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SCA-Seed_MOR◆wN/D/TuNEY 氏_第24話前編

Last-modified: 2010-02-15 (月) 03:26:30

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音の存在しない漆黒の闇、宇宙。
そんな虚空に佇む機体が一つ。
白い四肢に紅蓮の胴体を持つGタイプMS、インパルスエクシード。
シンは周囲を警戒しつつ、コックピットのコンソールに目をやる。
インパルスエクシードが背負ったシルエットは砲撃戦用のヘッジホックブラスト。
かつて、デリュージーのあった右側にレドーム左側に細い折り畳み式の砲。
肩にはアシュラソードと同じくショルダーアーマーが装着され、各種センサー類とビームガトリング、
半球状の台座に据え付けられた三連装の機関砲が装備されていた。
サイドアーマー右側には対艦ミサイルコンテナ左側にはマイクロミサイルポット
左後背部にはケルベロスを一回り大型化し砲口を3つにした新型砲。
反対側にはラッチが設けられ、両手で保持しているのは先端がエンジンのように肥大化した
長い砲があったのだと推測できた。

 

「……どこだ、どこから来る?」
緊張からか、荒い呼吸を抑えながらシンは答えが帰って来ない事を承知で一人呟く。
シンの呼吸だけが聞こえる時間がどれほど続いただろうか。
センサーが僅かな動体反応が捉えた瞬間、シンはフットバーを反射的に蹴り飛ばしていた。
一瞬の後、インパルスエクシードのいた場所を幾重ものビームによる十字砲火を襲う。
「……見えた、そこだ!」
シンはすぐさま機体を反転させると、ビームの飛んできた方向へ向けマイクロミサイルを撃ち放つ。

 

「避けたか、流石はミネルバの鬼神。 やはりリスクなくして利だけ得るというのはナンセンスか」
トーデスシュレッケンと手持ちのアーティラリーライフルで─2機の部下も含めて─
マイクロミサイルを全て叩き落とし、大尉は含み笑いをする
「大尉、如何なさるつもりで?」
右側に位置するエールストライカー装備のウィンダムIIIが大尉へと通信を繋ぐ。
「言うまでもない。 遠距離戦が駄目ならば肌と肌が触れ合うほどの接近戦に決まっている!
 中尉、少尉援護を頼む」
「それでこそ大尉」
「了解でさ」
自信満々に言った大尉に対し、満足そうに二人の部下は頷いた。
「さぁ、はじめようか!」
二機のエールウィンダムIII、部下二人が左右に展開するのを確認すると、
大尉は獣のように犬歯を剥き出しにしてフットバーを踏み込んだ。
ライフル、シールドを投げ捨てると真っ正面からインパルスエクシードへ向け一直線に突貫する。

 

「正面? 馬鹿正直に!」
「言った筈だ!私は正面から行くしか能がないと!」
迫るウィンダムに全身の火器を放ちつつ、左後背部の砲、ケルベロスIIを展開、3つの砲身が迫り出す。
「行け!」
シンの気合いと共に三首の魔犬、その名に相応しい金属粒子ビーム、レーザー、プラズマ三対の
牙が如きエネルギーの奔流が辺り一帯を薙払うように放たれた。
「……ちぃっ! だが、その程度ォ!」
それまでAMBACのみで避けていたウィンダムIIIの動きがエネルギーの奔流を前に変わる。

 

「見よ、我が秘技! 人呼んで「まだまだッ!」」

 

大尉が行ったのは戦闘機動中にも拘わらずストライカーの翼を折り畳み、
意図的に失速させ敢えて動きを変則的にする事で回避運動に幅を持たせる裏技に近い物だ。
並のパイロットならばGでブラックアウトしてもおかしくはない。 
機動にGに耐える為からか絶叫を上げた大尉をシンの叫びが遮った。
右肩の折り畳み式の砲をウィンダムIIIへと向ける。
2つ折り重なっていた砲身が展開、機体全長に匹敵する程の長さのレールガンへと姿を変えた。
「そこだ!」
経験則と勘、今までの機動から推算し、頭の中で叩き出した予測位置へと電磁加速した弾丸を叩き込む。
「フラッグ2、フラッグ3今だ!」
シンが足を止めた事に、バイザーの下でほくそ笑んだ大尉はラケーテンストライカーの推進器を反転、
急停止した。
大尉の合図に姿を眩ましていた部下二機が左右からインパルスエクシードを挟撃する。
「ここまでだな、ミネルバの鬼神!」
「悪く思うなよ!」
漆黒のウィンダムIIIからの銃撃に両腕のカタールでビームを受け止めるとマイクロミサイルで段幕を張り
二機の接近を阻止する。
「残念だったな、あんたが部隊戦闘が得意なように俺も一対多の戦闘が得意なんだ」
より正確に言うなら、戦闘経験の大半が数の上で不利な状況が殆どで慣れたと言うべきか。
得意と言い切るには多少語弊がある。

