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SCA-Seed傭兵 ◆WV8ZgR8.FM 氏_古城の傭兵(仮)_第13話

Last-modified: 2010-02-19 (金) 02:24:49

照明が絞られた一室、
その中央に配置された円卓を一様に地球連合の軍服を纏った十数人の男たちが囲んでいる。
手元に置かれた小型端末の上に表示されたウィンドウの光が、それぞれの眼鏡や階級章
―いずれも将官クラス―に反射していた。
ウィンドウに表示されているのは、青と白のパイロットスーツに身を包んだ
濃い茶色の髪に紫紺の瞳を持った十代半ば程の少年兵
――地球連合軍に属していた頃のキラ・ヤマトだった。

 

「……KYゲノムユニットの処置はこのまま続行でよろしいな?」
「ああ、折角のサンプルだ。みすみす破棄するわけにもいかん」
「……しかし、オリジナルのキラ・ヤマト……いや、南太平洋で戦死したヤマト少尉の断片が
 保存されていたとはな。正直驚いたよ」
「ヤマト“大尉”だろう? X105に搭乗してのヘリオポリスでの戦闘から
 戦死するまでの戦果を考慮すれば問題ないと決まったはずだ」
「……彼のクローン体は我々にとんでもない被害をもたらして下さったがね」
一瞬、室内に重苦しい空気が漂う。
それを振り払うように、この中では最も年配と見て取れる男が口を開く。

 

「では次にいこうか。月面における例の作戦の進行状況だが」
「……今から六時間前に旧レクイエム周辺の敵対戦力の殲滅が完了したと報告が入っているな。
 アレの建造については……アマルフィ総帥?」
『――はい』
ウィンドウに表示が切り替わり、冷徹な表情を浮かべたロミナ・アマルフィが映し出された。
髪を軽く結って背中に流し、黒いスーツを纏っている彼女が、冷ややかな口調で報告を始める。
『現在、アメノミハシラの部隊と共同で基礎部分の残骸などの撤去に入っています。
 そちらの部隊は、周辺宙域において敵残存戦力及び
 残骸目当てで湧いて来たジャンク屋の掃討を行っています……
 また、ミハシラの部隊が周辺でメサイア戦役当時のMSの残骸を幾つか回収したそうです。どうしますか?』
「どうもこうも無いだろう。好きにさせるといい。それよりも今後の予定だが……」
刹那、ロミナの口元が僅かに持ち上がったことに男は気がつかなかった。
すぐに表情を戻すロミナ。
『はい。予定では、残骸の撤去が終り次第基部の改装を始めます。その後――』

 

地球連合新総司令部、中央棟会議室。
「ロゴス狩り」を生き延びた古狸たちと新進気鋭の雌狐が、互いの思惑を隠して同じ席に臨んでいる。
共通の敵を前にしての、共通の目的の為に。

 
 
 

降り続ける雨に濡れた滑走路に黒い獣が躍る。
ガナーウィザードを装備した三機のバクゥハウンドが、
今まで相手取っていた守備隊のウィンダムを放り出し、駆け出していた。
応戦していた守備隊のウィンダムのパイロットが、半壊した機体の中で呆然と口を開く。
「なんだ……? 一体どうなって……」
長時間にわたる戦闘によって戦闘続行不能なレベルに達したバッテリー残量を見て、
背筋に薄ら寒い物を感じながら機体のカメラを上空に向ける。
飛び上がった赤い機体と、それに放たれる何条かの閃光が見えた。
「……旧式のウィンダム? 味方、なのか……?」
『守備隊全機に通達です。先ほど出現した所属不明機は味方の――』

 

