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SCA-Seed_GSCI ◆2nhjas48dA氏_第52話

Last-modified: 2007-11-30 (金) 19:45:08

 プラントから発進したと思われる民間機がザフトのMS隊に襲われ、航行不能にされる。
偵察に出たイズモのオオツキガタがもたらした映像を確認し、ロンド=ミナ=サハクは
即断した。プラント領に突入し、民間機を攻撃するMSを宙賊と見なし排除する、と。
 反対意見はなかった。ミハシラ軍は元々『そのような』組織であるし、ナスカ級の艦長
アーサー=トラインとジュール隊隊長イザーク=ジュールは元ザフトだ。現在、オクトーベル3で
警備任務に就いていたシン=アスカのアドバイスを交えた戦術が構築されている。
「バリアントとゴットフリートで、イズモとナスカ級を狙っておけ。沈められるようにな」
「え? か、艦長……?」
「狙うだけだ。撃てとは言っておらん。命令だ、やりたまえ」
 アークエンジェルの艦長は、そう言って制帽を深くかぶる。忍耐不可能な恥辱であった。
企業体と癒着した連合軍上層部の命令によってミハシラ軍なる海賊に協力させられ、挙句
今度は正義の味方面をして領域侵犯を敢行するという。
 彼は、ラクス=クラインとその一党を忌み嫌い蔑んでいた。その主張をではない、力に
物を言わせて秩序を破壊し、かつ未だに武力と権力を手放さない点だ。武と威によって
法を崩し、それを世界が肯定してしまえば悪習となる。同じ事をするつもりは無い。
イズモとナスカ級を撃沈してでも制止し、彼は己と自艦の『名誉』を守ろうとしていた。
 帰還すれば抗命の咎による処刑は免れないだろうが、それは瑣末な問題だ。自分1人の
暴走という事にすれば、クルーにも被害が及ばない。
 だが、ともう1人の自分が囁く。『誇り』はどうなるのだ?と。貨物船1隻で商売していた自分が軍に
入ったのは、宙賊によって仲間を殺され仕事を失ったからだった。今現在、望遠モニター越しに
繰り広げられているような暴虐を阻止する為、軍に身を置いたのだ。
 意地を貫き、軍法会議で吠える事は出来る。だが、この惨劇から背を向けた自分自身に、
どう申し開きをすれば良い?
 アークエンジェルの艦長は瞑目する。進めば『名誉』が滅び、退けば『誇り』が死ぬ。
「Alea jacta est…」
 古のフレーズを発音する。何処の言語だったか、誰が発したのか覚えていない。趣味の
古文書漁りで知った言葉だ。とある指導者が、途方も無く選択困難な状況で決断する時に
口にしたという。今の自分には似合わないが。
『……という事だ。艦長、異論は?』
「無い。……射撃シークエンスを中止しろ」
 名誉と誇りの板ばさみに苦しみつつも、彼はタクティカルディスプレイに表示される
情報を見逃してはいなかった。ブリッジクルーに命令を出しつつ、ミナに返答する。
『よいのか? かの三隻同盟と同等の行為に手を染める事になるが』

「良くはない。恐らく私はこの後、自分の判断を後悔する事になるだろう」
 ブリッジクルーにはっきりと聞こえる声で艦長は言葉を続けた。
「だが、其方に協力せよとの命令を受領している。それだけだ」
『フ……では、我がイズモに続け』
 ミナに敬礼するアークエンジェルの艦長。続いて、ブリッジを見渡した。
「メインエンジン、始動!」