 

「フフッフ……」
「た、隊長?」
(嗚呼、遂に頭が……)
突如として笑い始めた大尉に部下二人が怪訝そうな表情を浮かべた。
「そうでなくては、そうこなくては面白くない!
 シン・アスカ。 君に一対一の真剣勝負を、果たし合いを求める!」
器用にウィンダムIIIの左手の人差し指をインパルスエクシードに突き付ける。
「はぁ……嫌って言って聞く人じゃないか……ならお相手しましょう」
わざわざあのモーションを作ったのか、と呆れ半分感心半分で溜め息を付くと首を一二度振り気を取り直す。
大尉との、ラケーテンウィンダムIIIつまり高機動接近戦用MSとの交戦データは
シンの目的を果たす為にも必要だった。
「話が分かるな、ならば! いざ尋常に……」
シンの言葉に嬉しそうに口元を歪め大尉はウィンダムIIIはビームサーベルを構える。
シンと大尉の間に緊張が走り殺気が周囲に張り詰める。

 

「うわぁっ! 中佐何するんです! ちょっ!止め……」
「退きなさい!」
ウィンダムIIIが左手をサーベルへと添え、切りかかろうとした瞬間、
フラッグ2の悲鳴にも似た声と共に何かを蹴り飛ばしたような音。
「なんだ、何があった」
一方的に通信が切断され、フラッグ2のウィンダムIIIの姿が消えた。
「なっちゃいない……本当に砲撃機の扱いがなっちゃいわね! コーディネイター!」
聞き覚えのない女性の叫びと共にインパルスエクシードへ向け、飛来する閃光。
シンは反射的に手持ちの砲口を閃光へと向けた。
先端からエメラルドグリーンをした傘状のシールドが展開、閃光を弾き飛ばす。
ケルベロス、オルトロスの技術的流れを汲み、系列後継である事から魔犬ガルムと名付けられたそれは
ビームコーティングシールドと同じ局長の奇想兵器の一つだった。
光波防御帯付随拡散ビーム砲ガルム。
先端部の肥大した箇所に発生器と大容量バッテリーを組み込む事で強靭な光波防御帯を使用可能にし、
インパルスエクシードの防御面を補助する目的もある。

 

「光波防御帯とは小癪な!」
ウィンダムIIIの代わりに姿を現したのは、
背中のバックパックから肩に突き出した2本の砲、両腕には手持ち式の銃剣付きライフル、
破片からセンサーを守るためだろう頭部前面に格子状のフェイスガード。
機動性確保の目的からか、左右に突き出たショルダーアーマーにスラスターを仕込んでいるようだった。
胴体や脚部、フェイスガードから覗く頭部形状にウィンダム系列の特徴を持ち、
GAT−Xの砲撃機バスター改良型、ヴェルデバスターを彷彿とさせる機体。
砲撃戦用に少数生産されたバスターストライカーを装備したバスターウィンダム。
そこから更に専門分野に先鋭化させたバスターウィンダム改。
それはパイロットの間では背中の砲、張り出した両肩などの特徴が合致する
かつて存在した機体から名を取りカラミティウィンダムと呼ばれていた。

 

