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SCA-Seed傭兵 ◆WV8ZgR8.FM 氏_古城の傭兵(仮)_第03話

Last-modified: 2009-04-27 (月) 23:15:48

「情けない……あれが今のザフトか」
執務室の扉を後ろ手で閉め、イザークが叫ぶ。
力ずくで閉められた豪奢な天然オーク製の扉が悲鳴を上げ、天井からパラパラと埃が舞った。

 

ある基地の壊滅の報と、その基地の実態を聞いたのだ。
捕虜への拷問、公開処刑、土地の強制徴用。
イザークからすれば、到底認められるものでは無かった。

 

「――落ち着けよ、イザーク。綺麗な顔が台無しだぜ?」
うがー、と肩を怒らせ八つ当たりを続けるイザークに、若い男の声が掛かった。
流麗な細工が施された衣文掛けにヤクザキックを叩き込み、
最高級のタペストリーに右掌を見舞ったイザークが声の出所を見る。
「……ディアッカか。何の用だ」
「自分で出前頼んどいて何の用ってのは酷いと思うぜ? ほら、注文の海鮮炒飯」
と言って浅黒い肌にコックスーツを纏った男――ディアッカが右手に提げていた岡持ちを掲げる。
イザークの眉が一瞬緩み、また吊り上る。

 

「……ディアッカ……だから出前は窓口までで良いって言わなかったか?」
お前はもう除隊の身だろうにとイザークが呟き、ディアッカが敵わないとばかりに肩を竦めた。
「そんなこと言うなよな。元上司と部下の関係だろ?」
「……その部下が最後っ屁に何を遣らかしたかも確りと憶えているぞ、俺は」
管を巻きながら乱暴に椅子を引いて腰掛けたイザークの前に、岡持ちから取り出された海鮮炒飯と
栄養マムシドリンクが置かれる。
眉間に、今度は驚愕の皺が刻まれた。

 

「……これは注文していないぞ」
「まあまあ、お得意様へのサービスってね――最近寝てないだろ」
イザークがう、と声を上げ、ディアッカがそれ見たことかと笑った。
「イザーク、お前、議長とその総司令官の仕事全部肩代わりしてるんだろ?」

 

……あの二人が慈善だ、慰問だって仕事しないで飛び回ってるから。

 

暗にそう言って、ディアッカはイザークの真正面のソファに腰掛けた。

 

「……お前が居てくれたらどんなに楽だと思っている。お前が後任に指名したシン・アスカは失踪するし……」
ぬう、と息を吐き、炒飯を一気に掻っ込むイザーク。
シンの名前を聞いたディアッカの目が、一瞬光った。
「そうだイザーク、そのシンだけどな――」

 

『ジュール隊隊長イザーク・ジュール! 五分後に本部司令室まで出頭せよ!』

 

ディアッカが口を開いた瞬間、真上からその割れ鐘のような声は響いた。
繰り返す!と続いたその声は、三回同じ内容を喚いて始まりと同様唐突に終った。
耳を塞いでいたディアッカが顔を上げると、直径三十センチ程のスピーカーが天井に張り付いていた。

 

「非グレィトォ……何だよ今のは……」
「いつもの事だ。俺はもう慣れた」
目を白黒させながら言うディアッカと対照的に冷静に返すイザーク。
ごくりとマムシドリンクを飲み干し立ち上がる。
「馳走になった。また頼むぞディアッカ……茶でも飲んで行け」
壁際のティーセットを指し、扉を開いて出て行くイザーク。
その背中を見ながら、ディアッカは呟いた。

 

「ああ……でも、ゆっくりって訳には行かないんだよな……」
口の端を歪め、呟いた。

 
 
 

「イザーク・ジュール、出頭しました!」
「よし、入りたまえ」
本部司令室――平和の歌姫が議長に就任して以降豪華になったという評判の
ザフト軍関連施設の中でも、最も豪華な改装が施された一つ。
各隊長の執務室よりも数段豪華な机の前に、イザークが立っていた。
目の前には、でっぷりと肥えた中年の男が座っている。

 

ザフト軍特別部隊「歌姫の騎士団」名誉顧問の男が。

 

「それで、ご用件は」
「……ジュール君、正直に言って残念だよ」
疑問符が、イザークの頭の上に浮かぶ。
「君を国家反逆罪、並びに二十九の軍紀及びクライン名誉憲章違反等の罪で逮捕する」

 

何を言っているのか判らない、といった顔のイザークを両側から黒服の騎士団員が押さえつける。
我に返ったイザークが暴れだすが、両脇の男は意にも返さない。
「上層部並びに監察部からの報告があったのだよ。君がテロリストに加担していると」
男が、嫌らしい笑みを浮かべる。
「何かの誤解です! 私は!」
蒼白になったイザークが叫ぶ。

