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SCA-Seed傭兵 ◆WV8ZgR8.FM 氏_古城の傭兵(仮)_第11話

Last-modified: 2009-09-23 (水) 23:41:11

「今回の報酬の半分は待機組含めた各々に分配、もう半分の半分は保管、半分は雑費……
 うーん、ギリギリ黒字ですね」

 

アルテミスを出航しアメノミハシラに向かう高速船の客席に腰掛けたアビーがPDAと睨みあいながら呟く。
手元のディスプレイに表示された数値が変動し、それに伴って眉根が寄せられる。
「弾薬費が補助込みで30000で、ミハシラでの整備が完了していると考えて……」
アビーの指先がキーボードを叩く音以外には、
前のリクライニングシートで眠るシンの寝息くらいしか聞こえてこない。
コニールとファッターフはそれぞれ指定された寝床で眠りについていて、
アルテミスとアメノミハシラを結ぶ定期便を兼ねたこの高速船にはこの傭兵部隊しか乗客が居なかった。

 

「ヴィーノ達の腕を確かなものと考えても、完了していると考えるのは危険ですね……
 最悪ミハシラで足止めを食らう可能性もありますし……」
多少の焦りを滲ませながらも、その表情は明るい。
各国政府や軍からの依頼の受け付けやスケジュールの調整を担当している
彼女にとっては手馴れたものだった。
緑服に降格し、地上へと配属を変えられたシンのMIAと所属部隊の壊滅の報を聞くや否や
オーブに移住したホーク姉妹を除いた旧ミネルバクルー全員と共謀して
ザフトの財政に多大な被害をもたらした末に一斉に除隊、
プラントより逃亡し何人かと地上に降りて予め築いておいたコネを頼って情報を収集し
ガルナハン蒸発まで辿りつき、更にそこから傭兵レッドアイまで行き着いた挙句
その本拠に堂々と乗り込んで入団を求めるという荒業をやってのけた行動力もあってか、
殆ど苦にも思っていなかった。

 

「……出航より一時間と三十分経過……あと三十分ですね。そろそろ起こすべきでしょうか……」
計算を一通り終えてPDAを閉じ、少し自分の方に傾いた前のシートを視界にいれる。
珍しく安らかな表情で眠るシンに少し悪いか、とも考える。
殆ど毎回のように過去の記憶に魘され、安眠とは無縁と言ってもいいシンを起こすのは酷か、と。
真夜中に絶叫と共に跳ね起きることもざらではないらしい。
コニール曰く、「ガルナハンが蒸発して以来、頻度が増した」。
実際、本拠である古城においても彼に割り振られた部屋の壁には防音処理が施されていた。

 

「珍しく普通の夢なら邪魔したくはないですが……困りましたね」
「……もう起きてる。出航からどれくらい経った?」
むむむ、と唸ったところに前の席から声が掛かる。
膝に落としていた視線を上げると、起こされたリクライニングシート越しに
後ろを向いた赤い瞳と目が合った。
あら、と呟いて口を開く。
「一時間半と少しですね。あと三十分です」
「ん、ありがと……コニールとファッターフは?」
「まだ寝てると思いますけど。起こしてきますか?」
「ああ……コニールは頼む。ファッターフは俺が行くから」
はい、と返して立ち上がり、後ろの扉へ向かう。
扉がぷしゅ、と開いたところで振り向き、伸びをするシンに向かって口を開いた。
「PDAの横の鞄にコーヒーが入ってます。パックですけど、飲むならどうぞ?」

 
 
 

「アルテミス連絡艦からの信号受信! 入港まであと十二分です!」
「第七ポートへの誘導ビーコン発信準備完了。五分後より発信します」
「……積荷の確認中……レッドアイが一つ。予定通り」
アメノミハシラ、第七ポートコントロールブロック。
何人かの管制官やオペレーターが声を掛け合い、コンソールの情報をそれぞれ更新していく。

 

「レッドアイの機体はどうなっていますか?」
音も無くそのうちの一人の背後に立った女――マリーン・Aがコンソールを覗き込んだ。
年配の管制官がモニターから視界を外さず口を開く。
「レッドアイのウィンダムは現在追加武装の最終調整中ですな。
 デュプレ副主任とヒエロニムス博士がインパルスと平行して行っとるようです」
「そうですか。ご苦労様ですね……後で差し入れでもしましょうか」
「……デュプレ副主任は昏倒寸前みたいですよ?」
横からもう一人の若い管制官が口を挟んだ。
最初に話しかけられた管制官が制止しようとするが、若い彼の口は止まらない。
「……前に勘違いで叩き起こされた事、まだ根に持ってるんですか……」
「何か言いましたか?」
声を潜めての台詞に笑顔を向けるマリーン・A。
その笑顔を見た若い管制官は、みるみる青くなった顔をモニターに戻す。
そらみろと、年配の管制官が呻いた。

