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SCA-Seed_19◆rz6mtVgNCI 氏_とある害虫駆除業者、もしくは復讐者の日常_第3話

Last-modified: 2009-09-23 (水) 15:57:38

 傭兵が戦場以外で撃破したMSをどうするかという問題がある。
 特に契約が無ければ傭兵が持っていくのがCEでは一般的だ。
 なんせ、放置しておくと性質の悪いジャンク屋などが集まり、かえって争いを招くからだ。
 これもアフターケアの一環だと傭兵達は嘯く。 
 そうやって鹵獲したMSはどうするのだろう?

 

 大手の傭兵会社なら専門の担当者がおり、それなりの業者と取引を行なう。
 装備は会社からの支給品であり福利厚生と契約がしっかりとしている以上、
 傭兵個々人が口を挟む権利は無い。
 一方で個人経営の傭兵団は、使えるならそのまま使うのが大半である。
 MSはもちろん武器弾薬は安くはない。どこぞの最強傭兵団なら金回りに心配はないだろうが、
 多くの中小零細傭兵団の家計は火の車なのだ。
 では、そのまま使えないほどに破壊されたMSはどうするのか?
 そこは傭兵団の財政状態によるだろう。
 ある程度裕福な傭兵団なら修理して使う場合もあるし、そのまま売却する場合もある。
 良い装備はそれだけで生存率を跳ね上げるし、不要な装備なら持っていても邪魔なだけだ。
 一方、貧乏な傭兵団はどうするかというと、売り払って金に換えるしかない。

 

 要するに何が言いたいのかというと、我らがデスティニーカンパニーは零細貧乏傭兵団であり、
 壊れたMSは売却処分するしかないと言うことだ。

 

「はぁ……」
 深い深いため息を吐いたのは、毎度おなじみのシン・アスカだ。
 MSの運搬トレーラーを運転しながら、なんとも言えない疲れた表情をしている。
 どうもザフト崩壊以来一年、ため息が出る回数だけが増えている気がする。
 そんなシンに、キラはノートパソコンのモニターから目を離さずに話しかける。
「シン、ため息を吐くと……」
「幸せが逃げるんだろう。俺達の幸せって何だろうな」
「そうだね、ピンクの悪魔と永遠に関わらずに済む事じゃない?」
「違いない」
 キラのジョークにシンも今度は苦笑をした。
 少なくとも、キラにしろシンにしろ、あのピンクと関わるとろくなことにはならないのだ。

 

「で、今回は何でため息を吐いたんだい?」
「いやな、あのザクの手足をデスティニーにくっつければパワーアップできるかなーって」
「まぁ、今よりはマシになるだろうね」
 シンの提案は実に魅力的な内容だ。
 今のプロトジンデスティニーは、とにかく関節部がもろい。戦闘中に手足がもげる事もあるぐらいだ。
 まあ、腕がもげる分には大して問題は無いのだが、足がもげると真面目に命の危機を感じる。
 正直に言えば、そろそろ信頼性の高い足が欲しい所だ。
 しかし……。
「でも、仕方ないじゃない。うちは鹵獲したMSを連合に売るしかないんだから」
「そうなんだよなぁ……」
 キラの答えに、シンはもう一度ため息を吐いた。

 

 傭兵会社を立ち上げてからそろそろ1年、なんとかMSを破壊せずに鹵獲できないかと
 頑張ってはいるのだが、未だに成功したためしがない。
 プロトジンの性能が低すぎるため、いまいち手加減が出来ないのだ。
 一般的に傭兵が鹵獲MSを処分するにはジャンク屋ギルドか、
 あるいは連合のMS回収事業に売るしかない。
 補修部品や武器弾薬、あるいは単体では役に立たないMS用の武器くらいならともかく、
 MS本体となると回状が回っているらしく、シン達はジャンク屋と取引が出来ないのだ。
 そうなると、売り先は必然的に連合一択となる。
 そして連合のMS買取では、MSから勝手にパーツを抜き取ると査定額が大きく下がる。
 兵器を回収して治安回復に努める連合としては当然の条件だろう。
「連合との信頼関係もあるし、勝手にそんな事するとヤヨイさん怒るだろうしな」
「顔の形が変わるまで殴られるのはもう嫌だよ」
「なんだって、あんなに強いんだろうな。あの人……」
 色々と世話になっている経理の女性の顔を思い浮かべ、二人はうんざりとする。
 コーディネーターの男性二人を問答無用で叩きのめすナチュラルの女性に、

