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SCA-Seed_GSC ◆2nhjas48dA氏_ep2_第04話

Last-modified: 2008-01-18 (金) 20:43:43

 ダイアモンドテクノロジーの施設を襲ったテロリストのリーダーは、元ザフト兵である。
ベテランだったが、法や慣習などの規制を軽視する思考の持ち主でもあった。一ヶ月前、
エミュレイターによってプラントの防衛網が破壊され、ザフトが実質的に消滅した後、
彼は躊躇無く非合法の武装組織に転向した。その初仕事がこれである。
『連合軍の新型……犬面だけじゃなかったのか!?』
「攻撃はほぼ全弾命中した。再攻撃をかけるぞ」
 うろたえ、通信で不安を撒き散らす今回限りの同僚に溜息をつき、散開の指示を出す。
「連合め、性懲りも無くデカブツか。余程大きな鉄屑が欲しいと見える」
 雪煙と爆炎の向こうに機械の光が見える。勿論、大型機動兵器がただの一斉射で沈黙
するわけがない。しかし、その有用性はタカが知れている。特性さえ掴めば、3、4機の
MS隊によるコンビネーションで容易く沈められる事は、別の連合のMAで実践済みだ。
 高機動性を追求した小型のMS部隊。これこそが最も効果的な兵器だと彼は信じていた。
そういう意味では、己の作り出した慣習に囚われていたのかも知れない。だからこそ、
視界が晴れて目の前に浮かび上がってきた現実を受け入れるまで、若干の時間を要した。
「なに? 無傷……無傷だと?」
 何かに気付いた彼は、メインカメラをズームさせる。金色の兜飾りを持った白、黒、赤
の巨体前方、半径20mの雪だけが残っている。ミサイルの爆発とビームの熱が、完璧に
もしくは殆ど遮断されたのである。
「まさか、あの緑の光……アルテミスの傘! 光波防御帯か!」

 

「Gカイザー、健在です! CAT1-X並の防御力だ……」
「フン、ハイペリオンのアレと一緒にしてくれるな」
 良い思い出が無い名前なのか、基地内部のモニターを見上げる研究員は鼻を鳴らす。
「両腕、両肩、両膝から展開される6層の光波防御帯は、敢えて強度を落としてある。
段階的にダメージを緩和し、最終的に耐ビームコートを施した複合PS装甲で受け止める
わけだ。結果、ジェネレイターへの負担を大幅に緩和。バリアの持続時間と余剰の……」
「先輩、どっち向いて誰に説明してるんですか?」
「自分の開発した兵器の初陣だからな。多めに喋った方が良いと思って。ていうか!
Gカイザーの出力はまだ上がらんのか!?」
 施設内の監視カメラを見上げて延々喋っていた研究員にいきなり話しかけられ、機体の
ステータスをチェックしていた白衣の男が振り返った。
「駄目です! 47%から上がりません……ぁ、今45%にダウン!」
「何故だ! 半分もパワーが上がらないとは! これはまずいな!」
 自分もモニターを覗き込んだ後、研究員はせわしなく歩き回る。まずい困ったと、叫ぶ
ように声を張り上げる光景は誰もが見慣れている。
「今のままでも大丈夫だと思うんですが。何がそんな拙いんです?」
 後輩が躊躇いがちに声をかけた。拙い事になっているのは寧ろ襲撃者側で、Gカイザーの
装甲は目立った引っ掻き傷すら無いのだ。
「いや、そりゃお嬢様は大丈夫だが、俺達が危ない。考えてみろ、目立った武器もない、
鉄壁の防御力だけはある機体を前に、敵が次に何を考えるか。そもそも目的は、この施設
への襲撃なんだぞ」
『敵MS、散開します! ……防御砲塔、1番から3番まで沈黙!保安部隊はまだ戻って
こないのかよ!』
『遠くに行き過ぎてる! 誰だ、コース設定した奴は!』
 オペレーターのやりとりがスピーカーから聞こえ、研究員は頭を抱えて腰をくねらせる。
重苦しい震動が起きて、後輩が傍のメンテナンスベッドに手を突いた。
「ああぁあ! 出力が100%まで上がれば、広域バリアを張れるのにっ!」
「お、お嬢様に通信を送れば良いのでは!? Gカイザーは内蔵武器の他に、近距離での
格闘戦に強いし……操縦方法も、それ向きに出来てますし!」
「ここでの話は全部向こうに聞こえてる! それにな、初めて機動兵器に乗ったお嬢様に、
敵機との距離を詰めるなんて発想が生まれると思うか!?」
 モニターに背を向けた研究員が、後輩に力一杯人差し指を突きつける。モニター越しの
Gカイザーが両膝を屈めた。
「確かに重砲撃戦仕様の機体なら嬉々として撃ちまくるかも知れんが、自分の身を一番
危険に曝す近接格闘戦なんて出来るわけないだろう! 実戦なんだぞ! 何時もは確かに
結構アレだが、直接の殺し合いなんてお嬢様は経験無いんだ! 公式記録的には!」
 逆三角形型ロケットブースターの両端、底部、首元が開き、青白い光が漏れ始める。
両拳のナックルガードが降りた。
「で、でもお嬢様に攻めて貰わなきゃ、施設が……」
「大体な、お前が大好きな美少女アニメに出てくる、女選ぶ時は優柔不断な癖に脳味噌
スポンジな主人公だって、初めて戦う時は躊躇しまくるだろう!」
「今見てるのはそんなじゃありませんよ! それにあの監督が3年前作った劇場版は……」
『お、お嬢様!?』
 オペレーターのうろたえる声に、言い争いを止めた2人がモニターを振り返る。眩しい。
スラスター出力を全開にしたGカイザーが、噴射光をカメラ側に吹き付けて大ジャンプ。
他の3機でなく、距離を開けて状況を探っていたガナーザクに跳び掛かったのだ。

