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SCA-Seed_GSC ◆2nhjas48dA氏_GSCg_第03話

Last-modified: 2008-10-19 (日) 10:09:50

「バルトフェルドさんに連絡して、直ぐにエターナルを出して下さい! それから、僕の
ストライクフリーダムも!」
「了解です、キラ様!」
「キラ、一体どうしたのです? そんなに慌てて」

 

 ラクスの手を引き、血相を変えてプラント議会の廊下を早足で歩くキラ。クライン派の
兵士が敬礼して走り去る姿を見て、桃色の髪の彼女は首を傾げる。左腕には髪と同じ色の、
丸いハロが抱えられていた。

 

「君が狙われているんだよ、ラクス!」
「まあ、何に?」
「核に!」
「あらあら」

 

 瞳を瞬かせるプラント最高議長。良くも悪くも大物である。ついでに勝ち組である。

#br
「とにかく君に何かあったら、このプラントはお終いなんだ。エターナルに乗って、出来
るだけアプリリウスワンから距離を取らなきゃ」
「核は何とかしなくて大丈夫なのですか? キラのストライクフリーダムなら、何かやれ
る事があるのではないですか?」
「それは……」

 

 ラクスを守る事だけに意識を捉われていたキラは、思わず足を止めた。その背中にぶつ
かった後ろの彼女が、小さく悲鳴を上げる。

 

「し、シンが何とかするよ! 僕は核を運び入れるように言われただけだから!」
「運び入れる? ああ、シン=アスカ……彼なら何の心配も要りませんね。ねえ?」

 

 ラクスが微笑み、腕の中のハロに呼びかけた。

 
 

「何で弾薬庫に入れて10分で核を奪われるんだよ……大体、どこのコロニーに運び込んだ
かも連絡来ないし……幾らなんでもスーパーコーディネイター過ぎるだろ」
「いやシン、意味が解らないから」

 

 アーモリーワンからスクランブル発進したラーツァルスのブリッジ。今回の発端を作っ
てしまった起案者、責任者として端っこに立つシンがぼやき、オペレーターのアビーが
突っ込んだ。長時間被っていると蒸れてくる制帽を取り、髪に風を送り込むアーサーが、
艦長専用コードを使って通信回線を開いている。

 

「ふむ、奪われたのはどうやらセプテンベルフォーのザフト基地らしい。ん、駄目だな。
どの部隊もまだまともに動いてないや。核だもんな……」
「何で解るんですか? 艦長」
「10分前辺りに広域チャンネルから遮断されてるから。責任問題を回避する為だろう。
ただ、ツメが甘い。アビー君、隣接するコロニーのターミナルにアクセスして」

 

 シンに答えつつ、帽子を目深に被ったアーサーが左へ視線をやった。

 

「先に言われた通り、既にやっています。その時間帯でレーダーにかかった船は4隻です」
「MSを積み込める船は何隻だい? ザラ派はMSを好んで使うんだよ。自分達こそ正統な
ザフト兵だと思っているからね」

 

 アーサー=トライン。理に走り過ぎるきらいがあると評された彼だが、今回はその性格
が幸いした。でなければ、プラント領内を行き来する数百隻の船舶を検問せねばならなか
っただろう。

 

「待って下さい……そうなると2隻です。監視カメラの画像データを呼び出します」
「なるべく解像度を上げて。マリク君、バート君、今大丈夫かな?」
「はい、艦長」
「オートパイロットモードに入りました。問題ありません」

 

 ブリッジクルーが一分の無駄も無く作業する様を見て、場から置き去りにされたシンは
ぼんやりとしながらも何処か納得していた。彼らは、あのミネルバのチームなのだ。

 

「2人の手元に送ったデータだけど、どっちが怪しいかな」

 

 操艦担当のマリクと索敵担当のバートが、粗い画像を一瞥する。

 

「画面の左下に映っている方です。船体に傷があります。熱を持った損傷ですね。監視
カメラだとこう見えますから。防衛部隊から攻撃を受けたと見て間違いないです」
「左下です。右上の輸送船と比べて速度が段違いです。違法改造されたエンジンかと」
「じゃあアビー君。アクセス範囲を更に広げて、この船の航路を割り出すんだ」

 

 同時に答えた2人。アーサーが頷いて、アビーに指示を出した。艦内放送のスイッチを
押し込み、彼は声を張った。

 

「艦長のアーサー=トラインだ。核が奪われて3分半経ったが、ザフトは今まともに動け
ていない。ラクス様にもエターナルにも連絡が取れていない」

 

