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SCA-Seed_19◆rz6mtVgNCI 氏_第13話

Last-modified: 2009-02-18 (水) 19:23:58

 デトロイド上空に到着した第17MS独立部隊の6機のダガーL、
プリンズが最初に見たのは、街から立ち上る煙であった。
 どうやら上空で暴れるMSのうち、インフィニットジャスティス……特別捜査官殿は
できる限り街への被害を減らそうと、撃墜したMSの落下地点のコントロールをしようとしているらしい。
もっとも、それで大して被害が減るわけもなく、敵の妨害で上手く行かない事も多い。
さらに厄介なのは都市に侵入したMSだ。
数はそれほど多くは無いが連中は町の被害などお構い無しに建物を盾に撃ちまくる。
敵が上空にいるインフィニットジャスティス一機だからできる戦術だが、
たしかに地上からの攻撃は相手の動きを妨害している。
アスラン自身も、さすがに都市を盾にするテロリスト相手には攻めあぐねている。
都市に侵入したMSへの反撃は精彩を欠いていた。
パイロットがアスラン・ザラでなければ、恐らくは敗北していたのは
インフィニットジャスティスであったであろう。
元々アスランが勝手に出撃しない、あるいは出撃しても都市上空を迂回するなどの処置をとっていれば
起こらなかった被害ではあるが、反面でアスランのジャスティスの牽制が健在な為に
街へのMSの進入は最低限に抑えられている。

 

 もっとも、1/3以上が廃墟ないし火の海に包まれているので、何の慰めにもならないだろうが。

 

街の惨状に、サイは溜息をつく暇も無く通信機を立ち上げる。

 

「プリンゼロワンよりコントロールタワーへ。デコスケが大暴れをしている」

 

ちなみに、デコスケとは司令が決めたアスランに対するコールサインだ。
サイの言葉に隊員たちから苦笑と失笑が漏れる。
しかし、移動指揮機からの返答にその笑みは消え、逆に息を飲む声が聞こえる。

 

「コントロールタワーより各機へ。状況は確認した。ゼロワン、ゼロツー、ゼロスリーが地上の敵を迎撃。
 ゼロフォー、ゼロファイブ、ゼロシックスはデコスケと敵機の間に割り込んでとにかく距離を開けさせろ。
 司令の許可が出た。全武装の使用を認める」

 

「ちょ、ちょっと待ってくださいや」
司令の指示にゼロツーを担当する黒人准尉が異議の声を上げる。
MAのパイロット上りで虐殺の起きた第二次ビクトリア攻防戦の数少ない生き残りでもある彼は、
その指示がどういう結果をもたらすかをよく熟知していた。
MSの火器は基本的に都市などで使用するものではない。
迎撃用のバルカン砲ですら生身の人間には至近距離の着弾で致命傷になりかねない。
ましてビームライフルとなると火線の進路上にある全てを焼き払う。
装甲材で包まれたMSと石と鉄骨、木と紙でできた建築物とでは根本的な強度が違いすぎるのだ。

 

「こんな街中でビームライフルやロケット弾なんぞ使用したらそれこそ洒落にならない被害が出ますぜ!」
「ゼロツー、異議は認められない! ゼロワンよりコントロールタワーへ支持を了解した」
 しかし抗議の声を遮り、サイは了解を告げる。
「隊長!」
「どの道被害は避けられない。無事なエリアと避難民の保護が最優先だ」

サイの苦々しい言葉に、ゼロツーは押し黙る。元々司令やサイとの付き合いはこの部隊ではもっとも長い。
どちらにとっても本意ではないのは判っているのだ。

「了解」

サイはその言葉を聞くと、地上で避難民の誘導に当たっているはずのゼリーズに通信を繋ぐ。

「プリンゼロワンよりゼリーズに・・・」
「こちらゼリーゼロワンだ。聞こえてる」

サイの呼びかけに、通信機より男の声が聞こえてくる。
ゼリーズを率いている大尉で、第17MS独立部隊のMS隊のトップを勤める男だ。
本来なら3機のステルスストライカー対応型ウィンダムでテロリストの施設を強襲するはずであったが、
今回のような事態になり街で避難誘導を行っていたのだ。

 

