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SCA-Seed_GSC ◆2nhjas48dA氏_ep2_第17話

Last-modified: 2008-07-05 (土) 18:47:18

『新たなMSです。数は4、あの特殊重機が離脱していった北西から来ます』

 

 バスターノワールのレーダー及びFCSは、長距離での索敵に優れている。エコー7か
らの通信に、中腰になっていた陸戦グフが身体を起こした。残骸へ接近していたツェドも、
前進を止めて左肩のレールガンを展開する。

 

『まだ来るのか!?』
『いやいや、市街地の方からですよ』

 

 シンの乗ったザクが、両手でビーム突撃銃を構えつつ左肩のシールドで機体を庇わせる。
軽薄な口調でディーが答えつつ、陸戦グフのシールドから鉈の様な近接武器を取り出した。
騎士剣を思わせるテンペスト・ビームソードとは違い、短く片刃である。左腕が露になり、
弾薬箱を取り付けた内蔵型マシンガンが5つの銃口を覗かせた。

 

『ダガーLのようです』

 

 敵の映像を入手したバスターノワールが、各機にそれを送る。

 

「地球連合軍、ですよね?こちらの味方ですよね?わ、私は……ザフトだけど」

 

 ツェドの機内で照準を微調整するベルが、不安そうな声を上げる。物心ついた時にはプ
ラントの領内で暮らし、かつプラントから外へ出た事のない彼女は、天然の重力と大気中
に飛散する多量の砂塵と、頻繁に変わる風向きが気になって仕方がない。メインモニター
内の照星位置を変えてはリセットし、カメラの解像度を変えて砂埃を映すまいとする。

 

「おっと、これは厳しいかも。『ギムレット』ですからね」

 

 半笑いのディーが言って、こけた頬に影が落ちる。コバルトブルーの機体と、左肩の赤
い銛と綱に視線を移した。通信モニターにシンが表示される。

 

『ギムレット?』
『地球連合第4軍、第7中隊です。組織されてから1年足らずで目覚ましい戦果を挙げた
対ザフト残党、対テロリストの任務に特化した部隊として恐れられています』

 

 エコー7がその後の説明を引き継ぎ、シンが頷いた。

 

『じゃ、味方ですね』
「どうでしょ?」
『何だよ、さっきから』

 

 眉間に皺を寄せて睨んでくるシンに、ディーは軽く両手を上げた。

 

「彼らはコーディネイターのみで構成された部隊です。連合軍の意地悪な佐官が、仲間同
士で殺し合え、という意図で作ったのですが……」
『そんな事の為に?じゃあ、彼らは自分達が生きるために仕方なく……』

 

 ベルが表情を曇らせる。彼女はザフトによる教育のみを受けている為、思考の根底に自
分達は被害者、犠牲者であるという考えを持っている。
 実力、成果主義によって市民の生活が厳格に区分けされているプラントにおいて、特別
なコネも才能にも恵まれなかった彼女は淀んだ空気、薬品の匂いに染まった水、古びたカ
ロリー食品とサプリメントと共に生きてきた。嗜好品などはもってのほかである。
 そして、それらはナチュラルによる搾取と迫害の為と教え込まれてきたのだ。プラント
運営に直接携わる人間は、当然地球のナチュラル以上に豪奢な生活を楽しんでいたわけだ
が、それは彼らが独自のルートで物資を入手していたからに過ぎない。この前時代的な生
活格差は、補佐官が議長代理の地位に就き、生存に不要な高級食材等の嗜好品を押収して
売り払い、その全てをプラントの運営資金に回すまで続いた。
 一般民衆が補佐官を熱狂と共に歓迎したのは、こうした背景があったのである。ラクス
=クラインはそもそも、生活格差の存在を認識していなかった。

 

「どうでしょう。彼らはナチュラルよりもずっと士気が高いし、MSに対する習熟も早い
そうです。ただ、やり過ぎてトラブルを起こすそうですがね。ま、ザフトが地球にやった
事を考えれば、やる気も俄然高まるってものでしょうが」
『それは……あの、なぜ?』
「なぜって当り前じゃないですか」

 

 笑いながら答えようとしたディーも、ふと表情を消して言葉を切る。ザフト兵という以
外に記憶が無い筈なのに、自分は不自然なほど様々な情報を有している。聞かれれば、話
題が出れば幾らでも喋る事が出来る。
 しかも、ただのザフト兵では得られないような他陣営のデータを。彼の背筋を寒気が駆け
上がった。喋り過ぎるのは危険だと、何故か感じたのだ。

 

「あ、いや何ででしょうね? 互いをよく知っていると嫌な所も見えるとか?」
『……』

 

