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SCA-SEED_GSCI ◆2nhjas48dA氏_第46話

Last-modified: 2007-11-30 (金) 19:42:09

「航路算出、遅いぞ! 何をしている!」
 AAの艦長の怒声がブリッジに響き渡る。
「しかし! 後方を除く全周囲が高密度のデブリ海では、回頭もままならず……」
「多少壊れても構わん! 前回の戦闘で破損した特装砲は、既に撤去してあるのだ!」
『やぁ、小官の突撃がお役に立ったようで、光栄です』
「褒めてなどおらんぞ、トライン艦長!」
 モニター越しに、照れて後頭部に手をやるアーサーにも叫びつつ制帽のズレを直した時、艦長の手元で電子音が上がる。
ブリッジクルーを介さず、直接自分の席に通信が送られてきたのだ。トラブルの気配に軽く舌打ちし、データを呼び出す。
ファクトリー内部からの物で、施設に使われていた部品の調査結果だ。
「……なに? まさか……」
 先程と打って変わって、力の入らない掠れ声が艦長の口から漏れた。普段の彼から想像できないその声が、オペレーターの数人を振り返らせる。
川音と歯車の音の中で熟睡している水車の番人が、静寂で目覚めるようなものだ。
「艦長……?」
 不安げな彼ら彼女らの表情を見て取った艦長は、慌てて腹に力を込めて正面のスクリーンを睨んだ。
自分は指揮官なのだ。どんな理由であれ、うろたえる姿を見られてはならない。
「仕事をしろ、諸君! 一刻も早く航路を見つけるのだ!」
「ジュール隊が先行し、データを収集しています。バスターノワールとイージスブランのレーダー性能は、簡易プローブとしても使えるとかで……」
「良し! 本艦の測量班に、ナスカ級のスタッフと連携するよう伝えろ!」
「了解!」
 姿勢を元に戻したオペレーター達に安堵の吐息をついた艦長は、口の中で低く呟く。
「マーシャン……マーシャンだと……?」

 5機編隊のMSに包囲されたシン達は、機体を寄せ合って円陣を組む。
『入り込んだ奴らの報告じゃあ、MSの中は空っぽだった筈だが』
 ヘルベルトがぼやく。機内に響き続けるロックオンアラートに反し、敵は撃ってこない。 此方に動きを合わせ、ライフルと突撃銃を向け続けている。
『隠れてやがったのかよ』
『そう単純でもない。見ろ』
 マーズの言葉と同時に、他の3機に映像が送られる。誰もが眉をひそめ、あるいは目を軽く見開いた。
「これは……」
 シンが呻く。サブモニターに映る1機のザクウォーリア。その胸部コクピットハッチが 剥ぎ取られ、『無人の』内部を露出していた。
MSデッキを調査した際、陸戦隊が確認の為、 ハッチを抉じ開けた機体だ。足元のコンソールには無人であると表示してあったのだが、 念を入れたのだ。
こうもあっさり動かれては、その甲斐も無かったのだが。
「じゃあこいつら、無人で動いてるって事か? それとも、近くに指揮官機が……」
『リモコン操作にしちゃ機敏過ぎるし、有人機が混じってる割には動きが揃い過ぎるねぇ』
『改良されたオートパイロットって感じだな』
 ヒルダがシンに答える。MS操縦にかけては天賦の才を持つ彼女達は、機体の動きの癖を見抜いていた。
「全部で12機か。おまけに人間が乗ってない以上、脅しも効かない」
『ついでに、攻撃を待つっていう利口さもある』
 デスティニー兇離張ぅ鵐▲い輝き、胸部の単眼が左右に動いた。3機のドムも、ランチャーを 腰だめに構え、頭部のモノアイが十字フレームの中を目まぐるしく走り回る。
「こっちの3倍もいるんだから、数に物言わせて突っ込ませればいい気もするんだけどな」
『別の目的があるんだろうねぇ。手の内を見たいとか……こっちから仕掛けさせてさ』
「それが当たってるっぽいな」
 溜息混じりに頷くシン。不敵な笑みを浮かべるヒルダ達3人。
『オーブじゃあ蚊帳の外だったからね。ワクワクするよ』
「悪かったよ……じゃ、やるぞ。俺から見て真後ろへ抜ける。シュレッダーを使うから、射線には入るな。名前通り、まともに浴びるとズタズタにされるぞ。……3」
『2……』
『1』
『ゼロ!』
 ヘルベルトの声と同時に、デスティニー兇虜枯咾冒備されていた大型のアサルトライフルから光が走った。銃身全体を螺旋状の電光が包み込み、上部のスコープが赤く輝く。
両肩に装備された大型スラスターが噴射光を吐き出し、デスティニー兇鬚修両譴巴菠屬 させた。
相対していたゲイツRがビームライフルを向け直すも、脇のヒルダ機が間髪入れずに放ったランチャーをかわし、機体が揺らぐ。
「撃つぞ! 退けっ!!」
 叫ぶシン。流れる視界に、上下逆さまになったザクウォーリアが入ってくる。2機のドムが別々の方向へ飛び退き、シュレッダーが火を吹いた。
殺しきれなかった震動がコクピットを襲う。
「くぅっ!」
 訓練で使っていたジンの突撃銃とは比べ物にならないリコイルショックに、シンが歯を食い縛る。
そして回避が間に合わなかったザクウォーリアは3点バースト2連、つまり6発の小口径機銃弾の直撃を受けた。
着弾地点を中心に装甲が『波打ち』、皺が寄って細かなヒビが入り、ヒビが集まり亀裂となり、砕ける。
 内部に押し入った銃弾はその速度と衝撃を開放し、弾を受けた反対側が膨れ上がって弾け飛んだ。
一瞬で、MSの巨体がスクラップと化す。シュレッダーの銃身下部を蒼い雷が行き来し、スコープが明滅する。
左腕がゆっくりと動き、赤い光も合わせて揺らめいた。次の餌食を探すように。