「サイ、随分と隊長が板についてきたな」
「からかわないで下さい、大尉」

面白がる大尉の声に、サイは苦虫を噛み潰したような声を上げる。
その様子に命令でやや陰鬱になりかけていた空気が少しだけ和らいだ。

「褒めたつもりなんだが・・・。おっと、本題だ。
 今のところ敵MSはデコスケのケツを追いかけるのに夢中で町への侵入は止まっている。
 んで、悪いんだがサイにゃ悪いんだがおつかいを頼みたいんだ」
「おつかい?」

 大尉の言葉に、サイは内心首をかしげる。

「ああ、ルーシェが単独で民間人の救助に向かってまだ戻ってきていないんだ」
「戻ってきていない? ルーシェが?」
「ああ、孤立している民間人を見つけたとの通信があったきり、戻ってきていない。
 ビーコンが生きているから落とされたわけでは無いと思うが、通信機がいかれたのか応答が無いんだ」

多少心配を滲ませながら大尉は答える。

 

 ルーシェ准尉は第17MS独立部隊に所属するMSパイロットだ。
サイと並びややこしい過去を持っている。

彼女はブルーコスモスが研究していたというエクステンデットの一人だった。
最終工程前であったので寿命を縮めるような過剰な薬物投与こそ受けていないが、
薬物処理にインプラント処置、さらには記憶の消去が行われているという。
ルーシェという呼び名も名前ではなく、研究所時代のコードをそのまま使っているらしい。
ブレイク・ザ・ワールド後の戦争後、ブルーコスモスの非道な実験が明るみに出て大問題となったが、
反面でその結果放り出された強化人間達に社会は冷たかった。
彼等の大半は行き場も無く社会に放り投げられ、結局は軍や研究施設に戻る事になったのだ。
コーディネーターを殺す為だけの訓練を受けた改造人間を引き取ろうという物好きはほとんどいなかったし、
現実問題として引き取るような余裕がある者はほとんどいなかった。
酷いマスコミになると何も判らないままつれてこられ人生を狂わされた、犠牲者であるはずの少年少女達を
ブルーコスモスの殺人人形、ベルリンの悪魔達として糾弾した。
あるいは一部のコーディネーターは、生き残りの少年少女たちを利用……
……実際は見世物のさらし者にしてナチュラルの非道さを訴えようとした。
もっとも、そんな馬鹿どももラクス・クライン議長自らの手により告発されたプラント内の
非道な内臓抜き取りの実体が明らかになるにつれ沈黙していった。
結局、狂っているのは今のCEの世の中なのだ。
そして、狂った世の中で消耗の激しい軍のパイロットとはいえ、正式な階級と市民権を獲得して
妙なマスコミに狙われていない准尉はまだ幸せな方といえた。

 

「悪いが迎えに言ってくれ。この手の事はお前が一番むいている」
「了解。位置の確認を・・・。と、じゃあ迎えに行ってくる」

 サイはそう言うと、機体を降下させ准尉のウィンダムのいる位置に向かい始める。
同じ部隊の仲間を助けるという、あたり前の目的に向かって。
この時、意外な再会が訪れるなど予想もしていなかった。

 
 

「操縦を代われっ! 民間人! MSはヒーローごっこの玩具じゃないんだぞ!」
「そんな暇あるかっ! 敵に言ってくれ!!」
「きゃあああああ、右から来てる来てるっ!!」
「そこのお前、写真をとるなっ! きゃっ、どっ、どこを触っているっ!」
「お前等少し黙れっ! くそっ! しつこいっ!」
 戦闘中のコックピット内とは思えないほどの騒がしい上に微妙に柔らかかったりする周囲に辟易しながらも
シンはなんとか操縦桿を倒した。
シンの操縦に応え、ウィンダムはバックステップを踏む。
その直後に、直前までウィンダムのいた場所にバグゥから伸びた火線が
小さなビルの一面に巨大な穴をあける。
そして、そのビルは自重のバランスを大きく崩し大きな音と共に崩壊した。

 

「くそっ! いい加減にしやがれっ!」

シンは叫び声を上げながら、爆風にあおられたウィンダムの体勢を立て直す。
しかし……。

 

「また来たっ!」
「耳元で騒ぐなっ!」

シッポの叫びに律儀に応えながら、シンはビルの陰から飛び出してきた
もう一機のバグゥのビームサーベルを一歩下がってよけた。
もっとも、現状ではそれが精一杯だった。
反撃をしようにも、切りつけて来たバグゥは飛び出してきた勢いのまま別のビル影に入り込み、
砲撃をしてきたバグゥも何時の間にか姿を消してしまっている。
それ以前に、周囲の被害を考えると格闘用以外の火器が使えないのが痛い。