 

『ん?』
 雪混じりの風が吹く方へオルトロスを構え、敵の増援がやって来ないかを確認していた
ガナーザクのパイロットは、最初自分目掛けてやってくる機体が何だか解らなかった。
大型の人型兵器という時点でデストロイしかイメージできないのだ。そして、デストロイ
は拳を振り上げ大ジャンプなどしない。
 Gカイザーのツインアイの片方を注視すると、両端にカメラが設置されている事が解る
だろう。2つのレンズに挟まれた場所から、緑色のビーム光が閃いた。レーザーのように
照射し、雪が積もった地面を二筋の光が焼き斬りながらガナーザクの足元に迫る。
『め、目からビームだとっ!? ふざけた武装を……』
 軌跡が解っている以上、当たりはしない。重い砲を担ぎながらステップで回避する。
スラスターを切って着地。着地音が、不自然なほど大きかった。
『あ』
 機体に濃い影が落ちる。直ぐ傍に降り立ったGカイザーが、ビーム砲の冷却の為か、
人間でいえば口に当たる部分から白煙を吐き出しつつ見下ろしている。
 ナックルガードを填めた右拳が、ザクの右肩に叩き付けられる。地の底から響くような
衝撃音と共に右腕の付け根が完全に潰れ、頭部がもげかかった。地面に縫い付けんとする
打撃が、ザクを強制的に跪かせる。裁きの場に引き据えられた罪人のごとく、Gカイザー
を見上げた機体のモノアイに、左拳がめり込んだ。

 

