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SCA-Seed傭兵 ◆WV8ZgR8.FM 氏_古城の傭兵(仮)_第12話

Last-modified: 2009-10-13 (火) 03:54:11

一直線に雲の中を駆ける赤い機体があった。
新型ストライカーの大出力スラスターが炎を吐き出し、周囲の暴風を物ともせずに飛行する赤いウィンダム。
ロールアウトから既に五年以上が経過し五年で三回(タルタロス・ユニオンを入れれば四回)の
装備の刷新を行った地球連合軍では既に旧式だが、シンの元に配備されてからの三年間で
徹底的なカスタマイズが施された結果、流石にタルタロス・ユニオンで開発された新型量産機には劣るものの
現行の量産機とは遜色ない性能を持っていた。
背負ったストライカーもそれに磨きを掛けている。
ウィンダムの装備の中でこのストライカー、フォビドゥンパックだけは
タルタロス・ユニオンで新造された物だった。
一度目の大戦で大きな戦果を上げたフォビドゥンの戦闘データを元に各装備の小型化と改良を繰り返し、
ストライカーとして扱えるようにした装備。
残念ながら試作型のため、ゲシュマイディッヒ・パンツァーは装備されていないが、
それでも改良されたエクツァーン兇肇侫譽好戰襯阿砲茲辰涜膕侘呂漏諒櫃靴討い拭
変形機構を廃し、頭部の両脇から出力を低下させた代わりに速射性と連射性を大きく向上させた
フレスベルグが覗き、未塗装の鈍色で構成されたフレームが雲の間に走る稲妻を反射し鈍く光る。
ウィングの下に後ろ向きに折り畳まれた左右一門づつのエクツァーン兇遼た箸、
出番はまだかと催促するように輝いた。

 

「シェフィールド到達まで約560……現状のまま速度を維持……」
雷鳴を遮断する為に外部音声は切られていた。
その静寂の中、ディスプレイをその赤い瞳で見つめながらシンが機体を操作し続けている。
刻々と移り変わる風向きや雲を確認し、それに最適な行動を行う為に。

 

『こちらブロンドヘア。レッドアイ、聞こえますか?』
声と共にアビーの顔がメインモニターの右下に展開されたウィンドウに映し出された。
既に仕事モードに入っているらしく目つきが厳しい。
「聞こえてる。何かあったのか?」
『シェフィールドより入電です。
 敵部隊の構成は電子戦仕様のディン、バビが4、
 ケルベロスウィザード、ガナーウィザード装備のバクゥハウンドがそれぞれ6。
 尚も増える可能性があるとの事です。警戒を』
「了解。他には?」
『現在基地の防衛部隊が出撃していますが、丁度交替の時間だった為か苦戦中のようです。急いでください』
「わかってる!」
冷静な表情を崩さず叫ぶシン。

 

が、次のアビーの言葉にその顔にはっきりと焦りが浮かび上がった。

 

『それと余り関係ありませんが、子供が十人ほど基地の敷地内にいるそうです。
 現在引率の士官と共に避難中』
「子供!?」
『基地の見学に来ていたようですね。全員シェフィールド市中の学校の生徒のようで――』
アビーの台詞を遮り、シンはスラスターの出力を一気に上げた。
ストライカーのスラスターから吐き出される炎がその量と密度を増し、ウィンダムが加速する。

 

『レッドアイ!? 急加速はストライカーに負荷が――!』
「言ってる場合じゃないだろ! 出力を上げないと……」
動力部から機体の各部に供給されていた動力が、次々と脚部とストライカーのスラスターに回されていく。
噴射炎が一気に大きくなり、速度が更に上がった。
それと引換えにするようにバイザーから光が消え、コクピットの計器やディスプレイが映像を切られていく。
「これで……ブロンドヘア、到達まで後どれくらいだ?」
『……今の速度ならあと170です。レッドアイ、無茶はやめてください。
 見ているこっちは気が気でありませんから』
『別にいいでしょ。 シじゃなかった、レッドアイなら問題ないんじゃない?』
横から割り込んだコニールが軽やかに言う。
アビーが何事か抗議しているが、気にする素振りも無い。
『……っと、もうじき到達だ! ジャミングも出てるみたいだから気をつけて』
『ブラウンワン、それは私の台詞で――ザザッ』
落としていたサブカメラの映像を復帰させたのとほぼ同時、アビーが言い終わる直前に
耳障りなノイズが音声と映像に混じる。
即座に通信を切断し、スラスターに回していた動力を元に戻し機体の体勢を整えた。
コクピット周りのディスプレイが光を取り戻す。
一瞬後黒い雲が切れ、数百メートル下に雲の影が落ちた都市と、
その一角で閃光が飛び交い何かが爆発するのが見えた。
「間に合えよッ!」
最高速度に到達した機体が、落下するように加速していった。