「ちっ、厄介だな」

シンは小さく呟くと、大きく距離を取り再度この場からの離脱を開始した。

 

 なんとかジンを撃破したシンであったが、結局はそれが呼び水なってしまった。
シンは知らない事であったが、都市に侵入したテロリストのMSは20機近い。
その内1/3は空中でインフィニットジャスティスとドッグファイトに当たっており、
残りの1/3は地上から上空へ砲撃を行っていた。
では残りの1/3はというと、好き勝手に都市に攻撃を仕掛けていた。
コーディネーター至上主義者のテロリストはナチュラルを異常なまでに憎む。
もともと長い戦争で双方が多大な犠牲を払っているのだから互いに嫌悪するのは無理も無い。
それでも同じコーディネーターにとっても理解しがたい情動で動いている者も多い。
もっとも、この点はナチュラルにも今だにブルーコスモスの過激派がいるのだからどっこいだろう。
こういった手合いは、とにかく攻撃的だ。
ちょっとした切っ掛と力けさえあれば自らの破滅も省みずナチュラルを殺そうとする。
いや、ナチュラルだけではなく自分達と主張を別にするコーディネーターも連中には攻撃対象だ。
ブレイク・ザ・ワールドの主犯であるサトー隊などはその典型であろう。
そういった手合いの拠点に悪名高い歌姫の騎士団のMSが近づいて来たらどうなるか。
無論迎撃にあたる者もいるだろうが、中には破れかぶれに都市攻撃に走る者が出てくる。
そして連中にとって、もっとも憎むべき対象の一つが猿真似であるナチュラルが操る連合製のMSであった。

 

「畜生、連中め考え無しにばかすか撃ちやがって!」

 こちらが離脱を開始したとたんに背後のから飛んできた砲撃をかわしながら、
もう何度目かわからない悪態をつく。
こちらを追って来るのはバグゥ2機。
ビーム砲が乗っかっているあたりは改造機か、ケルベロス型への切り替えの最中の機体かはわからないが、
どちらにしろ普通に戦えば慣れない機体であっても勝てる自信がある。
しかし、如何せん此処は街中だ。周囲に人影は無いが、逃げ遅れた人がいないとは限らない。
最も火力の低いだろう迎撃用バルカンですら、人体に当たれば容易に人を血の霧に変える。
幸か不幸か、シンはその事を自らの過去の行いの結果として熟知していた。
こんな状況では、MSの火器は使えない。
もっとも、それはこちらの事情であって、テロリストには関係が無い。
むしろ、戦闘に巻き込まれて愚かで野蛮なナチュラルが死ぬ事こそ連中には喜びなのだ。
そして周囲の被害など省みぬテロリストの所業に、もともと長くないシンの堪忍袋の緒はあっさり切れた。

 

「くそっ! いいかげんにしろぉ!」  
「まてっ! 何をしようとする民間人!」

突如ウィンダムの足を止めるシンに、准尉が静止の声を上げる。
だが、そんな静止の声を無視してウィンダムは再びビームサーベルを引き抜く。

「ばかっ! 止めるんだ! 民間人の戦闘行為は重罪だぞ!!」
「今更そんな事をいっている場合かっ!」

もう何度目か数えるのも馬鹿馬鹿しい准尉の言葉に、シンは律儀に声を上げる。

「まてっ!」
「これ以上……、ふざけた真似をやらせるかよっ!!」

シンは叫ぶと、ウィンダムを反転させビームサーベルを引き抜く。
射撃武器が使えない以上はこれでやるしかない。
もっとも、高速で移動し射撃武器を主兵装とするバグゥタイプとの相性は最悪と言って良い。
とはいえ、これ以上付き合ってもいられない。砲撃で被害が増えるだけだ。
シンの脳裏に、何度となく見てきた理不尽な暴力に巻き込まれる人たちの姿が浮ぶ。

 

こんな光景を見たくないから、せめて起こる事が仕方ないなら、

 

少しでも止めたくて、助けたくて力を欲したはず。

 

何度自分は間違えればいいんだ。

 

自分がせめてしっかりしていれば、あの少女は、あの親子は死なずに済んだはず!