 3機のドムの後、アークエンジェルからデスティニー兇発進する。脚部が大型な為に
カタパルトを使えないのだが、背部のヴォワチュール・リュミエールユニットによる加速
能力を駆使し、程無くしてドムトルーパー隊に追いついた。ヒルダ達から通信が入る。
『しかし、何度見ても悪そうだねえ。パイロットスーツまで悪そうになったからかね』
『しかも微妙に小者臭漂う悪さなんだよな。赤と黒とか、修理される度にでかくなるとか』
『毎回ヒーローの必殺技で蹴散らされるアレか』
「うるさい」
 ダイアモンドテクノロジー側の要請により、生体データをモニターできるブーステッドマン用の
パイロットスーツに着替えたシン。デスティニー兇汎韻献ラーに塗装されたそれは、
見た目に反し悪くない着心地だ。
 ともあれ、彼ら3人の冗談を聞いてもシンの表情は強張ったままだった。
「何で、ザフトの機体が民間の船を攻撃するんだ……しかも無差別に」
『今のところ推進機関の破壊のみに注力しており、乗員の殺害は眼中に無いようです。
同胞意識からか、それともそういう命令なのか……指揮が錯綜しており、船舶の破壊に
参加していないザフト兵もいる模様です、ジュール隊長』
 カブトガニのようなMA形態に変形したイージスブランに乗るシホが回線を開く。
『フン、コントロールできなくなった船があちこちに散らばってるんだ。殺すつもりが
無くたって、その内事故が起こるだろうぜ』
 バスターノワールに搭乗するディアッカが鼻を鳴らす。その横にフリーダムが並んだ。
『とにかく、一刻も早く状況を収拾する必要がある! ……ディアッカ、今回は俺が乗って
やっているが、フリーダムは元々貴様向きの機体なんだぞ』
『悪いねイザーク。このバスターに慣れちまうと、そっちの射撃精度が貧相に見えてさぁ』
「……正面、点滅する光が見えるか? あれがR1資源衛星群だ」
 彼らの会話を断ち切るように、シンが口を開く。
「防衛部隊の配置上、あのエリアが一番手薄になるんだ。クラインがザフト部隊の殆どを
引っ張ってった所為で、余計に手薄になってると思う」
『自動砲台2基を確認しました。付近にMSはいないようです』
「やっぱりな……」

 俯くシン。こういう情報を伝えるのはエコー7の役割だった。今、彼女はいない。
「直ぐ近くにオクトーベル3がある。まず其処へ行って、詳しく状況を調べよう」
 そう言って、シンは顔を上げた。
「オクトーベル3、か。……補足された!」
 機内に響くロックオンアラート。四方にアンテナを張り巡らせた砲台が、鉄アレイのような機体の
両端に搭載されたスラスターを小刻みに吹かし、大柄なデスティニー兇妨けて速射ビームを撃ち込む。
ウィングユニットと両肩のスラスターから生み出される推力で強引に回避し、左腕のシュレッダーを
突きつけ、スコープを赤く輝かせた。
 しかし一瞬早く、横合いから放たれたギガランチャーの弾が砲台を破壊し、爆発の華を
咲かせる。もう1基の砲台もフリーダムの腰部レール砲で撃ち抜かれ、スパークしつつ
機能を停めた。
「突入するぞ! 周り中から撃ってくるだろうが、俺達の敵は民間船を襲ってる奴だけだ。
ジュール隊はイージスブランを護衛する事を優先させて……」
『貴様にいちいち指示されんでも解っている! だからフリーダムは嫌だったんだ!』
 吼えるイザーク。いかに高い推力を持つとはいえ、全身を砲撃、射撃武器で固めたフリーダムでは、
必然的に間合いを離す戦い方を取らざるを得ない。イザークの趣味に合わないのだ。
「アンタなら突っ込んでも大丈夫だろうが、核エンジンに被弾したらどうするんだよ?」
『ぐ……ぬ』
 ただ、フリーダムを使わざるを得なかった事もまた事実である。数で圧倒的に劣る以上、
機体性能で少しでも差をつけるしかない。
『ど、どうせならジャスティスをけしかけてくれば良いものを……!』
「何言ってんだ。行くぞ!」
 フットペダルを踏み込み、機体を加速させるシン。残る6機も、デスティニー兇膨豹
するように飛び、7人のエースパイロットを乗せた機体が、高密度のデブリ海を疾走する。
その先に、戦闘の光が走っては消える砂時計の園があった。

『どういう事だ!あの保安装置は……』
「騙して申し訳ありませんでしたが、そういう事です。あなた方にはプラントを救って
頂いた後、私もろとも死んで貰う予定でしたが……相手が一枚上手だったようですね」
 シャトルの機内でコントローラーを握る補佐官が、何時もの冷たく乾いた声を発した。
『は、謀ったな……謀ったな、貴様!』
「私の肩書きをお忘れですか。補佐官の職務は謀る事です」