『な、何で……何でっ? おい、大丈夫か! 応答しろ! 返事をしろよっ!』
『あんなに速く跳べるわけがない、あんなに……あんなに大きいのに!』
 頭部を粉砕され、衝撃が突き抜け舗装路にクレーターを作り、糸の切れた人形のように
崩れ落ちるガナーザク。2機のブレイズザクに乗っていたパイロットの声が震える。
『あのデカブツに構うな! 建物の破壊を優先しろ!』
 スラッシュザクに乗っていたリーダーの声は間に合わない。後方で退路を確保する役目
だったガナーザクを初手で、しかもほぼ一瞬で無力化された事で、計画が根底から崩れた。
そして元ザフト兵の特徴として、統制が難しく、何かあると直ぐ独自の判断で動きたがる。
戦争中は長所ばかり挙げられていたが、実際にそうやって活躍できたザフト兵は一握りの
エースパイロットだけだったのだ。
 Gカイザーに対しブレイズザク2機が向かっていく。挟撃するべく左右に散開する寸前、
Gカイザーの背面が光り輝いた。急加速し、ザク2機が回避する。至近距離から一斉射撃
を撃ち込もうと肩部のミサイルランチャーを開くと同時に、Gカイザーがその巨体から
想像できない程の速度で急旋回した。除雪された舗装路に火花の弧が描かれる。
 交差させていた腕を、勢いよく振り抜いた。開かれた胸部装甲から、緑色の輝きが
漏れる。ブレイズザク2機の動きが鈍る。撃つか、退くか迷ったのだ。彼らは誤った。
『離れろっ!』
 歴戦の兵士ならではの予感が走り、スラッシュザクのビームガトリングを起動させる。
基地の敷地中が拡散ビームの光に照らし出された。照射しつつ、スラッシュザクの方を
振り向くGカイザー。ミサイルに引火し、誘爆に巻き込まれる2機のザク。手足の関節を
超高熱で焼かれ、舗装路に倒れ伏す。バランサーをやられたのか、業火の中で苦しむ様に
手足をばたつかせる機体を見下ろすGカイザー。その両肩パーツを輝かせる。
 襲い掛かったビームガトリングの射撃が、またも半球状の光波防御帯によって阻まれた。
『化物め……!』
 高エネルギー兵器を使用し、スラスター出力を下げないまま、実弾の衝撃を殺しビーム
を弾く強力無比なバリアを展開する恐るべき存在に、男は素直な感想を漏らし、呻いた。
 加えて、搭乗者も油断ならない。機体性能が高すぎる所為で操縦技能の優劣は解らない
ものの、戦いの機を読むのが抜群に上手い。敵の不意を突き、恐れさせ、竦ませ、征服し、
蹂躙し、勝利を己の物とする事に長ける人間が乗っていると確信できた。
 凍て付く風が路上の炎を吹き消す中、胸部装甲を閉じ直したGカイザーがゆっくりと、
最後に残ったスラッシュザクへと歩いていく。焼け焦げたザクの手足をじっくりと踏み
潰し、力強い地響きと共に。
『……投降する』
 スラッシュザクに乗った男は、そう言ってビームガトリングユニットを排除した。腰の
ビームアックスを取り外し、傍らに捨てた。ハンドグレネードの信管をロックし、同じく
排除する。Gカイザーの歩みが止まった。
『よろしいのですか?』
『っ……ああ、勝ち目が無いからな。金で雇われただけだから、義理も無い』
 聞こえてきた声が少女の物だった事、そして聞き知ったものと知って、リーダーの男は
少し言い澱む。同時に覚悟を決めた。
『では、機体から降りて頂きましょう……ゆっくりと』
『解った……!』
 降車姿勢を取らせるようにザクが肩膝を突いた瞬間、右手が伸びてビームアックスを
掴む。ビーム刃を起動させながら、余分な装備を捨て身軽になった状態でスラスターを
全開させた。膝の装甲が路面に擦れて火花を上げつつ、Gカイザーに迫る。狙うは――
『拳を使った打撃、目と胸からのビーム……足元は弱かろうっ!?』
 踏み出していた右膝のパーツが唸りを上げる。光が一点に収束し、鈍角のスパイクと
化した。Gカイザーもまた、前方に跳ぶ。
『何だと!』
 敵の足首を叩き切ろうとしていたスラッシュザクに急制動が掛かる。掬い上げるような
膝蹴りが腹部にめり込み、機体が冗談のように空を舞った。Gカイザーはその場に踏み
留まって、弓を構えるように右腕を引き絞る。肘近くに搭載された、ヴォワチュール・
リュミエールを応用した4連推進機関が咆哮した。爆発のような轟音と閃光と共に、右腕
が翔ぶ。青白い光を従えた拳が、打ち上げられたスラッシュザクの腹部を再び殴りつけた。
『投降を認めましょう』
 推進機関のフィンが上へと向き、拳がめり込んだままのザクを地面に叩き落とす。深く
積もった雪原に機体が激突し、衝撃で雪面が円形に陥没した。
『未だご存命であれば、の話ですが』
 モニターの向こうで、Gカイザーが右手を持ち上げる。飛んで戻ってきたパーツが、
軸線を合わせて再びドッキングした。
「うわあ」
「あーあ」
 惨憺たる有様となった現場を見つめる研究員と後輩が、抑揚の無い声を垂れ流す。
「テロリストの人、死んでないですかねえ。殺すと結構厄介ですよね」
「ビームで焼いたのは大丈夫として、殴られた方は……うーん生きてるだろう。あれだけ
派手に壊れてるって事は、逆に衝撃が吸収されてるって事だ。もしPS装甲付の機体なら、
今頃コクピットの中は……」
『施設の被害は?』
 モニターにアズラエルの顔が映り、首を竦ませる2人。
「え、ええ。無人式の防御砲塔が3、4基に、隔壁が数枚へこんだくらいだそうです。
あの、その……お見事、でした。お嬢様」
 しどろもどろに賞賛する研究員に、少女の表情が曇った。済まなそうに頭を振る。
『敵が連携せず、言わば1対1で相手できたから。正規部隊であれば勝負にならなかった
でしょう。そういえば、格闘戦とはどういう戦い方をすれば良いのですか?』
「……と、ところでお嬢様、哨戒部隊がそろそろ戻ります。機体から降りていただいて
結構です。今日はどうも申し訳ありません。お嬢様のデータは全て削除いたしますので」
『その必要はありません。むしろ私が扱えるよう、調整しておいて下さい』
 アズラエルの言葉に青ざめた研究員が顔を上げる。モニター内の彼女は、真顔だった。
「ど、どうして……何の、為に……」
『それから、ちょっとこのスーツのデザインを再考して貰えませんか? 銀色だけという
のは少々おかしいし……素材の所為か、身体のラインが強調されます。特に胸の辺りが
際立ちすぎて』
「いえ、胸は至ってなだらかな……」
『えっ?』
 カメラの方向を向くGカイザーの両目が光った。
「仰る通りに致します、お嬢様」
『よろしくお願いします。出来れば急いで』
 モニターが切り替わり、再びMSの残骸が転がる基地の様子を映し出した。
「兵器を売るのは好きだけど、乗るなんて眼中になかったお嬢様がまた何で……」
「そういや、一ヶ月前ちょっと気にしてましたね。サハク代表とか他の方々は戦ってる
のに、自分だけ艦内で待つしか出来なかったって……」
「要するに、ピンチのアスカさんを助けて急接近みたいな展開が欲しいってか?」
 苦笑した後、不意に真顔になってかぶりを振る研究員。
「誰でも、でなく自分が乗れるようにという事はまさか……私闘が近い、と?」

