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SCA-Seed_GSCI ◆2nhjas48dA氏_第20話

Last-modified: 2007-11-30 (金) 19:30:02

 彼らにもたらされた情報によれば、今日こそは一大決起のチャンスだった。連合軍基地のMS部隊はほぼ全て外部に出払っている『筈』であり、基地には連合軍高官の汚職を証明する文書が山積みになっている『筈』だったからである。これまで、ガルナハン基地司令に偽装した『筈』の救世同盟支援者が提供した情報に誤りは無く、彼らはレジスタンスらしからぬ連戦連勝を続けてきた。これからも、そうである『筈』なのだと、誰もが疑わなかった。自分達は、正義の為に戦っている『筈』なのだから。
 渓谷内部に建設された簡易隔壁を破壊した一団は更に北上する。ゲイツRが3機、既に旧式となったバズーカ装備のジンが4機。ガルナハンの住民であった彼らは、2年前に連合軍のガルナハン基地が陥落した際、逃げ遅れた地球連合軍兵士へのリンチに参加した経験があった。
 とある男は、手足を押さえつけられた連合軍兵士を銃殺した事を、未だ仲間内での自慢話としていた。
あの武勇伝をもう一度というわけである。
『良いか、あのジェス=リブルとかいう奴のカメラは必ず見つけて、間違いなく壊すんだ』
『ああ、この後の革命に差し支えるから、だろ?』
 現ガルナハン基地の司令は、家畜の世話では一生掛かっても稼げない程の金品と、MSという名の手っ取り早い暴力を提供した。いち早く基地司令側に立った救世同盟の『闘士』は、次にそれを使って同調しない住民を買収あるいは恫喝し、情報の漏洩防止を目論んだ。それを邪魔したのが、コニールとジェスだったのである。
『コニール、あの裏切り者が余計な真似を……!』
『基地と一緒に死んで貰えば良い。あんな女は』
 かつて良き遊び仲間だった男が吐き捨てた。自分の誘いを蹴ったばかりでなく、裏切ったのだ。
当然の報いである。
『おい! レーダーに……!』
 先頭に立って移動していたジンが後ろへ跳び下がり、無駄話は止んだ。しかし、既に遅過ぎた。
 ジェットストライカーの群が生み出す、海鳴りのような爆音。雲1つ無い青空を覆い隠す巨人の影。

 僅か3秒足らずで彼らは包囲された。ウィンダムが4機、ダガーLが8機。合計12機の連合軍MSが、崖の上から、峡谷を見上げる空からそれぞれの火器を標的に突き付ける。

「テロリストに、告ぐ」
 レーダーとコクピットのインターフェイスを指揮官仕様に改装されたウィンダムの機内で、連合軍大尉はMS用の新戦術ソフトをドライブさせた。連合軍内部で開発され、ダイアモンドテクノロジー社の協力を経て完成されたこのソフトは、連合軍の長所である規模の大きさによる優位性をより効率よく発揮する為の、新型OS、サポートAIと並ぶ三種の神器のひとつであった。
 2度の大戦を経て、MSはようやく兵器として一応の完成を見たのである。
「連合軍所有の資産を破壊した君達を、エネミーとして排除せねばならない。尚、我々は君達をザフト、オーブの正規軍として認識してはいない事を、この場で再度確認しておく」
 サブモニターに、蜘蛛の巣のように広がった光線が各小隊のユニットとリンクする様が示される。
「つまりこの件に関し、地球連合はプラント、オーブ双方に抗議しない」
 救世同盟側からの通信を全てシャットアウトしたまま、大尉は続ける。
 大尉は、ザフトのイザーク=ジュールと1つの非公式契約を交わしていた。命令書を受け取った以上、連合軍の軍人として踏み込み、捜索する任務を果たさねばならない。しかし、諸事情によって任務遂行が遅延する事は考えられる。
オーブ、プラントへの抗議を行わないのは、僅かな間ながら、パワープラントエリアに密室状態を作る為。ジュール隊に、小細工する時間を稼ぐ為。
 そして、自分達の戦友を私刑したガルナハン住民らに復讐する為。
「攻撃を開始せよ」
 イザークを信用したわけではなかった。ただ大尉は戦争を好むタイプでは無い。MAメビウスのパイロットとして入隊し、足掛け4年間戦い続けた彼は平穏を欲していた。だからプラントの為とはいえ、争いの火種を揉み消さんとするイザークの要求を受け入れたのである。
 だが、猛禽のように飛び回る友軍機の状況を確認しつつ、大尉はかぶりを振った。
「いや、違う。私はコーディネイター同士で潰し合いをさせている。……それだけだ」
 イザークと共にいた、黒髪に赤い瞳の少年を思い出す。彼は、息子と同い年なのだ。

