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SCA-Seed_GSCI ◆2nhjas48dA氏_第48話

Last-modified: 2007-11-30 (金) 19:43:14

 ヒルダ達のコンビネーションでエミュレイターの駆るフリーダムを止め、最高のタイミングでシンが
仕掛けた。完璧な間合いで振り下ろされた筈のクリーバーはしかし、エミュレイターの機転によって
外れてしまう。両者の距離はほぼゼロ。フリーダムのビームライフルは下方を向き、腰と
背中の砲は展開できない。
しかし、動けないのはデスティニー兇眛韻犬世辰拭とにかく、大柄過ぎるのである。
脚部のミサイルランチャーはそのまま撃てるが、自分も爆発に巻き込まれる。左腕のシュレッダーと
右腕のクリーバーは言わずもがな。互いに、問題なく使える武器は頭部機銃のみだった。
 ヒルダ達も迂闊に援護できない。誤射の危険は勿論、僅かな隙があれば戦況を容易く
ひっくり返すシンとエミュレイターの実力を把握しているからだ。
『ちっ、シン! アレは無いのかい! 掌から出るビームは!』
「無い。くそ、こんな時に!」
 掌部ビーム砲パルマ・フィオキーナ。ストライクフリーダムとの戦いにおいて残っていた左腕も
大破し、現在改良も兼ねて製造中である。アサルトパックは、あくまで代用品なのだ。
「どうすれば良い。こいつ相手じゃ、生半可な攻撃は……」
 実の所、シンは未だ手札を残していた。しかしそれは危険過ぎ、威力も低く、全くもって心許ない。
『……アークエンジェルが来た! ジュール隊が近づいてくる!』
「拙いタイミングだ。このフリーダム相手じゃ、ちょっとくらい数が増えても……」

『敵機識別、フリーダムです』
「何だと? シンとあの3人が雁首揃えて、旧型1機に手を焼いているのか?」
 MAに変形したイージスブランが、シン達と戦う機体の上方をバスターノワールとブルデュエル改に
送信する。機内のイザークが唸った。
『少なくとも直前の戦闘映像を見る限り、フリーダムを操縦しているのは並のパイロット
ではありません』
「自動操縦でそこまで出来るのか、ただ1機有人式なのか……しかし」
 サブモニターで録画された映像を再生しつつ、イザークが首を捻る。
「このフリーダムの動き、ストライクに似ているような似ていないような……」
『MSに乗り立ての、スーパーコーディネイター様って事か?』
「うむ……が、より洗練されているな。まだ仕掛けるなよ、お前達」
 すぐさま突進するような真似はしない。ブルデュエル改の左腕が上がる。

『7機がかりで、パイロットの処理能力を飽和させちまうのも良いと思うんだが』
「飽和しなかったらどうする。悲惨だぞ」
 4人がかりでキラの乗るストライクを攻めた苦い記憶が蘇ったか、イザークが顔の傷を軽く抑えた。
「まあ、そうするにしてもだな。あのフリーダムが俺達を無視している間に、先制攻撃の
手を考えておく必要がある」
『へぇ、まさかお前の口から、考えておく必要があるだなんて言葉が聞けるなんてなぁ』
「……ディアッカ貴様、俺を何だと思っ」
『2人とも!』
 薄ら笑いを浮かべるディアッカと片眉を上げて気色ばむイザークの間に割って入ったシホが、傍らで
アークエンジェルのブリッジを呼び出す。
『ファクトリーの中央ブロックから何処かへ、大量のデータがやりとりされています!』
 情報戦に秀でるイージスブランが、自部隊以外の通信をキャッチしたのだ。
「何だと!? 何処かへというのは何処だ、シホ!」
『解りません。中継衛星を幾つも通している所為か、暗号化されているんです』
 アークエンジェルの艦長が顎に手をやり、ディアッカが眉をひそめる。
『おいおい、やりとりって事は……』
『我々の作戦が、何者かにモニターされているわけか。かつ、その何者かは此方側に干渉できる』
 その時、ナスカ級に乗るアーサーが通信に入ってきた。
『衛星の1つが、本艦の有効射程内に入っています。直ぐにでも破壊できますが』
『……通信インフラの破壊は、宇宙では殺人に匹敵する重罪だぞ、トライン艦長』
『え、ええ。その、最後の手段という事で』
 アークエンジェルの艦長に睨まれ、首を竦めるアーサー。
『中継衛星を破壊する必要はありません。受信側であるファクトリーの通信ブロックを
叩けば、これ以上のモニターを防止出来る筈です』
『調査対象だが……四の五の言っていられんか』
 リング状の区画を調査していた陸戦隊も危機に陥っている以上、最早猶予は無い。非公式の任務
という事もあり、どうしても人命を最優先させたくなるというものである。
『本艦とナスカ級は、最大戦速でファクトリーの中央ブロックに向かう。ジュール隊は
同行し、破壊活動に協力してくれ』
「チッ……了解」
 フリーダムの方を名残惜しげに見遣りつつ、イザークが肯定する。
「シホ、ネットワークの流れから目を離すな! 最低限の攻撃で、通信施設を潰す!」

