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R-18_Abe-SpecialEdition_安部高和_05

Last-modified: 2007-11-06 (火) 21:38:31

スペシャルエディションその5
〜密着!アークエンジェル24時〜

みなさんこんにちは〜!ミーア・キャンベルで〜す!
今日のお仕事はなんと!あのアークエンジェルの密着取材なんですよ!
二度の大戦を潜り抜けたあのアークエンジェル、今日はその全てをお見せします!
それでは、張り切ってどうぞ!

AM5:30
いよいよ始まりました密着取材。生のアークエンジェルを見せたいという事で軍人さんの案内を断った私は、
とりあえず艦内を適当に歩き回る事にしました。
それにしても、眠い。果たしてこんな時間にクルーの人達は起きているんでしょうか?
「む?あなたは確か・・・・・・」
そう思いつつ艦内通路を歩いていると、黒髪ショートの女性と出会いました。
彼女の名前はナタル・バジルール。このアークエンジェルの副艦長さんです。
「おはようございます、ナタルさん。WKTKテレビからアークエンジェルの取材に来ました」
そう言って私はカメラを向けました。
「・・・・・・そう言えば今日だったな」
そう呟いたナタルさんは、なんだか少し緊張している様子。戦場を駆けた戦士も緊張するものなんですね。
「朝早いんですね。いつもこの時間に?」
「はい。本来なら軍人たるもの寝ずの番、24時間市民の安全を守らなければならないのですが、如何せん
人間は睡眠を取らねば生きられぬ生物。不眠というのは不可能なので、出来るだけ早く起床するように
心掛けております」
「すごいですね・・・・・・」
こんな感想しか言えませんでした。だってナタルさん、なんだか「軍人の鑑だ!」って感じがして、私みたいな
小市民が気軽に口を利いていいような人だとは思えなかったんですもの。
それでも私はレポーター。気合を入れて頑張ります!
「さすがはアークエンジェルの副艦長さんです!この分だと艦長や他のクルーさんもさぞやすごい方なんでしょうね!?」
「・・・・・・」
ナタルさんは黙ってしまいました。
「あの?ナタルさん?」
「・・・・・・はっ。いや、失礼。・・・・・・どうだろう、今日の取材はこれで終わりという事には出来ないものか?」
「あはははっ!もうナタルさんったら、冗談がお上手ですね!」
「はは、は・・・・・・割と本気なのだが」
「またまた。それじゃ、私は他を回ってきます。お仕事頑張ってくださいね!」
「あ、ああ。あなたも・・・・・・いや、あまり頑張らないでくれ・・・・・・」
ナタルさんの呟きは、悲愴を帯びていました。なんでだろ?

AM7:00
私はブリッジに上がりました。
そこには、既に席に着いている二人の男性の姿がありました。
ダリダ・ローラハ・チャンドラ鏡い気鵑函▲献礇奪ー・トノムラさんです。
「おはようございまーす!ミーア・キャンベルでーす!」
元気よく挨拶。
けれど、二人はモニターに釘付けで私の事に気付いてない様子。
果たしてモニターには何が映っているのか。こっそり覗いてみました。
「・・・・・・やった事があったら死亡?」
「「――!?」」
私の声に、強張った表情で振り返るお二人さん。
しかし私の顔を見た途端、その表情が弛緩しました。
「なんだ、バジルール二佐かと思った・・・・・・」
「どうも、ミーア・キャンベルです。ジャッキーさん、何見てるんですか?」
「これ?これはニュー速VIPって言って、まぁ一種の情報掲示板さ」
「そうなんですか〜。ダリダさんも一緒に?」
「うはwwwwアイドルktkrwwwwww」
「ktkr・・・?よ、よく分からないけど、これってやった事があったら死ぬんですか?」
「そうだお。ミーアちゃんも見てみるといいお」
よく分からないダリダさんの言葉遣いに困惑しながらも、私は言われた通りにその「やった事があったら死亡」
という情報掲示板を見てみました。
――『既に買った本をまた買ってしまう』
「・・・・・・。私、死にましたか?」
「本当に死ぬわけじゃないよ・・・・・・」
「うはwwwまた死亡www」
「そ、そうなんですか・・・・・・」
そして七回ほど死んだあたりで、私はここから出ようとしました。
「あ、ちょっと。ミーアちゃん、結局ここに何しにきたの?」
「WKTKテレビの取材です。ご協力ありがとうございました」
「・・・・・・」
「うはwwwwテラヤバスwwww」
死相が浮かんだ二人を尻目に、私はブリッジを後にしました。