 ガルナハン基地から出撃したMS隊が通っていった渓谷を大回りし、2つの部隊がスラスターを使った小跳躍を繰り返して南下する。シンのダガーLとイザークのグフ・イグナイテッドにはフライトユニットが装備されているが、余り高度を上げすぎると防空レーダーで早期発見されてしまうからだ。
『改良されているとはいえ、MSのバッテリーは無制限ではない。基地に到達するまでを計算に入れると、戦闘可能時間は20分足らずだ。気を抜くな!』
 東側を進むジュール隊の通信を聞くシン。西側を担当する彼は、同行するザク3機に通信回線を開いた。
「俺達の仕事は基地内部の攪乱だ。状況は解らないけど、とにかく派手に暴れて敵の意識を引き付ける。
で、ジュール隊が目的を果たしたら一目散に逃げ出す。何しろ海賊だからさ」
『シン、基地には陽電子砲台があるらしいが、それはどうする?』
「いや、まさか撃たないだろ? 自分達の街を住めなくするような事はしない筈だ」
 シンの言葉に、今度は分割モニターに映ったヒルダが口を出す。
『そりゃあ解らないさね。騙された奴がトリガーを握ってるかも知れないしさ』
「騙されるような馬鹿な連中に、陽電子砲なんて任せないだろ」
 口を尖らせるシンに、ヘルベルトは肩を竦めた。
『どうかな。あのジェスって野郎の言う事が本当なら、救世同盟の司令官ってのは手段を選ばないだろう。ザフトが管理する基地で陽電子砲が撃たれれば、スキャンダルになる』
『嘘じゃない』
『下がってろよ新聞屋。死ぬぞ?』
『ジャーナリストだ!』
 シン達の後方から追いかける、ジェスのMS『アウトフレーム』からの通信にヘルベルトが言い返し、シンは溜息をついた。戦闘エリアへの同行を求めた、もとい強行したジェスは現在、アウトフレームの頭部カメラ内部にいる。機体を操縦しているのはカイト=マディガン。彼のお守り役だと自称しているが、素性は定かでない。
「まあ、素性が定かじゃないって言うのは、俺達も一緒だけどな……気をつけろ!」
 基地の方から連続して聞こえた砲声に、シンが叫ぶ。直後、彼らとジュール隊の進行方向に、ほぼ直上から降り注いだ砲弾が炸裂して爆発を起こした。停止を余儀なくされる。
「もう気付かれたのか!」

『精密過ぎます。恐らく、予め此方のコースを読んでセンサーを仕掛けていたのでしょう』
 シンの声に答えたのは、ジュール隊のシホ。彼女の青いゲイツRの左腕に固定されているのは、盾表面に低出力ビームシールドを展開し、耐弾性能と耐ビーム性能を両立させつつエネルギー消費も抑える事を目的とした、彼女自らが設計した試作装備である。結果、大型化した為に武装はビームカービンと盾に納めたビームトマホークのみ。シールドに銃眼を設け、防御能力を大幅に上昇させた。
『この爆発、ザウートのキャノンだな。へえ、腕の良いのがいるもんだ』
『第2射、来るぞ!』
 ディアッカの軽口にイザークの声が被さり、今度はより近い場所で、後方に着弾する。
爆発が機体を揺らし、破片が機体に当たる高い音にシンは思わず息を呑んだ。
『停まっている暇は無い! とにかく前進し、基地に踏み込む!』
「く……」
 イザークの言葉に、シンは俯いた。MS7機による強行突入。基地には何人残っているのだろう。
 この『騒動』に無関係な人間もいるのではないだろうか。
 今度は、何人救い損ねるのだろうか。
「ジュール隊に遅れるな!」
 胸の内のわだかまりを吹っ切って、シンはヒルダ達に叫ぶ。砲弾が降り注ぐ中、彼らは基地へと進む。

 渓谷内部。四肢を無残に断たれ、バッテリーパックを背中からビームサーベルで一刺しされたザフト機体が横たわる中、連合軍基地から出発した装甲兵員輸送車が到着した。パワードスーツを着用したフル装備の海兵隊を満載したそれは、残骸の手前で停車する。最初に出てきたのはコニールだった。
『Msアルメタ、未だ戦闘行動は終わっていない』
 大尉の言葉に、コニールはウィンダムを見上げた。連合軍のMSには殆ど損傷が無い。端に立つダガーLのシールド表面が少しへこんでいる程度だ。
「……パイロット、は?」
『コクピットは損傷させていないと思うが。まだ近づかないでくれ』
 降車した海兵隊がバーナーとボンベを持って機体に近づき、ハッチを抉じ開けた。すぐさま別の海兵隊員が機内に入り込む、直後、アサルトライフルの銃声が渓谷内部に響き渡った。

