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SCA-Seed_19◆rz6mtVgNCI 氏_とある害虫駆除業者、もしくは復讐者の日常_第4話

Last-modified: 2009-09-25 (金) 02:11:58

 基地襲撃の報にキラ・ヤマトが最初にとった行動は、
 シン・アスカの首筋を力いっぱい殴ることだった。
「はぅ」
 突然首筋を叩かれ、シンは白目を剥いてその場に崩れ落ちる。

 

「ふう、これでよし」
「こ、これでよしって!?」
 相棒を昏倒させたキラは、とても良い笑顔でキラキラとした汗をぬぐう。

 

 これはキラにとっては当然の処置をしたまでだ。
 なんせこの相棒、口ではすれた事を言っても、いざとなったら困った人を見逃せない熱血漢なのだ。
 あと先考えずに出撃するに決まっている。
 それ自体は別に構わないのだが、報酬が貰えず赤字ならまだマシな部類で、
 下手をすれば無断で暴れたと逮捕されかねない。
 連合には未だにブルーコスモス系の士官が多く、そこまで酷くなくても
 コーディネーターというだけで犯罪者扱いされる事だってあるのだ。
 僅か2000万人程度のプラントコーディネーターが引き起こした事態を考えれば
 仕方ない部分はあるのだが、ラクスの手下だった頃の事で恨まれるならまだしも、
 それ以外で自分達が不当な扱いを受けたいとは思わない。
 軍属だったりラクスが何処からとも無く武器弾薬MSを調達していた頃とは違うのだ。
 身の安全と報酬の約束は自分で確保しないといけないのだ。

 

「ああ、気にしないでください。持病の癪ですから」
「持病って、違うだろ! 今明らかにぶん殴ったでしょう!
 この非常時にアンタ一体何やってるの!?」
 とはいえ、外部の人間からしてみれば奇行以外の何ものでもない。
 エドガー中尉は目を白黒させ全力でツッコミをいれる。
「いや、だから持病の癪だって」
「明らかに違うでしょ! ほら、この人後頭部にでっかいたんこぶが!」
「目の錯覚ですよ。細かいことはキニシナイ。それよりもちょうど良いから僕達を雇いませんか?」
「いやいやいや、細かくは無いだろう! あんた頭は平気なの!? 絶対おかしいよ、アンタ!

 

                                     えっ? 雇う?」
 キラの言葉に、エドガー中尉はふと我に返り彼の顔を見る。

 

「ええ、僕達は傭兵ですから。グーン3機にアッシュ2機……それと潜水艦1隻ですか。
 格安でお引き受けしますよ」
「だ、だが、私は担当官では……」
「何言っているんですか、ここで自分の雇った傭兵が華麗にMSを撃退したら、
 きっと高評価で出世間違いなしですよ」
 そこにはジャパノーズビジネススマイルを貼り付け勧誘するキラの姿があった。
「ほら、契約はこんな感じで。安いでしょう」
「いや、しかし……確かに安いが……」
 そこには普通の傭兵に雇うより2割は安い金額が明示されている契約書があった。
「基地が破壊され左遷ちゃいますよ。うまく行けば出世できるかもしれない。さあ、早く決めないと……」

 

 それはまさに、悪魔の誘惑であった。
 そしてエドガー中尉は悪魔の誘惑に抗えなかった。

 

 これが、エドガー中尉の転落人生の最初の一歩となるのだが、どうでも良い話である。

 
 

「いつつつつ……、俺は何だって気を失っていたんだ?」
 エドガー中尉からまんまと契約をもぎ取ったキラは、
 シンをたたき起こすとプロトジンデスティニーのコックピットに放り込んだ。
 意識は戻ったがシンはどうもいまいち首筋がおかしいらしく、しきりに首を捻っている。
「破片が飛んできて当たったんだよ。気をつけないと」
「そうか、鈍ってるのかな?」
「そうなんじゃない」
「トレーニング増やさないとだめかな」
「そういえば、ジョギング中に知り合った女子高生を紹介してくれるって話はどうなったの?」
「そんな約束してないし、おいしいフラグなんて存在してない! それよりも、状況は?」
 そんなシンに、キラはしれっと嘘を教えた上で、くだらない話題で話をそらす。
 一昔前だったら出来ない芸当だ。