正面から突っ込んできたバビに照準を合わせ、フレスベルグのトリガーを引く。
頭部の両脇から赤い閃光が放たれるが、直線的なそれをバビは機体を横に回転させて回避した。
脚を振り回して制動を掛けたバビがガンランチャーを放つ。
「やっぱりゲシュマイディッヒパンツァーが無いとやりにくいな……」
機体を後退させて回避し、淡々と呟くと同時に手元のコンソールを操作し、ストライカーの設定を変更。
追撃のビームライフルを撃とうとするバビに再び照準を合わせトリガーを引いた。
下手な鉄砲とばかりに連続でフレスベルグから閃光が撃ち出される。
『な! 嘘だろオイ!?』
乱射されるビームを連続のローリングで回避しようとしたバビだが、
急制動でバランスを崩したウィングユニットに直撃を受けパイロットの悲鳴と共に墜落していく。
『連射時の出力、想定よりも五パーセント低下――下方、敵機接近』
メインモニターの左上に開いたステータスウィンドウのインフォメーションが表示された次の瞬間、
地面からガナーバクゥハウンドのオルトロスが襲い掛かる。
視認と同時に舌打ちを一つして機体を反らし極太のビームを回避、
そのまま後ろに一回転して機体を下に向け急加速する。
「寝てろ!」
鏃のような隊形に並んだバクゥに罵声を投げつけながら再び放たれたオルトロスの光条を掻い潜り、
ビームライフルを連射。
三機纏めて胴体とウィザードを射抜かれて沈黙するバクゥハウンド。
その数メートル上を通過した赤いウィンダムが再び空に舞い上がり、遥か上空の敵機の反応へ向かう

 

「ナチュラルの粗製機体、しかも旧式の分際で生意気なんだ――うわっ!?」
『……宇宙の化物の分際で、ナチュラル舐めんじゃねえよ!』
そこを狙ってオルトロスを撃とうとした残るバクゥハウンドの頭部を、
横合いから撃ち込まれたグレネードが破壊した。
モニターがブラックアウトし、一瞬コクピットが暗闇に包まれる。
回線を通して響いた野太い声とその暗闇に混乱したのか、サブカメラが起動して視界が回復した瞬間、
バクゥハウンドのパイロットはそれに映し出された敵機に向かって闇雲に突進していた。
隊列を組み、冷静に構えたウィンダムの小隊に。

 
 

「――落ちろ!」
シンの叫びと共に敵機に向かって突っ込んだ赤いウィンダムのビームライフルから放たれたビームが、
ミサイルポッドを展開していたディンを貫いた。
堕ちて行くその一瞬前に発射された六発のミサイルがウィンダムを目指して一直線に突き進む。
「そんなもの―-!」
不規則な軌道を描いて迫るそれにシールドの裏側にマウントされていたスティンガーとイーゲルシュテルンを
ばら撒いて四発を叩き落す。
異様なほど大きく閃いたその爆発と弾幕を掻い潜った一発にビームライフルを撃ち込んで破壊するが、
残る一発はそれすら潜り抜ける。
しまった、と叫ぶ間も無く近接信管が作動し、慌ててシールドを構えるウィンダムの真正面に
膨大な熱量が出現した。
バチバチと装甲が焼ける音が響き、プラズマ化した大気に晒されたアンチビームシールドが
あっと言う間に溶解する。
閃光が収まったとき、シールドで防げなかった部分の装甲は軒並み焼け焦げ、
見るも無残なことになっていた。
ストライカーも損傷し、フレスベルグやエクツァーン兇皀椒蹈椒蹐砲覆辰得犠錣忙藩僂任るとは思えない。

 

「なんて威力だよ、これ……新型か」
呟き、用を成さなくなったシールドをパージするシン。
落下し地面に叩きつけられ、砕けたシールドを見て、あれが無かったらと想像し顔から血の気が引く。
と、辛うじて被害を免れたレーダーが、背後に回りこんだもう一機のディンを示す。
機体を反転させ、ディンをモニターの端に捉える。
そのディンがミサイルポッドを展開したのを見るや否や、シンはウィンダムをそれに向けて突進させていた。
「……あんなもの、二度も喰らってたまるかよ!」
一気に距離を詰めてきたウィンダムに驚いたのか、ディンの動きが止まる。
直後、巻き添えを食ってはたまらないとばかりにミサイルポッドを閉じ、後ろへと下がろうとするが、
ストライカーの無事なブースターを全開にして突っ込んだウィンダムに
ほぼゼロ距離でビームライフルを撃ち込まれて失速、落下していく。

 