「っ!!」
「危険です、Msアルメタ!」
 目を見開き、駆け寄ろうとするコニールを兵士が押し留める。ややあって、私服姿の男が放り出された。何処にも傷は負っていない。
「……?」
 訳の解らないコニールを他所に、残る6機にも同様の処置が施されていった。
『さて。君達の処置だが、実際罪を問うのは難しいと思う』
 大尉の言葉に、ウィンダムを見上げるパイロット7人は自然と一箇所に固まった。
『君達は単に、ガルナハンの基地司令を装っている何者かに利用されただけだ。そうだろう?』
「そ、そうだ!」
「俺達は脅迫されて、無理矢理戦わされてたんだ!!」
「基地司令の不正の証拠を持ってる! 証言でも何でもする!」
 口々に叫ぶ彼らに、コニールは堪らず顔を背けた。この展開は解っていたとはいえ、余りにも醜い。
遠くで響く砲声が意識を逸らしてくれる。有難かった。
『だが、今は戦闘中である上に、君たちは未だ容疑者でもあるわけで……となると、ガルナハンにも連合軍基地にも居させる事が出来ない。ついては、攻撃の届かない場所で避難して貰わねばならん』
 やってきた護送車が、兵員輸送車の後ろで停車する。
『今から君達を安全な場所まで連れて行くので、乗り込んでくれ。砲撃が此処まで届くかもしれん』
「食料と、水は……」
「ああ、先程通信機と一緒にサバイバルキットを破壊してしまったが、心配ない。移送後、直ぐ取りに戻る」
 海兵隊の言葉に安堵の溜息を漏らす7人。しかし、コニールには解っていた。
「待って、それは!」
『急げ! 何時攻撃が来るか解らん! 市民の安全を守るのが第一だ!』
 大尉の言葉に海兵隊は手早く動き、護送車に7人を詰め込み、2台の車両は走り去っていった。車に乗せられる時、誰一人としてコニールを見ようとはしなかった。全て顔見知りで、ザフトとオーブ軍によってガルナハン基地が建設されるまでは、友達ですらあったのだが、もう、何の意味も無い。
 膝を突き、蹲る。乾ききった渓谷の大地に雫が落ち、直ぐに砂を含んだ風で掻き消えた。
「私は……私はっ!!」

 コニールに対し、連合軍人達は声を掛けようとはしなかった。連合軍の基地が陥落した際、彼女の所属していたレジスタンスがザフトに協力したという事を知っているからだ。
 だが彼らと同じ目に遭わせるつもりは無かった。少なくとも彼女は未だ勝者の側に居り、自分達の協力者だからだ。それが、秩序というものである。
 何より、彼女だけを厚く遇する事は、他ならぬ彼女自身に対する復讐でもあるのだ。
『喉が渇いたら、何時でも言ってください。サバイバルキットに飲料水があります』
 連合軍パイロットの1人が投げかけた言葉に、コニールは声を上げて泣き出した。

 ガルナハン基地の地下格納庫にエレベーターで降りた、ザフトの白服を着た男は停めてあった1機のMSへ走る。ザフトのセカンドシリーズ、ZMGF-X23Sセイバーに類似したその機体のコクピットに乗り込み、ハッチを閉じる。
 頭部はディンのパーツを採用。両肩に可動アームで取り付けられたビームカービンサイズの砲塔。
左手にはビームサーベル機構を内蔵した小型シールド。右手にビームカービン。
 セイバーの試作量産機として設計された本機は、ガルナハン基地に配備されていた。
『予定通り、基地に攻め入られた。其方の準備はどうか?』
「問題ない。時間はどれほど稼げば良い?」
『10分といった所だな』
 モニターに現れた、ザフトの黒服姿の男に答える。両者とも、まるで仮面のような無表情だ。画面が分割され、オーブ軍服を着た男が通信に加わる。
『ザウート隊に砲撃を止めさせた。今、陽電子砲の最終ロックを解除している』
「了解。『撮影』と『通信』は任せた。では、セイバーALTで出撃する」
 動力が入る。後頭部のフェイスガードが降りて、スリット越しのモノアイが鈍く光る。
デザート迷彩を施された機体が、薄暗い格納庫の中で身動ぎした。
「待っていろ、ジュール隊。待っていろ、ミハシラ軍。今、殺されに行く」
 狭隘な格納庫で機体が飛び上がり、MA形態に変形する。強力なメインスラスターで、格納庫内部の設備を焼き、吹き飛ばしながら、MS1機通るのもやっとな、補助灯もない通路を疾走する。
「そして忘れるな」
 正面のシャッターが開き、灼熱の陽光が機体を照らす。更に推力を上げ、スラスターの青白い光を受け、機体全体が淡く輝いた。
「『50人』を、忘れるな」

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