「あんたは一体誰なんだ!?」
「ええい!! 何故イメリア中佐がここに!」
思わず声を上げたシンに答えるかのように大尉の取り乱した声が開きっぱなしの通信回線から聞こえる。
「イメリア……? レナ・イメリア、乱れ桜か!?」
シンはその名前に聞き覚えがあった。
前々大戦、俗に言うヤキン・ドゥーエ戦役において、地球連合軍で名を馳せた4大エース−
−切り裂きエド、白鯨、狂犬、乱れ桜−の一人。
ナチュラルでありながら並みのコーデイネイターを上回る反射神経を持つと言う砲撃戦のスペシャリスト。
「……いいさ、相手になってやる!」
無意識に引き攣ったような笑みを浮かべ、シンはガルムとケルベロスIIをカラミティウィンダムへと向けた。
ガルムから放たれた拡散ビームと三条の閃光が射線全てを焼き尽くすように放たれる。
「性能も特性も全く生かせていない! 宝の持ち腐れ……機体が泣いているッ」
砲身の位置から射線を読み切ったレナは機体を僅かに逸らすだけで閃光を避け、
インパルスエクシードの周囲を囲むように全身の火器をバラまく。
「好き放題言ってくれる……こいつならどうだ!」
動きの出だしを潰すレナの攻撃に身動きのとれないシン。
ガルムとビームカタールで砲撃の嵐を凌ぎながら、ヘッジホッグブラストの全火器を起動、
砲撃が止んだ一瞬の隙に全火器を一斉に放つ。
ヘッジホッグ。 由来であるハリネズミを想わせる弾幕が周囲を黒からカラフルに変える。
「数を撃てば当たるとでも? 近接格闘戦、中距離機動戦は非凡でも、遠距離砲撃戦は凡人並みね!」
シンの砲撃、無数の弾幕の僅かな穴を見切ったレナはスラスターを噴かし、砲撃の穴に滑り込む。
背部のキャノンをインパルスエクシードへと向け、連射。
ザフトの直接狙う砲撃や線で薙払うビームの砲撃ではなく機動を制限する溜弾。
そこに増加装甲に組み込まれたミサイルをばら撒き、撃破を狙う。
桜の花弁を想わせるミサイルの乱射と偏差砲撃を織り交ぜ、端から見れば美しいとさえ思えるような
弾幕の軌跡を描いて行く。

 

「ああいう戦い方もあるのか……」
レナの戦い方と言葉に思う所があったのか、戸惑いを感じせる声で呟くシン。
高機動によって相手を撹乱し、砲撃により敵の動きを制限しミサイルの乱射で大破させる
緻密に計算された戦法。
鳳仙花、シホ・ハーネンフースに少し似ているが、よりきめ細かく、
こちらの出方を読み先に阻止するザフトにはない戦い方だ。
「だが、こっちだって!」
ガルムとビームカタールのシールドを最大出力で展開、機体前面を覆うような形に展開する。
回避を捨て、敢えて動きを止める事で狙いを絞り込み直撃を狙う。
(へぇ、それなりに考えてはいるのね)
感心したように目を細めたレナは両腕のライフルを連結させ、インパルスとの撃ち合いに応じた。
「……今回はこんな所かしらね」
閃光が交錯し、インパルスエクシードとカラミティウィンダムにビームが迫る。
間近まで来たビームの輝きにシンが眩しさから目を細めた瞬間、モニターが暗転し、光が消えた。

 
 

『戦闘演習終了。 残念だが、最後は相討ちだ』
RBの声を合図としたように灯りが付き、モニターに戦闘結果が表示される。
『シミュレーションとは言え、かなり損傷があるぞ。 もう少し上手くやれないのか?』
「性分だ。 直しようもない」
RBの嫌味を聞きながらシートに上半身の体重を預けると両腕をだらしなくぶら下げ、シンは答えた。
『シン、今後の為に一つ良い事を教えよう。 直しようもないとは直す気のある人間が言う言葉だ』
「そうか、そうか、今後の参考にするよ」
更に続くRBのイヤミに適当に頷いて上体を起こすとコンソールにあるスイッチに手をかけた。
『待て、通信を切るな! 人の話聞いてないだr』
「ソンナコトナイデスヨ」
シンの動きに感づいたRBの言葉を片言な言い訳で避ける。
「全く……お前は俺の母親かっての」
呟きながらシートの拘束を解き始めるシン。

 

その瞬間、シミュレイターのフードが開き、目の前に白い大西洋連合軍の制服を身に纏い、
長い黒髪を後ろに纏めた30代くらいの女性士官が現れる。
「えっと、どちら様ですか?」
硬直したシンはなんとか言葉を喉の奥から搾り出した。
傍から聞けば間抜けにも程があるが、今のシンには余裕などと言う物が存在せず、半分ほど素で言っていた
「案外……普通なのね」
「はっ?」
女性は意外そうな顔と声に、呆気を取られたような声を上げるシン。
「……失礼。 大西洋連邦宇宙軍所属 A特務部隊艦載MS隊隊長レナ・イメリア中佐です」
非礼を詫びる様に軽く頭を下げると女性士官、レナ・イメリアは大西洋式の敬礼をする。
「元ザフトFAITH 傭兵赤鬼、シン・アスカです」
シンは筐体から這いずり出ると、ザフト式の敬礼で返礼すると右手を差し出す。
「まぁ、始めましてと言っておくわ、コーディネイター。 うちの部下が面倒をかけた様ね」
差し出された右手を一瞥すると、それに答える事無く話を続ける。

