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SCA-Seed_GSC ◆2nhjas48dA氏_SEEDDtheUntold_第10話

Last-modified: 2009-03-04 (水) 00:52:50

『俺を、殺さないのか』

 

 大破したシンの機体に背を向けたままのIジャスティス。
そのコクピット内で、ヤラファス島が連合軍の降下部隊に蹂躙される様を眺めていたアスランが、
通信モニターの映像に目を向けた。
「殺す必要が無い。俺なら、今のお前が何を仕掛けても封じ込める事ができる」
『く……!』
「それに、殺す価値も無い」
 シンの呼吸が荒くなるのを感じ、アスランの口端が吊り上がった。
『ふざけるな!』
「真剣さ。今のシン=アスカには何もない。コクピットにライフルを何発撃ち込んでも、
 サーベルで斬り刻んでも、生身のお前を絞め殺しても、俺はお前から何も奪えない」
 一息で言い切ったアスランが目を細める。 翡翠色の瞳が、モニターの光で危うい輝きを放った。
煙が充満したM1カスタムの機内で、シンの紅い瞳が揺れる。
『何を、言ってるんだ』

 

「シン、力を手に入れろ。もう一度立て……いいや、何度でも立て」

 

 装甲車が1台、金網を破って空港の滑走路に入り込んできた。
工具を持った連合兵士が降車し、シンの機体に近づく。

 

「今日という日を覚えておけ。
 力が無いことが、物を知らないことが何を引き起こすかを覚えておけ。
 お前は、二度とこの惨事を生み出さない為に戦うんだ」

 

『アスラン……? 何を』

 

「戦い続けろ、シン。皆を守るんだ。俺は……」

 

 シンの言葉を遮るアスラン。M1カスタムのコクピット部分に取りついた兵士が、
高周波カッターを起動させた。アサルトライフルを構えた2人が、彼の左右を固める。

 

「お前が守る大切なものを、何度でもこの手で潰してやる」

 

シンの目が見開かれるも、映像が直ぐに消えた。M1カスタムのハッチが破壊されたのだ。
ブラックアウトした画面に目をやるアスランは、何時までも笑みを浮かべていた。

 
 

 放心状態のカガリ=ユラ=アスハが、腹心の血で汚れたオーブ軍の制服を着たまま
連合軍の兵隊に引き立てられていく。
その背中にハンドガンを向けているのは、同じオーブ軍の兵士達だった。
彼らもまた拘束され、武装を没収される。

 

表面の各所が焼けたシールドを持つスローターダガーの機内で、1人の少女が
その様子を見下ろしていた。その傍に別の機体がやってくる。
人間を模した手足がついていなければ、MSとは解らなかっただろう。
ウィンダムを基礎としたその機体はほぼ全身にミサイルランチャーを装備し、
その合間に姿勢制御エンジンが並び、背面には大型のロケットブースターを背負っている。
V字型のアンテナも排除され、側頭部から1対のアンテナが真上に伸びていた。
腕に固定されたヘビーマシンガンの銃身が黒光りを放つ。
くすんだ市街迷彩のあちこちに、薄紅色のラインが入っていた。
『初の実戦だったけれど、トラブルはない? 少尉』
 重火力機体、コードネーム『ブロッサム』に乗っているのは、20代後半と思しき女性。
訊ねられたスローターダガーに乗る少女は、ゆっくりと首を横に振った。
「ありません、レナ=イメリア大尉。お気遣い有難うございます」

 

『シミュレーター通りに出来たという事ね。コーディネイターは争いが好きだから』
 その言葉に少女は何も言い返さない。しばらくの沈黙を破ったのはレナの方だった。
『私の言葉、後半は忘れて……任務と無関係な発言だったわ』
「コーディネイターを嫌う人が多い事は理解しています。気にしていません」
 少女はそう言ってレナから視線を外し、破壊された街並を眺める。
半ばから崩れ落ちたビルが大通りを塞ぎ、あちこちで黒煙が上がる。
瞬く小さな光は、歩兵部隊の戦闘によるものだ。
ジェットストライカーを装備したウィンダムがロケットを放ち、
オーブ軍が市街地に急造したバリケードを粉砕する。
『お兄さんに関する、新しい情報は見つかった?』
「はい、オーブ軍の三尉で、MSパイロットをやっているという事だけは」
『皮肉ね、アスハ家の失策で両親を亡くしたのに、軍人としてオーブに舞い戻るなんて』
「その前はザフト兵でした。兄の自業自得です……
 けれど、可能なら2人で暮らしたいと思っています。たった1人の家族ですから」
 攻撃ヘリの編隊が、スローターダガーのすぐ脇を飛び去っていく。機体をその方向へ向かせた。
操縦桿を傾ける右腕が、パイロットスーツ越しに低いモーター音を上げる。