 MS格納庫やエンジンルームで動き回るクルーが、重力下で天井にあたる方を見上げる。

 

「現在ジュール隊がラクス様、キラ君に代わって艦隊を束ね、プラントの内側に強奪犯を
閉じ込めようとしているが……」
「艦長、敵のコースを確認しました。プラントを出て、地球へ向かっています」

 

 マイクを掌で包んだアーサーがアビーに頷いて、再び口を開いた。

 

「僕らは別行動を取り、プラントから出る。防衛任務を放棄する事になるが、全ての責任
は当然僕が負う。各員の奮闘を期待する、以上だ」

 

 マイクを切ったアーサーは、ブリッジの端で呆気に取られて突っ立っていたシンに振り返る。
にこりともせずに腕を組んだ。

 

「あの核、君のビジネスに必要なんだろ?」
「当然です! 役人を散々脅して、最後は税金でアレを買い取って貰うんですから!」

 

 シンが必死に言い募る。何としてでも、1基だけになったとしても証拠が欲しいのだ。
核自体の代金の他にも手数料、口止め料、輸送料などなど、金を毟り取るポイントは幾ら
でもある。初回から転がり込んだチャンスを無駄には出来ない。

 

「ザラ派テロリストは、君のようには考えないぞ。奪ったら恐らく即座に使おうとするだ
ろう。恐らく地球に落とすだろうけど、どう落とすかも解らない。本作戦の中核は、MS
に乗る君だ。あらゆる状況を想定して……格納庫で待機してくれ、シン」

 

 鳩尾にむかつきを覚えつつ、シンは敬礼してブリッジを後にした。

 
 

 セプテンベルフォーで核を強奪したザラ派テロリストは、まごついているザフトを尻目
にプラント領外へ脱出。レーダー網が形成されていないデブリ海で、エンジンを止め息を
潜めていたローラシア級戦艦と合流し、地球を目指した。
 用意しておいた専用のポッドに戦術核を詰め込んで弾頭とし、地球ぎりぎりまで近づい
た後に発射。ナチュラルが巣食うおぞましい地球を炎で浄化する。筈だったのだが。

 

『待て、ナスカ級が1隻来るぞ!』

 

 最大戦速で接近してきたラーツァルスが、高出力のエネルギー砲を放つ。ビーム兵器と
いう呼称がザフト内で定着していなかった頃に開発された熱線が、ずんぐりしたローラシ
ア級の左舷を掠め、続いて放たれた艦底部のレール砲の1発が今度は直撃し、爆発と共に
艦体が揺れた。

 

『この艦では逃げ切れない! MS隊とポッドを出せ!』
『しかし!』
『行け! 全ては正しきザフトの為に!』
『済まない……ッ』

 

 被弾の衝撃で機動性が鈍ったローラシア級。牽制の為にナスカ級のVLSから撃ち出さ
れたミサイルを浴びるも、装甲の厚さで耐えながら回頭する。ポッドを抱えたザクがスラ
スターを吹かして離れ、4機のゲイツRが随行した。

 
 

『至近弾2発、直撃1発! チッ、全弾当てられると思ったが。敵が旋回するぞ!』
『させるかよ。ミサイルを撃ち続けろ!反撃が来るぞ!』
「俺の核が、俺の金が……」

 

 薄暗いコクピットの中で、シンが呟き続ける。時折艦体が軽く揺れ、ローラシア級から
攻撃されていると解る。揺れが小さいので、MS用のミサイルか機銃だろう。

 

『ちっ、ハッチ開けろ! MS隊が逃げる! 奴ら、何か抱えてるぞ!』
『シン、出られるかい!』
「かねっ! あ、はい出られます!」

 

 欲望に任せて単語を口走ったシンが言い直した。MSを操作してカタパルトに乗せ、身
を屈ませる。気密スーツを着たヴィーノが全て問題無し、と言うかのように親指を立てて
離れ、メカニック用の退避口に入り込んでシャッターを閉める。正面のハッチが開いた。

 

『MS隊を追撃し、運んでいる物体を確保するんだ! 多分、あれが……』
「了解! シン=アスカ、出ますッ!」

 

 無反動砲を抱えたジンが打ち出され、スキー競技のジャンプに似た姿勢で宇宙空間に放
り出される。姿勢を立て直すついでにローラシア級のエンジン付近を狙って砲で撃ち、着
弾を確認せずにMS隊のスラスター光を追った。