『くそ、こうなれば貴様を……な、馬鹿な! セクメトがこちらに』
 不意に途絶える通信。ノイズを吐き出すのみになったチャンネルを閉じる補佐官。
「ご心配なく。すぐ私も其方へ行きます。不服があれば、後で幾らでも仰って下さい」
 独りごち、補佐官は真上のキャノピーから外を見た。自分のシャトルは今、攻撃された
民間船に横付けしている。小破したその船に追撃をかけようとした、2機のゲイツRの
射線を塞ぐ形で。
『邪魔をするな、補佐官! 歌姫の御手より、お前の捕縛あるいは射殺命令が出ている!
ラクス様を謀り、ブルーコスモスと結んでこの悲劇を引き起こした……』
「お静かに」
 全くの非武装、無防備なシャトルに乗る補佐官の短い一言に、緑服のザフト兵が固まる。
フェイスプレートのミラーシェイドを解除した補佐官が、シャトルのハッチから現れる。
フック付のワイヤーで自身の身体を固定した後、ゲイツRへと向き直った。
「ザフト内の私的集団である歌姫の御手が、何故そのような権力を握っているか、此処で
問いはしません。私が保安装置を破壊した首謀者である事も認めましょう。しかしながら、
コロニーの循環システムはその保安装置によって破壊されたのです」
『ふざけた事を言うな! 自分の罪を逃れられるとでも思っているのか!?』
「事実を伝えようとしているだけです。脱出する民間船を破壊し、阻止しようとする
友軍機と戦う事は何の解決にもなりません。一刻も早く中止しなさい」
 柔らかい言葉遣いながら、有無を言わさぬ口調で告げる補佐官。無言で押し付けられた
ビームライフルの巨大な銃口をうんざりしたように一瞥し、その縁に手を置く。
「大体、各庁舎に保安装置の内部映像が送られている筈です。オクトーベルの市長が……」
『捏造したものだ! ラクス様が最も篤く信頼する方が、そんな事をやる訳が無い!』
「何を根拠に? クライン議長は全能ではない。そして……ザフトは彼女の私兵ではない」
『黙れ! 誰よりも平和を愛し、世界の為に戦ったラクス様は……』
 その時、補佐官にビームライフルを突きつけていた方のゲイツRが、相対的上方から
降ってきたザクウォーリアに突き飛ばされる。もう1機のゲイツRを振り向き様のビーム
トマホークによる一撃で後退させたそのザクが、補佐官へと向き直った。
『ご無事ですか、補佐官!?』
「貴女は……何をやっているのです。私はテロリストの首謀者ですよ」
 補佐官の脳裏に、空色の髪と紫の瞳の少女がよぎった。そうこうしている内に、3機の
ゲイツRがスラスター光を引いてやってきた。補佐官のシャトルと民間船を守るように、
互いの背中を預けビームライフルを構える。
『全部見て、聞きました! 保安装置の中身も、歌姫の御手があれを配置したって事も!
防衛部隊を再結成し、民間船の救助を始めています! 補佐官、貴方がいなかったら……』
 途中で詰まる声に、補佐官は小さく笑みを浮かべた。
「……そう、ですか」