 
 
 

高出力のビームが展開された三つ首を振り翳した化物が突っ込んでくる。
そんなイメージを抱きながら、シェフィールド基地守備部隊のパイロット――階級は少尉――は
トリガーを引いた。
それに従って彼の駆るウィンダムが右手に構えたビームライフルを撃つ。。
真正面から突っ込んできたケルベロスバクゥハウンドが右半身とウィザードの右頭部を撃ちぬかれ
バランスを崩し、転倒した。
突進の勢いを全く殺せず飛沫をを散らしながら雨に濡れたアスファルトを滑走し、ウィンダムに迫る。
擦れ違う直前にバクゥがウィザードの左頭部のビームサーベルを起動し、道連れを狙うが。
「足掻いてそれか。ザフトの奴かテロリストかは知らんが情けないな」
少尉の呟きと共にウィンダムがスラスターをふかして右に跳び、バクゥを避ける。
バクゥの頭が跳んだ機体を追いかけ地面と擦れながらこちらを向いたのを確認し、更に撃つ。
ウィザードと胴体を繋ぐアタッチメントを撃ち抜かれ、ウィザードが根元から吹き飛んだ。

 

メサイア戦役の前後に運用されていたウィンダムと名前こそ同じだが、
数度にわたるフレームや武装の再設計によってその外観と性能は初期型と大きく異なっている。
収束率を上昇させ、切断力と破壊力を向上させたビームサーベルや、
実弾兵器のようにエネルギーをマガジンに込めたE-パック方式を採用したビームライフル。
空飛ぶ棺桶とまで評された初期型の面目躍如を果たした機体。
それが十二機、計一個中隊ほどの戦力が配備されたシェフィールド基地。
が、配備された戦力に反し、この奇襲には苦戦を強いられていた。

 

「数が多すぎるな……手が回らん」
少尉の言葉の通り、敵の数が多すぎる。
最初の状態でもこちらが十二、襲撃部隊は二十と、倍に近い数が居たのだ。
四肢に備えられた無限軌道で縦横無尽に走り回る12と、隙を衝いて上空から襲い掛かる8。
何機かは落としただろうがそれに翻弄され味方のうち一機が大破、二機が中破し、
それぞれのパイロットが機体を放棄した現在ではどれほど差があるか。
「考えたくも無い……管制室! 増援はまだか!?」
『耐えてくれ! もうじき来る!』
「それはさっきも聞いた! このままでは持たんぞ!」
『今度は本当だ! 今丁度降りて』
中途半端に途切れる通信。メインモニターに映った半ば欠損した影が、少尉に通信を自分の側から切らせた。
右の前足とウィザードを失いながらも再び襲い掛かってきたバクゥ。
それに伸しかかられ、仰向けに倒れるウィンダム。
ビームライフルが手を離れ、宙を舞った。
バクゥが半壊した頭部をを振り翳す。
牙のように展開したビームサーベルがウィンダムのコクピットに振り下ろされる、その直前。
「なるほど、根性はあるか。だがな……」
ウィンダムの左手が持ち上がり、バクゥの頭部――獣ならば顎の部分か――を掴んだ。
ビームがコクピットに届くその二十センチほど手前で止まる。
ウィンダムの頭が、バクゥの腹部――コクピットハッチに向く。
「そう簡単にやられてやるわけにもいかんのでな!」
断続的な激しい音と共に撃ち出されたイーゲルシュテルンの弾丸が段々と装甲を抉り、
ハッチを破ってパイロットに喰らいついた。
バクゥのモノアイから光が消え、力なく倒れる。

 