 

諦めと忘却に封じられていた、シンをシンたらしめている根源たる思いの封が開いた時、

 

シンの中で何かが弾けた。

 
 

「やっぱり野蛮なナチュラルだな! こらえ切れなくなってつっこんできたぜ!」
 逃げるのを止めつっこんできたウィンダムの姿を見て、バグゥのパイロットは嘲笑した。
一人が囮になり相手に隙を作らせ、もう一機が物陰などの死角からしとめる。
この戦術で彼等は何人ものナチュラルのパイロットを葬ってきた。
普通のパイロットなら1回で、少し腕がたってもものの数分で仕留めてきた。
そう考えればこのパイロットはよく持ったほうだ。
しかし、最後がよくない。態々死にに来るようなものだ。まぁ、野蛮なナチュラルの限界なのかもしれない。
男は馬鹿なナチュラルをしとめるべく、バグゥを後退させながらビームの引き金を引く。
もっとも、これは単なる牽制だ。
これで足を止め、僚機の攻撃で確実にしとめる。それが自分たちの戦術だった。

 

 そして、男が意図した通り、ウィンダムは対ビームシールドを構え、バグゥの砲撃を受け止めようとする。

 

──ばかめ

 

 火砲から放たれたビームはウィンダムのシールドに当たり逸らされ……。

 

 次の瞬間、男の耳に信じられない悲鳴が響いた。

 

「えっ!?」

 

 男は驚きの声を上げる。今の悲鳴は相棒の声ではなかったか?
それに、通信機から聞こえる砂嵐は何?
いや、あのビルの向うの爆発音は?

 

 男は思わず呆然とする。
そして、ほんの僅かではあったが、それは大きな、致命的な隙だった。

 

 突然襲った大きな揺れに男の意識が操縦に向かう。
何時の間にか接近していたウィンダムに蹴りを入れられ、バグゥが転倒したと気が付いたが、
既に時は遅かった。
圧倒的な熱量がコックピットに侵入して、男は苦痛を感じる暇も無くこの世界から消えた。

 
 
 

 なんとかサブシートに収まりながら、その信じがたい機動に准尉は怒鳴る事も忘れて絶句した。

 

 この民間人の男は今何をした?

 

 たしか、勝手に戦闘をはじめた事までは覚えている。
そこで自分は文句を言ったはずだ。
すでに、自分が気絶している間に一機撃墜してしまっているので、今更の注意ではある。
しかし、民間人に戦闘行為をさせるわけにはいけない。
民間人は綺麗なままでいさせるのが軍人の勤めだから。

 

 だが、その後の機動は何だ?

 

 バグゥに無造作に突っ込んで行った時、この男は戦闘の恐怖に耐え切れず錯乱したのかと思った。
実際、目の焦点があっていなかったように思えたからだ。
なんとか操縦桿を取り戻そうと動こうとしたが、男はそんな事をお構い無しに操縦を続けた。
そして、バグゥがビーム砲を向けてきた時、死んだかと思った。
至近距離でかわせるわけも無く、さらに敵は二機いたのだ。
そして吐き出されたビーム。その輝きを見たとき、とうとう自分も仲間の下に行くのだと考えた。

 

 しかし、信じられない事がおきた。

 

 この男は、ほんの僅かなシールドの角度調整でビームを防ぐのでも弾くのでもなく、
角度を変えて反射させたのだ。
しかも、そのビームをもう一機のバグゥに命中させ撃墜。
さらに、その事に動揺したもう一機のバグゥもあっさりと撃破してしまった。
ビームの反射効果は知っているが、それは無駄に流れ弾を産み出して僚機にあたるのを防ぐ為だ。
オーブのヤタノカガミあたりなら容易くできる現象だが、
それを普通の対ビームシールドでやるなどと言う話は聞いた事が無い。

 

「お、お前、何者だ……」
准尉が擦れ声で黒髪、赤い瞳の男に詰問する。
その男がそれに答えるのを遮るように通信機から聞き覚えのある声が響いた。

 

「こちらプリンワン、サイ・アーガイル少尉だ。ルーシェ准尉、無事か?」

 

 至近距離からの指向性レーザー通信が入った事を示すパラメーターが表示される。
たしかに、上空よりタガーLがこちらに向かってきているのが確認できた。
上官の登場に、反射的に准尉は返答を返す。

「はい、こちらは無事です。アーガイル少尉」

 

 その言葉に、その男は幼さすら感じさせる声を上げた。

 

「へっ? サイさん? サイさんが何でここに?」

 

 シンの声に、通信機の向うから、二つの声が響いてきた。

 

「へ? シン、シン・アスカがなんでここに?」
「シン!! なんでお前がこんな所にいるんだっ!!!」