 

「誘導ビーコンの発信を開始します!
  第七ポート係留ブロックにて作業を行っている方は速やかに退避して下さい!」
自分たちの後ろで起こったやり取りに気がつく事も無く、
オペレーターの一人が声をマイクに向かって声を張り上げる。
心なしか弾んだその声は、多少のハウリングを起こしつつ該当区域に響き渡った。
繰り返します、と数度同じ内容を繰り返す。
「……マリーンさん、第七ポートから降下用機の準備完了との連絡です。
 レッドアイの機体の調整が終り次第積み込むと……」
マイクを鷲掴んだままのオペレーターの横で、別のオペレーターがマリーン・Aに振り向きながら言った。
放送を流しているオペレーターのものに比べていささか落ち着きがある声で、無表情な顔はそのままに。
「わかりました。レッドアイ達が連絡船から降り次第搭乗するように通達を」
「了解しました……あ、第三整備ブロックから連絡です」
転送します、と薄暗い声が放たれた後、マリーン・Aの目の前のモニターに連絡が表示された。
管制官二人の顔が血色を取り戻す。

 

「レッドアイ機の調整終了ですな。いやはや、ようやく肩の荷が降りた」
「……早急に第七ポートへ移送するように通達を」
年配の管制官が息を吐くとほぼ同時、マリーン・Aが押し殺した口調で言った。
更に続けて、にっこりと笑いながら言う。
「デュプレ副主任を名指しでお願いします」
若い管制官の顔が再び青くなった。

 
 
 

「ほいほい、もうじき降下してくるし雲行き怪しいから施設の中に入りますよー」

 

地上、大ブリテン島中部シェフィールド。
都市中心部から離れた地点に建造されている小規模な基地の滑走路で、
見学に訪れていた十歳未満の子供十数人を誘導する三十歳ほどのがっしりした軍人―
―階級は中尉――が一人。
都市部から学校行事で宿泊していた子供たちは無言でその後に続く。
学校で行われている厳しい躾の賜物か、その列に乱れは無い。
と、中尉のすぐ後ろを歩いていた少年――この子供の中では一番年上の――が口を開いた。

 

「ねえ、いまから降りてくるのってモビルスーツなの?」
「いや、ちょっと違うかな?」
中尉が空を――黒い雲がほぼ全面を覆った――に一瞬視線をやってすぐに答えるが。
子供ゆえか、一人が口火を切ると残る十人近くが一斉に喋りだす。
質問するのを我慢していたのか、収まる気配が無い。
「前にテレビでみた“うぃんだむ”ってやつなの?」
「シャトルじゃないの? パパが宇宙から帰ってくるときはいっつもそうだよ」
「ひょっとしてあめのみはしらから? だったらミナっておとこのひとの?」
「ミナってどんな人だっけ?」
「ミナって人ならテレビで見たよー。すごく格好いい男の人だよね? こーんなに大きくて……」
「はいはいそこまでそこまで。注目ー」
中尉が盛り上がり始めた会話を手振りと声で遮り、先頭の少年の頭に手を置いた。
そのまま髪を乱さないように撫で、笑みを浮かべる中尉。
くすぐったそうに少年が身を捩り、それから逃れる。
他の子供たちが一斉に中尉に注目した。
何事かとキラキラと輝く瞳に見つめられ、中尉が口を開く。

 

「詳しくは言えないんだけどね。降りてくるのは地球連合に協力してくれている傭兵の一人だよ。
 さっきも言ったとおりモビルスーツじゃない」
じゃあなにー、とせがむ子供たちを手で制し、中尉は言葉を続ける。
まるで己のことのように誇らしげに。
「たぶんシャトルだね。 でも、中にモビルスーツを積んでるから降ろす時に見られるよ。
 そうだ、君たちの中に生のモビルスーツを見たことがある子はいるかな?」
にこりと笑いながらの質問。
言葉は柔らかく放たれたが、それに対して手は上がらない。
あれ、残念と中尉が大げさに肩をすくめると、ようやく一人が手を上げた。
列の最後尾に立った、一番幼いほっそりとした少女。

 