『危険……危険……』
 巨大なスラスター光を引きずったアークエンジェルとナスカ級が、ファクトリーの中央
ブロックの脇を抜け飛び去っていくのを、自身のコピー越しにエミュレイターが認識する。
 かといって、自分を取り囲む敵機を無視する事も出来ない。
『セキュリティにアクセス……防御砲塔群、起動……起動、不能?』
 自分の操作を受け付けない。システムに重大な障害が発生していた。MS操縦をセミオートに切り替え、
データの海に潜る。ある場所から接続したハッカーに、セキュリティを掌握されつつある
という事が解った。場所は、コントロールセンターのプラグ。
 ガードロボットの1機にダイレクトリンク。薄暗い廊下で止まり、カメラを最大望遠
させて、
コントロールセンター内部を覗き込む。陸戦隊に守られ、プラグの傍でキーボードを
叩く細身のパワードスーツが視界に入った。
『確認……これより……』
 その時、ファクトリーの中央ブロックから閃光が上がったかと思うと、フリーダムの
ツインアイがゆっくりと明滅した。
『通信ネットワークに……深刻な、障害が……』
 フリーダムの機体が大きく揺れた。アークエンジェルとナスカ級の艦砲によって通信施設が壊され、
誤ったシグナルを受信してしまったからだ。
 そしてそれは、決定的な隙となった。

「そこだぁっ!」
 何かに躓きでもしたようなフリーダムを見て、シンが叫ぶ。デスティニー兇留Σ赦咾
クリーバーを手放し、内蔵された姿勢制御スラスターが一斉に開き、そのノズルが一つ
残らず肩へ向く。
 肘部分に一瞬光が生まれ、拳を作った右下腕部が『発射』された。姿勢を立て直したフリーダムの
横顔を殴り飛ばし、機体を派手に転倒させる。
「行け! 一気に畳み掛けろ!」
 肘から伸びるワイヤーで下腕部を引き戻しつつ、デスティニー兇左腕のシュレッダーを撃つ。
1発ごとにタイルを抉り小さなクレーターを生み出すそれは、しかし間一髪でフリーダムに避けられる。
 射撃武器は標的が近いほど当たりやすいが、余りに近すぎると照準を修正できないのだ。
特に、シュレッダーのような長銃身の武器は。

