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SCA-Seed_19◆rz6mtVgNCI 氏_第14話

Last-modified: 2010-04-16 (金) 01:22:25

後にデトロイド事件と呼ばれる事件の発端たるMSによる市街戦は、
鎮圧部隊が到着するに従い急速に収束していった。
元々インフィニットジャスティスとの交戦で半数近くが撃墜されていた上に、
元々テロリストや海賊などは練度が十分とは言いがたい場合が多く、
旧式になりつつあるダガーLでも、十分に対処が可能なのだ。
もっとも、都市が受けた被害はそのようなことは慰めにならないほどひどいものであったが……。

 
 

「んで、なんだって俺が拘束されてるんですか?」
「拘束じゃなくて事情聴取だ……、むくれるなよ」

 

一方、ウィンダムに搭乗しMSと交戦したシン・アスカであったが、
戦闘が終了後に指示に従いすみやかに大西洋連邦の仮設キャンプに帰等したところ、
すぐさま身柄をシッポ共々拘束されてしまった。
まぁ、内心では仕方が無いとは理解しつつも、流石に不愉快な思いになるシンであった。
その不機嫌さを取調官……サイ・アーガイルにぶつけたのは、流石に大人気ないが。

「大体、なんだってパイロットのあんたが取り調べなんてしているんだよ。連合も人手不足なのか?」
「人手不足なんだよ。残念ながら」

サイは不機嫌を隠さないシンに辟易しながらも、内心文句を言いたいのはこっとだと叫んだ。
ちなみに、文句を言う先はシンではなく司令に対してだ。

 

本来なら取調べをするのはパイロットの仕事ではなく、少人数でなにかしら兼業しなきゃいけない
ザフトならまだしも、大西洋連邦ならばそれ専門の人間がいる。
それをサイが行なっているのには深い訳がある……訳ではない。
ぶっちゃけると司令が面白がってサイに押し付けただけだ。
出撃前のアスランの起した騒動や、この街にシン・アスカにいた事実。
テロリストの仲間だとは考えにくいが、その可能性が無いわけではない。
いや、プラントの密命を受けていた可能性も……。
全てを偶然と片付けるほど司令はお人よしではない。

 

 本当にただの偶然なのだが……。

 

歌姫の騎士団が口出しする前にシンの身柄を確保しておきたい司令が手を回したという事情が
あるにはあるのだが、戦闘終了直後のパイロットにやらせる仕事ではない。
つーか、その他もろもろの指揮がなければ自分がやりたがるって、司令としてどーなのよ。
サイは内心でため息をつきつつも、何も書かれていない、書き方のわからない調書を見て
もう一度内心でため息をついた。

 

「大体、軍のMSを勝手に操縦すればこうなるのぐらいわかってるだろう」
「そりゃそうですけど、降りたとたんいきなり筋肉ダルマみたいな連中に圧し掛かられれば
 誰だって不機嫌になりますよ」
「それは……正直スマンかった」

 その話は聞いていない。思わず反射的に謝ってしまった。
 もっとも、それでもシンは気が納まらないらしく、MSを降りた直後の仕打ちを口にする。

妙にテカテカしているし、キモイ笑顔を貼り付けてるし、妙にハァハァしているし……、
 筋肉をぴくぴくさせて密着してくるし・・・・・・、アニキって何ですか、もうダメダーって何だよ。
 しかも、それを見てシッポの奴はやたら嬉しそうに写真を撮るんですよ!」
「最後の一つは君の身内だろう」
「いや、貴重なメモリアルっすし」

横で出されたお茶を啜っていたシッポが、ポツリとつぶやく。

「何が貴重なメモリアルだっ!!」
「まぁ、犬に咬まれたとおもってあきらめてくれ」
「あんたらはぁ!! 連合は一体どうなってるんだよ!」

むしろこっちが聞きたいと思うサイであった。

 
 