 

「イメリア大尉、私は……ずっと戦闘が嫌いでした。ラボで調整されていた時も、
 人を傷つける事に慣れなかった。シミュレーターとはいえ……」
 少女の声を聞くレナは、何も答えなかった。少女を強化したラボはロドニアと同じく、
研究成果を急ぎ非人道的な実験や訓練を繰り返した場所として知られているからだ。
自分達人類の頭上に巣食うプラントを一掃するという大義名分があるとはいえ、
幼い少年、少女を生体CPUとして運用する事には抵抗があった。
「でもそれは間違っていました。シミュレーターしか知らなかったから、わからなかった。
 壊れる建物が、噴き上がる火が、流れる血が、上がる悲鳴が」
 声を上ずらせ、少女は続ける。スローターダガーの足元ではカガリが叫んでいた。
誰かの名前を呼んでいた。兵士がそれを押さえつけ、もう1人が猿轡を噛ませる。

 

「こんなに、綺麗だなんて」

 

『帰還命令が出たわ。洋上まで戻りましょう……マユ=アスカ少尉』

 
 
 

 宇宙。
一瞬の間隙を突き、グレーとホワイトで塗装されたMSがザフトの部隊に急接近する。
敵の有効射程に入る寸前、その両肩からスラスターの噴射光を引いて何かが射出され、機体から離れていく。
高性能のレーダーとセンサーを搭載した狗面でツインアイが光り、
突き出したシールドと腕部でライフルを固定し、連射した。
 回避行動を取るザクの頭部が吹き飛ぶ。バイザー型カメラを持った2機のユニットが、
全身のスラスターを小刻みに吹かしながら敵部隊の斜め後ろから食らいついた。
『気を付けろ! ドラグーンと動きが違う!』
 撃ち出される弱収束型の短距離ビームをシールドで防いだグフの目前に回り込んだそれが、
コクピットハッチを破壊した。
肉食獣のような有機的な動きで、かつ最低限の射撃で執拗に標的を追う。
『駄目だ! まだついてくる! 何でエネルギーが尽きないんだ!?』
『母機から狙え! ……ぁ』
 角付きザクに乗るパイロットが息を呑む。
狗面のMSの後方から光が走り、推進剤の尾を引いたミサイル群と連装ビームが殺到してきたのだ。
2機のゲイツRが巻き込まれ、自機もまた左脚を失う。
『このブロックを放棄する! く、くそっ……降伏さえ許されないとは』
 2機のワイヤレスバレルを両肩に戻した狗面は、ザフトのMS隊が完全に有効射程の外へ
離脱するのを見届けてライフルを降ろす。

 

その後方に接近してきたのは、五指を模した両手のビーム砲口に淡い光を残す大型MAデストロイ。
といっても円盤状ユニットと大砲の代わりに、ミサイルランチャーと幅広の翼を背負い、
バランスを保つ為か前屈みで、鳥のような足部、いや脚部全体が大型化していた。
『上手いもんだな、アーガイル曹長』
 コードネーム『ウルフパック』。狗面のMSに乗ったモーガン=シュバリエ大尉が、
皮肉げな笑みで大型機、コードネーム『コロッサス』に乗った部下を労った。
「いえ、だいぶ逃げられました……発砲を焦ったんです。もう少し近づけば良かった」
 俯き加減で謝ったサイ=アーガイルは、無意識にフェイスプレートへ手をやる。
今は眼鏡をかけていない事を思い出し、操縦桿を握った。父ほどの年齢であるモーガンを見る。
「追跡は?」
『要らんよ。すぐコロニー攻撃に移る。そろそろ通信が来るぞ』

 

『地球連合軍の全将兵、いいや全人類に告ぐ! 時は来た!』

 