『何だこいつ? 妙に動きが鈍く……』
『構うな! チャンスを逃すんじゃないよ、野郎ども!』
 ヒルダ機の砲弾がタイルに当たり、爆発がフリーダムをよろめかせる。ヘルベルトの
ドムがビームサーベルで突き掛かり、腰のフロントアーマーを焼いた。
 反撃に移ろうとした時、デスティニー兇竜喇瑤開いてミサイルの群れが襲い掛かる。
残弾全てを使ったのだろう。至近距離から浴びせられた10発以上の小型ミサイルは流石に
かわしきれず、半数以上を食らって再びタイル面に叩き付けられた。
 尤も、背中からぶつかるような無様な真似はしない。虚空でバランスを取り、2本の脚で
壁面を踏みしめ、衝撃を吸収しきれず片膝を突く。タイル片が飛び散る中、右腰部に装備
されていた替えのビームサーベルを抜き放ち、再び左手に光刃を灯す。
 だが、反撃に移れない。データの送受信量が著しく落ちている上にミサイルを受け、各部バランサーが
変調をきたしているのだ。PS装甲によって外部の破損は免れても、内部に伝わる衝撃は防げない。
 その時、鼻先に実弾モードのスナイパーキャノンによる狙撃が着弾する。時間差で発射された榴弾を、
回避し、振り返ったフリーダムのツインアイにジュール隊の3機が映った。
 戦闘での勝利は望めない。エミュレイターはそう判断した。だが、まだやるべき事が
残っている。セキュリティにアクセスするハッカーを阻止する事だ。システム全てを掌握
されれば、自分の存在が発覚する可能性がある。それは避けねばならない。
 誰にも、自分を悪用させてはならないのだ。
そう、誰にも。

『おい、まだなのか!?』
『後少しです。何とか、持ち堪えて下さい』
 エコー7がそう返答した直後、彼女の目の前で機銃弾が跳ねた。
『チッ、しっかり援護してくれ!』
『1機たりとも部屋には入れてない。さっさとやれ!』
 工兵と、その戦友の通信に耳を傾けるエコー7。次に、彼女の真後ろに銃弾が当たる。
『……?』
 手元のキーをせわしなく叩きつつ、エコー7はふと上を見た。天井と壁の合わせ目に、
真新しい弾痕が見える。そして、3度目。右脇に銃弾が当たった。殆ど同時に、天井と
壁に火花が散る。
『まさか……跳弾を』
『ヤバイぞ、離れろ!!』
 殆ど同時に本能で危険を察知した工兵とエコー7だが、両者の行動は対照的だった。

 工兵は跳び下がり、エコー7はハッキングツールに覆い被さった。
『おい!?』
『ケーブルを延長している時間はありません。このまま私が』
 次の瞬間、真上からの火線がエコー7に降り注いだ。その身体が銃撃で踊る。
 エコー7が着用している軽装型のパワードスーツでは、機銃弾を防ぎ切れない。そして、
風と重力が無い室内での跳弾は、高い殺傷力を持つ。スーツの表面が幾つも爆ぜて、緩衝材として
入っていた青いジェルが飛び散る。それでも、エコー7の指は確かに最後のキーを押し込んでいた。
 ガードロボットのカメラアイから一斉に光が消えて、力なくその場に座り込む。
『くそ! 無茶しやがって! しっかりしろ!』
 難を逃れた工兵が、エコー7の所へ駆け戻った。
『心配……ありません。エアの漏れは、無いようです。穴は、塞がったみたい……』
 通信機越しの声は、その場にいる特殊部隊の隊員全てに聞こえる。今まで何度も聞いて、かつ絶対に
慣れない、慣れたくもない、粘ついた物が絡まる咳が言葉の合間に混じった。
『セキュリティシステムは、5分程で復旧します……は、やく、脱出を……』
 そこまで掠れ声で伝え、エコー7の全身から力が抜けていった。

 ハッキングの阻止は失敗した。自分の身体でツールを庇うとは、予測が及ばなかった。
『これが、人間というモノ?』
 目の前に、シュレッダーを構えたデスティニー兇いる。しかし、最早エミュレイターにとって、
敵は存在しなかった。自分の残滓については探査されても致し方ない。しかし、フリーダムに搭載した
己のコピーを解析されてはならない。そして、今の自分では7機のMSに勝てない。
 ならば、手段は一つである。
『メインシステム、アンインストール』

 今まさにシュレッダーの引き金を引こうとしたデスティニー兇料阿如▲侫蝓璽瀬爐
ツインアイが光を失う。PS装甲が解除され、灰色のディアクティブモードに入った。
バックステップしかけたまま機体が後方に流れ、ブルデュエル改が組み付いた。
『止まっ……た?』
 呆気に取られたシホの声に頷き、シンは小さく笑みを浮かべた。
「みたいだな。ともかく犠牲が出なくて良かった、帰艦しよう」
 クリーバーを拾い上げ、デスティニー兇魯侫.トリーの壁面を蹴った。

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