 

「うん、連合の部隊が出ているけど、ストライクダガーばっかりで圧されているみたい」
「何だってそんな旧式ばかりなんだよ?」
 彼らが使っているプロトジンほどじゃないが、ストライクダガーも既に旧式になって久しい。
 ダガーLへの改装が終わってないところを見ると、この基地はどうやら相当重要度が低いらしい。
「僕に聞かないでよ」
「町の状況は!?」
「現在避難中みたい。ビームライフルは使えないって!」
「そんな高級品ついてないから心配するなって伝えとけ! キラ、機体のコンデションは?」
「左腕は何とか付けておいたけど、動かないと思って。本当に付けただけだから」
 当然だった。鈍器代わりにした腕をくっつけた所でまともに動くはずが無い。
 トレーラーでの簡易修理では限界があるのだ。
「バランス取りだけか……。格闘戦は出来ないって事だな」
「うん、重斬剣の変わりにアーマーシュナイダーを装備しておいたんだけど……」
「ああ、この間シールドのおまけで貰った奴か。使えるのか?」
「超振動モーターが無いから、装甲の隙間を狙って」
「無茶言うな! くそっ、どっかにガーベラ・ストレートでも落ちてないかな?」
 高速振動を行なわないアーマーシュナイダーでは、MSの装甲を切断するのはほぼ不可能といってよい。
 まして今回の相手は分厚い装甲が特徴の水陸両用MSなのだから、
 下手をすればアーマーシュナイダーが折れる。
 まあ、だからと言ってシンの台詞は……。
「そっちの方が無茶だよ!」
 と、なる。CEでもトップクラスのトンデモ兵器が、そんじょそこらに転がっていてはたまらない。
「わかってるよ! くそっ、しょうがねぇな! 出るぞ」
「うん、トレーラハッチオープン、進路クリア。キラ・ヤマト……」
 二人の操作でトレーラーのハッチが開く。
 正面モニターに真っ青な空が映し出された時、二人は出撃の掛け声を口にした。
「……シン・アスカ、デスティニー、行きます!」

 
 
 

 マリナは小学校の先生であった。
 その日もいつも通り登校して、子供達に音楽を教えていた。
 エイプリルフールクライシスから約5年、ブレイクザワールドからは約3年。
 何時終わるとも知れない長い戦乱が続き辛い時代が続いていた。
 欲しくとも物資が届かない、エネルギーも無い。
 弱い子供達から次々と死んでゆく。何とかしたくても何も出来ない。
 無力さだけが募っていく。
 そんな、地獄のような時代が続いていた。
 だがザフト崩壊から1年。
 ようやく物資が届き始め、少しずつではあるが子供達に笑顔が戻りつつあった。
 子供達に、幸せな未来が今度こそ来るんだと思えるようになってきた矢先であった。

 

 突如町中に響いた避難警報。
 子供達は泣き出し、大人たちは狼狽する。
 窓の外には海からやってくる鋼の巨人の姿が見えていた。
 学校が海沿いにあったことが最大の不幸であった。逃げる時間が果たしてあるのか?
 一つ目の巨人はその鋼の爪をこの学校に向けているではないか!
「せ、せんせー!」
「こ、こわいよっ!!」 
 子供達が抱きついてくる。
 子供達はみな、戦争に対するトラウマを背負っているのだ、
 皆1度か2度は戦争で命を落としかけたことがあるのだ。
 せめて、せめて大人の自分がしっかりしないでどうする。
「だ、大丈夫よ。み、みんな」
 マリナは震える声で子供達を励ます。
 だが、そんなマリナや子供達をバカにするように、鋼の巨人の爪の付け根が輝きだす。
「せ、せんせー!」
「皆!」
 マリナは無駄と知りつつも子供を庇おうと抱え込む。
 だが、その努力もむなしく彼らは高熱に焼かれ影すら残さず地上から消える……