 

「俺の核……俺の金……核、金ッ!!」

 
 

『MSが1機ついてくる! ジンだ!』
『ジン1機だと? 馬鹿め、犬死にだな。迎え撃つぞ!』

 

 1対5の上に機体性能も段違いである。速度を保ったまま5機のMSが旋回し、視認出来
る位置まで迫ったジンに向き直った。広域回線が開かれる。

 

『返せ』
『腑抜けたザフト兵にしては良く追いついたと誉めてやろう! しかし、パトリック=ザ
ラの遺志を継ぐ我らが、クラインの犬となった貴様達に負ける筈がない!』
『返せ!』
『今度こそ、この核でナチュラル共に裁きの鉄鎚を下すのだ! 我らコーディネイターこ
そ新しき人類! 古く愚かな猿どもに誰が主人かを』
『かあぇえせえぇっ!!』
『話、聞けよ!』

 

 コクピットで絶叫するシン。彼の脳裏に、あるビジョンが浮かんだ。波紋を生む水面と、
そこに浮かび上がる種子、ではなく、美しいつやを持った銀色のアタッシュケース。何か
が砕け散る甲高い音と共にそれが開き、大量のアースダラー紙幣が桜吹雪の如く舞った。
シンの瞳から焦点と表情が失われ、虚ろな目が見開かれる。
 腰部のレール砲を撃とうと速度を緩めた1機の腹部に、無反動砲の榴弾が突き刺さった。
白煙とパーツ片を撒き散らして仰け反るゲイツRの懐に飛び込みつつ4機から浴びせられ
た緑のビーム光を避け、盾にした機体の肩に銃身を乗せ三点バーストを2回。右側のゲイ
ツRに突撃機銃の弾がばら撒かれ、ビームライフルと頭部のモノアイ、アンテナが砕けた。
 左腕に持った無反動砲を3連射する。回り込もうとしていた1機が身を捻り、背部と踵
のスラスターを吹かしてローリングして2発を回避するも、狙い澄ましたような3発目を
胸部のコクピットハッチに貰う。再び爆発が起き、最初に攻撃したゲイツRの影からジン
が飛び出した。

 

『こ、この!』

 

 シールドの先端に取り付けられた発生器からビームサーベルを伸ばした4機目のゲイツRが、
突進するジンを刺突しようと一瞬左腕を引く。シールドを持つ分重い腕を掻い潜り、
機銃を腰部右に固定したジンが居合の如く重斬刀を抜き放ち、そのスピードで腕の関節部
分を断ち斬った。破片と共に腕が無重力を漂い、伸ばされたビーム刃が弱まって消える。
 パイロットが状況を把握する前に、ゲイツRの顎下に重斬刀の切っ先が滑り込んで首を
刎ねた。頭部がすっぽ抜け、モノアイの光が失われた。
 唐突に生まれた巨大な輝きに、シンが虚ろな目を向ける。MS隊が抱えていたポッドが
点火され、急加速して正面の青と白の地球へ飛び去って行ったのだ。

 

『それ程の力を持ちながら、何故……だがもう遅い! 貴様の負けだ!』
『譲れない物を持っているのはアンタだけじゃない!』

 

 ビーム突撃銃を連射するザクに対し、ジグザグで迫る旧式機ジン。機体性能を、パイロ
ットの空間認識能力と反射神経で補う。火線に捉われ、無反動砲が爆発した。破片が機体
の左側に叩きつけられ、肩口に傷を残しモノアイのレンズにヒビが入る。それでも、進む。

 

『俺は、俺のか……大切な物を取り戻す! それだけだ!』

 

 両手で重斬刀を構えたジンが、モノアイを輝かせる。左へ避け、肩のスパイクシールド
からビームトマホークを抜き取ろうとするザク。しかし勢いに負けたか、それとも技量で
負けたか、その下腹部にジンの重斬刀が深々と突き刺さった。刀身が根元から折れ、背部
のバッテリーを破壊された機体がパワーダウンする。コクピットハッチに、重斬刀のグリ
ップ部分がぶつかった。

 

『……大切な物、か』

 

 ザクのパイロットが溜息と共に言葉を吐き出した。突撃機銃のみを持ったジンが、飛び
去ったポッドを追い青白い光を引きずって地球へ向かう。シンの心情的には皆殺しにして
も飽き足らなかったのだが、ジンの火力では時間がかかり過ぎる。それに、現在の5機は
シンの技量を持ってすれば撃墜されたも同然なのだ。
 シン=アスカは急ぐ。自分の大切な物、金の卵を守るために。