「ほい、そこの君。いつ見たんだい?」
「えっと、ずっとまえ。よく憶えてないんだけど……」
「いいよ。どんなのだった?」
「うんとね……たしか、羽がついたのだったんだけど……あ、あれ!」
少し考え込んだ少女が、中尉の後ろを指差して叫ぶ。
うん? どれかな、と呟いた中尉――
――内心、ウィングユニットがついた機体など配備されていたか、と考えながら――が振り向くと。

 

黒雲を背景にして、ぐにゃりと歪みながら姿を現した単眼の機体が目に入った。

 

「――なんだと?」

 

それが何かを理解した中尉が呻き、それに一拍送れて最大音量の警報が鳴り響く。
更に、単眼の機体が右手に携えたバズーカから飛び出した砲弾が倉庫に直撃して爆発する。
わっと何人かの子供が耳を塞ぎ、最後尾の少女が悲鳴を上げる。
その悲鳴が聞こえたのか、中尉は空中のモビルスーツの単眼が閃いたように感じた。
子供たちに向き直って言う。
「落ち着いて。あれの狙いは君たちじゃない」
びくっとなった子供たちが、再び中尉に注目する。
少女が、涙をこらえるように黙り込む。
「移動の場所を地下のシェルターに変える。絶対に私から離れないで」
もしも案内の中で“緊急事態”が発生したときにと、
上官から渡されていたマニュアルに沿って言葉を紡ぐ。
「小さい子は私が抱えていく。大きい子はしっかり付いて来て。行くよ」
こくこくと子供たちが頷いたのを確認し、駆け寄ってきた少女と二番目に小さい少年を抱え、歩き出す。
必要以上に鍛えておいて正解だった、と考えつつ。

 
 

「E-5倉庫焼失! 敵機、七番滑走路より移動開始しました!」
「畜生! なんだってこんな時に!」
「モビルスーツ隊出撃準備、完了まであと60」
「敵機、データベースと一致。ディンの電子戦仕様です」

 

管制室は喧騒に満ちていた。
情報が錯綜し、保たれた上で混乱を強めていく。
階級や情報網が整備されているからか、ザフトのそれと比べるとある程度の秩序は保たれているが。

 

「南東より所属不明機……敵増援です!」
「南西からも侵入確認! なおも増大中!」
「交替の隙を衝かれたか……どう思う、大尉?」
続々と入る情報を聞きながら、壮年の司令官が隣に立った副指令に問いかけた。
「ええ、ただの賊ではないかと。少佐、私の見る限りでは……恐らく、プラントの」
「そうか……錆びたとはいえ義勇軍が空き巣とは、なんとも情けない……
 ロンドンでの式典に対する示威行動と言ったところだな」
「それだけではないでしょう。恐らくですが、これから降下してくる予定の物もあるのでは」
「……レッドアイか」
司令官の表情が、苦虫を噛み潰したようになった。

 

傭兵、しかも経歴が空白だらけの男。
だが傭兵と言っても受ける依頼は連合の物のみで遂行率も高く優秀な味方であるのは間違いが無いし、

それは充分に評価できる。
しかしそれ以上に、女王と個人的な関わりが在ると言うのが気に食わなかった。
「厄介なことだな……もうすぐ予定時間か。どうなっている?」
「現在ミハシラと通信中……既に降下体制に入っているとのことです」
「……丁度いいな。支援を要請しろ」
戦力は少しでも欲しい。そう締めくくり、司令官は口を閉ざした。
大粒の雨が降り始めた空に閃いた雷光が、管制室を白く照らす。

 
 
 

『降下シークエンス3に移行。突入開始。以後、着陸まで自動操縦を行います』
「じゃ、私たちももう一回休憩しようか」
合成音声によるアナウンスが降下機――モビルスーツを一機積載して飛行できるサイズの――
のコクピットに流れ、メインパイロットシートに腰掛けていたコニールが後ろを振り向いていった。
その背後で、メインモニターが摩擦熱で赤く染まり始めた。
後ろの三人が頷くのを待って、シートから立ち上がる。
シンの後ろに座ったアビーが欠伸をした。

 

シンがサングラスを外して立ち上がるとほぼ同時、
けたたましいアラート音を立てながら通信ウィンドウが開く。
なんだ、とシンが振り向く。
『あー、シン、聞こえる?』
「ヴィーノ? どうしたんだ?」
画面に映ったメッシュの男の言葉を訝しげに受け止めるシン。
『……聞こえてるな。もう降下に入ってるよな?』
「ああ。自動操縦に入ってるし、少し休もうと思ったけど」
『……その降りる場所について悪いニュースともっと悪いニュースがあるんだけど、どっちから聞きたい?』
は? と呆れた声を出し、画面を見直すシン。
他の三人もそれに倣う。