「(……キツイ言い方だなぁ)いえ、機体の調整を手伝って貰っていたので、
 寧ろ感謝したい位なんですが……あの、大尉達は?」
レナへと問いかけると、左右を見渡し、大尉達の姿を探す。
「あそこよ……全く書類整理サボって何をやっているのか」
シンの問いに答え、右手の親指で指し示す出口を指し示すとレナは呆れたように溜め息をついた。
シンがそちらへと振り向くと、軽くパーマの掛かった金髪、ドレッドヘアの赤毛と茶色い短髪の三人が
出口に向け全力で疾走している所だった。
「心中お察しします」
「貴方に察せられる義理はないけれどもね。
 ……ああ、一つ聞きたいことがあるのだけれども、良いかしら?」
「自分に答えられる範囲なら」
刺々しさすら感じられるレナの言葉に、シンは内心腹を立てながら、言葉少なく事務的に答える。
「PMCミハシラに居る……ジャック・リッパーとエイハブ・モビーディック。
 二人に面会……いえ、あの二人の正体は誰か知っているわね」
レナはシンの細かい仕草一つ一つを見逃さないように注意深く、猟師のようにシンを観察する。
「自分の口からその件について触れるのは契約違反になるのでミハシラの本社に問い合わせを……」
纏わり付くような視線に僅かな不快感を感じながら、シンはあくまで表面には出さず機械的に答えた。
「回りくどいのは好みではない。 二度は言わないわ、コーディネイター。
 エドワード・ハレルソンとジェーン・ヒューストンに会わせなさい」
シンの返答を一言で断ずると、多分に侮蔑を含んだ呼び方の後、シンへと一歩深く詰め寄る。
漆黒の、その瞳に映るのは、シンではなく怒りと憎悪、悲哀と愛情の入り混じった感情、
それは真に混沌を思わせた。
「……お断りします。 それと俺にはシン・アスカって名前がある。
 二度は言わない? それは俺の台詞だ。
 あんただってナチュラル呼ばわりは気持ちの良い物ではないだろ? ……それともう一つ。 
 喧嘩売ってるなら、熨斗紙付けてでも買わせて貰う。
 あんまり舐めてもらうと困るな、俺も伊達で傭兵やってる訳じゃない」
普段のシンからは想像しにくい、一般人なら体の芯から凍える様な冷たい感情の感じられない声。
殺気すら帯びた、かつての、アカデミー入学前後のシンを思わせるナイフのような鋭い眼光が
レナへと向けられた。
「……ここで揉めても時間の無駄ね。 今は貴方とやり合うつもりはない。
 本人達に直接会う事にするわ。 邪魔したわね」
シンの視線を真正面から受け止めると、レナは目を細め僅かの思案の後、
形式上の謝罪を口にし足早に立ち去る。

 
 

「はぁー、っ疲れたー!」
レナの姿が見えなくなったのを確かめたシンは、大きな溜め息と共にその場に座り込んだ。
『流石は喧嘩の買い方に定評のあるアカデミー始まって以来の問題児、狂犬 赤目のアスカ。
 とでも言っておこうか?』
シミュレイターの外部に置かれた通信機から酷く愉快そうなRBの声が聞えた。
「冗談じゃない。 久しぶりに冷や汗かいたよ。 ……って言うか起きてたならもっと早く声を掛けろよ」
『私が口を出しても厄介事が増えるだけだと思ってナ」
「笑い事じゃないぜ、全く」
かかかっと笑い続けるRBに呆れながらシンは立ち上がる。

ミナとの通信が終った次の日、局長からの頼みで工廠格納庫の片隅を借り、
シンとRBはシルエットのデータ取っていた。
そこに独特の嗅覚で嗅ぎ付けた大尉達に(半ば強制的に)手伝って貰っていた所に
レナ・イメリアが現れ、この騒ぎである。

 