更に残る二機のバビに向かおうとするシン。だがそれをモニターに表示されたアラートが遮る。
「ビームライフル、残弾1……だったら!」
左手を後ろに回し、腰部ラッチに配置されていたマシンガンを握る。
そのまま同時に攻撃をかけようと互いの距離を近づけていたバビに向かう。
『なんだぁ? 自棄にでもなったか!』
『飛んで火にいる夏の虫、いや夏のナチュラルってとこか! 沈めぇ!』
シンから見て右のバビがビームライフルを、左のバビがガンランチャーを撃つ。
放たれたビームと弾丸が機体を掠める火花を散らすが、シンは止まらない。
『どうなってる!?』
『なんなんだよこいつは!』
バビのパイロットたちの驚愕の声が聞こえた瞬間、シンは構えていたビームライフルを前方に投擲した。
そして勢いのままに宙を舞うビームライフルに向けて、マシンガンのトリガーを引いた。
一瞬で十数発の弾丸がビームライフルに突き刺さり、
内部に残っていた一発分のエネルギーに引火して爆発した。
暗雲の下閃いたそれに、バビのモニターが焼け付きを起こす。
想定外のそれにバビのパイロット達は驚いた。
そして。
『な、なんだ――』
これ、と続けようとした彼は次の瞬間、それを言うことも出来ずに、
擦れ違い様に一閃したウィンダムのビームサーベルによって機体ごと寸断されていた。

 

一拍遅れて爆発したそれに気がついたもう一機のパイロットが、呆然と呟く。
『なんで、なんでこんなことに……?』
雷光を反射しながら襲い掛かってくる赤い怪物。
目の前に浮かぶその機体から放たれる殺気に死の恐怖を覚えると同時に、
バビのパイロットは悲鳴を上げながらビームライフルのトリガーを引く。
――モニターに敵機のアイカメラが大写しになるほど接近した状態で。

ああ、死ぬのか。
彼が不思議と静かに思った瞬間モニターもブラックアウトし、
その向こうから伸びた眩い閃光がバビのコクピットを焼き尽くした。

 
 

「これで、飛行できる奴は全部か」
モノアイから光を失ったバビが落下していくのを見ながら、シンは呟いた。
残りはバクゥだけだな、と思ったそのとき、通信が開く。
『こちらブロンドヘア。レッドアイ、聞こえますか?』
「こちらレッドアイ、感度良好。何かあったか?」
敵部隊の増援かと怪訝な表情で言う。
しかし、そのシンの表情に対するように、アビーの表情は明るかった。
『シェフィールド基地から通達です。
 「展開していた敵戦力を無力化した。援護に感謝する」とのことです。戦闘終了ですね』
明るく言うアビーに、シンの肩に入っていた力が抜けた。
『今転送した見取り図の第七滑走路に降下して防衛部隊と合流してください。私たちもすぐに降ります』

 

高度を下げていくと、基地の見取り図に第七滑走路と表示されている地点が見えてきた。
中破して機能停止しているように見えるバクゥハウンドと、
そこから少し離れたところで膝をついた何機かのウィンダムが見える。
ようやくう止んだ雨に守備部隊の面々はコクピットから降りているのか、
ウィンダムの足元に人影が確認できた。
「よし、このまま……うわ!?」
着陸する寸前、ストライカーのブースターが煙を噴いた。
一瞬バランスが崩れるが、どうにか持ち直して着地する。
それを確認し、ストライカーをパージし、重い音を立てて落下するそれを見て息をつく。
「……無茶しすぎたか。データは採れたからいいかな……」
『おおい、大丈夫かぁ! 降りて来い!』
集音マイクが、外から話しかけているらしい声を拾った。
見ると、先ほど通信したウィンダムのパイロットの男が手を振っている。
「ああ、今降りる!」
返してからふう、とヘルメットを脱ぎ捨ててハッチのスイッチに手を掛けた瞬間、
真紅の目が一気に見開かれる。

 

頭部と胴部前面を破壊されて行動不能に陥っていると思ったバクゥハウンドが動き出し、
一直線に近くにあった小型の建造物――地下シェルターへの入り口に向かって突進していた。

 

ウィンダムのパイロットたちはまだ気がついていない。いや、ようやく気がついたのだろうか。
ぎょっとしたような顔で何事かを叫び、己の搭乗機へと走っている。
だが、間に合わない。
そう思うよりも先に、シンは、ウィンダムのスラスターを最大出力で稼動させていた。

 
 

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