ひとしきり怒鳴って少し気が晴れたのだろう、シンも流石に大人気ないと思ったのか
サイに謝罪の言葉を述べる。

「すいません、熱くなりすぎました」
「いや、まぁ、首謀者にはよく言っておくから」

緊急出動だった上にクソ忙しいのに、こういった悪戯には労力を惜しまない上官を
どうしてくれようかと考えつつ、サイは形だけの取調べを口にする。

「えっと、そっちのお嬢さん……シッポさんだっけ? を、護衛してこの街に来て戦闘に巻き込まれたと」
「ちょ、私の名前は……」
「ああ、そうだ。それよりあんたに聞きたい」

サイの形だけの取調べと、シッポの抗議をさえぎり、シンはサイに質問の言葉を投げかける。

 

「なんで、あんたらはこんな街の上で戦ったんだ……下にどれだけ被害が出たんだと思っているんだ」

 

抑えた口調でシンは話す。
だが、口調こそ抑えているが、その中になにかヘドロのように重く澱んだものが混じっている。
今回の事件だけではない。
シンがずっと溜め込んでいた、そして忘れかけていた、
シンをシンたらしめている部分の蓋が開きはじめているのだ。
少しでも理不尽な暴力に晒されている人を守りたい。
そしてそれを踏みにじったもに対する怒りが、漏れ出しているのだ。

 

サイは思案する。
正直に言えば、アスラン・ザラが勝手に暴走してテロ組織と交戦をした。と言うだけの話だ。
むしろ、こっちが文句を言いたい気分だ。
かと言って、これをそのまま言って彼が納得するのだろうか? 責任転嫁と取られるのではないか。
そもそも、奴の暴走を止められなかった俺達の責任は?
そして、どこまで自分は話して良い?
ここで答えを間違えれば何か致命的な事態が起こる。サイの直感がそう告げていた。

 

そしてサイが思案している横で、シッポがはらはらしながら事の経緯を見守っていた。
シッポにとって、シン・アスカは『元ザフトのトップエース』という、世間に流布された過去と、
師匠であるジェスの友人という以外はそれほど興味を引く人物ではない。
ここ数日の付き合いで意外と子供っぽいとか、良い奴だとか、からかうと面白いとか、
すくなくとも好意に値する人物だとは思っているが、記者として特に興味を引く人物ではなかった。
だが、今の彼はどうだ?
恐怖を感じるほどの、何かどす黒い覇気を彼から感じていた。

 

 三者三様の沈黙は、実のところそれほど長く続かなかった。
 騒がしい乱入者がやって来たからだ。

 

「シンっ!!!」

 

沈黙が支配していた室内に、乱暴に扉を開く音と若い男の怒声が響く。
入ってきたのは、歌姫の騎士団より派遣されてきた特別捜査官こと、アスラン・ザラであった。
アスランは部屋を一瞥すると、一瞬だけサイを睨むと、すぐにシンに視線を向けこう叫んだ。

「シン!! 何でお前がここにいるんだ!!」

 

突然の乱入者に三人は流石に呆然とする。それでもこいつが来ることを予想できていたサイとシンは
驚いただけですんだが、シッポは驚きのあまり隣にいたシンに思わず抱きついた。
一方のシンはそんなシッポに構う事無く、アスランを睨みつけながら辛辣に応えた。

「民間人の俺がどこにいたって勝手でしょう。アンタにとやかく言われる筋合いは無い!」
「まだそんな事を行っているのかっ! シン! 
 俺やキラ、メイリンがどれだけ心配したと思っているんだ!」
「心配してもらってありがとうございました……、とでも言って欲しいのかよ!!
 あんたらが勝手に心配しているだけだろう!」
「そんな言い方があるか! どれだけ危険なところにいたのかわかっているのかっ!!」

相変わらず身勝手な物言いを。シンの頭に血が上る。

 

「はん、そもそもだ、あんたらが街中でドンパチ始めなきゃ、危険なんか欠片も無かったね」
「そ、それは……。シン! お前は何もわかっていないんだ! お前はこんなところにいちゃいけない!」
「何もわかってないのはあんたのほうだ!! 俺がどこにいようと勝手だろう! それに……」
 二人の言争いはまさに掴みかからんばかりにエスカレートしていく。
 いや、シンの腕に力が篭りつつある。
 彼の脳裏に、ほんの数時間前まで生きていた少女の面影がよぎった。
「こんな街中でお前たちは何をやってたんだ!! どれだけ被害が出たと思っているんだ!!」
「シン!! 俺だって、好きでこんな事をやっているんじゃない!」
そして、アスランの拳にも力が篭りつつあった。
シンは何もわかっていない、自分が今どれだけ危険な場所にいるのか。
俺が、俺達がどれだけ心配しているのかを!