AM8:30
次は食堂です。
軍人さんが普段何を食べているのか、気になりますよね?今日はその料理を徹底リポートしてみたいと思います!
「はい、お待ち」
私が頼んだのは、この艦オススメの大天使丼。ヨクワカラナイ素材で出来たヨクワカラナイ揚げ物がご飯の
上に乗っかっています。
「それではいただき・・・・・・うっ!?」
不意に悪臭。いや、これはむしろ死臭です。食堂にはあってはならない匂いが立ち込めてきました。
この料理からではない様子。匂いの方向を探ると、そこには一人の女性がいました。
「何見てんのよ」
赤い髪の女性です。名前はフレイ・アルスター。仕事不明のクルーさんでした。
そして同時に、このデススメルの発生源でもある女性です。鼻が90度ほど曲がりそうです。
「こ、こんにちは、ミーア・キャンベルです。WKTKテレビから取材に来ました」
「WKTKテレビって・・・・・・あのWKTKテレビ!?」
酷く驚いた様子のフレイさん。
「は、はい」
私の返事を聞くと、フレイさんはポーチから化粧道具を出してせっせとメイクを始めました。
「あ、あの・・・?」
「待たせたわね。さぁ、何でも訊いてちょうだい」
素人にしては上手なメイク。おそらくアイドルとしてもやっていけそうな顔立ちです。
この匂いさえなければ、の話ですけど。
「え、えっと・・・・・・普段は何をされているんですか?」
「癒し係よ」
「は?癒し?・・・・・・ごめんなさい、具体的にお願いします・・・・・・」
「もう、察しが悪いわね。要するに、私は一輪の花なのよ。私がいる事で艦のみんなの士気が上がる・・・OK?」
「は、はぁ・・・・・・」
ラフレシアも一輪って数えるんでしょうか?それ以前に癒されるどころか殺されそうなんですけど。この匂いに。
だけど他のクルーさん達はいたって普通。みんな慣れちゃったのか私がおかしいのか・・・どっちなんでしょう?
そ、それはともかく、本来の目的は料理のリポート。では早速、この大天使丼を食べてみたいと思います!
「ぱくっ!」
                   ※しばらくお待ちください※

AM11:30
お食事中の方、申し訳ありませんでした。
ただ一つ言える事は、軍人さんにとっては食事も精神修行だという事です。多くは語りません。
「・・・・・・おや?」
通路を歩いていると、デススメルフレイさんと眼鏡の少年――サイ・アーガイルさんが言い争いをしているのを発見しました。
すかさず私は物陰に隠れ、集音マイクで彼らの声を拾いました。こういうものも必要ですからね、番組には。
「どれどれ・・・・・・」
――嫌だって言ってるじゃない!
――そんな事言わずにさ、頼むよ!!
痴話喧嘩でしょうか?クルー同士の恋・・・・・・燃えるじゃないですか。
――何度言われたって嫌!
――この通りだ!頼む!!
おおっと、土下座です!一体何を頼んでいるのでしょうか!?
――頼む!性転換してくれ!!!
「・・・・・・」
ナニヲイッテイルノデショウカ、アノショウネンハ?
――君のその素敵スメル、女にしておくには勿体無いよ!だから頼む!男になってくれ!!
――変なMSに貫かれた時からゲイになったって聞いて喜んでたのに、なんでまだ私に拘るのよ!!
――君の匂いに惚れているんだ!!だから頼む!!チ○ポを生やしてくれ!!
――最ッ低!!死ね!!
フレイさんはサイくんを思いっきり蹴っ飛ばし、どこかへ行ってしまいました。
――ああ、待ってくれよう!じゃあせめて使用済みナプキンだけでもくれよぅ!!
「・・・・・・」
聞かなければよかったと、心から思いました。

