった。男はメイリンが座ると同時に立ち上がってベンチの端を持ち上げ、まるでドリフみたいに
メイリンをベンチからずり落とした。

「な、何を――」
「許可なく座るな外道が」
「げ、外道!?」
「失せろ」
そう言って男は再びベンチに座り、地面に座り込むメイリンには目もくれなかった。
「・・・・・・」
そんな男の横顔を見て、メイリンの心にある感情が沸々と沸きあがった。

ザフト軍基地、宿舎。
「見てらっしゃい、あの男・・・・・・!!」
ぷんぷんビキビキしながら、メイリンはクローゼットから洋服を引っ張り出した。
「どうしたのよメイリン、そんなに怒って」
そう話しかけたのは姉のルナマリア。赤服なのにメイリンと相部屋なのは、やはり姉妹だからだろう。
「どうもこうもないわよ。あの男、この私に冷たい態度をとって・・・・・・!」
「へぇ。珍しいわね、メイリンが男に冷たくされるなんて」
ルナマリアはメイリンが男にモテモテだという事を知っていた。メイリンの男遊びっぷりは姉の耳にもしっかりと届いており、
そしてそのせいで彼女は要らぬ苦労を強いられてきた。彼氏取られたとかあの娘生意気とか、本人に言えないような事は
全て姉に降りかかってきたのだ。ちなみに姉は全くモテません。全部妹に持ってかれてます。姉、完敗。
「必ず堕としてやるわ・・・・・・!」
復讐(?)に燃えるメイリン。服とアクセサリのコーディネートを必死に考えている。
その行為が、全宇宙全次元全世界を見渡しても他に類を見ない程の壮大な無駄な努力だとは、彼女は気付かなかった。

次の日、公園。
その男は昨日と同じベンチに座っていた。
「覚悟なさい・・・・・・!」
遠目にそれを確認して、メイリンは気合を入れた。
今日のメイリンの服装は、少し露出度の高いものだった。前に屈めば胸が見えちゃうんじゃない?みたいな。ウヒョー。
そしてベンチに近付き、声をかけた。
「こんにちは。また会い――」
「失せろ」
「・・・・・・」
歯牙にもかけぬご様子の男。だがここでくじけるメイリンではなかった。
メイリンはわざわざ男の前に立ち、そして――
「あ・・・・・・靴紐が・・・・・・」
胸がばっちり見えるように前屈みになった。普通の男ならば悶絶ものだ。
――ふふっ、これでイチコロね。
顔を赤くしてちらちらと胸を見る男に対して「やだっ!もう、どこ見てるんですか!?」と頬を膨らませて言うところまで
計算していたメイリン。

「邪魔だ」
「あふっ!?」
しかしその目論見は初っ端から打ち砕かれた。視線の代わりに蹴りが飛んで来たのだ。
吹っ飛ぶメイリン。尻餅をつきながら恨みがましい視線を送るも、蹴った男はまるで近くを飛んでいたハエを払ったかのような
感じで、メイリンには目もくれなかった。
「こ、この男・・・・・・!!」
憎悪を煮えたぎらせ、メイリンはその場を後にした。

次の日、公園。
「分かったわ。あの男はきっと特殊な性癖の持ち主なのよ」
今日のメイリンの服装は、見目麗しのメイド服だった。この服を着て「ご主人サマ☆」なんて言ったらどんな男だって
イチコロだウヒョー。まぁ公園でメイド服なんて浮きに浮きまくっているが、今のメイリンにはそんな事は問題ではなかった。
――今日こそ堕としてやる!
そしてまたベンチに座っている男に近付き、そしてこう言った。
「こんにちは、ご主人サ――」
「フンッッ!!」
「きゃんっ!?」
男から発せられた嫌悪の気に弾かれ、メイリンは盛大に吹っ飛んだ。
――い、今のはお姉ちゃんの剣気と同じ・・・・・・いや、それ以上!!
「じゃ、なくて。・・・・・・まだ諦めないわよ、私は!」

次の日、公園。
「もう最終手段を取るしかなさそうね・・・・・・!」
今日のメイリンの服装はいつもとは違った。
ボロボロの服に、ボロボロの靴。両親の借金で苦しむ娘のような格好だった。
今日の作戦は、要するに同情で気を惹こう、というものだった。可愛い少女の苦労話に心動かされない男はいない・・・・・・
メイリンはそう信じていた。
そして三度男の前に。そしてメイリン劇場が始まった。
「ああ、今日もお父さんはパチンコに。お母さんは病気だし、もう家にはお金がない・・・・・・」
設定:ギャンブル狂の父と病気の母、そして家計を支える健気な少女。
「お父さんから殴られた傷が痛い・・・・・・昨日は給料日だったけど、その給料ももうパッキーに替えられてるでしょう。お母さんの
入院費もまだ払えてないのに。お米も昨日底を尽いちゃったし、これからどうやって生活すればいいの・・・?」
そしてちらっと目を向けると、
「( ´_ゝ`)」
そこには、メイリン劇場になんの関心も示さない男の顔があった。

「ああもう、ムカツク〜!!」
服をベッドに叩きつけ、そう毒吐くメイリン。
また失敗。何をしても振り向かないあの男に、メイリンは苛立っていた。
「どうしたのよ一体。最近変よ?」
「どうもこうもないわよ!あの男、ちっとも私に振り向かないじゃない!どうなってるのよ!?」
ぷんぷんビキビキする妹を見て、ルナマリアはにま〜っと笑った。
「な、何よお姉ちゃん、その顔は・・・・・・」
「べっつにぃ。ただメイリンがちゃんとした恋をしてくれて、ちょっと嬉しくなっただけよ」

