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SCA-Seed_GSCI ◆2nhjas48dA氏_第59話

Last-modified: 2007-11-30 (金) 19:48:14

「考えを変えるつもりは無いんだな」
「ええ。僕は絶対に志願しませんよ」

 連合軍基地のシャトル発着場で軍人が向き合っている。
 歳若い方はコーディネイター、もう1人はナチュラルだった。

「お前は腕が良い。作戦に参加する資格は充分だ」
「命令が下れば従いましたが、来ませんでしたからね」
 肩を竦める。彼は去年連合軍に入隊したコーディネイターであり誰よりも、ナチュラルよりも宇宙に住むコーディネイターを憎んでいた。
「地球連合の今後にも関わってくる戦いだ。連合軍人として生きていくつもりなら……」
 生粋のブルーコスモス主義者である年配の男の言葉を、若い彼は激しく首を振って拒んだ。
「プラントに住んでる連中を、わざわざ助ける必要は無い! あいつらは化物だ!
 遺伝子の話をしているんじゃありません。性根の問題です!」
「俺も、プラントのコーディネイターを救うつもりはない。連合の為だ」
「結果は一緒だ! 彼らが連合に感謝すると思いますか? 今後協力していくと思いますか?
 被害者根性と自分達に都合良く歪んだエリート意識しか無いんですよ、彼らには!」

 エイプリルフール・クライシス、ブレイク・ザ・ワールドという2つの災い。
 宇宙に住まうコーディネイターが引き起こしたこの事件によって母なる星は疲弊し、
地球で生活するコーディネイターは耐えがたい苦境を強いられた。
 混乱によって財産を失い、生死を彷徨った事さえある彼のプラントに対する感情は、ごく一般的なものなのである。
 思想ではなく、必要の問題だ。だから彼は連合軍に身を投じた。

「……彼らは、プラントという組織によって歪められているだけだ。人は変わる」
「変わりませんね。化物は化物のままだ。2000万人、苦しみ抜いて死ねばいい!」
「シン=アスカを見ろ」
 そっぽを向いていたコーディネイター兵士は、その名前を聞いた瞬間に吹き出した。
 飲んだ唾が悪い所に入ったのか、激しく咳き込む。
「ぁっ……あんな、あんな特別なのを引き合いに出さないでください!」
「ま、まあな。それにオーブ出身だったか……だが、元ザフト兵で特務隊の男だ」
 言った本人も軽く吹き出し、2人とも微妙な笑顔で向かい合い直した。
 シン=アスカは、今や他の誰よりも話題に上っているMSパイロットである。
 オーブ戦における獅子奮迅の活躍、たった1人でエンブレイスを前にして切った啖呵、
そして二つ名が、彼を超がつく程の有名人かつ英雄に仕立てているのだ。
 地球連合艦隊とザフト残党との間でも情報交換が行われており、間も無く金的のシンは
コーディネイター、ナチュラル双方にとって共通の存在となるだろう。
「俺は『金的』を信じる。信じて、行く」
「なら生還してください。あのクズ共を助けるついでに戦死なんて、止めてくださいよ?」
 2人の兵士はどちらからともなくお互い敬礼し、それぞれ反対側に歩いていった。

「何よりも問題なのは、戦略砲セレニティによる超長距離精密射撃だ」
 地球の衛星軌道上に続々と艦艇が集結し補給と修理を行う中、イズモに戻ったミナはモニター越しの人々に告げた。
 幾人かが相槌を打つ。
『戦略砲のポジションは解ってるのか?』
「不明だ。エミュレイターから送られた地図に表示されてはいるが、信用ならぬ。だが、調べる方法はある」
『当ててやろうか。気に食わない奴を進入禁止エリアに放り込んで、発射方向を観測する』
 ミナと個人的に契約を結んでいる傭兵の1人が発言し、苦笑を誘った。
 ミハシラ軍司令ロンド=ミナ=サハクの人柄を考慮すると、あまり笑えないが。
「セレニティは通信衛星、航宙用ビーコンを利用して標的を捉える。
 つまりアクセスログを調べれば、おおまかな所在地は判明する。……移動しない限りは」
『データを見たが、移動用の推進装置がくっ付いてたよな?』
「そう。であるからして、先程の発言は正しいのだ」
 ミナの、笑み混じりの言葉に一瞬場が凍った。
『ええっと。じゃ、誰を放り込むんだ?』
「シン=アスカだ。無論、気に食わないという意味ではない。
 彼と彼のデスティニー兇蓮▲┘鵐屮譽ぅ垢紡个圭薹發魍櫃院△つ囮になり得るだけの能力を有している」
『さすが金的のシン。災難に継ぐ災難だな』
「その二つ名、本人は気にしているので、面と向かって言わぬ方がよいぞ。……作戦だが」
 一拍置いたミナの言葉に、彼らが表情を引き締めた。

