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SCA-Seed_GSC ◆2nhjas48dA氏_ep1_初期案

Last-modified: 2008-01-06 (日) 22:59:25

「どんなに吹き飛ばされても、僕達はまた花を植えるよ」
「それが俺達の戦いだな」
 オーブに建つ、戦いで破損した慰霊碑の前でキラとアスランからそう言われ、目を伏せた。
肩が小刻みに震える。
「一緒に戦おう」
 頬の右側を照らす夕日が眩しくて、視界がぼやける。否、日差しの所為ばかりでは無い。
伏せたままの両目に涙が滲んだ。
 情けなかった。こんな薄っぺらい台詞を吐くような連中に、自分は負けたのだ。確かに
デスティニープランは強引な政策だった。デュランダル議長も何を考えているか最期まで
はっきりとは口にしなかったし、レイも同様。しかしそれは、戦争であらゆる物を失った
自分が見つけた唯一の拠り所だったのだ。
 それをよりによって、こんな、何の具体案も示さない、力だけある無法者に。けれども、
胸中で相手を罵倒していたシンは気付いていた。自分は違うのか。自分はこの連中よりも
優れているのかと己に問いかければ、答えは明確なノーだった。相違点があるとすれば、
相手は強く大勢で、自分は弱く小勢という事。
「シン……」
 後ろで自分の名前を呼ぶルナマリアを、涙で濡れた眼が追おうとする。彼女は自分の
傍に居てくれるだろうか?ノーだ。生死を共にしたのはあくまで任務だったから。自分が
キラやアスランに背くと言えば、間違いなく彼らの側につく。当たり前だが。
 頬に涙を伝わせたまま、シンは正面を向く。彼らの内面を表現しているかのような笑顔
を見た。憎しみに任せて飛び掛れば、どちらか1人は殺せるだろうか。無理だと悟った。
仮に銃を持っていたとしても、一番忌み嫌っているアスランに容易く取り押さえられる。
 こんな事すら出来ないのが今の自分だ。だからもう、どうでも良かった。
「はい……」
 差し出されたキラの手を涙ながらにとって握る。理想は砕けた。仲間は散った。残った
のは打算だった。敗北して何もかも失ったとしても不思議ではない自分に、彼らは再び
社会の明るい場所へ戻る機会を与えてくれる。それで充分だった。
 構わないじゃないか。それで、良いじゃないか。意地を張って何になる。自分に、一体
何が出来るというのか。
「はい……っ」
 キラの手を取ったまま、シンは深く項垂れ涙を零した。夕日が眩しかった。

 

「シン、整備終わったぜ」
 ローラシア級駆逐艦『ベーテ』のMS格納庫で、整備士のヴィーノがシンに声を掛ける。
ヘルメットを被り、シンは自分のゲイツを見上げた。
「いつも有難う。……ゲイツか。Rより俺向きだな」

 

「スラスターの推力は高めに設定しといたぜ。お前、いつも振り回すから」
「爆発しないだろうな?」
「そりゃあ腕次第だ」
「こいつ……」
 小さく笑い、ヴィーノの赤く染めた前髪をグローブの指先で弾く。
「そういえばさ、シン……ルナマリア、戻って来ないな」
「オーブに住み着いたらしい。メイリンと2人で、アスラン=ザラを追いかけてるってさ」
「さすがミニスカ姉妹、っと!」
 格納庫に響き渡るMS発進時のブザー。それを聞いたヴィーノが床を蹴った。壁伝いに
安全エリアへ避難していく。
「気をつけろよ、シン! 頑張れ!」
「またレーダー網にゴミでも引っかかったんだろ。大した事無いよ」
「でも、トライン艦長は気になるって……」
「副ちょ……艦長はいつも心配性だからなあ」
 ゲイツのコクピットハッチから機内に滑り込んだシンは、MSを起動させた。慣れた
震動が全身を包む。
「それに、もし本当にヤバかったって……大した事無い。どうせキラ『様』が何とかする」

 

「キラ? いらっしゃらないのですか?」
 アプリリウス・ワンに新しく建て直されたクライン邸の廊下を、ラクスが足早に進む。
ピンク色のハロを抱いて、無邪気そのものといった様子で部屋を見て回っていた。
「今夜のオペラだけれど、区画の臨時通気点検とかで取り止めになってしまったのです。
だから、前にお話したレストランに……」
 毛足の長い上質のカーペットに、何か重たい物が落ちるくぐもった音が聞こえた。
「キラ?」
 ラクスがドアを開けた。白服を着た青年が倒れていた。紅茶が入っていたカップが傍に
転がっており、目を大きく見開いた彼は小刻みに震え、目元を脂汗が垂れ落ちる。
「キラ……キラッ!!?」

 

「どんな厄介な相手だって、どんな拙いトラブルだって……」
『進路クリア! 発進、どうぞ!』
「シン=アスカ、ゲイツ行きます!」
 オペレーターのアビーに促され、シンはフットペダルを踏み込んだ。慣れ親しんだ、
心地良い加速G。MSの脚部がカタパルトから離れ、開放感に目を細める。
「あの強くて優しいキラ様が、何とかするんだ……そうさ」
 凍て付く闇を見つめ、シンはモニターに映った己の顔を嘲笑う。
「悔しいのかよ? この……負け犬」
 青白い光の尾を引いて、シンのゲイツはローラシア級から遠ざかっていった。

 

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  • 335 名前:GSC ◆2nhjas48dA 投稿日:2008/01/06(日) 21:07:20 ID:???
    エピソード気僚藉案をリファインしたものです。シンは正気を失っていないし、
    もっと人間臭いというかマトモです。構想段階でボツにしてしまったのですが、
    ふと思い出したので投下させて頂きました。当然、続きは考えていません。