「そういえば、データは取れたのかよ?」
億劫そうにゆっくりと立ち上がるとシンはシミュレイターの中を覗き込み、中の端末を取り出す。
『ああ、中々いいデータが取れた。 想定外だった砲撃のスペシャリストとの交戦データまで取れたからな。  だが……』
「実戦から取れた物からは程遠いか。 その辺りは現場で微調整だな」
シミュレイターに寄り掛かったシンはノートほどの大きさの端末でデータを見ながらRBの言葉を接ぐ。
『後は接近戦、特にロンゴミアント槍形態でのモーションデータ不足だな。
 格下相手なら兎も角、同格以上なら癖を読まれる可能性がある』
「ジェーンさんから貰ったフォビドゥンのデータでも足りないか?」
無意識のうちに通信機へ顔だけ向けるとシンは首を傾げる。
『トライデントと槍の先に刀が付いた様な……極東ではナガマキとか言ったか?槍と長巻では扱いが違う』
「一応ユンさんとケナフさん……ああ、ミハシラの人な。 その二人に頼んで……ひゃあ!」
RBの言葉に頷き、顔を正面に戻したシンは首筋に感じた金属質な冷たさに
思わず悲鳴にも似た声を上げた。
「なぁーに、黄昏てるのよ」
素早く振り向いたシンの目に映ったのは缶コーヒーをシンの首筋に押し当て、嬉しそうに笑うルナマリア。
「『何だ、ルナ(マリア)か』」
シンとRBは声を合わせると、シンは子供じみた悪戯に呆れた目を向けた。 
RBも人間であれば溜め息をついていただろう。

 

「なんだとは何よ! 折角差し入れ持って来たのに」
ルナマリアは頬を膨らませるとシンに向け、缶を投げ付ける。
「おっ、サンキュー……こんなとこで油売ってていいのか?」
飛んできた缶を振り向きもせずに片手で受け止めると口をつけた。
「残念。 半休貰ったから仕事は午後からよ。
 ま、ミネルバも私のガルバルディも破損したから報告書作成位しかないけどね」
大袈裟に肩を竦めると、シンの隣でシミュレイターに寄り掛かり自分の分のコーヒー飲み始める。
「ふーん、大変だな」
『他人事だな』
興味なさげに答えるシンにRBが問いかける。
「実際そうだからな。 俺はもうザフトじゃない」
フン、と不機嫌そうに鼻を鳴らすと端末をシュミレイターへと戻すシン。
「シン、あのさ……ザフトに、プラントに戻って来る気は……」
「よう! 邪魔するぜ!」
シンの様子を横目で伺っていたルナマリアは、意を決して口を開き、そして遮られた。
(本当に邪魔!)
恨めしそうな顔で突然の来訪者、エドとジェーンの二人を見るルナマリア。

 

「よう! じゃないですよ……」
エドの笑顔を見た瞬間、げんなりした顔で溜め息をつくシン。
「何かあったの?」
シンの表情に不思議そうな顔をしてみせるジェーン。
「大西洋連邦のレナ・イメリアに二人の居場所の事で喧嘩売られて、危うく買う羽目になったんですよ!
 早いとこ何とかしてくださいよ!」
両肩を怒りに震わせシンが訴える。
喧嘩を買おうとしたのは自業自得だがな。 と言いかけ、RBは言葉を飲み込んだ。
「ここに居るのは切り裂きジャックとモビーディック。 それ以上でもそれ以下でもない」
レナ・イメリアの名前を聞いた途端、顔から血の気が引いたエドは他人のフリをしながら
足早に立ち去ろうとした。
「あ! 逃げるな! 」
「だって見つかったら捕まる……いや、殺されちまうもん!」
「もん! じゃないだろう! あんたって人は!」
シンに肩を掴まれたエドは物凄く嫌な顔で訴えるが、シンの知った事ではない。
ジェーンとルナマリアはそんな二人の様子を見ながら、男の人はやーねー、とでも言わんばかりに
苦笑を浮かべていた。
『シン、いい加減に……』

 

「すまん、一寸聞きたいのだが、司令部はどこか知らんか?」

 

見兼ねたRBが、諌めようとした瞬間、何処かで聞き覚えのある男の声がその場にいた全員の耳に届き、
一斉に振り返った。
「えっ? キラさん?」
「今取り込み中だから跡で……ん? あんたは!」
ルナマリアがその声と顔にキラと間違えた男の事をシンは知っていた。
肩まで届くほどの長い黒髪、キラと良く似た顔つきと相反する鋭い目付き。 
拘束具にも似た黒い制服に部隊を表すXの文字。

 

「貴様、赤鬼……シン・アスカか!」
男もシンに気付いたのか、若干の驚きを含んだ声を上げる。
「何であんたがここに居るんだ! カナード・パルス!」

 

男の名は傭兵部隊X所属カナード・パルス。 スーパーコーディネイターになれなかった男。