「涙ぐましい抵抗だな」
 事態の核心を掴んだ少数のザフト兵では、歌姫に酔い暴徒と化したその他大勢を止める
事は出来ない。タクティカルディスプレイに映し出された戦況が、それを物語っていた。
当然だ。核心を掴む者は、何時も少数派だからである。
 モニターを切り替えた。循環システムを破壊されたコロニー内部の映像が表示される。
シャトルの発着場へと押し掛けるプラント市民。転んだ者を意に介さず、それを踏み付け
僅かに残った船へ殺到する。1隻が離床し、閉まるハッチから少年が突き飛ばされた。
 映像を受信したセクメト艦内では、全てのクルーが映像を目にしている事だろう。別の
場所が映し出される。シェルターの1つだ。内部設備が整っていない事を知り、恐慌状態
に陥った市民の1人が、家族の分なのかノーマルスーツとエアパックをまとめて奪おうと
する。それを別の1人が見つけ、掴み合いになった。
 貴重なエアパックの1つが、男性の身体に押し潰されて破裂する。作戦中なので音声を
聞けないのが残念でならない。映像を消し、男は呟いた。
「これが結果だよ、アスカ君」
 プラント領内のコロニーの6割で、先程の映像と同じ事態が進行していることだろう。
高揚は無かった。エイプリルフール・クライシスで似たような事を経験しているからだ。
『50人』にとってこれは残忍な復讐でも制裁でもなく、起こって当然の現象なのである。
「こちら1番機、標的を射程内に捉えた」
 フリーダムの翼が縦に折り畳まれ、代わりに2門のレールガンが肩にセットされる。
銃身上部に照準器が固定され、鈍く輝いた。機内のメインモニター正面に、豆粒のような
シャトルが見える。4機のMSに護衛されてはいるが、混乱する状況の為か、此方には
気付いていないようだ。
『片付けて。補佐官がこれ以上、邪魔になる前に』
「了解」
 セクメトの艦長から入った通信に短く応え、男は視界を限界までズームさせる。
シャトルに立つ、ノーマルスーツを捉えた。トリガーを引けば終わる。シンプルだ。
「……なんだと」
 引き金は引いた。放たれた弾丸が、重力も空気抵抗も無い宇宙空間を超音速で貫き、
補佐官のシャトルに着弾すると思われた時、肩のシールドを此方に向けたザクが、射線に
割り込んだのだ。引き金を引く直前か直後か、判別できないほどのタイミングだった。
 レールガンの一撃によってシールドがひしゃげ、ペイントと装甲表層が削れて銀粉を
散らす。ザクが大きくよろめくが、それだけだった。
「狙撃に失敗した。接近し仕留める」
『失敗? あなたが? ……そちらにセクメトを行かせるわ』
 その通信には応えず、男は広域通信回線を開いて叫ぶ。
「テロリストを庇いだてするのか! ラクス様の恩を忘れた裏切り者が!!」

『ベル、何だよ今のは! 何が撃ってきたんだ!?』
「解らない。けど、光るのが見えた気がして!」
 被弾したザクを立て直しつつ、女性兵士が応える。直後、通信回線から声が響いた。
『テロリストを庇いだてするのか! ラクス様の恩を忘れた裏切り者が!!』
「この声、御手の……」
 レーダーに映った光点を確認し、少女はメインモニターを凝視した。
「フリーダム……やっぱり!」
 先程の通信で息を吹き返したのか、追い散らした2機のゲイツRが戻ってきた。ビームライフルを
乱射して、何発も僚機を掠める。
「シャトルに戻ってください、補佐官! みんな、ゲイツRを何とかして!私は……」
 機体を向き直らせ、少女は迫る純白の天使を睨みつける。
「あのフリーダムを止める!」
『無茶だ! 止めろ、ベル!!』
「最新鋭機だけど……ザクで戦えない相手じゃない!」
 叫び返した少女が、操縦桿脇のスイッチを軽く2度押し込み、ハンドグレネードの
弾体選択を閃光弾に。シャトルと民間船が近いからだ。残弾、2発。ビーム突撃銃を
構えさせ、3連射した。ハイマットモードに移行したフリーダムが、機体をロールさせて
回避する。搭乗者の技能も相当高いのか、掠りもしない。
「速い……!」
 3発目を回避された瞬間、兵装をスイッチさせる。ザクの左手が腰部のラックに伸びて、
掴んだグレネードを投擲した。機動力を司るウィングユニットを損傷させたくないのか、
フリーダムが減速し、右サイドへ跳びはねる。閃光が生まれた。フットペダルを踏み、
光を挟んでフリーダムの真横へ移動。
ロックオン機能が働かないまま、光に向けて突撃銃を連射する。しかし5発目を撃った
ところで、ロックオンアラートが響き渡る。相対的下方を移動し閃光を『潜り抜けた』
純白の機体が、両肩にレールガンをセットした。ライトイエローのツインアイが輝く。
「くっ!」
 逆噴射で後方に逃れるも、間に合わない。レールガンの一撃で左脚を吹き飛ばされ、
機体が衝撃で煽られ無様なバク転を披露する。姿勢を崩した所でビームライフルを撃たれ、
機体を捻って直撃を回避しようとしたが、今度は宙を蹴った右脚を破壊された。
「ッ!!」
 コクピットに走る激震に、少女は歯を食い縛る。相手は強い。機体の性能差だけでなく、
操縦技術も自分より上だ。被弾に対する恐れも薄い。勝機が見えない。
「でも、此処で私が抜かれたら!」
 フリーダムのビームライフル射撃を、反応が鈍り始めた機体で懸命にかわす。