「恋?――な、何言ってるのよお姉ちゃん!なんであんな奴に私が・・・・・・」
「だってメイリン、いっつもその男の人の事ばかり考えてるじゃない。それって恋って言うんじゃないの?」
「ば・・・バカな事言わないでよ!私はあの男が嫌いなのよ!だからこうして――」
そこでメイリンは、己の矛盾に気付いた。
「嫌いな相手にそこまで熱くはならないわよねぇ〜?」
その矛盾を的確に指摘する姉マリア。
「そ、そんなんじゃないわよ。プライドの問題なんだから・・・・・・」
だがそんな事は認められない。自分が男に尽くすなどあってはならない事だ。
これはあくまでプライドの問題・・・・・・胸のモヤモヤに、メイリンはそう言い聞かせた。

次の日、公園。
「・・・・・・はぁ」
今日は普通のおめかしをしているメイリンは、深いため息をついた。
ああ言い聞かせたものの、やはり胸のモヤモヤは納得してくれなかった。
――私があんなのに恋するなんてあり得ないわ・・・・・・
あり得ないと思いつつも、想うはいつもあの男。
それはツナギを着たあの男に惹かれているという証拠なのだが、やはりメイリンは信じられなかった。
――お金なさそうだし、乱暴だし。誰があんな男・・・・・・
そしてベンチにやってきたのだが、今日は男の姿は見えなかった。
「いない、んだ」
明らかに沈んだ表情を浮かべるメイリン。
――って、なに残念そうにしてんのよ!別にいなきゃいないでいいじゃない!そうよ、あんな男に拘る必要なんて
これっぽっちも無いんだから!!
ベンチに座り、ぼーっと公園を眺めるメイリン。
ふとカップルが目に映り、そして気付かない内にその姿に自分とあの男を重ねている自分にはっとして、
メイリンはぶんぶんと頭を振った。
「・・・・・・バカみたい。帰ろ」
そして腰を上げたところで、男に声をかけられた。
「ねぇ、キミ一人?」
「――!?」
ツナギのあの男・・・・・・ではなかった。チャラチャラした服装の、金髪の青年だった。
「・・・・・・はい、まぁ」
「じゃあさじゃあさ、俺と遊ばない?」
「・・・・・・。いいわよ」
軽そうな青年だったが顔は好み。あの男の影を頭から消すという意味も込めて、メイリンはその男についていった。

「ちょっと!?何するんですか!?」
「なにって・・・・・・ナニだよ!」
さっきとは別の、人気の無い公園。
その公衆トイレに強引に連れ込まれたメイリンは、抗議の声を上げた。
「そ、そんな事をしてただで済むと思っているの!?」
「そんな事ってどんな事ぉ?」
「そ、それは・・・・・・」
明らかだが口には出せない。言ってしまえば認める事になりそうで怖かった。
「わ、私は軍人よ!?手を出したらどうなるか分かってるの!?」
「知らねー。でもまぁ、コレありゃどうとでもなるっしょ」
言って青年が取り出したのはデジカメ。
「告げ口したらどうなるか・・・・・・分かるよねぇ、軍人さん?」
「――!?」
バラしたら写真をばら撒く。そしてその写真とは自分のあられもない姿だと、すぐにメイリンは察した。
「じゃ、早速――」
「いや、こないでよ・・・・・・」
「ここまで来てやめられるかって〜の」
「だ、誰か・・・・・・誰か助けて!!」
「バーカ。ここには誰もいない――」
そう青年が言いかけた時、一人の男がトイレに入ってきた。
「うほっ」
「あ、あなたは――」
ツナギを着た良い男。
助けてと叫んだ時、メイリンの頭に真っ先に浮かんだ男だった。
そして次の瞬間、男の発した気によってメイリンはトイレの壁ごと吹き飛ばされた。
「いたた・・・・・・」
身を起こし半壊したトイレを見ると、そこには男の姿も青年の姿もなかった。
「・・・・・・助けにきて、くれた?」
そう呟いた瞬間、メイリンの胸の中にとても温かな感情が生まれた。
「・・・・・・」
これはもう認めざるを得ない。プライドも何も関係ない。どれだけ冷たくされようとも構わない。
――私は、あの男に恋をしている。

半壊したトイレ内。
「よう、無事だったか?」
「あ、あんた一体――」
「俺かい?俺は通りすがりの良い男さ。それより危なかったな。危うくあの女にレイプされるところだった」
「は、はぁ?いや、むしろ逆なんだけど・・・・・・」
「つっぱりたいお年頃、ってか?ンフフフフ、可愛いじゃないの」
「な、なんだよ気持ち悪ぃな!俺は帰るぜ!」
「いやいや、帰る必要はないさ。半壊しててもここはハッテン場、ヤるのに何の支障も無い」
「あ、あんたまさか・・・!?悪いけど、俺は男に興味ないんで」
「大丈夫だ。何せ俺はノンケでも問題なく喰える男だからな」
「いや俺が大丈夫じゃない――」
「男は度胸、なんでも試してみるモンさ!」
「いやちょやめア ッ ー !」
そんな行為が、メイリンの死角で行われていた。

そして休暇は終わり、メイリンは軍での日常に戻った。
「はぁ・・・・・・」
「どうしたのよメイリン、ため息なんかついて」
「な、なんでもないわよ別に・・・・・・」
「はっは〜ん?またあの男の事を考えているのね?」
「・・・・・・。悪かったわね」
「別に悪くないわよ。恋せよ少年少女達、ってね」
「お姉ちゃんオバサンくさい・・・・・・」
あの一件以来、メイリンは男遊びをやめた。
再びあの男に会う時まで綺麗な自分でいようと、メイリンは固く心に誓っていた。
それはメイリンが、一つ大人になった証だった――

スペシャルエディション 『ツインテールと良い男』
――完