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SCA-Seed_19◆rz6mtVgNCI 氏_とある害虫駆除業者、もしくは復讐者の日常_第5話

Last-modified: 2010-03-07 (日) 11:05:59

 右腕を破壊されたアッシュはヨロヨロとした動作で海に逃げようとする。
 おそらく爆発の衝撃で中のパイロットが頭でもぶつけたのだろう、動きが緩慢だ。
 そして、その隙を見逃す二人ではない。

 

「逃がすかよ!」
「うわあぁぁぁぁぁ!!」

 プロトジンはアッシュの残っていた左腕を掴み上げると、強引に引き倒そうとする。
「ぱ、パワーならこっちが上だ……って、えええええええっ!?」

 必死になって振りほどこうとするが、あっさりとバランスを崩すと轟音を立てて地面に倒れ伏した。
「知らないの? プラント製水陸両用MSは重量バランスが悪くて、
 格下相手でも組み合っちゃいけないって」

 

 一見重量があり重心が安定しているように見えるザフト製水陸両用MSであるが、
 実際は重量に対し脚部間接が貧弱であり、地上では容易にバランスを崩すことが出来るのだ。
 悲鳴を上げるパイロットにキラは冷たく言い放つと、脱落した右腕跡に突撃銃を突きつけ弾丸を叩き込む。
 弾丸はアッシュの重装甲を貫く事無くMS内部を跳ね回り、機能をずたずたに破壊する。
 アッシュは装甲の隙間から煙を上げ、部品を吐き出しながらその機能を停止させた。

 

「まずは一つ。この腕もって行こうか?」

 倒れたアッシュを見ながらキラが呟く。
 その言葉にシンは一瞬だけ考えるが、なぜか嫌な予感しか浮かばない。
 美少女との出会いはありそうだが、大怪我とヤンデレだけは簡便だ。
 シンは顔を顰めながらキラの提案を否定する。

「やめとこう、色々なところから怒られそうだ。それにそんな暇はないみたいだぜ」

 どこらか怒られるかはともかく、確かにもぎ取っているような暇は無いようだ。
 何時の間にか、町や基地を襲っていたMSがこちらに向かっているではないか。

 

「目立ちすぎたかな?」
「上等。キラ、連中を町から引き離すぞ!」
「うん、わかった。アイハブコントロール……、トレーラー起動……。ホバー形態に移行。
 シン、いけるよ!!」

 キラの操作で近くに止めてあったトレーラーが水上移動用のホバー形態に変形してやってくる。
 このトレーラーはグゥルのシステムが組み込まれているらしく遠隔操作で動くのだ。
 他にもMS2機まで運搬可能な他に簡易整備が可能な各種設備が整っており、
 ビーム兵器用らしきコネクタとアームに索敵用レーダーまでついている。
 以前の仕事で鹵獲したのだが、誰が作ったのか知らないがえらく高性能だ。
 このトレーラーは都市間の移動以外にも本当に役にたつ。たとえば今回のように相手が海に居る時などだ。
 やってきたトレーラーにプロトジンを乗り込ませると、キラはホバーを加速させる。

「いくよ、シン!」

 キラの掛け声と共に、黒と緑のMSが、青い海を駆けだした。

 
 

 水陸両用MSというのは通常のMSと比べると総合的に能力が低くなることが多い。
 水中という苛酷な環境で運用をするためには、MSとしての機能を
 いくつか犠牲にしなければならないからだ。
 それはザフト製であれば形状であり、連合製であれば稼働時間の減少という形で現れる。
 一部の機能を犠牲にしてまで何故水陸両用MSが作られるかというと、
 水中という天然の要塞内を移動する水陸両用MSは隠密性が非常に高いという利点があるからだ。
 目視で発見されず、目的まで静かに近寄る。CEの時代においても……いや、
 未だにレーダーの死んでいるCEの世界だからこそ、水陸両用MSはその力を存分に生かせるのだ。

 だが、逆説的になるが、一度発見してしまえば水陸両用MSはそれほど脅威ではない。
 少なくとも、この二人にとってはそういう存在だった。

 

「シン、2時方向から来るよ!」
「OK」

 キラの予測通り水面に顔を出す。

「遅いんだよ!!」

 