 

「このようなところで何をやっているのですか、アスラン・ザラ特別捜査官」

 

だが、少し遅れてやってきた5人目の人物が、二人に冷たい声をかける。
開けっ放しだったドアから入ってきた司令は冷たい視線で部屋を一瞥すると、
まずはだらしない部下に叱責の声をかける。
まだ若い、クールな雰囲気を漂わせた黒髪の女性の仕官だ。

「アーガイル少尉。貴方にはシン・アスカ以下一名の取調べと、
 私の許可無くこの部屋には誰も入れないように命じたはずだけど」
「そ、それは……」

その言葉にたじろぐサイであったが、司令も追及する気は無いらしく、
すぐにアスラン・ザラを冷たい目で睨みつけ、事務的な口調で淡々と退出を促した。

「アスラン・ザラ特別捜査官、貴方はここに立ち入る権限はありません。すぐに退出してください」
「だが、俺には特別捜査官としての立ち入り権限が」
「この場の責任者は私で、私は貴方に入室の許可を下ろしていません。
 警備の者より制止を振り切って無理やり入り込んだとの報告も受けております。
 この場から即退出してください、それが受け入れられない場合は
 こちらもそれ相応の対応をさせていただくことにします」
そう言うと、司令の背後に武装をした兵士の姿があった。

 

アスランは考える。
正直に言えば戦闘訓練を積んだコーディネーターである自分に、武装した兵士の一人や二人など
さほど脅威ではない。なにより、こんな狭い室内では重火器など使えない。
かと言ってここで争っては、シンの身に危険が迫る。なによりこいつらはブルーコスモスなのだ、
いざとなったらどのような手段に訴えるかわからない。
それに、自分がシンの存在に気が付いていることをアピールは出来たはずだ。
無茶な真似など早々出来まい。ここは一端引いて後で引渡しを要求するべきか。
アスランはそう判断すると、やや乱暴に部屋から出て行く。
「この事は連合に厳重に抗議させてもらうぞ」
「こちらも、プラント政府に無断出撃と都市上空での戦闘行為は厳重に抗議させていただきますね」
「悪いが、俺は特殊平和維持軍所属だだ」
「あら、そういえばそうでしたか。ザラ特別捜査官殿」

捨て台詞を言うアスランに、司令も皮肉をたっぷり利かせながら応じた。

 

そして、アスランが確実に出て行ったことを確認すると、隅においてあった椅子を自分で引っ張り出して、
おやじくさい動作でどかっと座った。

「サイ君、コーヒー」
「って、いきなりなんですか」

脈絡も無くいきなり飲み物を要求する司令に、サイは半ば呆れる。
まぁ、呆れながらもきっちりコーヒーを入れるあたりはサイも人が出来ているが。
「アー胸糞悪い、あの禿。サイくん、塩を蒔いておいてくれない」
「よくそんな東洋の風習知っていますね。でも、残念ながらここには塩は無いですよ」
「無いんだったら買ってきてよ、5秒以内に」
「できるかっ!」

襟元を緩めだらけたしぐさで椅子に座る彼女は果てしなく親父くさい。
先ほどまでのクールな雰囲気など、銀河の果てに飛んでいってしまっている。

 

「って、あんたはこの間の……、まぁ、サイさんがいたならいてもおかしくないか」
「シン、知り合いっすか?」

 

突然やってきた胸の大きい女性仕官に、シッポが反応した。
なんだか知らないが、すごく負けた気分だ。あの大きな胸が大勝利をしたような気がする。
いや、自分は負けてない。成長期がまだなだけだ。

