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SCA-Seed_19◆rz6mtVgNCI 氏_Episode ”S & R”_第07話分岐

Last-modified: 2009-05-06 (水) 23:59:36

アーモリー1の外壁がアグライアの最後の砲撃を受けて大きな穴を開ける。
だが、それがミネルバ級強襲揚陸型MS運用母艦アグライアの最後の足掻きであった。
無数のドラグーンフリーダムに集られたアグライアは各部が小爆発を繰り返し、やがて爆散した。

 

アーサーやメイリン、アビーやヴィーノ。それにアグライアの護衛に残ったルナマリアの安否は気になる……
だが、男はそんな考えを強靭な意思で脳裏の隅に追いやった。
もともと生還率が一割を切る特攻作戦だ、参加したもの全員が帰れない覚悟など出来ている。

 

 それに、ここからが本番なのだ。

 

 アーモリー1の中枢ユニットを破壊できなければ……、人類の歴史が終わる。

 
 

「こちらロストジャスティス。突入するぞ!」
男の乗るジャンクデスティニーより先行していた、∞ジャスティス改修機ロストジャスティスを駆る
アスランより突入の合図が飛ぶ。
ブースターを無理やり増設し、殺人的な加速力を得たロストジャスティスがコロニー内部に進入していく。
男もそれに続き、アーモリー1の内部へと進入した。

 

かつてのアーモリー1は軍工廠のおかれた軍事色の強いコロニーでありながら
洒落た町並みと緑が広がる美しいコロニーであった。
少なくとも、男の記憶にある限りはそうであった。

 

しかし、その面影はもはやどこにも残っていなかった。
大地は灰色のコンクリートと鋼の機械が覆い、人の営みの証である喧騒の代わりに
コンピューターの廃熱のための冷却装置の稼動音だけが不気味に鳴り響く。
そこはもはや宇宙に浮かぶ人口のオアシスではなく、巨大な機械の一部でしかなかった。

 
 

いや、その表現は生ぬるい。

 

そこは、機械の生み出したこの世の地獄であった。

 
 

そこには、半透明の容器と溶剤に封じ込められ、電極を突き刺された人の脳が入れられていた。

 

あるいは、鋼鉄のカプセルに入れられ簡単な生命維持装置を取り付けられ
直接頭に電極を突き刺された人の姿があった。

 
 

「ダコスタが残してくれた情報通りか……」
通信機越しに、アスランの冷たい声が聞こえてくる。
「これが、デスティニープランを否定した世界って奴かよ……」
男はうめくようにつぶやく。これはあまりにも酷すぎる。
デスティニープランに多大な問題があったことは、男も今は既に気が付いている。
だが、それでもプラン導入後でも人は人として生きていけたはずだ。

 
 

だが、これは違う。

 

もはやここに居るものたちは、人ではなく、ただの部品だ。そこには人の尊厳も、生きる自由も無い。

 
 

男の怒りを通信機越しに受けながらアスランは手元のコンソールを操作し、残された情報を確認する。
ラクスの腹心であり、狂気の暴走を知り止めようとした男の情報は確かに正確だった。
GGユニット、レセップスの生命維持装置、それに……。
ラクスの暗躍を裏から支えてきた男は、もっともこの狂気に近いところにいたため、気がつけたのだろう。
彼が最後にロウに頼んでくれなければ、シンを探すことも出来なかった。
彼が残してくれたデータが無ければ、ここにはたどり着けなかった。

 

アスランは湧き出そうになる感慨を無理やり封じると、データを確認して男に向かって事務的に語りかけた。
「シン。中枢ユニットのKユニットはコロニー中央部だ。
 そこを破壊すればドラグーンフリーダムは活動を停止する」
「くそっ、了解!」

 

今更アスランをせめる気は無いが、それでも冷静なアスランの態度に腹が立つ。
その苛立ちをこめて機体をコロニー中央に向けようとした、その時だった。

 

「そちらには行かせないよ」

 

通信機越しに聞こえてくる、やわらかい男の声。
そして、その優しげな声と相反する必殺の光線が二機のMSを襲う。

瞬間的に回避行動をとれたのは、二人の操縦技術が非凡だったから。

 

「キラ……、キラ・ヤマト!!」
そこには、CE最強と謳われた、ストライクフリーダムの姿があった。

 

男は怒りの叫びを上げとアロンダイトを抜き、一気にストライクフリーダムに肉薄する。
だが、ストライクフリーダムはその攻撃を軽くかわすと、
ジャンクデスティニーに蹴りを入れて跳ね飛ばした。
通信機越しに、キラ・ヤマトの悲しげな声が聞こえてくる。

 