 対PS装甲用アサルトライフル『シュレッダー』の歴史は深い。
ヘリオポリスでの強奪事件が起こって直ぐに、今のデスティニー恭発担当である研究員が連合軍に対して警告をおこなった。
「ザフト及びプラントは形振り構わぬ組織である。恐らく早晩、Xナンバーを模倣した機体やPS装甲を持ったMSなどを開発するであろう」と。
 これらは当然馬鹿げた意見として相手にされなかったのだが、その時の経営者ムルタ=アズラエルだけは関心を持ち、機動兵器のエネルギーを消費しない、
あるいは低消費で済む対PS装甲用の、MS携行兵器の開発を指示したのである。
 連合初の量産MSストライクダガーとほぼ同時期に開発計画が始まったシュレッダーは、言うなればレールガンのアサルトライフルバージョンである。
励磁コイルに掛かる電流を秒間3回のペースでスイッチさせる事により、小口径の機銃弾を超高速で、連続して標的に叩き込み、
驚異的な硬度を得た代わりに弾力を失ったPS装甲が守る内部機器へ、直接衝撃を与えるのだ。
 撃ち込まれたPS装甲自体には、目立った損傷が生じ難い。直撃させるのは銃弾でなく、衝撃だからだ。
これによって、PS装甲を展開する機構にダメージを与えPSダウンを狙うと同時に、機体性能の低下も期待できる。
 が、画期的なエネルギー変換装置の開発によって生まれたビームカービンの登場で、シュレッダーの地位は一気に危うくなった。
また大気中で使うと1発ごとに落雷のような轟音と閃光が上がる事、ストライクダガーの片脚並の大型武器になってしまったことなどもあり、あえなくコンペで敗れお蔵入りとなった。
 そのシュレッダーが、今復活する。パワーアシスト機構と補助スラスターを積んだ腕部と、核動力炉によって生み出されるエネルギーを併せ持つデスティニー兇良雋錣箸靴董
名の通り敵を引き裂かんと顎を開き、真空で吼え猛った。
 なお、当初から問題点として挙げられてきたサイズが全く改良されていないのは、偏に研究員の個人的趣向である。
『さあ……』
 シンの低い声が広域回線に乗った。二股に分かれた脚部を折って身を屈め、デスティニー兇料倨箸剣呑な光を放つ。
右手が真横に伸ばされ、クリーバーが起動した。刃身を光熱が駆け巡り、チェインソウの如き真紅の奔流がソード部分に纏わり付く。
 猫目のようなモノアイが瞳孔を、もとい、カメラのフォーカス調整部分を絞って細めた。
その後ろで、黒と紫に染め上げられた3機のドムが単眼を輝かせる。
 御柱の戦鬼と、その眷属らが魂無き兵士達を睥睨した。
『行くぞ』
 恐竜のような足部が左右に開いて真後ろに跳ね上がり、ランチャーのハッチが開く。
対MS用高機動ミサイルの群がスラスターの噴射光を引きずって敵機へ襲い掛かると同時に、シュレッダーを携えクリーバーを振りかぶり、光翼を広げたデスティニー兇血涙を流して突貫した。
『マスターユニット、インストール完了。システム統合開始……完了』
 誰もいないコクピット内部で、メインモニターに光が灯り文字が流れていく。機内に響き渡る生気の無い音声は、ラクス=クラインの物だ。
『核エンジン、通常起動を確認。メインシステム、ドライブ。緊急事態につき、プロセス12イエローまで省略』
 暗い格納庫に火花が散った。MSに接続されていたケーブルが強制排除されたのだ。
ライトイエローのツインアイが無人の格納庫を照らし出す。
『発進』
 短いアナウンスの後、背部ウィングユニットが開いた。上部ハッチが開き、軽く床面を蹴ったその機体がゆっくりと浮かび上がる。
『敵性機、モビルスーツ4機を確認。ドローン損耗率、30%を超過』
 戦闘の光が上がる方へと機体を向かせ、スラスターを噴かして微速前進する。童話に登場する怪物のような黒と赤の機体は、まだ此方に関心を見せない。
自機の出力は未だ10%を超えていないので、レーダーが拾えていない可能性もある。
 思考を巡らせる『エミュレイター』。あくまで実物のコピーなので、複雑な判断には若干のディレイが生じるが、戦闘を行う分には問題無い。
エンブレイスとセレニティの操縦訓練のみ行ってきたので、MSを操るのはこれが初めてだが、それもエミュレイターにとっては、真のキラ=ヤマトにとっては些細なことだ。
『ZGMF-X10A-2フリーダム、戦闘開始』
 蒼の翼、白のボディ。赤いラインが一本入ったシールド。シンにとっての忌わしき記憶。
かつて葬られた天使と寸分違わぬ姿を持った機体が、彼方からの星明りに淡く輝いた。

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