PM2:00
「あれ?あなた確か・・・・・・ミーアさん?」
レクリエーションルームに入ると、一人の女性がソファーに座って本を読んでいました。
マリュー・ラミアス。なんとこの艦の艦長さんです!!わおっ!
「初めまして!WKTKテレビから取材に来たミーア・キャンベルです!」
ついつい力が入ってしまいました。だって艦長さんですよ!このアークエンジェルの!!
「どーも。で、何か用?」
「はい!あの、マリューさんは普段どんな事をしているんですか!?」
「そうねぇ・・・・・・マッサージチェアに座って漫画読んでるくらいかしらね?」
「いや、休憩時間の話じゃなくて、仕事中のお話を・・・・・・」
「ああそれ?それならみんなナタルに任せてるから」
「・・・・・・はい?」
「だって私技術仕官だもの。艦長の仕事なんて分からないわ」
「・・・・・・」
私の中で何かがガラガラと音をたてて崩れていきました。
「え、えっと・・・・・・前大戦での活躍は聞いていますが、やはり作戦を立案したのはマリューさんですよね?」
「ナタルじゃない?私ほとんど寝てたし。あー、今日も昼まで寝てたから体が・・・・・・」
そう言って体をほぐし始めるマリューさん。その様子は、寝すぎて疲れている人間のそれと全く同じでした。
「・・・・・・失礼します」
これ以上は見てられませんでした。

PM4:30
朝のテンションはどこかへ吹き飛び、とてもだらけた様子で艦内を歩いていると、また口論の場に出くわしました。
さっきのサイ君と、天パの少年――トール・ケーニヒさん。
やめときゃいいのに私は、また物陰に隠れて集音マイクで声を拾いました。
――なぁいいだろ?一回くらいしてくれてもさ。
――・・・・・・
ナニカを求めるサイ君に対し、トール君は押し黙っています。
――なんとか言えってトール!
――おまえはそれでいいのか?
――な、なに?
――俺は匂いのしない普通の男だ。それでもおまえは俺を抱くというのか?
――そ、それは・・・・・・
――おまえのポリシーはそんなものだったのかと訊いているんだ!!
――・・・・・・!?
――いいかサイ。ここでおまえを抱くのは簡単だ。だがな、そんな俺に喜々として抱かれるおまえを俺は見たくない。
――トール・・・・・・
――おまえはおまえの目指す匂いをひたすらに追い求めろ。おまえは俺なんかで足踏みしていい男じゃない。
――・・・・・・目が覚めたよトール。そうだよな、俺にはこの世全ての悪臭を求める義務がある。
――気付いてくれたか。それでこそ俺の最愛の友だ。
――ありがとうトール。そして願うよ。おまえが再びフラガさんと交われる日を。
――嬉しいよサイ。どうだろう?これからベッドで友情を深めないか?
――ああ!望むところだ!!
「結局やるんかい・・・・・・」
私はこの時、ナタルさんの言ったようにあの場で取材をやめておけばと心から思いました。

PM6:00
帰ります。
もう嫌ですこんな艦。ごめんなさいプロデューサーさん、もう限界です。
「・・・・・・あ」
出口に向かう途中、変な頭をした少年と出会いました。
最後に彼に話を訊いて、もう終わりにしたいと思います。
「こんばんは。カズイ・バスカークさん、ですよね?」
「フヒヒヒヒ・・・・・・」
「・・・・・・え、えっと、普段はどんなお仕事を――」
「フヒヒヒヒ・・・・・・」
「・・・・・・」
最後は話すら出来ませんでした。

後日。
「ど、どうでしょうか・・・・・・?」
「こりゃダメだね、とても放送できない。ボツ」
「・・・・・・ですよね」
私が精神をすり減らして行った取材は、めでたくボツになりましたとさ。

スペシャルエディション 『密着!アークエンジェル24時』
――完