 モーガンの言葉が終わる寸前、老いてはいるが野太い声が機内に飛び込んだ。
サイが手元のコンソールを操作し、コロッサスのカメラモードを切り替える。
アガメムノン級を後方に、ネルソン級を左右に従えた、改アークエンジェル級機動特装艦が3隻。

 

『エイプリルフール・クライシスによる10億! ブレイク・ザ・ワールドによる5億!
 15億の悲嘆と、85億の怒りを今こそ! 2000万の侵略者に叩きつけるのだ!』

 

 双胴艦首に装備された陽電子砲ローエングリンが、ゆっくりと展開していく。

 
 

 エイプリルフール・クライシスとブレイク・ザ・ワールドが引き起こした詳細な被害は解っていない。
全地球レベルで起こり、かつ強烈過ぎる二次災害、三次災害に見舞われた以上、
どこまでが何によってもたらされた被害か、誰も明言できないのだ。

 

『プラント、そして彼らの武装組織であるザフトが目指した所が地球の征服、
 あるいは荒廃である事に疑う余地はない!
 彼らは自らの意思で平和を捨て、自らの意思で全ての協力者を断ち、
 自らの意思で無差別攻撃を行ったのだ!』

 

蹴散らされたザフトのMSや艦船の残骸を弾き飛ばし、アガメムノン級空母が前進する。
核ミサイルを抱えたオートパイロットのメビウス部隊が発艦した。
急造されたMA輸送艦の各所から、ケンタウリやカラパスの群れが飛び立っていく。
姿勢制御し、隊列を組んだ。

 

『我々人類は、幾つもの過ちを犯してきた!
 しかし我々人類は、幾つもの過ちによって生み出された災厄に敢然と立ち向かってきた!
 生きる為の戦いこそ、我ら人類の歴史だ!』

 

演説とは裏腹に、今の連合軍兵士達を突き動かしているのは怒りや憎しみではない。

 

 『恐怖』だった。

 

わずか2000万に15億人を殺され、その爪跡は未だ消える見込みが立たない。
宇宙の化物という呼称は、軍部のプロパガンダによってのみ生み出された物ではないのだ。

 

彼らを完全に消し去ってしまわなければ、最後の1人まで殺し尽くさなければ、

 

次は何億の命が消えるのだろう?

 

次は誰の命が奪われるのだろう?

 

長年連れ添った妻か、それとも最愛の我が子か?

 

今度は防げるのだろうか?

 

史上最悪の攻撃を僅か4年で2回行った彼らの行動を予測できるのだろうか?

 

『引き金を引きたまえ、兵士諸君!
 胸に抱く怒りのままに! 故郷に残した愛する家族の為に!
 この世界を、人類の手に取り戻すのだ!!』

 

 夥しい数の噴射炎が連合軍の大艦隊から飛び立っていく。未だ機動部隊は動かない。
プラントの防衛部隊を粗方壊滅させた後、4度に渡る核弾頭を用いた飽和攻撃でコロニー群に
ダメージを与えた後、突撃するのだ。
『着弾を確認! 着弾を確認! ハハハハッ! 砂時計が真っ二つに割れていくぞ!』
『ビクトリアを思い出したか!? パナマを思い出したか!? 宇宙の化物共め!』
『第2波からは狙いを絞れ! 中央部に2発当たれば良い! ミサイルが勿体無い!』

 

「あ、ぁ……」
 望遠モードに設定したモニター内で次々と破壊されていく砂時計型のコロニー。
それを見ているサイが、掠れ声を上げる。
この光景を望んでいなかったわけではない。
自分を見下し切っていた、キラ=ヤマトの同種が万単位で死んでいく様は、本来愉快な筈なのに。
『まったく下らんぜ。何が世界を取り戻すだ……
 ロゴスの面々が失脚して、理事国内の責任者が居なくなったからだろうに。
 ああ、再開発の目処も立ったんだっけな』
回線越しにモーガンの冷笑が響くが、まともに聞けない。乗り物に酔ったように視界が揺れ始めた。
コロニーが内部から砕け、民家や乗用車が宇宙空間に放り出されていく。

 
 
 

プラント全域への攻撃は全世界に報じられ、
地球連合軍は破壊し尽くしたコロニー群で幼児を含む28人を保護。

 

彼らを殺害『しなかった』事で各メディアから批判を浴びた。

 
 

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