 ジン・デスティニーの突撃銃から吐き出された弾丸が、海面から顔を出そうとしていた
 グーンの頭部に叩き込まれる。
 もっとも、重装甲のグーンには中のパイロットにゲロを吐かせた程度しか効果は無かっただろう。
 水中に沈んで行くグーンを見ながらシンとキラは歯噛みする。
 あの分厚い装甲はうらやましい……ではなかった、厄介だ。

 

「どうする、シン。このままじゃいたちごっこだよ」
「どうするもこうするも、頭を叩くしかないだろう。キラ、索敵頼む」
「うん、わかったよ」

 シンの言葉に、キラがキーボードを叩く。
 基本的にMSはバッテリーで動き長時間の単独運用はできない。
 その性質上、近くに母艦ないし基地が無ければその力を発揮できないのだ。
 この状況なら、まず間違いなく母艦……しかも、潜水艦がいる。
 そして、なにより重要なのは……。

 

「潜水艦を落とせば特別ボーナスだ!」
「大盛り牛丼に卵を付けられるね!」
「豚汁とサラダもだ!」
「おしんこもつけよう!」

 

 ただでさえ金食い虫であるMSを維持管理しているのだ。どうしてもこうなる。
 もっとも、相手も黙って蹂躙されるほど大人しくはない。コレでも大戦中からの歴戦の戦士なのだ。 

 二人の操るプロトジンを破壊するべく、海中からグーンが頭を出し豪腕を振るう。
 だが、彼らが歴戦の戦士ならシンとキラは最強のパイロットだ。そう簡単にはやられない。

「んな攻撃当たるかぁ!」

 そう叫ぶと、シンはプロトジンを跳躍させる。
 プロトジンとは思えない躍動感ある動きに、グーンの腕は空を切る。

 そのまま空中で重突撃銃を発射、グーンの頭部に命中させ反撃を封じると、トレーラーに着地する。
 しかし……。

 

 メキ……メキ、メキメキ……ペキッ!

 

「って、足が折れたぁ!」
「そ、そんなぁ!!」

 プロトジンの股関節が着地の衝撃に耐え切れず、右足が根元からへし折れる。
 二人の悲鳴がコックピットに響いた。

 

 だが、二人は伊達に最強のパイロットとは呼ばれていない。運も強さの内であった。

 吹っ飛んでいった右足が、偶然にも水中から頭を出しかけていたアッシュに当たる。

 何度も言うが、質量攻撃というのは馬鹿に出来ない。
 物理攻撃には無敵の耐久力を見せるPS系の装甲といえども時には一撃で破壊するのだ。
 まして、強固といえ通常の装甲しかもたないアッシュが足一本といえども耐えられるわけがない。
 運の悪いアッシュは、その衝撃で内部構造が破壊され、爆発し海に沈んだ。

 

「うそ……」
「ら、ラッキーだな……」

 

 思わず呟く二人だったが、不意にMSのコックピット内にOSの起動音が響く。 

 

『デスティニー!』
『フリーダム!』

『マキシマムドライブ! アロンダイト!』

 

「何がアロンダイトだ!」

 もっとも、その音声はシンを刺激しただけのようだ。シンは思わず怒鳴り声を上げる。

「キラ! このまるで(MA)ダメな(DA)OS()は何とかならないのかよ!」
「無理だって。削除できないんだから!」

 キラの悲鳴が、コックピットに木霊する。

「それよりも、潜水艦が見つかったよ!」
「本当か!?」
「うん、湾の外、岩陰に隠れてる。浮上しているみたいだけど……」

 攻撃手段がない。
 キラが内心でそう叫ぶが、シンは半ば諦めたような達観した表情で、キラにこういった。

 

「キラ、攻撃手段は一つしかないだろう」
「泣いていいかな?」
「だめ。一緒にヤヨイさんに殴られよう」
「しくしくしく……」

 シンが何をしようとしているのかわかったキラは思わず泣きまねをする。

 

「だから泣くなよ。いくぞ」
「うん、ロック解除……」

 キラがプロトジンのシステムロックを解除してゆく。
 そして……。

 

『デスティニー!』
『フリーダム!』

『マキシマムドライブ! アロンダイト!』

 
 
 

 後に、この基地の日記に

 

 岩陰で脱落した左足を振り回し、潜水艦をボコボコにするプロトジンの姿が見られた

 

 という記載があったそうだが、連合上層部の判断で無かった事にされたらしい。

 
 

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