「拘束したクライン派組織『ターミナル』の工作員から入手した緊急コードを使い、敵の大まかなポジションを掴んだ後、
 進入禁止エリア付近の通信衛星、航宙用ビーコンを一斉にダウンさせる」
 ミナはそこで言葉を一旦切り、面々を見遣る。1人が、嘆かわしげに首を振った。
『宇宙開発の夜明け以前まで戻るってわけだ。船を操る連中にも、腕が必要になるな』
「次に、部隊を対エンブレイス用、対セレニティ用に分け、対エンブレイスチームを先行させる。
 セレニティを発射させる、あるいはロックさせる事で正確なポジションを把握し、対セレニティチームを一気に前進させ、
 陽電子砲の斉射によって戦略砲を破壊。対エンブレイスチームと合流し、数の差でエンブレイスを押し潰す」
 言葉が終わると、別の傭兵が軽く右手を上げた。
『質問です。戦略砲に、陽電子リフレクターが装備されていたら?』
「装備されていない。確認を取ってある」
『もう1つ。制限時間は? 送られたデータを見る限り、エミュレイターがダウンした通信ネットワークを放置するとは思えません』
「よい質問だな。復旧には、最長で30分を要する。
 それを過ぎれば、あのザフト艦隊を一射で壊滅させた光の雨が、絶え間なく降り注ぎ続けるだろう

『ハッハァ!!』
 最初に声を発した傭兵が、大笑いして手を叩いた。
『どこの軍隊も乗り気じゃないって理由が、やっと解ったぜ。
 こんな滅茶苦茶な仕事を、サーペントテールの奴らがよく引き受けたな!』
「勝算があると踏んだのだろう。報酬も悪くないはずだ……それとも、降りるか?」
『冗談じゃない。こっちは好きでMSに乗って、他人様をぶっ飛ばして金貰ってるんだ。
 こんなんでビビったら仕事が来ねえよ』
『細かい所の調整は、此方に任せて頂くという事でよろしいのですね? 代表。
 少しでも成功確率をアップさせるための試みです』
 その言葉にミナが頷いた。
「任せる。作戦開始は4時間後だ。敵はハッキングしたMSと戦艦を引き連れているが、こちらは数で勝る。
 敵にこれ以上準備期間を与える前に叩くべきだ」

 アークエンジェルから1隻のシャトルが発進し、大気圏突入準備に入った。医療設備を内蔵したその船に、
何とか意識を回復させたキラと、未だ目覚めぬラクスが乗っている。
アークエンジェルが間も無く作戦行動に入るので、キラ達を地球へ降ろす事になったのだ。
「ラクス……」
 シートに腰掛けたキラが、固定されたベッドで眠る桃色の髪の女性を覗き込む。
「僕らは地球に行くんだ。連合軍の病院に君を入院させるみたいだね」

 キラはずっと、ラクスと共に戦ってきた。
 彼女の指し示す方向へ進み、彼女が見定めた敵を討ち、彼女が望む平和の実現の為に生きてきた。
 キラ=ヤマト唯一の望みは、自分のごく身近な存在を守る事だった。
 その為なら手段を選ばなかったし、倫理観も彼を阻む事はできなかった。

「その後の事はどうなるか解らない。僕も、ラクスも……」
 キラには絶対的な力があった。あらゆる物事を上手く行かせる素質が備わっていた。
 そして彼はその力を余す所なく使い、2度の世界戦争を終結させた英雄という名声を得た。
「ラクス……僕らは、間違ってたんだね。ずっと間違えたまま……来ちゃったんだ」
 桃色の髪を撫でる。彼女の呼気が一瞬だけ乱れ、鼻に掛かった声が上がった。
 思わず顔を上げるキラ。だが、その後の変化は無かった。再びうなだれる。
「世界は、じゃない。国が、でもない。本当に振り返らなくちゃいけなかったのは、当の僕らだったんだ。
 考えるべきだった。どうして今まで上手くいってたのか、どうして皆僕らの言葉を聞いてくれたのか」
 目をきつく閉じる。涙が零れ、無重力の機内に散った。シャトルが震動する。大気圏の突入準備に入ったのだ。
「ごめん、ラクス。守れなくて……ごめん……」
 キラの掠れ声は、大きくなり始めたエンジン音に掻き消された。