 

 ……はずだった。

 

 だが、そうはならなかった。

 

「させるかぁっ!!」
 大地を揺るがす男の声が響く。
 彼が思うのは腕だけしか残らなかった妹の事。弱かった自分の愚かさ。
 自分と同じ思いをするような人を、もう作りたくは無い!

 

「やらせないっ!」
 大空を振るわせる男の声が響く。
 彼が思うのは守りたくて守れなかった少女。思い出すことすら避けていた、自分の罪の証。
 あの時戦いの意味を知っていれば、あの小さな少女は死ななかったのに!

 

 そう、自分達は所詮は大罪人。人殺しを生業とする傭兵だ。良い死に方など出来まい。
 それでも、この力でやりたいことがある。やらなければならない事がある。

 

「俺は……」
「僕は……」

 

「「守りたいんだっ!!」」

 

 二人の叫びが、海に空に、大地に木霊する。
 黒と緑、歪な色彩のMSは、子供達の未来を守るために、その地に立ち上がった。

 

 その姿は、まるで神さまのようだったと後に子供達は語ったと言う。

 
 

「キラ! 後ろの学校は!?」
「大丈夫、窓ガラスが少し割れたみたいだけど大きな被害は無いみたい」
「シールドにエネルギーを回してくれ! 次が来るぞ!」
「うん!」
 シンの言う通り、目の前のアッシュは再びビームのチャージを始めている。
 本来なら速射が可能なのだが、それをしないのは相手がプロトジンと知って恐怖を煽っているのだろう。
 だが、この場合かえって好都合だ。逃げれない以上、速射をされたら対応しきれない。
 再び発射されるビームを、シンは微妙なシールド調整でやり過ごす。
 なんせ、ビームの粒子が掠っただけでも人体は致命的に破壊される。
 シンがエネルギーを空と海に逸らしていなければ、後ろの子供達に死者が出ていたところだ。
「シン、連合の救助部隊が来たよ!」
「わかった!」
 キラの言うとおり、確かに学校の裏手、アッシュからじゃ死角になる位置に軍のトラックが止まっている。
 軍服姿の兵士達が次々に学校に突入し、子供達の救助を開始していた。
「どれぐらいかかる!?」
「10分……いや、5分欲しいって」
「キツイな……」
 口では弱音を吐きながらも、シンはニヤリと笑う。
 モニターの片隅には、危険も省みず子供達を抱えて走る連合兵の姿が映し出されていた。
 こんなものを見せ付けられては、頑張らないと言う選択肢は無い。
 学校を背にしている以上避けれないのなら、全て受け流すのみ。
「キラ、悪い。命を預けてもらうぞ!」
「何を今更。エネルギー調整は任せて!」
 次々に発射されるビームをシールドで受け流しながら、シンは学校から一歩も動かなかった。
 その様子にアッシュのパイロットも苛立ってきたのだろう。
 徐々にビームを発射する間隔が短くなってくる。
 その度にアンチビームシールドは磨耗し、プロトジンの表面装甲にも焦げ目がつきはじめる。
 耐えるにしても限界があるのだ。
 そして……

 

「シールド損耗率89.5%次は耐えられないよ!!」
「あと1分以上あるんだぞ!」
「だめ、くるっ!!」
「こなくそー!!」
 極限まで磨り減ったシールドにキラが悲鳴を上げる。
 だが、それでも動くわけには行かない。シンは一か八かとシールドをアッシュに向かって投げつける。 
 発射されたビームはシールドにぶつかると、その進路を大きく変え青い空に消えていった。
 だが、その代償にシールドは真っ二つにへし折れた。
「ここまでか……」
 シンが悔しげに呟く。これ以上は耐えられない。
 もうどうしょうも無いと覚悟を決める二人に、意外にも対峙していたアッシュから通信が入ってきた。