 モニター越しのエコー7が、目を細めてディーを凝視する。その口がゆっくりと開いた。

 

『あなたは』
『来たぞ……!』

 

 シンの押し殺した警戒の声に、他の3人は視線をメインモニターに戻す。

 

『エコー7、彼らと話して貰えませんか?』
『解りました。谷へ降ります』

 

 ディーから目を離した彼女が頷き、バスターノワールがスナイパーキャノンを構えたま
まスラスターを弱めに吹かして谷底へと降下していく。隊列を崩さず、曲がりくねった峡
谷をダガーLが跳躍しつつ進行してきた。降り注ぐ月光によって左肩が赤く輝き、青白い
バイザーの光がコバルトブルーの頭部を淡く照らし出す。

 

『市街地へ向けて侵攻してきたのは、ザフト機だという報告が来ている』

 

 作り物めいた端正な顔立ちが、4人の通信モニターに表示された。連合軍の制式パイロッ
トスーツを着たその男は若い。徴収された新兵にも見える。

 

『ディンが3機です。先程無力化されました。我々はミハシラから派遣されてきたサハク
の部隊で、10分前、大気圏へ突入しています』
『ミハシラ軍の事は知っている。プラントの企業も支援する、海賊集団の事だろう』

 

 シンのザクが、モノアイを光らせた。頭部パーツを左右に旋回させ、状況を確認する。
 キーを叩き、秘匿回線を開くシン。受信した3人を見れば声を落とす。

 

「嫌な雰囲気です、エコー7。残りの3機は俺達を包囲してますよ。ディー、そっちは?」
『基本的に、ザフトとかプラントは即刻滅び去れば良いと思ってる人達ですからね。何時
でも打って出られます。万一の場合、谷へ降りますよ』

 

 細長いバイザー光のダガーLにビームカービンを向けられ、陸戦グフは敵意の不在を証
明するように、黒光りする鉈をシールドへ収めた。もう1機が右側へ回り込んでくる。

 

「ベル、後退してくれ」
『は、はい。けど話し合えると思います。だって、同じコーディネイターなんだから……』
「その辺は後で話すから、今は警戒を緩めないで。俺のザクのところまでゆっくり来い」

 

 機体に武器を構えさせないまま、シンは照準をセミオートに切り替えた。モニター中央
の十字線を、バスターノワールと対峙するダガーLに向けた、地面に向けられた、ビーム
カービンに合わせる。

 

『不審な点があれば、機内を捜索して貰って構いません』
『いや。不審、不明な点は特に無い』

 

 エコー7が首を傾げた。ベルが安堵の息を吐き出し、シンとディーの表情が引き締まる。

 

『我々は、ザフトの侵攻を許しはしない……誰が議長になろうと、お前達は同じだ!』

 

 ダガーL4機のバイザーが一斉に光った。

 

『侵攻などではありません。私達の目的は……』
『問答無用!』

 

 ダガーLのビームカービンが放たれた。殆ど同時にバスターノワールが動き、左脇腹を
焦がしつつ避ける。スナイパーキャノンの砲身とストックを掴み、コバルトブルーの機体
に叩きつける。コクピットを強打されたダガーLがよろめき、直ぐ後ろにいたもう1機が
武器を向けようとするが、シンのザクがビーム突撃銃を撃って下がらせる。

 

『各機、応戦して下さい!可能ならば、撃墜は避けて!』

 

 スナイパーキャノンを構えたバスターノワールの両肩が開き、打撃を加えたダガーL目
掛けて連装ミサイルを浴びせかける。間一髪飛び上がって避けたそれは、空中でジグザグ
に機体を揺さぶりつつカービンを連射する。フェイスガードを下ろしたバスターノワール
が、蛇行しつつ峡谷の岩壁に身を隠した。

 

『ベル、撃ち返して下さい!』
『そんな、どうして……同じコーディネイターなのに、戦うの!?』

 

 エコー7の声に、困惑が解けない少女は機体を遮蔽物で庇わせる事しか出来ない。自分
達コーディネイターは地球のナチュラルに迫害され、差別され搾取されていた被害者の筈
だ。プラントにいた一部の間違った人間が贅沢な暮しを送っていたとはいえ、全体として
貧しいのは、地球連合の所為であった筈だ。
 そう教育されてきたベルは、それ以外を知らない。

 

『どうして……』

 
 

 激しく撃ち合う谷底とは違い、崖の上では睨み合いが続いていた。正面と右側を塞がれ、
モノアイを右に向けたままの陸戦グフが一歩後ろに下がる。右手に再度、鉈を掴んだ。

 