「それにしても忙しすぎですよね」
「仕方ないだろう。ネオロゴスはプラントとそこに住んでるコーディネイターを無傷で奪還したいんだ。
 もう一度、自分達の意のままにする為にな」
 溜息をついた研究員が後輩に返答する。データを収めた端末を無重力の中でやりとりしつつ、細い艦内通路を歩く2人。
 アシスタントを呼びつける余裕すらない。
「一ヶ月待ってくれれば、デストロイMK兇肇◆璽エンジェル級3番艦が間に合ったのに」
「MK供……ああGカイザーか。まあ、なあ……でもあれ、初期のコンセプトを没にされちゃったからな」
「4機合体変形なんて、会議に出したら潰されるに決まってるじゃないですか……」
「いや、分離したままでもそれなりに戦闘能力があるし、何よりアスカさんと彼の3人の部下に乗って貰おうと思ったんだが……
 アドゥカーフの連中とも話進んでたし」
 嘆息し、研究員は天井を仰ぎ見た。放り出された端末を、後輩が慌てて受け取る。
「未熟なお前には解らないだろうな。創造性を否定された研究者の気持ちが」
「あんな複雑な機構持ってる上に30mオーバーの大型じゃ、耐久性が保てませんよ」
「そんなものは根性でカバーできる」
「またぁ、自分が乗るわけじゃないからって……あれ!?」
 部屋に入った2人の前に、笑顔のアズラエルが立っていた。
 背後に撮影機材を持ったダイアモンドテクノロジー社の従業員が数人、何かを話し合っている。
「ど、どうされたのですか? お嬢様……さっき、最後のシャトルが出たっていう放送がありましたが」
「今回の戦闘を、我社のプロモーション映像に使おうと考えたのです。
 宣伝は最も重要な活動の1つ。私が立ち会ったところで、不思議な点は何一つ無いでしょう?」
 シン=アスカの前でもないのに笑みを絶やさない少女に対し、這い上がってくる恐怖を覚える2人。
 歩み寄られれば、そのまま一歩下がった。

「念の為にお訊ねしますが、シンの乗るデスティニー兇牢萎でしょうね?」
「も、勿論です。120%……もとい100%性能を発揮できます」
 120%では想定外の結果という事になり得る。慌てて言い直す研究員。冷や汗が浮き出す。
「良かった。これまでは、残念な結果に終わっていますから……」
 元々デスティニー兇蓮▲▲坤薀┘襪琉娶を受け、対インフィニットジャスティス、対ストライクフリーダム戦用に
開発された機体である。つまりアズラエルに言わせれば、それに乗ったシンはノーダメージでキラ、アスランを打ち倒せる筈だったのだ。
 あどけない笑顔のまま、少女は続ける。
「それで、今回こそは確実かつ完璧な勝利が約束されているのでしょうね?」
「いえお嬢様、エンブレイスは強力無比な機体。それにパイロットの腕もゴフォ!?」
 アズラエルの視線が冷気を帯びる寸前、研究員の肘が後輩の鳩尾にめり込んだ。
 無重力ゆえ、壁に叩きつけられバウンドする後輩。
「完璧な勝利をお約束いたします、お嬢様。デスティニー兇論犬泙貶僂錣辰燭里任垢ら」
「けっこう。ならば今までの事は水に流しましょう。……研究予算の、不明瞭な点もね」
 蒼の瞳が底光りを放ち、アズラエルは2人に背を向けた。
「し……失礼いたします」
 ぐったりした後輩を引っつかみ、隣の部屋へ駆け込んでドアをロックする研究員。

「安請け合いも、いいとこですよ……先、輩」
「あの場で殺されたければ、正直に言ったのだが」
 研究員は短く応える。冗談を言っている風には見えない。
「しかし……ヴォワチュール・リュミエールユニットの相互干渉だけは未だ不安だ。
 出力に上限を設けたいが、そうするとエンブレイスにはまず勝てまい……」
「どう、なるんですか……? その、相互干渉って」
 咳き込みつつ身体を起こす後輩に手を貸しつつ、研究員は額に汗をにじませる。
「解らん。ただひとつ解っている事がある。

  ……もしデスティニー兇負けるような事があれば、我々はお嬢様に……」

「『人類』側の作戦は、こんなところね」
「成功確率は低いが、他に手はあるまい。この情報が何処から来たのかが気がかりだが」
「月の使者から」
「なるほど……」
 薄暗い室内の壁に投影された映像の前に、何人もの男女が集まっている。
「対セレニティチームに合流すべきだな。
 予めストライクフリーダムを発進させ、1機のみ対エンブレイスチームに加えるという手もあるが」
「そうだな。私とストライクフリーダムならば、単独で動ける。MSとセクメトの改修は?」
「終わった。ダイアモンドテクノロジー社は、協力を惜しまなかったからな」
 暗闇の中、まるで共鳴するかのごとく言葉が交わされる。
 映像に最も近いセクメトの艦長の目が、プロジェクターの光を受け青白く輝いていた。
「ならば作戦に参加するという事で、『50人』は一致したわけね?」
 返答の代わりに、彼らは殆ど同時に立ち上がった。照明がつく。
 虚ろな視線を互いに交錯させ合い、生ける屍の如く通路を歩く。

 此処はコペルニクスの外縁に存在する、海賊達が利用していた工場設備である。
 月都市コペルニクスは、『自由都市』なのだ。

 格納庫に人々が入ってくる。青と白のセクメトが血紅色に染まり、ぬめるような光沢を放っていた。
「MSの搬入準備を」
 誰かがそう口にする。
 4機のデルタフリーダムとストライクフリーダムは、その翼部分が黒と濃灰の追加パーツで一回り大きくなっている。
 全てのMSにパイロットが搭乗し、起動させる。
 堕天使達はベッドから一斉に離れ、直立し、カメラアイを真紅に輝かせた。

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