 コーディネーターって実は大した事が無いんじゃないかと考えていた。

 正直、ほんの1年前までCEの聖剣だとかザフトのトップガンだとかもてはやされていたのが嘘のようだ。

 時々アレは夢だったんじゃないかと思う時もある。
 ダラダラと話ながら車を走らせる二人であったが、やがて山の合間から海に面した町が見えてきた。
「あ、シン。町が見えてきたよ」
「やれやれ、ようやく到着か。キラ、船の手配は?」
「そっちはもう終わってる。どうするの?」
「先に荷物を軍に届けよう。燃料代だって馬鹿にならないんだ」
「うん、わかった。連合に連絡を取っておくよ」

 
 

 港町だけあって、街は活気にあふれていた。
 エイプリフールクライシス以来、内陸部には物資が届きにくい状態が続いている。
 おかげで人が集まり活気にあふれるのは決まって港町となっていた。
 もっとも、二人はそんな活気にあふれる街には入らず、郊外にある連合の基地を目指した。
「止まれっ!」
 基地に近づいてくる大型のMS運搬用トレーラーを前に、ゲートの前で守衛が停止の合図を送ってくる。
 もっとも毎度の事だ。シンは各種の免許を取り出すと、トレーラーの窓を開け守衛に軽く挨拶をした。
「こんちわー、予約を取っておいた傭兵なんですけどMSを引き取ってもらいに来ました」
「許可書を……。東アジア日本自治区あ、今は日本独立自治区か。
 デスティニーカンパニーの、シン・アスカと、タケル・K・ヤマトで間違いないか?」
「ああ、こっちは身分証明書。この基地では買取はやってるのか?」
「許可書は本物と……、残念ながらここではやってない。地中海送りになるが構わないか?」
 許可書と免許を確認しながら守衛は答える。
 まぁ、シンもこの小さな基地で査定を行なっているなどと期待はしていなかったし、
 それでも問題は無かった。
 連合相手だと役人仕事なので少し時間はかかるが、逃げられる心配がまず無い。
 これがジャンク屋相手だと、悪徳業者が混じる可能性があるので最後まで油断できないのだが。
 だから、シンも気軽にそれで良いと答える。
「ああ、それで構わないぜ」
「そうか、めずらしいな」
 もっとも、それで良いと答える傭兵は意外と少ないらしい。
 基本的にジャンク屋ではリスクもあるが、ほぼ確実に連合よりも高値で売れるからだ。
 待つくらいなら、ジャンク屋に駆け込む事が多い。
「善良な市民の義務を果たしているだけですよ。まぁ、ジャンク屋には良い顔されて無くってね」
「ま、確かに最近のジャンク屋は性質が悪いからな。
 じゃあ正面駐車場で待機していてくれ。すぐに担当官が向かうはずだ」
「了解、入ってすぐ右ですね」
「ああ、そっちだ」

 

 担当官がやってきたのは、駐車場にトレーラーを止めて直ぐであった。
 事務員らしい腹の出た中年男を引き連れてやってきたのは、
 年の頃ならシンやキラとさほど変わらない若い青年士官であった。
 青年士官はトレーラーの傍まで来ると、慇懃な態度を崩さずに名乗りながら握手を求めてくる
「エドガー・バートランド中尉だ。今回の買取を担当する」
「あ、デスティニーカンパニーの代表取締役のシン・アスカです。
 こっちはうちの社員でタケル・K・ヤマトです」
「宜しくお願いします」
 青年士官の握手に応じる。一方、青年士官はと言うと、シンとキラの名前を聞き意味ありげに笑う。