「追悼式典までは死ねんからな……」
どうにかそれを押しのけ立ち上がったウィンダムに上空から散弾が降り注いだ。
シールドを構え、上を睨むと長い帽子を被ったような形状の頭部を持った機体と目が合った。
「バビか! 厄介だな!」
バビの胸部から吐き出された極太のビームを回避し、お返しとばかりに
腰部ラッチにマウントされていたスティレットを投げつける。
豪雨を切り裂いて刃が飛び、バビの左肩を貫き爆発した。
バビはバランスを崩すが、残る右腕のビームライフルを乱射し、ウィンダムをけん制する。
「ち、大して効果無しか。ビームライフルは……」
反応を確認しそちらにサブカメラを向ける。
ビームライフルを目視し、そちらに機体を向かせるがその一瞬後、上からのビームに貫かれ銃身が炸裂した。
「――何!? 」
少尉の驚愕の声にかぶさるように連射されたビームが、ウィンダムの右足とスラスターを射抜く。
右足の各部から煙と火花が飛び散った。
がくりと、ウィンダムが片膝をつく。
高度を下げたバビが、胴をコクピットに向けた。
そのアルドールの砲口に光が集まり始める。

 

「ここまでか……?」
少尉が呻き、アルドールが放たれる直前。
更に上空から迫った光が、バビを貫いた。
バックパックとバッテリーを纏めて貫き、地面にまで突き刺さる。
推進剤が誘爆を起こし、派手な爆発が起こった。
目を見開いた少尉が上を見上げる。
『間に合ったみたいだな』
稲光を背景に降下してきた赤いウィンダムから、安堵したような若い男の声が響いた。

 

管制室のモニターにも、それは映っていた。
「支援機より通信。回線繋ぎます」
オペレーターが司令官の方を向き言う。
『こちらレッドアイ。これより援護します』
モニターの片隅に展開された通信ウィンドウに、黒いヘルメットを被った男が映る。
「……ご来着か。意外と早かったな」
『依頼ですので』
ビジネスライクに答え通信をきったシンが赤いウィンダムを反転、少尉のウィンダムの前に着地する。
それを見た司令官が、オペレーター達に確認を取る。
「レッドアイ機は味方と全機に通達しろ。現在の戦況と戦力はどうなっている?」
「はい、現在敵部隊は基地滑走路周辺でこちら側の機体を包囲するように展開中。
 これ以上の増加は確認できていません」
「味方が三機戦闘不能に陥っています。敵部隊残存戦力はバクゥが6、ディン2、バビ3……
 こちらと五分五分ですね」

 
 

「大丈夫か?」
『あ、ああ……おかげで助かった。感謝する』
指向性の通信を損傷したウィンダムに開き、シンが安否を確かめる。
無傷のパイロットの姿が映り、それを見たシンの表情が一瞬緩み、また厳しくなった。
「子供は?」
『え?』
「見学に来てた子供はどうなった?」
焦ったようなシンの口調に少尉が動揺するが、シンは気にしない。
むしろ更に焦燥感を増した口調に、少尉の顔が引き攣った。
『え、ええと……もう避難が終ってるな。今は地下のシェルターに――』
そこまで言ったところで、少尉の口が止まった。
シンのウィンダムの背後から飛び掛ろうとするバクゥに気がついたからだ。

 

『危ない避けろ!』
「邪魔だ!」

 

少尉の悲鳴とシンの叫びが重なり、ぐるりと後ろを向きながら赤いウィンダムのエクツァーン兇展開、
それから放たれた超高速の実体弾二つが飛び掛ったバクゥの頭部と胸部に直撃し、完全に叩き潰した。
アッパーカットを食らったかのように大きく仰け反りながら吹き飛んだ頭部と胴部の前面が抉り取られ、
コクピットまで破壊されたバクゥを見た少尉が息を呑んだ。
「……じゃあ、子供は無事なんだな?」
何事も無かったかのようにシンが言う。
『ああ。多分大丈夫だ』
「わかった……ありがとう。まだ戦えるか?」
『いや、結構損傷が酷い。ビームライフルも無くしちまったし……』
「そうか、じゃあ下がっててくれ。ここからは俺が……」
そこまで言って、赤いウィンダムを飛び上がらせる。
シンを最優先で排除するべき敵と見なしたのか残る敵機が他のシェフィールド基地のモビルスーツから離れ、
集まりだしていた。

 

「俺がこいつらを片付ける」

 

稲妻が走り逆光で陰に沈んだ機体に、シンの気迫を受けて輝いたように
バイザーとセンサーの光が浮かび上がった。

 
 

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