 

「何言ってるのかよくわからないけどさ、悪いほうから」
『……降下地点、シェフィールドなんだけど……今丁度嵐になってる。相当酷いやつ』
「嵐? ブレイク・ザ・ワールドの影響で発生しやすくなったって聞いてるけど」
ユニウスセブンの欠片という大質量物の落着は、地球全体の気候に大きな変動をもたらしていた。
舞い上がった塵が太陽光を遮ったことによる気温の低下とそれに伴った食料供給への損害や、
気流などの変化による暴風雨の頻繁な発生など、欠片が落着していない地域でも被害は大きく、
今もなお拡大し続けている。
『もう一つ、もっと悪いニュースなんだけど……シェフィールド基地が攻撃を受けてる』

 

その言葉が放たれた瞬間、コクピットの空気が凍りついた。
ぎしりと軋んだ空気の中、ヴィーノが言葉を続ける。
『それで基地からレッドアイに支援要請が来てるけど、どうする?』
「いい的になるな。降りてからじゃ発進が間に合わない……いや、待てよ」
他の三人よりも早く解凍されたシンが即答し、何か思いついたように言葉を濁す。
「……ヴィーノ、今ウィンダムが装備してる例の物の航続距離は?」
『航続距離? ああ、そういうこと。大気圏突入後、燃え尽きない程度に減速してからなら充分に持つ」
「わかった。コニール、こっちは頼むな」
「あ、うん。マニュアルに切り替えてやっとくよ。戦闘終了まで見つからない程度に上空で待機してる」
「ちょっと待ってくださいシン。これは経費に含まれてませんが」
シンの言葉に、コニールとアビーがそれぞれの反応を返す。
沈黙を保っていたファッターフが口を開いた。
「待てよアビー。だったら追加料金で貰っといていいんじゃないか?」
「ファッターフ……珍しいですね、貴方がそういうことを言うのは」
酷ぇ、とファッターフが呻き、そういうこととシンがコクピット後部のハッチを開く。
納得しきれずに唸るアビーの声を背中で聞きながらハッチを通り、
幾つか扉を通り抜けて最後のハッチのロックを解除し、その先の小型ハンガーに押し込められていた
ウィンダムの前のタラップを駆け上がる。
コクピットの前に設置されたコンソールを叩いて開いたハッチに身体を滑り込ませた。
そのハッチが閉じると同時にOSが起動し、赤いウィンダムのバイザーに光が灯る。

 

『シン、聞こえるか? 外部ハッチ開放はあっちで行うって』
「了解……ヴィーノ、整備してもらったのに早速傷つけることになって悪いな」
メインモニターの端に開いたウィンドウから話し掛けてきたヴィーノに答える。
こころなしか、目の焦点が少しずれている。。
『んなこたどうでも良いからタイミング間違えるなよ。一応こっちで指示するけど、結構危ないからな?」
タイミング誤ったら燃え尽きちまうぞ、と脅しをかけるヴィーノ。
苦笑を返す。
「減速し切れるとも限らないか」
『そういうこと。言っとくけど発進後は通信できないから。あ、追加された武装はもう確認してるよな?』
「ああ、確認した。使いこなしてやるさ」
『その意気だ。 減速開始まであと150』

 

ウィンダムの右手が、アームが持ち上げたビームライフルを握り締める。
機体の後ろに配置されていたアームがシンの操作に従って動き、腰部ラッチにマシンガンをマウントした。
続いて左腕のハードポイントにシールドを取り付け、
例の物――新型のストライカーに接続されていた動力ケーブルが引き抜かれる。
「準備は出来た。何時でもいける」
『減速開始を確認。冷却まであと20、ハッチ開放まで60……』
静まり返ったコクピットに、ヴィーノのカウントダウンだけが響く。
サイドボードから取り出したヘルメットを被ったシンの瞳が、モニターを睨んだ。

 

『――ハッチ開放。行け!』
「レッドアイ、ウィンダム出る!」

 

大きく開かれたハッチから赤いウィンダムが飛び出し、
新型ストライカーの折りたたまれていたウィングが伸びる。
そのスラスターから青白い炎が噴き出し、尾を曳きながら加速した機体が黒い雲の中に突っ込んで行った。

 
 

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