 距離を詰めようとするフリーダム目掛けて、少女は右の操縦桿を思い切り倒した。
ザクが、持っていたビーム突撃銃を放り投げる。純白の天使からのビーム射撃がそれを
撃ち抜き、内部の機構が爆発して視界を塞いだ。ビームトマホークを抜き放ち、爆発の
中へ突っ込む。自分の腕では、まともに戦っても勝ち目が無い。だからこそ、不意打ちに
全てを賭ける。光が収まった直後、半壊したザクはフリーダムの目の前にいた。
 少女が望む最高のタイミング。振り上げた手斧をフリーダムに叩き付けた。叩き付けようとした。
右腕が、振り下ろしかけた所で止まった。
「そんな……」
『素質と勢いは買おう』
 フリーダムの細長いシールドが、右手首に押し当てられている。
『だが、機体性能と経験が足りない』
 ゲイツRのそれと同じく、先端から伸びたビームサーベルが右腕を焼き砕く。しかし、
其処までダメージを与えておきながらフリーダムは離脱してしまった。訝る少女。
 その答えは直ぐに現れる。蒼と白に塗り分けられたミネルバ級戦艦セクメトが、高速で
接近してきたからだ。2連装高エネルギー収束火線砲『XM47 トリスタン』が、両舷同時に
展開し同タイミングで砲口に光が灯る。対艦戦では通常あり得ない、同時砲撃だ。
『逃げろ、ベル!!』
 同僚の声に、少女は呆然としたまま首を振った。出力が下がったこのザクでは逃げ切れない。何より
背後にはシャトルと、小破した民間船がある。その時、他チャンネルからの通信が入った。
『接近する反応……MS隊か! いや、1つだけサイズが大きい!』
『あれは……あの紅く光る翼は!?』
 ふと、何かに呼ばれたように少女は顔を上げる。仰向けになって流れるザクの上方で、
鮮血のような光翼がひらめいた。黒と赤の人型が、左腕の重火器を投げ捨て右腕の大剣を
両手で持ち直す。剣身を、翼と同じ色の光が包み込んだ。そのまま、落ちるような速さで
接近。同時に、目の前に閃光が満ちた。砲が発射されたのだ。
 しかし、竜のような脚を持ったMSが眼前に立ちはだかって影を生む。紅く輝く大剣を
大上段に振りかざす姿が一瞬だけ見えた。光が爆ぜて、目の前が真っ白に染まる。だが、
次に少女の目に映ったのは、彼女が想像したどの結末とも異なっていた。
断ち割られたビーム。二又に分かれた光の奔流の中心。虚空を『踏みしめる』巨体。
いかなる原理か、高収束高出力ビームシールドを纏うクリーバーで斬り裂かれた光が
鮮血色に染まり、背部の光翼を通常の2倍以上に膨張させる。砲撃の光が収まり、大きく
広がった翼がはばたくようなうねりを見せた後、元のサイズに戻る。闇が再び訪れた。
 胸部の単眼が瞳孔を細め、頭部のツインアイが輝き血涙が流れ、フリーダムの前に、
セクメトの前に、『最後の50人』の前にデスティニー兇立ちはだかる。許容値を超え、
シールドを形成するコロイド場が崩壊し、燃え盛るような光を放つクリーバーから左手を
離し、振り下ろしたその剣先をフリーダムに向けた。

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