「やっぱり、飛べなくなったのは痛いですよねえ」

 

 大型のフライトユニットが無くなった為にその挙動は軽快であるも、操縦するディーは
渋い表情だ。3次元機動が大きく制限されてしまう。換言すれば、パイロットの技能がより
問われるようになったという事だ。
 正面にいるダガーLが、右腕を動かす。ディーの口元が笑みに歪んだ。

 

「そこです……」

 

 ロックオンマーカーがヘルメットに映り込む。左腕が跳ね上がり、手を模した多連装マ
シンガンが吼えた。アクション映画の爆破シーンをサウンドループさせたようなけたたま
しい砲声と共に、大口径の弾丸がダガーLの機体を引き裂く……寸前、バイザー光を引き
ずって回避した。スライドしつつ撃ったビームを、陸戦グフが回り込むようにかわす。

 

「ほう、速い!」

 

 口笛を吹いてにやけたディーの瞳が、右側へと吸い寄せられる。左腕のシールドを前面
に突き出したダガーLが、脚にカービンを接続しつつ腰部のサーベルを抜き放った。振り
上げる事無く、背部のスラスターを吹かし、青白い後光と共に突き出した。
 陸戦グフが上体を捻りつつ、右手に持った鉈の刃がオレンジ色に輝く。真っ直ぐにコク
ピットを狙ったビームサーベルの切っ先と触れ合ってスパークが上がり、トタン板をチェ
インソウで引き裂くような音と共に2つの光刃が噛み合った。鍔迫り合いのように密着し、
バイザーとモノアイが睨み合う。

 

『サーベルを、サーベルで受け止めただと!?第2世代型か!』
「其方から来て頂けるとはね」

 

 鉈を持った右腕。その膨らんだ肘部からアンカーが飛び出し、ダガーLの左脚に撃ち込
まれた。直後、鞭で打ち据えるような音と共に電光が走り、脚から火花が上がり、左脚の
機能を麻痺させたダガーLがたたらを踏んで膝を突く。
 高周波を発生させた金属の蛇腹で殴りつけるスレイヤーウィップとは違い、フェイズシ
フトさせて硬度を増した矢じりをワイヤーに接続して発射し、装甲の一点を破って高圧電
流を流し込む兵器である。アマツの近接武器であるマガノシラホコに近い。
 片膝を突いたダガーLの眼前に立ちモノアイを光らせ、ビーム刃を発生させた鉈を振り
かざす陸戦グフ。しかし、直ぐに跳び下がった。直前まで立っていた場所に3発のビーム
が突き刺さり、地面を赤熱させる。

 

「やっぱり速いな。機体もパイロットも。すみませんが、合流しますよ」
『了解!こっちも、楽じゃないけどな!』

 

 マシンガンをかわしたばかりの敵に上空を取られ、ディーがぼやく。跳び下がった勢い
を使って、陸戦グフが谷底へと身を投じた。
 撃ち込まれるビームを避け、腕部マシンガンで牽制しつつ高速で降下していく。

 
 

 四脚を屈みこませて半ば砲台と化したツェドが、バーストファイアに切り替えたマシン
ガンを2機のダガーLに撃ち掛ける。バスターノワールが再び連装ミサイルハッチを開き、
曲線軌道を描くミサイルが白煙を引いて敵機へと迫る。地面や壁面を蹴って巧みに方向転
換し、それを軽々と避けるコバルトブルー。粉塵の中、左肩の赤いマークが浮かび上がる。

 

「フラッシュ!」

 

 シンが短く叫び、ザクが腰部の閃光手榴弾を外して投げ付けた。大音響と共に眩い光が
爆ぜて、メインモニターがコントラストを調整する。2機のダガーLが後退しながら乱射
し、緑の光条が岩壁と地面に焦げ跡を作る。

 

「何て奴らだ……本当にあのダガーLなのかよ!」
『OSとAIを改良されています。2年前と同じとは思わない方が良いでしょう』

 

 スナイパーキャノンのボルトを引き、砲身の基部から別のグリップを引っ張り出す
バスターノワール。射撃モードが実弾からビームに切り替わった。

 

『そして、あの機体には新型のストライカーパックが装備されています』
「あの、バツ印みたいな?」
『そうです。ベイオウルフに搭載される筈の、出力強化用パック……』
「この攻撃に、アズラエルさんが関わってるって事ですか!?」

 

 シンの言葉に、エコー7は少し迷った後で首を横に振った。

 

『彼女は軍を相手にしている商人です。試作中の新兵装を少数提供するというのは、然程
不思議な話ではありません。けれど……』

 