「アスラン、シン……。何で君たちがこんな事を!」
「何がこんな事をだっ!! お前こそ何をやったのかわかっているのか! キラ・ヤマト!!」
「シン、君こそ勘違いしているんだ!」
「何が勘違いだっ!!」

機体の限界以上の速度で振るわれるアロンダイトを軽々とかわしながら、キラは悲しげに言葉を重ねる。

 

「ここに居る人たちは、本当なら戦場で死んでいるはずだった人たちなんだ。
 それをラクスたちは助けて……」
「助けてなんていないだろうがっ!!」
「彼らはまだ生きているんだ!!」

 

牽制にビームブーメランを投げるも、あっさりとストライクフリーダムに叩き落とされてしまう。
せめて、下に──脳だけでも──人がいなければ、飛び道具も使用できるのだが、
こんな状況では格闘武器しか使えない。
シンは歯噛みしながらも、叫び続ける。

 

「この状態のどこが生きているんだ! 脳みそだけにされて、兵器の中枢に利用されて……、
 これのどこが生きているっていうんだ!!」
「ラクスだって、本当はこんなことはしたくは無いんだ! それが何で君たちにはわからないんだ!」
「わかってたまるかっ!!」

 

二人が激闘を続ける横で、一瞬ではあるが忘れ去られている男がいた。
そう、ロストジャスティスを駆るアスラン・ザラである。

 

アスランは激闘を繰り広げる二人を冷たい目で見ると、
デスティニーとフリーダムが離れるほんの一瞬の隙を見逃さなかった。

 

そう、ほんの一瞬の隙、
その瞬間にロストジャスティスは殺人的な加速力で、一気に動くと、コックピットを貫いた。

 
 

 そう、ストライクフリーダムの。

 
 

「えっ?」
一瞬、キラは呆然とした表情をするが、その表情もすぐさまビームの熱で焼き払われる。
そして、驚くほどあっさりと、ストライクフリーダムは人工の地表に叩きつけられ、その機能を停止した。

 

一方、横槍を入れられた形のシンも、そのあまりの早業に呆然とした。

 

「シン、こんなところで遊んでないで、Kユニットを破壊するぞ」
「え、あ、ああ」

 

アスランの言葉に呆然としながらも、シンの中でなにか違和感を感じる。
能力的には別に不思議ではない。
爆発的な加速力と格闘能力を誇るジャスティスは、ある意味フリーダムの天敵ともいえるMSなのだ。

 

だが、アレほどまでにキラ・ヤマトにこだわっていた男が、
なぜこうもあっさりとキラ・ヤマトを殺せるのだろうか?

 

だが、シンが考え事をするのを構うことも無く、アスランは中枢ユニットのある区画に飛び立ってしまう。

「お、おい、まてよ、アスラン」

それを慌てて追いかける。

 

しかし……。

 

「シン! 避けろっ!!」
「ちっ、もう追ってきたのかよ!!」

今度は四方八方から飛んでくる光条に、シンとアスランは機体の軋む幻聴が聞こえてきそうなほどの
緊急回避を行なう。

 

「ドラグーンフリーダムかよ……って、え?」

 

避けた直後に気が付いた。
当初はドラグーンフリーダムが追って来たのかと思った。
しかし、周囲のどこを見回してもドラグーンフリーダムの姿は無い。
代わりに、青い三角錐の機械が浮かんでいる。

 

「スーパードラグーン? って、まさかっ!?」

 

コックピットを貫かれたはずなのに。いや、しかし、前にも同じような事が!?
シンは慌てて落下したストライクフリーダムを確認する。
しかし、そこにはフェイズシフトダウンを起し、無残な灰色の機体を晒すストライクフリーダムの姿が……。

「どういう事だ?」

呆然とするシンをよそに、アスランは苦々しそうに、天井を睨みつける。

 

「まさか、こんなに早く目覚めさせることが出来るだと……」
「どういうことだ、アスラン!」

 
 

「まさか、本気で殺しに来るなんて、アスラン。君は何でわかってくれないんだ?」

 
 

アスランの言葉をシンが聞き返すより先に、
天井よりまるで大天使のように降りてきたMSより、通信が入る。

 

その声は、今まさにアスランが殺したはずのキラ・ヤマトその人であり、
MSはストライクフリーダムであった。

 

「ま、まさか、今倒したはずじゃ!?」
シンが、呆然と叫びを上げる。
だが、そんなシンの驚愕などまったく意にもせずに、キラは悲しげにつぶやいた。

 

「アスラン、シン君たちはわかってくれないんだね。それなら、僕はもう迷わない!!」

 

キラは新たな決意を胸に、その引き金を引く。

 

シンとアスラン。二人の視界が白い光に埋め尽くされた……。