 

「なあ、お前。コーディネーターだろう」

 

 その通信は予想外であった。
 軽い調子の若い男の声に、シンが答える。
「そうだと言ったら、どうするんだ」
 シンの答えにヒューっという口笛の音が聞こえてくる。
「いやさ、同胞同士で争うなんて馬鹿げているじゃん。
 それに、お前ら良い腕だからスカウトしようと思ってさ」
「スカウト?」
「そそ、スカウト。ナチュラルなんかの為に争うなんてばかばかしいじゃん」
「たしかに、それはそうだが……」
 吐き気がするような嫌悪感を感じながらも、シンは相手に同意の意思を示す。
 自分達が感じる不快感だけで子供達の命が救われるなら、安いもんだ。
 一方、そんなシンやキラの感情などに気が付く様子も無く、
 アッシュのパイロットは軽い調子で話を続ける。
「だったら話は早いや。お前ら傭兵だろ、ジンなんかに乗ってるって事は。こっちに来いよ。
 そうしたらそんなポンコツじゃなくてもっと良いMSに乗れるし、良い生活だって出来るぜ」
「それは魅力的な提案だね」
「ありゃ、別の声? 複座か」
「ああ、複座だ。ポンコツどころかスクラップ寸前なんでね、パイロットが二人必要なんだよ」
「うわ、すげー」
 アッシュのパイロットが純粋に呆れる。
 無理も無い、プロトジンを現役で使うなどCEでもこの二人ぐらいだ。

 

「ま、それでもガキを殺すぐらいはできるよな」
「なっ!?」

 

「驚くなよ。ナチュラルのガキなんて殺したって構わないだろう、すぐ増えるんだしさ」
 その言葉に、二人の怒りのボルテージが上がる。
 子供殺しをゲーム感覚でするなど、ふざけるな。そう叫びたいのを必死で堪える。
「さ、さっさとガキを殺そうぜ」
 そう言うと、アッシュは校舎に銃口を向ける。
 どうするか、今すぐに攻撃するか?
 いや、ダメだ。一撃で倒せなければ暴れられて被害が出る。
 機体を盾にするか? いや、それで防げるのか?
 二人が逡巡していた、その時だった。

 

「シン!」
「これは、よっしゃぁ!!」
 連合から伝えられた情報に、シンが喝采の叫びを上げプロトジンを一気に走らせる。

 

「あんたらの仲間になるって話は……絶対にノゥ!!」
 シンは拒否の怒声を上げながら、壊れている左肩で体当たりをぶちかます。

 

「な、なんだとー!!」
 アッシュのパイロットは驚きの声を上げながらも、ビームの引き金を引いた。
 体制を崩しながら放たれたビームであったが、校舎の一部に命中して爆発を起す。だが……。
「悪いな、もう避難は終わっているんだよ!!」
「な、馬鹿なっ!」
 そう、シンとキラが必死に耐えている間に、連合兵は学校にいた児童の救助を完了させていたのだ。
 時間にして3分弱。二人が連合兵に勇気を貰ったように、連合兵も二人から勇気を貰ったのだ。
「ふ、ふざけるなぁっ!」
 怒りのあまり、アッシュのパイロットがプロトジンに向かいビームを放とうとする。
 しかし、ビームが発射されるよりも早く、ビームの発射口が開いた刹那、
 いつの間にかジンが構えていた突撃銃の弾丸が叩き込まれ、アッシュの片腕を爆散させる。
「な、なんだ、と?」
 神業ともいえる精密射撃に、アッシュのパイロットは呆然とする。
 そんな神業を見せ付けたキラは冷たく言い放った。

 

「悪いけど、君達を倒させてもらうよ。
 答えは聞いてないけどね」

 
 

 続いていいかな?