 

「そうそう、君の母親は確かザラの信奉者だったね」
その言葉に、イザークの動きが一瞬止まる。
男が、腕を上げた。

騎士団員が懐から黒い塊を取り出す。

「違う! 母上は何の関係も――」

イザークの脇腹に、黒い塊――スタンガンが押し付けられる。
男の唇が、音を出さずに喋る。

 

――余計なことをするからだ。様を見ろ厄介者。

 

その嫌らしい笑みを最後に見て、イザークの意識は途切れた。

 
 
 

「――ッ!?」
画面いっぱいに大写しになった脂ぎった顔に、イザークは跳ね起きた。
男の顔は掻き消え、薄汚い天井が見える。
一瞬混乱したイザークが首を巡らすと、その部屋の一辺に床から天井まで伸びる鋼鉄の棒が
均等に並んでいるのが目に入る。

 

何処から、誰がどう見ても独房だった。

 

「……なるほど、そういう事か……」
気絶する直前の事を思い出し、イザークの顔が一瞬で憤怒に染まった。
怒号こそ発さないが、その身に纏う雰囲気が熱を孕んだ。

 

「――ようやく起きたか、イザーク」

 

怒りに震えるその耳に、聞き覚えのある声が届く。
イザークが目を向けると、仕切の外側に 禿 頭 の 男 が立っていた。

 

「まったく……残念だ、イザーク」
「アスランか……オーブの少将様がこんな所で何をやっているんだ?」
罠に嵌った犬の姿を拝みに来たのか、と自嘲するイザーク。
それに対しアスランは頷く。イザークの顔が再び怒りに染まった。

 

「罠というのが何かは知らないが、お前がプラントを裏切るとは思わなかったよ」
「何を言っている。プラントを裏切ったのはお前だろう……一度ならず二度までも、な」
「あれは……仕方が無かった事だ。彼女達も……カガリもメイリンもルナマリアも納得している」
アスランがイザークの言葉に舌打ちし、言葉を紡ぐ。
その言葉を、イザークが鼻で笑い飛ばした。

 

「オーブに引き篭もってハーレムを築いておいて何を言っているのやら……」
「……黙れイザーク……」
「お前、自分が何て呼ばれているか知っているか?――発情した蝙蝠め」
「黙れ!」
「黙らないね、裏切り者が!」
イザークが叫び、アスランが反論する。
その応酬はすぐに終ったが、イザークの容赦ない言葉に鼻白んだアスランが呟く。

 

「……態度によってはキラに取り成すつもりだったが……交渉決裂だな」
「交渉だと? 端からそんなつもりは無かった癖によく言う」
「残念だ……本当に残念だよ、イザー……」

 

ごす、と鈍い音がした。

 

 禿 頭 の ア ス ラ ン が、ぐらりと傾き、ばったりと倒れた。

 

その背後から黒ずくめの影が現れる。
『……ジュール隊長ですね……助けに来ました』
「…お前は?」
黒ずくめの影、否漆黒のスニーキングスーツを纏い、
赤いラインが入った黒いヘルメットを被った男に、イザークが問う。
『話は後で。今は脱出が最優先です』
男が静かに言った。

 
 

薄暗い格納庫。
中央に、地球軍のメビウス程の大きさの影がある。
と、その格納庫の端の換気口が蹴破られ、中から黒い影と白い影が転がりだしてきた。
黒いスーツの男と白服を来たままのイザーク。
狭く、更に数年間ろくに清掃されていない換気口を通ったため、埃塗れになっている。

 

「……これは……」
『見ての通り小型艇です……乗って下さい』
黒い男がハッチに手を掛け、開放しようとした途端、イザークがその腕を掴む。
その目は、「事情を説明しろ」と語っていた。

 

『……簡潔に言います。貴方の友人、D氏とでもして置きましょう。
 その方から依頼を受け、 それを成しただけです――
 ――まあ、あの禿を殴ったのは私怨が入ってますけど……」
男は喋りながらヘルメットを外し、胸の前に抱え込む。
男の顔を見たイザークの顔が、この日三度目の驚愕に歪んだ。

 

「お久し振りですね、イザークさん」
「……アスカ、か? 生きていたのか……」
「ええ、御蔭様でね……・今は傭兵です」
こんな世の中ですから結構稼ぎになるんですよ――そう語るシンの後ろの扉が。ゆっくりと開く。
中から、一人の男が姿を現す。

 

「お前……何故だ?」
イザークがもう何度目か判らない驚愕の声を上げる。

「……この人が依頼主ですよ」
シンがビジネスライクに呟く。

 

「グゥレィト! 時間通りだ。さすがシンだな!」
姿を現した男が、叫んだ。

 
 

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