 陸戦グフが崖を滑り降りてくる。自分達を挟み込もうとする上空の2機へ向けてマシン
ガンを斉射し、進路を塞いだ。大きな空薬莢が大地に打ち付けられ、ぶつかり合う。

 

『彼らがコーディネイターで、OSとAIを強化され、新型のストライカーパックを装備
していようとも……この戦闘能力は納得し難い。積み重ねだとしても、後何かが……』
「一般兵士向けの、強化処置」

 

 シンの呟きに、視線を落とすモニター越しのエコー7が顔を上げた。

 

「アズラエルさんが言っていました。近々、そういう事を始めるって」
『じ、じゃあ、彼らはその実験台に……!?』

 

 ベルの表情が青ざめる。連合軍の生体CPUの強さだけでなく、強化する際行われる、
おぞましい実験や訓練の事も聞き及んでいた。今は亡きギルバート=デュランダルが、
プロパガンダの為に流したからである。

 

「いや、過度の強化はケアが難しいから、大勢には使えないって言ってた。一過性で、軽
度で……とにかく害は無いと」
『まったく無害な方法で生み出される強化兵、ですか?』

 

 ディーが顎を上げて鼻で笑う。ひたすら数で押し、多少の損耗は許容される筈のダガー
L。4対4でこれほど苦戦するとは、4人の内誰も想像していない事だった。

 

「俺も良くは知らない。だけど……」

 

 舞い上がった粉塵が収まっていく。4つのバイザー光にシンが歯噛みした。

 

「細かい事が沢山積み重なって、こんな強くなったっていうなら……あり得る話だろ?」

 

 不意打ちを受け、バスターノワールの砲撃能力は殆ど殺されている。そして機体特性が
バラバラなシン達と違い、相手は4機とも同一の機体だ。チームワークにしても、1日で
編成されたシン達が相手を上回れる可能性は低い。
 その上エコー7以外の3人は元ザフト兵、あるいは現ザフト兵である。連合軍は数が多
いけれども、各個撃破を狙えば戦える相手だという先入観を持っているのだ。

 

『今からでも降伏します?エコー7』
『彼らは降車を命じる前に撃ってきました。恐らくは正面から、私達を敵として撃破したい
のでしょう。降伏した者を撃てば、軍規に触れますから』
「くうっ……!」

 

 コンソールを殴りつけるシン。自分の理解を超えた出来事が先程から起こり続け、意気
消沈して俯いたままのベルを見遣った。

 

「こんな時に……こんな時に、デスティニー兇あれば!」

 

 近接戦に特化した超高機動MSであるデスティニー兇覆蕕弌敵のフォーメーションを
貫く為の切り込み役となれる。平均的な性能のザクで、平均的な性能の部隊で構成された
陣形に単機突入すれば、結果は自明だ。
 その時、ジェットエンジンの轟音が夜空に響き渡る。全く同じタイミングで、武器を上
空に向ける両者。先に銃口の向きを戻したのは、ダガーLの方だった。その一瞬を逃さず、
シンのザクがスラスターを吹かして地面を蹴る。2機のダガーLが左右に散って、岩壁を
蹴り跳躍。もう2機が素早く後退しつつカービンを連射した。

 

「うおおぉっ!」

 

 シートに身体を押し付けたシンが叫ぶ。ペダルを踏み込み、低姿勢で直進してビームを
避けた。背後に回った2機のダガーLが振り返る寸前、バスターノワールのキャノンが大
出力のビームを撃ち上げる。崖の縁を融解させた光の柱が空を貫き、2機は辛うじて射線か
ら逃れた。シールド表面をスパークさせる2機の足元で、ツェドのレールガンが光った。
 砲撃によって崖の一角ごと砕け、着地点を失う。そこへ陸戦グフが跳び上がり、手にし
た鉈を真横に薙ぎ払う。シールドで受け、赤熱するそれを持ったダガーLがカービンを向
ける。バランスを崩しつつ、陸戦グフが体当たりをかけた。崖崩れの中、推力を振り絞り
両機が相手を地面に叩き付けようと揉み合う。

 

『双方!即時戦闘を中止せよ!』

 

 その言葉が広域回線によって響き、崖の両側目掛けてロケット弾が連射される。大規模
な崩落が起こり、シン達とダガーLの部隊は強制的に引き離された。通常カラーのウィン
ダム、ダガーLで構成された5機のMSがジェットストライカーパック装備で現場空域を
旋回し、手にしたライフル、カービンで地上を狙う。

 

『こちらはガルナハン基地所属、第1分隊である。武装を解除し、降車せよ!』

 
 

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