 

 ザフト崩壊から1年。既に過去の人となっている二人ではあるが、
 未だにネームバリューは失われていない。
 実はあっちこちに偽者だとかパチモンがいるぐらいなのだ。
「ほほう、シン・アスカにK・ヤマトね……」
「ええ、元ザフトのシン・アスカと元プラント代表代行のキラ・ヤマトですよ。それが何か?」
 そんな青年士官に、シンはあっさりと自分達の出自をばらす。

 

 あっさりばらすと思わなかった青年士官は思わず慌てた。
「お、おい、そんなにあっさりと」
「別に隠しているわけじゃないですからね。
 じゃなきゃデスティニーカンパニーなんて会社名はつけませんよ」
「でも、名前は?」
「ああ、僕の名前? パチモンが煩いから改名したんですよ」
 たまに、自分こそ真のキラ・ヤマトだと名乗り事件を起こす馬鹿が出てくるおかげで、
 住んでいるアパートの扉が落書きされるなどといった事件が起きるのだ。
 自分に落ち度は無いのだが、その度に大家さんに頭を下げるのも馬鹿馬鹿しい。
 怒られるならまだ良いのだが、同情のあまり泣かれると実にばつが悪い。
 そんな事が度重なって、いい加減めんどくさくて少しだけ改名をしたのだ。
「は、はぁ。大変ですね……」
 そんな妙に達観した二人を前に、野望の青年士官も毒を抜かれたかのように呆然と答える。
 CE最強の二人とコネクションを作り、成り上がろうとせこい事を考えていたのだ。
 もっとも、現在では貧乏に追われる二人にそんな力は無い。
 こういう手合いも、毎度毎度出会っていれば対応もぞんざいになり、適当にあしらう技術だって身につく。
 シンが適当に青年士官の相手をしている間に、キラは中年の事務員に話しかけた。
 実務の話はこっちだろうと当たりをつけていたのだ。
「んじゃ、書類はこれとこれで。MSは降ろしておいてくださいね、
 こっちで危険物関係の調査をしますから」
「はい、わかりました。どれくらいかかりますか?」
「そうだね、うちで調査して本部に送るから、半月ぐらいかな。
 書面で査定表を送るので異議があるときは2週間以内に連絡をくださいね。
 異議が無ければ翌月頭に口座に振り込んでおきます」
 まぁ、この規模の基地であれば時間はその程度だろう。システムの説明もいつも通りだ。
 キラは書類を確認すると、サインを書き込み写しを受け取った。
「それにしても……」
 そして、情報収集をかねた雑談をしようとした、その時だった。

 

 突如、基地の警報が一斉に鳴り出す。各所のランプが赤く瞬き、一斉に怒声が響き渡る。
「敵襲だ、町が海賊に襲われているぞ!!」
「基地にもMSがっ!!」
 その叫びに、キラとシンは思わず顔を見合わせるのだった。

 

 どうでも良い話だが、この事件がきっかけでエドガー・バートランド中尉の運命も
 大きく愉快な方向に変わるのだが、それはもう少し先の話。

 
 

MS解説・3
モビルスーツ運搬用トレーラー“アレイオーン”
搭乗者 シン・アスカ、キラ・ヤマト
主武装 なし

 

 作中でシンとキラがMSの運搬に使用しているトレーラー。最大でMSを2機まで運搬可能。
 以前に盗賊から取り上げたトレーラーで、かなり高性能。
 簡単な整備ならこのトレーラー内で可能な他、ホバー機能があり“浮き輪”を出せば水上での運用も可能。
 さらに、ビームライフルを接続すれば簡易戦車になると言う万能ぶり。
 ぶっちゃけ、ポンコツのプロトジンをこれで運用しているなど宝の持ち腐れ。
 実はこれ一台で状態の良い中古MSが2機は購入できるのだが、二人はその事実に気がついていない。