 

「見えた……!」

 

 ジンの貧弱なレーダーとセンサーが打ち出されたポッドを捉え、ヘルメットのバイザー
に黄色の光点が映り込む。真後ろから近付くわけにはいかず、コースを少しずつ左にずら
していった。突撃機銃を両手で構えた。ストックを伸ばしてジンの肩に押し当てる。
 ラーツァルスのアーサーから通信が入り、彼の映像がサブモニターに表示された。

 

『いやアビー君、僕が話すべきだ。……シン、状況を報告してくれ!』
「敵MS隊を突破! ですが全機、撃墜はできませんでした!」
『何だって……!?』
「ジュール隊に言って、増援を回して下さい! 俺は核を追います!」

 

 突撃機銃をシングルファイアにセットし、焦点が戻った左目で照星を凝視する。目蓋が
震え、操縦桿を握る右手が小刻みに揺れる。ロケットブースターの光と熱、そして何より
辛うじて視認できるほどの距離ゆえに、ロックオン出来ないのだ。
 右手で警告音が上がる。メインスラスターも限界だった。オーバーヒートして放熱状態
になれば、当然ポッドに追随できない。舌打ちしながらも、コースを修正し続ける。

 

『ポッドはどうなんだ! 最悪の場合、核ごと破壊するしか……』
「そんな! 俺のなのに! 俺の核なのにぃ!」

 

 その可能性を頭から追い出し続けていたシンが金切り声を上げた。涙目である。

 

『地球に落ちたら、どのみち回収はできないんだぞ!』
「そ、それはそうですけど。でもアーサー艦長! あれは……」

 

 口ごもるシン。その時、別の回線から通信が入る。特に何も考えないままスイッチを入
れた。地球連合軍のパイロットスーツ姿が浮かび上がる。

 

『こちら、地球連合軍第6衛星軌道艦隊だ。プラント方面から高速で接近する物体をキャ
ッチした。詳細な情報を要求する』
「えっ……」
『あれお前、どっかで見た事が……ああ、シ』

 

 通信を強制終了し、白い顔から更に血の気が引いたシンが、トリガーに指をかけた。う
かうかしていると、連合軍にポッドを破壊される。信じられない幸運によって手に入れた、
幸せを呼ぶ戦術核。青くも黄色くも無いのだが。

 

「ブースターを……ブースターを狙うんだ。減速させるんだ。今なら軌道が変わる」
『シン、どうした! 報告を!』
「俺の金! 俺の核! 俺の老後! 俺の! ああああぁっ!!」

 

 最早弾をばら撒くしかない。半狂乱になったシンが、三点バーストに切り替えて撃った。

 
 

 ザラ派テロリストが使用した急造の核攻撃ポッドは、2段階のフェイズを想定されてい
た。まず地球の近辺まで全速力で飛ばし、その後逆噴射で減速させ、大気圏突入コースを
算出する。シンがトリガーを引き絞ったのはその瞬間だった。つまり、狙いがブースター
から核弾頭へと逸れた。
 更に、減速しコース計算を終えた10発の弾頭は傘状に展開し地球全土、広域に降り注ぐ
筈だった。ワシントン、ブリュッセル、モスクワ、そしてオーブ本島その他、10の主要都
市へ。そしてジンの突撃機銃から撃ち出された3発の弾丸は、角度を変えて射出した10基
の核弾頭の内、中心に近い1基に集弾していた。しかも角度が変わった事により、垂直に、
かつ移動しながらの着弾だったので、全く同じ場所へ3発。1発目が大気圏突入用ポッド
の外側を穿ち、2発目で外殻を破壊、3発目が飛び込んだ。その衝撃で信管が誤作動する。

 

「いひ、ぇへ……」

 

 ブースターロケットを狙い撃ったら核爆発が起こって全てが消し飛んだ。この凄まじい
現実を認識できないシンが、真昼のように明るくなった宇宙を目にして笑う。

 

『核爆発を確認した! シン、そっちは大丈夫なのか!……し、シン?』
「はっは! あっひゃははははっ!! 俺のぉ、俺のおぅふふふ」

 

 涎と涙を散らしながら、シンは笑い続ける。衛星軌道で待機していた地球連合軍の艦隊
には傷一つついていなかった。シンもびた一文儲からなかった。
 降って湧いた幸運は流れ星のように終わり、コズミックイラの神話が幕を開ける。

 
 

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