 
 

 シン=アスカに起こった変化は喜ばしくもあり、また憂うべきでもあった。昨日の晩、
ゆりかごにて『治療中』だったシンは突如精神に変調をきたし、女性に対し激しい恐怖を
抱くようになってしまったのだ。また、1ヶ月前の戦いの最中に起きた何かの出来事に
より、人間を個として認識できなくなっていたが、その症状も消えた。男性に対しても、
若干ではあるがより人間的に接するようになり始め、連合軍基地の食堂では数人の兵士に
囲まれ、金的ネタで弄られからかわれる程にまで『復帰』した。
 兵士達も当初は戸惑ったものの、今ではそれを当然として受け入れている。仮にも英雄
なのだ。MSの部品より、生きた人間であって欲しいという願望があるのだろう。
「しっかしお前どうしたよ、シン? 昨日までと全っ然違うなあ」
「そうかな。俺は……何時ものままだと思ってるけど?」
「蹴られた玉がようやく戻った感じか」
「う、うるさいな! それしか言う事ないのか、アンタ達はっ!」
 明るい笑い声を上げる彼らとは対照的に、食堂の端に座ったヒルダ達3人の表情は深刻
そのものだった。端末に表示させた2つのレーダーチャートを、女が隻眼で見比べる。
「まずいねえ」
「まずいなあ」
「いやホントにまずいねえ。どうなってんだいコレ」
 彼女達が見ているのは、シンのMSシミュレイターの成績である。左が昨日までの平均、
右が本日午前中の訓練結果だ。左に比べ、右の多角形の面積が半分未満まで縮小している。
「昨日まで、人間辞めたくらい強かったシンが……人並みになっちまったな」
10以上の仮想データでシミュレーションを行う以上、単なる不運という要素は入らない。
ヘルベルトがボルトを噛み締め、唸る。
「丁度こいつは、あの時点だ。ガルナハン基地へ行く前のデータと殆ど同じ」
 マーズが幾つかのボタンを押す。一瞥したヒルダが頷いて、ディスプレイ表示を消した。
「あたし達1人1人よりも、若干上ってとこかねえ?」
「結構な話だ。俺達がまともに楽しめるようになったと考えようや」
 ヘルベルトの言葉に対し、曖昧に頷く2人。ヒルダが席を立つ。
「ま、そうだね。あたし達にとっちゃ、そう気にする事でもない……今は、まだね」

 

「お前、昨日起きてたか? 雷落ちた時」
「現地の連中が言うには、3年ぶりだったらしいな。あんな嵐」
 格納庫でMSの整備を担当していたメカニック2人が、デスティニー兇離魯奪舛魍く。
「最終チェックだ。後はパイロットにやって貰おう……動力入れろ! 3分間で切るぞ!」
 機体から低い唸りが上がる。ツインアイが真紅の輝きを放ち、消える。コンソールから
離れたメカニックが、デスティニー兇鮓上げた。ハッチからもう1人が顔を出す。
「……動かねえ」

 
 
 

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