 

「知り合っちゃ知り合いだけど……」
「うん、この部隊の司令よ〜。サイくん、砂糖5つ入れて。あとミルクも」
「太りますよ」
「胸ばっか大きくなるのよね」

 

 なんか、非常にむかつく台詞を言われたような気がする、乙女的に考えて。

 

「その偉い人が何しに来たんですか」
「ん〜、シンくんにお礼を言おうと思ってね」
「お礼?」

司令の言葉に、シンは首をかしげる。礼を言われるようなことはやっていないが……。

「そ、貴方のおかげで貴重な部下を失わずにすんだわ。ありがとう、シンくん」

 そう言うと司令は身をただしシンに向き直り、頭を下げる。
 その様子に、逆にシンの方が慌てた。

「べ、別に例を言われるためにやったわけじゃない」
「でも、貴方の行為は褒められるべき行為よ。軍人としては少し拘束させてもらうしかないんだけど……。
 本当に、ありがとう」
「あ、いや……」

こうやって素直に礼を言われた経験が無いシンは思わず赤くなる。

 

 だが、それもほんの一瞬だけだった。

 

 そうだ、オレハナニモマモレナカッタ。レイヲイワレルヨウナコトハナイ。

 

 シンの脳裏に、あの少女の姿がよぎり、表情が厳しくなってゆく。
 灼熱の炎に包まれた小さなレストランの姿がよみがえる。
「俺は礼を言われるような事はやってない。……それより」
「それより?」
「あんたらは、何でこんな所で戦争なんかやってたんだ!」

 

「ん〜、簡単に言うと、この街の近くにテロリストの根城があったんだけど、
 どこからか話を聞きつけたあの禿小僧が勝手に突撃してね」
「はぁ?」
「ザフトでもよくあったんじゃないの? 歌姫の騎士団が独断で出撃してとんでもない被害が出るのって」
むしろ、これまで秘密裏に内偵を進めていた身としては、エライ迷惑だと司令は言葉を締める。
その言葉に、シンは頭を抱えたい思いに駆られた。
たしかに、シンにもありすぎるぐらい身に覚えがある経験だ。

 

ラクス・クラインの私兵である歌姫の騎士団はとにかく独断専行が多い。
ザフトにもその傾向はあったが、騎士団のそれは群を抜いていた。
勝手に海賊の本拠地に乗り込んで大暴れをした挙句、大半を逃がすなんて事も何度かあった。
だが、それを騎士団副団長のアスランがやるか……と、考えて、シンは本当に頭を抱える。
奴ならやる。
思慮深いように見えて、その実脊髄反射だけで生きてるんじゃないかと思われるぐらい
短慮に走ることが多い奴だ。

 

「あいつが……そうか、あいつが……」

 シンの中に黒い感情が渦巻く。あいつが、あいつらが……。

 

「だ、大丈夫っすか、シン?」
「なにがだ、シッポ?」

だが、そんな感情が深まるよりも前に、シッポの心配そうな声が真の耳に届いた。

「いや、なんかすごく怖かったっすよ……」
「怖いって……ひどいな」

その言葉にシンは苦笑いをする。
あの少女のことは、決して許せるようなことではない。
だが、だからといって周囲を怖がらせてどうする。

 

「いや、悪かったな。シッポ」
「いいっすよ」
「あー、目の前でイチャつかれると、お姉さん悲しいんだけど」

どこか和んだシントシッポであったが、それに水をさす女が一人。
すみっこでこっそり『行き遅れが妬まなくても』などと言った男は
レバーにきついのを一発お見舞いしてある。
もっとも、シンとシッポの二人はその幸薄い男のことなど気が付かなかった。
二人そろって心底嫌そうな顔をして、こう答えた。

 

「「こいつとイチャつくなんてあるわけ無いでしょう(いッス)」 」

 

そして、ハモったことに、さらに嫌そうな表情をする。
そんな二人をなんともオヤジくさい笑みで見ながら、司令はシンに質問した。

 

「で、ところでシンくんはなんでここにいたのかな?」

 
 

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